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パフォーマンスで語る小径車 「ステインサイクルズ・ペグ」

高性能ロードバイクを多く扱うポディウムが、新たに取り扱いを開始したのが「ステインサイクルズ・ペグ」という小径車だ。それは700Cのホイール径と同等以上のパフォーマンスを追求するために20インチ専用ジオメトリーを採用する、レーシングバイクに仕上がった。
 
text:大屋雄一、photo:岩崎竜太
「ステインサイクルズ・ペグ 」 フレームセット(コラム、シートポスト、ホイール付属)価格/19万8000円(税抜)
「ステインサイクルズ・ペグ 」 フレームセット(コラム、シートポスト、ホイール付属)価格/19万8000円(税抜)

ステインサイクルズは、ありとあらゆる自転車競技を経験し、ダウンヒルでは国内王者になったこともあるベルギー出身のステイン・デフェルム氏が、11年前に設立したブランドである。
このペグは、20インチの小径ホイール車でありながら、700Cロードと同等以上のパフォーマンスを有するレーシングバイクとしてゼロから設計された。最大のポイントは、700Cの模倣ではない小径車専用ジオメトリーであること。加えて、ひとつのサイズで140〜200cm(!)という幅広い身長に対応できることだ。


フレームの素材は7000番台のアルミで、このモデルのためだけに作られたトリプルバテッドのチューブを使用する。3年間で10種類のフレームと12種類ものフォークを試作し、テストで走行した距離は延べ1万2000kmにも及ぶというから驚きだ。
極端に小さな前三角は、先の幅広い身長に対応するためというのが最大の理由だが、もうひとつは、身長が低い人でもシートポストの出代が長くなり、これによって快適性を担保できるというメリットがある。
ラインナップは、今回試乗したフレームセットのロードと、完成車のシングルスピードがあり、両者ともに軽量高剛性なホイールセットが付属する。パフォーマンスを最優先しながら日本独自の文化である輪行のしやすさも視野に入れるなど、ステイン氏のパッションによって生み出されたまったく新しい小径車、それがペグなのだ。
 
フォークのコラム部分は二分割構造で、上側のステアエクステンションを外してもフォークは落下しない。ヘッドチューブは下ワンに1-1/2インチのベアリングを採用した上下異径タイプ
フォークのコラム部分は二分割構造で、上側のステアエクステンションを外してもフォークは落下しない。ヘッドチューブは下ワンに1-1/2インチのベアリングを採用した上下異径タイプ
フォークはアルミ製で、フラットマ ウントのディスクブレーキもしくはリムブレーキに対応。タイヤ幅はビード座直径451mmなら28mmまで、406mmなら40mmまで許容(ディスクのみで対応)
フォークはアルミ製で、フラットマ ウントのディスクブレーキもしくはリムブレーキに対応。タイヤ幅はビード座直径451mmなら28mmまで、406mmなら40mmまで許容(ディスクのみで対応)
BBとシートチューブはご覧のとおりオフセットされており、シートポストが貫通する。その下端にはゴムのキャップがあり、輪行時にチェーンリングを保護するように工夫されている
BBとシートチューブはご覧のとおりオフセットされており、シートポストが貫通する。その下端にはゴムのキャップがあり、輪行時にチェーンリングを保護するように工夫されている
リヤエンドにはフランドルの獅子が刻まれている。標準装備の451ホイールはステンレススポークにブラスニップル、北日本精機のEZOベアリング、軽量リムなどを採用した特製だ
リヤエンドにはフランドルの獅子が刻まれている。標準装備の451ホイールはステンレススポークにブラスニップル、北日本精機のEZOベアリング、軽量リムなどを採用した特製だ
BBは音鳴りなどの問題が発生しないJIS規格。フレームはアルミ7005-T6のトリプルバテッドで、最も薄い箇所で1.2mmしかない。この試乗車重量で7.3kg
BBは音鳴りなどの問題が発生しないJIS規格。フレームはアルミ7005-T6のトリプルバテッドで、最も薄い箇所で1.2mmしかない。この試乗車重量で7.3kg

開発者のステイン・デフェルム氏へインタビュー

ステイン・デフェルム氏。 ベルギー生まれで台湾在住のエンジニア。折りたたみ式小径車BD-1の改良にも携わる。2007年に自身のブランドを設立。奥さんは日本人
ステイン・デフェルム氏。 ベルギー生まれで台湾在住のエンジニア。折りたたみ式小径車BD-1の改良にも携わる。2007年に自身のブランドを設立。奥さんは日本人

「パフォーマンスにに妥協することなく、持ち運びに適したバイクが欲しい。これがペグを設計する最初のきっかけでした。折りたたみ式は重量や剛性の面で不利ですが、小径ホイールはモーターサイクルやBMXでの経験から、大きなハンディキャップにならないことは分かってい ました。
20インチでも451mmを選んだのは、このサイズのほうが性能的に優れているパーツがそろっているからです。ベストなタイヤ幅は28mmだと思っているのですが、やや小径の406mmホイールなら40mm幅まで許容するので、好みで選んでください。

小径車のフレームにかかる応力は700C以上で、剛性と重量の比率からアルミという素材がベストでした。これがカーボンだと重量はほぼ同等に、スチールならかなり重くなるでしょう。
新しいものが好きな人や、性能重視の方々に試してほしいてですね。私は宣教師ではありませんから、ぜひペグから直接メッセージを感じ取ってください」。

 

高性能な700Cロードと渡り合えるうえ、遊び心も随所に

ライダー:大屋雄一。 モールトンでヒルクライムやブルベにも参加したことのある、小径車も大好きなフリーライター。ペグの走りに感銘を受けたひとりだ
ライダー:大屋雄一。 モールトンでヒルクライムやブルベにも参加したことのある、小径車も大好きなフリーライター。ペグの走りに感銘を受けたひとりだ

タイムやライトウェイトなど高性能なブランドを中心に取り扱うポディウムが、耳慣れないメーカーの、しかも小径車を販売するという。これだけでも十分以上の驚きだが、本当のサプライズはその小径車の走りにあった。

乗り慣れた自転車のように、反応のほぼ全てに違和感がない。直進時はもちろん、コーナリング中も十分な安定性があるうえ、自転車を大きく振ってのダンシングでも剛性不足を感じることは一切なし。
それでいて、路面からの突き上げ感が少ないなど乗り心地は良好だ。試乗日はあいにくの小雨模様だったが、濡れたアスファルトでも接地感は極端に変わらず。ブレーキについては、試乗車には機械式ディスクが装着されていたが、キャリパー装着エリアの剛性がしっかり確保されているからか、まったく不満がなかった。

このようにパフォーマンスを追求する一方で、5mmのアーレンキー1本で主要箇所を分解できるのも粋だ。同梱品には輪行用のチェーンテンショナーやベルクロストラップ×8本、チェーンカバー、輪行バッグとしても使えるバイクカバーなども含まれ、すぐ旅に出かけることも可能。
名刺の肩書きに"サイクリスト"と記すステイン氏の、情熱と遊び心が詰まったバイクなのだ。
 

 

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