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サイクルトレイン「B.B.BASE」佐原行きで出合える歴史とグルメを味わう旅

JR東日本が満を持してリリースした、次世代型サイクルトレイン「B.B.BASE」。 実際に運行が始まった今、いったいどんな楽しみ方ができるのか? 今回は健脚自慢の男性陣が、情緒あふれる佐原ライドに向かった。
 
text:大城実結 photo:佐藤正巳

実録・新サイクルトレインの旅



本年1月より運行開始となったJ R東日本の「B.B.BASE(ビービーベース)」は、自転車業界ではもちろん各方面で注目を集めている。「BOSO BICYCLE BASE(房総地域の自転車基地)」の頭文字を取った本サイクルトレインは、千葉県内4スポットを毎週末に週替りで運行中。輪行することなく愛車を車内に持ち込めるのはもちろん、指定された自身の座席の後方に設置されている専用ラックにワンタッチで収納、目的地までの列車旅をゆったり座って楽しめる次世代型サイクルトレインだ。  

運行が開始した今、具体的にどのような楽しみ方ができるのだろうか。実際に愛車とともにB.B.BASEに乗り込み、とことん走り尽くしてきた。今回協力してくれたのは、ヒルクライム系レースを中心に出場し、毎週末は尾根幹を拠点にゴリゴリとトレーニングに励んでいるという小川正樹(写真左)さんと島田佳祐(写真右) さん。普段はあまり輪行はせず、クルマでの移動がメインだというおふたり。加えて普段はトレーニングをメインで行っているため、 あまりサイクリングという楽しみ方をすることもないという。 

「でも『B.B.BASE』のウワサは耳にしていました」と小川さん。のどかに流れる車窓の田園風景を眺めながら、ふたりは小声で「今日の目的地’’佐原’’って、いったいどんな場所なんですか?」

 
通常の改札ではなくB.B.BASE専用の入り口から乗車
通常の改札ではなくB.B.BASE専用の入り口から乗車
国技館を横目に見ながら進む
国技館を横目に見ながら進む
両国駅3番線ホームは専用のスロープを備える
両国駅3番線ホームは専用のスロープを備える
もちろんバイクはそのまま車内へ
もちろんバイクはそのまま車内へ

健脚自慢がひた走る! 歴史息づく佐原の町



B.B.BASEの目的地は、館山、勝浦、銚子、佐原の4スポット。今回は利根川に面した茨城との県境の町・佐原へと向かう。ふたりが言ったように、佐原は観光地として他地域よりも、少々目立ちにくい印象を拭えない。  

しかし全ツーリング愛好家にとって、忘れてはならない聖地でもあるこの佐原。実はここ、旅路の基本でもある日本地図の生みの親、伊能忠敬ゆかりの地なのだ。17歳で佐原村の酒蔵に婿入りした忠敬は、測量の旅へ出るまでの30年間を佐原で過ごした。彼の営んでいた酒蔵は、現在も「伊能忠敬旧宅」として残されており、かつて水運の町として栄えた佐原の町並みの中に溶け込んでいる。

有名な講談のひとつ「天保水滸伝」も佐原の隣、東庄町が舞台となっており、物語中に登場する’’大利根河原の決闘’’を彷彿させるような広大な河川沿いのサイクリングロードが広がっている。さらに忘れてはならない東国三社のひとつ、香取神宮もすぐそこだ。次第に高まる胸のときめきを感じる。先ほどまで何も知らなかった地域との新たな出合いがここにあった。  

車内のボックスシートで地図を広げ、本日の作戦会議。JR東日本から推奨されている佐原サイクリングコースを参考に、回りたいスポットと脚力に合わせてルートを相談。そして堂々完成したのは健脚向けの忠敬表敬コースだ!

 
B.B.BASEの佐原コースを購入するとついてくる1000円分のフリークーポン券。佐原市内の飲食店や物産等指定された店舗で使用可、お得感も満載。使用できる店舗はチケットと一緒に受け取る最終行程表を参照
B.B.BASEの佐原コースを購入するとついてくる1000円分のフリークーポン券。佐原市内の飲食店や物産等指定された店舗で使用可、お得感も満載。使用できる店舗はチケットと一緒に受け取る最終行程表を参照
首都圏近郊を走る通勤列車をリメイクして作られたB.B.BASE。通常車両にはペアシートと4人用のボックスシートが並ぶ。それぞれゆったりとした空間設計で、備え付けのテーブルにはうれしい電源付き
首都圏近郊を走る通勤列車をリメイクして作られたB.B.BASE。通常車両にはペアシートと4人用のボックスシートが並ぶ。それぞれゆったりとした空間設計で、備え付けのテーブルにはうれしい電源付き
無事、佐原駅に到着! ここでもB.B.BASE的うれしい配慮が光る。B.B. BASEが発着するどの駅も階段の昇り降りが一切ない。ホームから改札を出るまで、自転車をそのまま押し走り出すことができる
無事、佐原駅に到着! ここでもB.B.BASE的うれしい配慮が光る。B.B. BASEが発着するどの駅も階段の昇り降りが一切ない。ホームから改札を出るまで、自転車をそのまま押し走り出すことができる
JR東日本千葉支社のマスコットキャラクター「駅長犬」の歓迎を受けながら、旅情あふれる駅舎をあとに走り出す
JR東日本千葉支社のマスコットキャラクター「駅長犬」の歓迎を受けながら、旅情あふれる駅舎をあとに走り出す
忠敬銅像
●今回のライドテーマ「表敬」。佐原駅を出て真っ先に向かったのは伊能忠敬銅像だ。初の日本地図を作ったことで讃えられた忠敬だが、実は彼が地図作りを始めたのは55歳のとき。それまでは家業の酒蔵を守っていたというのだから、その堅実さと聡明さになおさら頭が上がらない。時空を超えた不朽の旅情に思いを馳せて先へ。
 
恋する豚研究所
●千葉県香取郡の在田農場で育った「恋する豚」を味わえるスポット。 エサや育て方にこだわり抜いた豚は、口に入れた瞬間に広がるほのかな甘みとすっきりとした後味が特徴だ。食堂ではそんなお肉のおいしさを楽しめるしゃぶしゃぶ定食が人気。併設のショップではハム、ベーコンなどの「恋する豚」加工品や地元野菜を購入できる。
 
道の駅くりもと紅小町の郷
●香取市特産のさつまいも・ベニコマチをはじめ、新鮮野菜や果物がずらりとそろう。冬季には甘酒や煮込みの屋台も多数出店しているため、寒い日のライドにもうってつけ。またB.B.BASEの最終行程表を提示すれば、ソフトクリーム50円引きになる特典も。食事によし小休憩によし、佐原コース鉄板の立ち寄りスポットだ。
 
府馬の大クス
●平坦な佐原コースに突如現れる400mもの激坂。唐突のヒルクライムにおののきながら上れば、頂上には立派な楠が。標高40mにある「府馬の大クス」は、樹齢1300〜1500年ともいわれる地域随一の巨木。敷地を奥に進むと辺りを一望できる展望台が設置されている。眼下には、利根川水域ののどかな田園風景が広がる。
 
笹川の和菓子屋
●笹川駅そばにある昔ながらの和菓子屋。元トライアスロン選手の主人と、今年103歳を迎える看板おばあちゃんが出迎えてくれる。ピーナッツや梅、栗、きな粉とバラエティ豊かなどら焼き(各160円・税込) は、補給食にもぴったり。毎年12月〜4月には地元・東庄産を使ったいちご大福が大人気。この日は残念ながら売り切れ...。
 
利根川の津宮鳥居河岸
●笹川駅から佐原駅に向かい、大利根サイクリングロードを西に進む途中に現れる大鳥居。利根川に面して立つこの鳥居は香取神宮の一の鳥居で、かつてここが表参道口だったとされている。水運が盛んだった頃は多くの文人が訪れ、今でも岸には燈台の役目を果たした常夜灯が残されている。堂々たる鳥居をバックに記念写真を一枚。
 
佐原の町並み
●利根川水運の中継基地として栄えた佐原は、町内を流れる小野川沿いに江戸情緒あふれる町並みを残している。伊能忠敬旧邸前にかかる「樋橋」は通称「じゃあじゃあ橋」。もともと対岸へ水を送るための樋として作られ、その上を勢いよく流れる水の様子が愛称の由来なのだとか。今でも30分ごとに落水し、訪問客を楽しませている。
 

まだ見ぬ町、まだ見ぬ道と会う今週末

17時32分、佐原駅を後にするB.B.BASEに揺られながら帰路につく我々。ほど良く疲弊した体に、列車のリズミカルな振動が心地良く響いた。 

「なかなか面白かったです。知らない名所がたくさんありました」とふたり。府馬の大クスや利根川 沿いの津宮大鳥居などダイナミックなスポットや、地元グルメの数々、情緒あふれる小江戸の町並み。そんな見どころを編むように、全行程約70kmを駆け抜けた。タイトで濃厚な1日を噛み締めながら、徐々に現実へ引き戻されていく。  

今回我々が走行したルートはまさに正攻法。当日同乗した人の中には、銚子方面まで往復してきたというサイクリストも。佐原から銚子まで片道40km。確かに平坦基調の練習ルートにはうってつけかもしれない。他にも考えられるルートはたくさんある。例えば、利根川を渡ってしまえばそこはもう茨城県。水郷として栄えた潮来をはじめ、まだ見ぬ町との出合いが待ち受けている。初回は周辺地域の魅力を味わって、2回目以降は自分だけのルートを考案して...何度訪れても新鮮な感動を味わえる、それも次世代型サイクルトレインの強みのひとつだろう。  

東京・両国から電車で約2時間、近くて遠く感じていた房総地域を手軽に走ることのできるB.B.BASEは、これから待ちに待った春爛漫の房総へと走り出す。初心者から上級者まで、まだ見ぬ町 へ、まだ見ぬ道へ。週末限定の特別列車は、今週も発車オーライだ。

 

B・B・BASE 運行スケジュール

外房コース
2018年3月10日(土)、11日(日) 
■両国駅(3番線・7時39分頃発)
B.B.BASE外房(全車指定席) >勝浦駅(9時50分頃着) >【フリーサイクリングタイム】> 勝浦駅(17時43分頃発)B.B.BASE外房(全車指定席)
■両国駅(19時38分頃着)



佐原コース
2018年3月17日(土)、18日(日)
■両国駅(3番線・8時12分頃発)
B.B.BASE佐原(全車指定席)  >佐原駅(9時42分頃着) >【フリーサイクリングタイム】> 佐原駅 (17時32分頃発)B.B.BASE佐原(全車指定席)
■両国駅(19時29分頃着)



内房コース
2018年3月24日(土)、25日(日)
■両国駅(3番線・7時39分頃発)
B.B.BASE内房(全車指定席) >館山駅(9時55分頃着)または和田浦駅(10時50分頃着)  >【フリーサイクリングタイム】> 館山駅(17時10分頃発)B.B.BASE内房(全車指定席)
■両国駅(19時38分頃着)



銚子コース
3月31日(土) 
■両国駅(3番線・8時12分頃発)
B.B.BASE銚子(全車指定席) > 松尾駅(9時37分頃着)または干潟駅(10時13分頃着)または銚子駅(11時01分頃着) >【フリーサイクリングタイム 】> 銚子駅(16時58分頃発) B.B.BASE銚子(全車指定席)
■両国駅(19時29分頃着)


※この他にも宿泊プランあり

■サイスポ・トピックス「サイクルトレイン「B.B.BASE」試乗イベントで館山を往復してきた!
 

取材で走ったルートはこちら!





問い合わせ先

JR東日本(B.B.BASE)
http://www.jreast.co.jp/chiba/bbbase/view/