ラピエール・ゼリウスSL ディスク FDJ MCP 気になるブランドを一気乗り!「アサノ試乗します!」その11

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浅野ゼリウスSLディスク

フランスのUCIワールドツアーチーム・FDJとともに世界最高峰のレースシーンで闘い続けるフレンチブランド・ラピエール。2017モデルで登場したゼリウスSL 600 ディスク FDJ MCPは、オールラウンド系レーシングモデル・ゼリウスのディスクブレーキバージョン。果たしてその実力やいかに——。

 

オールラウンドレーシングロードにディスクブレーキを搭載した最新モデル

浅野ゼリウスSLディスク

ラピエールのレーシングロードは、オールラウンド系のゼリウスSL、エアロ系のエアコードSL、エンデュランス系のパルシウムというラインナップからなる。このうちゼリウスSLシリーズは、軽さと剛性を高い次元で融合し、パワー伝達性能に優れたモデルとして、UCIワールドツアーチームのFDJでも主に山岳ステージを中心に実戦投入されている。

ゼリウスSLシリーズは、超軽量モデルのアルティメイト(フレーム販売のみ)を筆頭に、コンポーネントの異なるキャリパーブレーキ仕様の完成車、そして今回紹介する2017年モデルで新登場したディスクブレーキ仕様からなる。

ディスクブレーキ仕様のゼリウス SL 600 ディスクは、基本的なフレームデザインはキャリパーブレーキモデルのものを受け継ぎながら、フレームやフロントフォークをフラットマウントタイプのディスクブレーキ専用設計とし、さらにホイールを前後とも12mmスルーアクスル仕様としている。これにより、ディスクブレーキに最適化させつつ、ホイール交換の容易さと確実なホイール装着を両立することに成功している。

完成者のみの販売で、メインコンポーネントにシマノ・アルテグラ、シマノの油圧式ディスクブレーキを搭載する。価格は50万9000円(税抜)。フレームカラーはFDJレプリカだ。

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ヘッドチューブ長は標準的。ハンドル位置の低いアグレッシブなポジションに対応する。ブレーキ・変速ケーブルはハンドル操作に影響が少ない位置からフレームに内装される

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ゼリウスSLシリーズのアイコンとも言えるシート周り。細身のシートステーがシートチューブから完全に独立し、トップチューブに直結される。振動吸収性を高めるのに貢献

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BBはプレスフィットタイプ。シェル幅いっぱいにワイド化されたダウンチューブとチェーンステーは、ペダリングパワーをロスすることなく推進力に変換してくれる

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トップチューブは縦方向につぶしが入り、真横から見るとアーチ状になっており、路面からの衝撃を巧みにいなす。ヘッド側の接合部はワイドで、ヘッド周りの剛性を高めている

浅野ゼリウスSLディスク

シマノのフラットマウントタイプの油圧ディスクブレーキを搭載。12mmスルーアクスルに対応し、足回りの剛性を高め、キビキビとしたハンドリングと制動時の安定感を両立

 

ゼリウスらしい乗り味とディスクブレーキの融合は実現できている

浅野ゼリウスSLディスク

2017年モデルで各ブランドがディスクブレーキロードのラインナップを充実させている。これまではエンデュランスロードが中心だったが、エアロロードや軽さを売りにするオールラウンド系モデルにまでディスクブレーキ搭載モデルが登場している。

ラピエールもこの例に漏れず、オールラウンドレーシングモデルのゼリウスSLシリーズにディスクブレーキ仕様を投入してきた。ゼリウス SL 600 ディスクである。

既存のキャリパーブレーキモデルを単にディスクブレーキ仕様にしただけでなく、ディスクブレーキ専用モデルとして設計した——というのはどこのメーカーもうたっていることで、特筆すべきことではないのかもしれない。ただ、ディスクブレーキ化に際してフレーム剛性をチューニングすることによって、乗り味が変わってしまうことは大いにあり得る。だから走りの随所でゼリウスらしいと思えることはすごいことだと思う。

ペダルを踏み込んだときの脚に伝わる感触は硬派なレーシングバイクそのもので、踏力が余すことなく推進力に変換されるのを感じる。急制動時や高速コーナーでは、ヘッド周りの剛性の高さを存分に感じられ、挙動の安定に一役買っている。ホイールが12mmスルーアクスル対応となったことで、足回りのカッチリ感が増していることも、ライド中の安心感につながっていると思われる。

その上でディスクブレーキ化によるメリットも体感できる。軽いレバー操作で確実な制動力を発揮する油圧式ブレーキ独特の操作フィールは、個人的な意見だがキャリパーブレーキよりスムーズさという点において洗練されていると思う。天候を問わず、軽いレバーの引きで安定した制動力が期待できるのは、ロングライドに限らず、レースという極限状態であってもストレスと感じにくいのではないか。

さらにブレーキの装着位置がキャリパーブレーキ仕様より地面と近くなることでもたらされる低重心化というメリットも見逃せない。ディスクブレーキロード全般に言えることだが、操縦安定性という面ではディスクブレーキロードは優位に立っている。このモデルも例外ではなく、コーナーや下りで感じられる安定感は、キャリパーモデル仕様より1枚上手だ。

とはいえ、今回の試乗車のパッケージ(まさしく市販のパッケージそのもの)では、ディスクブレーキ化のメリットが本当に生かし切れているかどうかという点では疑問に感じた部分もあった。一番残念だったのは、ホイールが重かったため、レーシングバイクとしての軽快さにやや欠けると感じられたことだ。ダッシュの初速の乗りや登坂時にそれを顕著に感じられ、長い上りや加減速を断続的に要求されるようなコースでは持ち味を発揮しにくいと感じた。

ディスクブレーキ用のホイールは、ブレーキローターを取り付けるため、どうしてもトータル重量が重くなりがちだ。しかし、キャリパーブレーキのようにリムサイドをブレーキ制動面とする必要がないので、ホイールの外周部であるリムはある程度軽くできる。このことによってホイールの重量増が与える影響を最小限に食い止められるはずだが、試乗車についていたホイールはアルミリムで、堅牢さを重視したチョイスと感じられた。このことが軽快さを欠く原因だったのは明らかだ。

ディスクブレーキはロードバイクに必要なのか——という論争は、今なおホットな議題として自転車業界を賑わせている。現時点では上りでの軽快さを売りにするオールラウンド系レーシングモデルには必要ないのでは——というのが個人的な意見だ。自分がゼリウスを買うなら、レース中心の使い方になるはずなので、キャリパーブレーキモデルを選ぶだろう。

■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、海外のグランフォンドにも参加経験がある。愛車はスコット・アディクトとキャノンデール・キャード10。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。

 

spec.

シマノ・アルテグラDi2完成車価格/50万9000円(税抜)

●フレーム/カーボン
●フォーク/カーボン
●コンポーネント/シマノ・アルテグラDi2
●ホイール/シマノ・RX31ディスク
●タイヤ/コンチネンタル・ウルトラスポーツ 700×25C
●ハンドル/ZIPP・サービスコース80アナトミック
●ステム/ZIPP・サービスコースブラック
●サドル/フィジーク・アンタレスR5
 ●サイズ/46、49、52、55
●試乗車実測重量/9.2kg(サイズ49)

 

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