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日本最強のMTB クロスカントリー選手、山本幸平に独占インタビュー「今年の夏を日本で過ごした理由」
2017.09.02
例年と違う8月
長年に渡り、世界レースを舞台にするグローバルチームに加入し、ワールドカップを中心に走り続けるMTBレーサー、山本幸平(BH SR SNTOUR)。シーズン中はほとんど日本にいることのない山本は今年、2017年の夏を日本で過ごした。全日本選手権に出場し、またも優勝を勝ち取った山本は、海外へ出国することなく、日本でトレーニングを積むことを選んだ。
これまで、シーズン中に『来日』するのは、全日本選手権などレース出場の一環としてのことが多かったが、今年は8月初旬に行われたワールドカップにも出場せず、日本滞在から、9月12日の世界選手権への出場を予定する。
日本トップのライダーは、トップであり続けるために日本にはほとんどいなかった。2012年より世界チームで走る山本に、いま日本で過ごしているその気持ちを、そして今感じていることを聞いた。インタビューは、2017年8月21日、ちょうど1年前がリオ五輪のMTB競技その日であった。
これまで、シーズン中に『来日』するのは、全日本選手権などレース出場の一環としてのことが多かったが、今年は8月初旬に行われたワールドカップにも出場せず、日本滞在から、9月12日の世界選手権への出場を予定する。
日本トップのライダーは、トップであり続けるために日本にはほとんどいなかった。2012年より世界チームで走る山本に、いま日本で過ごしているその気持ちを、そして今感じていることを聞いた。インタビューは、2017年8月21日、ちょうど1年前がリオ五輪のMTB競技その日であった。
ちょうど1年前の今日(8月21日)がリオ五輪、MTB競技が開催されました。それはぼくの中ではかなり大切な日で、想いを懸けて臨んだレースでした。その後に東京五輪があるのは決まっていたんですが、正直、東京にはそこまで興味はなかったんですね。リオ五輪で結果を出すというのが自分のやるべきことでした。
それが8月21日に終わって、そのまま怒涛のように、閉会式に行きました。安倍首相から小池さんまで出てきましたよね、「東京は、勢いあるなー」と思いました。やっぱり僕も日本人なんで、こんな大会が地元であるんなら、これに出られたら、その想いはまた違ってくるなと。であれば、東京五輪まで選手をやろう、と思いました。
ただ今シーズンは、競技に対しての想いが少し欠けているというのが、正直なところです。
これまではワールドカップの一桁に入るんだっていう想いだけで生きてきました。本当にそうでした。ただ去年の冬、五輪が終わってから、東京までどうしようと思った時、僕はアジア人のチームをつくりたい、アジアから世界に挑みたい、と思ったんです。これは、長い間思い続けている僕の1つの目標でもあります。
それを実現するために実際、力一杯動きました。スポンサーの方々に会ってもらい、プレゼンなどもしたんですが、時期が時期で、その時点から予算を組み立てるというのは不可能、というのを知ったんです。その時点からは、内容どうこうの前に無理だと。
なのでそこから心を切り替え、現在のBH SR SUNTOURに移籍して、トレーニングを改めて始めたんですが、かなりの集中力をチームづくりに割いていたんですね。
これまでは、シンプルに選手として成績を出すんだ、という想いでやってきました。僕は集中力の量が、普通の人よりも多いと思っていますが、ただ、その分、力が分散してしまうこともあるんですね。今の成績は、これに割いた集中力、つまりオフシーズンのトレーニングの質が、今の結果につながっているんだというのが、自分自身にも、周りにも見えているということですね。
新たなチームの選手としてやって行くべく気持ちを切り替え、3月からもがいて、もがきました。でもチームが変わり、サドルからタイヤ、グリップ、ペダル、ウェアの素材まで。とにかく変わった全てに対応する労力、感覚、使いこなせるまでうまく噛み合わなかったんでしょうね。レースに出ても、うまく行かず、なぜなんだろう、というのはずっとありました。気持ちが晴れないまま、マイナスに感じることもあって。切り替えて練習もし、やれることはやって、そしてレースに挑むけれど走れない、この状況が続いてしまった。そんな中、いろんな方に相談をしながらも、日本に帰ってきて、7月の全日本選手権を走ったということです。
ーー全日本選手権を改めて振り返ると
正直言うと、全日本で勝つのは当たり前、と思っています。ワールドカップでの成績こそ頭が出ませんが、ヨーロッパのレースではトップ10に走っている、ローカルレースも数をこなしているので、日本で負けるというのは、まず考えないですね。僕がやっていることは、そのレベルではないんで。そこは絶対、という感じですね。まわりはどう思っているかわからないですけど。
これはもう、どうしようもないですよね。ワールドカップにすら来ていないのなら、見る視点は違ってきますよね。日本のレースでは、勝つ人は何人も変わっているとは思いますが、それは日本のレースでであって、ワールドカップではないんですね。言ってしまえば、ワールドカップと日本のレースとは違う競技だ、という思いがあります。違うんですよね。
僕は11年間、MTBのワールドカップで回ってきましたが、僕の他に、全戦をフルで参戦する日本人、どころかアジア人すらいないんですよね。だからそう言う気持ちをもった、挑戦する気持ちがないと、伸びないと思うので。そういう気持ちを持った人が現れて欲しいなあというのは感じています。
ーーそのワールドカップ、8月初旬にあったカナダ・モンサンタンヌ戦(第5戦)に出場しなかった理由は?
今年の僕は、ワールドカップポイントを取れていないんです。それもあって、チームと僕自身とが、このカナダのワールドカップには出場しない、という判断をしました。実際に走れていない、というのもあって。
ですから今年の世界選手権、一本に絞りました。この方が経験上いい結果が出るからです。ケアンズ(オーストラリア)で行われる世界選手権を(2017年)9月10日に控え、その前に日本からケベック州に参戦して、日本に帰ってきて、日本でまた調整を積んで、と考えると、時差や移動を含めるとかなりのロスが見込まれるんですね。
であれば、それを日本で過ごしてみようと思いました。世界選手権の会場、ケアンズは日本から近いですし、このケアンズは自分の中でも特別な思いがあるコースなんですね。去年は自己ベストの16位を獲った縁起のいい場所であり、3年前にスタート後の落車で胸の骨を折った最悪の思い出もあるところ。この世界選手権に絞ってという判断をチームと自分でしました。
ーーシーズンの中盤を長く日本で過ごしていることについて
まず日本は暑いですね。暑くて練習がうまくできません。家にいても汗だくになって疲れちゃうんで、難しいなあと感じた部分はあります。でもひさびさにゆっくり、ストレスなく、そういう風に過ごせているので、気持ち的にはすごく安定しています。
今は世界選手権に向けて、は、もちろんですが、来シーズンも見据えた動きをしています。なぜ今シーズンこういう状況になったのか、これをカラダのメンテナンスだったり、使い方だったりを通して、うまく噛み合っていない部分を見つけられたので、その修正に時間を費やしています。爆発するのを待っている、という状況ですね。
そして、この機会を使って、色んな人と会っています。レースが続くと、僕自身レースモードになってしまうので、あまり心をオープンにしないまま話してしまうことがあるんですが、ここのところ、レースもない中でいろんな人に会って話ができています。これまでの僕は、世間話を繋いでおしゃべりをするというのは得意ではなかったんですが、できるようになりましたね。変わってきているのかな(笑)。
正直言うと、全日本で勝つのは当たり前、と思っています。ワールドカップでの成績こそ頭が出ませんが、ヨーロッパのレースではトップ10に走っている、ローカルレースも数をこなしているので、日本で負けるというのは、まず考えないですね。僕がやっていることは、そのレベルではないんで。そこは絶対、という感じですね。まわりはどう思っているかわからないですけど。
これはもう、どうしようもないですよね。ワールドカップにすら来ていないのなら、見る視点は違ってきますよね。日本のレースでは、勝つ人は何人も変わっているとは思いますが、それは日本のレースでであって、ワールドカップではないんですね。言ってしまえば、ワールドカップと日本のレースとは違う競技だ、という思いがあります。違うんですよね。
僕は11年間、MTBのワールドカップで回ってきましたが、僕の他に、全戦をフルで参戦する日本人、どころかアジア人すらいないんですよね。だからそう言う気持ちをもった、挑戦する気持ちがないと、伸びないと思うので。そういう気持ちを持った人が現れて欲しいなあというのは感じています。
ーーそのワールドカップ、8月初旬にあったカナダ・モンサンタンヌ戦(第5戦)に出場しなかった理由は?
今年の僕は、ワールドカップポイントを取れていないんです。それもあって、チームと僕自身とが、このカナダのワールドカップには出場しない、という判断をしました。実際に走れていない、というのもあって。
ですから今年の世界選手権、一本に絞りました。この方が経験上いい結果が出るからです。ケアンズ(オーストラリア)で行われる世界選手権を(2017年)9月10日に控え、その前に日本からケベック州に参戦して、日本に帰ってきて、日本でまた調整を積んで、と考えると、時差や移動を含めるとかなりのロスが見込まれるんですね。
であれば、それを日本で過ごしてみようと思いました。世界選手権の会場、ケアンズは日本から近いですし、このケアンズは自分の中でも特別な思いがあるコースなんですね。去年は自己ベストの16位を獲った縁起のいい場所であり、3年前にスタート後の落車で胸の骨を折った最悪の思い出もあるところ。この世界選手権に絞ってという判断をチームと自分でしました。
ーーシーズンの中盤を長く日本で過ごしていることについて
まず日本は暑いですね。暑くて練習がうまくできません。家にいても汗だくになって疲れちゃうんで、難しいなあと感じた部分はあります。でもひさびさにゆっくり、ストレスなく、そういう風に過ごせているので、気持ち的にはすごく安定しています。
今は世界選手権に向けて、は、もちろんですが、来シーズンも見据えた動きをしています。なぜ今シーズンこういう状況になったのか、これをカラダのメンテナンスだったり、使い方だったりを通して、うまく噛み合っていない部分を見つけられたので、その修正に時間を費やしています。爆発するのを待っている、という状況ですね。
そして、この機会を使って、色んな人と会っています。レースが続くと、僕自身レースモードになってしまうので、あまり心をオープンにしないまま話してしまうことがあるんですが、ここのところ、レースもない中でいろんな人に会って話ができています。これまでの僕は、世間話を繋いでおしゃべりをするというのは得意ではなかったんですが、できるようになりましたね。変わってきているのかな(笑)。
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これまで、ワールドカップレーサーとして走り続けてきた山本幸平の気持ちに、少し戸惑いが見えている。2008年の北京、2012年のロンドン、そして2016年のリオ。3つの五輪に出場した山本幸平は、さらに東京五輪でのメダル獲得に向けて、新たな気持で再発進した。
レーサーとしての気持ちにブレはあるのかもしれないが、それでも山本が日本人最強のXCOレーサーであることには間違いない。4度目の五輪出場を目標にする山本。東京五輪まであと3年。この短い期間の中で、五輪を目指す日本のXCレーサーたちは、まず日本人・山本幸平と対等に争えるレベルに登らなければならない。
そのために必要なものはなんだろう、悩む彼らを後ろに、山本はさらに速くなるべく走り続けていく。
レーサーとしての気持ちにブレはあるのかもしれないが、それでも山本が日本人最強のXCOレーサーであることには間違いない。4度目の五輪出場を目標にする山本。東京五輪まであと3年。この短い期間の中で、五輪を目指す日本のXCレーサーたちは、まず日本人・山本幸平と対等に争えるレベルに登らなければならない。
そのために必要なものはなんだろう、悩む彼らを後ろに、山本はさらに速くなるべく走り続けていく。