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キャノンデール 新生システムシックス 自己否定から生まれたキャノンデール最速エアロロード
2018.07.02
理詰めで最速を実現する
キャノンデールが新しくエアロロードバイクを発表した、という部分だけを切り取れば、近頃ちまたに氾濫しているエアロロードに、新製品が加わったのか……程度にしか感じないだろう。
しかしキャノンデールというメーカーにおけるここ数年の歴史を振り返ると、それは大いなる矛盾をはらんでいる。
2015年にレーシングのフラッグシップモデル、スーパーシックスエボをリリースした際、マーケティング担当者は、『軽さとパワーのバランスこそがスピードを生み出す』と、空力を完全否定していたからだ。
ライバルブランドの姿勢を切り捨てるかのような当時のコメントは、しかしながらキャノンデール自身の焦りを表していた。そして〝そのとき〟を迎えるべく秘密裏に新チームを組み、プロジェクトを立ち上げ、研究と実験を繰り返していた末に完成したニューモデルこそが、ここにある新生システムシックスである。
しかしキャノンデールというメーカーにおけるここ数年の歴史を振り返ると、それは大いなる矛盾をはらんでいる。
2015年にレーシングのフラッグシップモデル、スーパーシックスエボをリリースした際、マーケティング担当者は、『軽さとパワーのバランスこそがスピードを生み出す』と、空力を完全否定していたからだ。
ライバルブランドの姿勢を切り捨てるかのような当時のコメントは、しかしながらキャノンデール自身の焦りを表していた。そして〝そのとき〟を迎えるべく秘密裏に新チームを組み、プロジェクトを立ち上げ、研究と実験を繰り返していた末に完成したニューモデルこそが、ここにある新生システムシックスである。
そのコンセプトは〝Faster Everywhere(どこでも最速)〟と、単純明快だ。風洞トンネルの中だけではない、一部の選ばれしライダーや、特定の場面に限られない。どこでも、誰でも、いつでも。それを、同社がロードフレームのメーン素材を、アルミからカーボンへ移行するきっかけとなった(初代)〝システムシックス〟の名の下に実現したのである。
大学で宇宙工学を専攻し、しかもその中で自転車も研究課題としたオーストラリア人、ネイサン・バリー氏をR&Dデザインエンジニアとして迎えた末に完成したバイクは、すべてが理詰めである。CFD(数値流体力学)での解析を含め、あらゆる角度から受ける風圧データについて、それがいかにライバル製品に対して優位性を示しているかを一通り説明し終えると、彼は同様の時間を割いて、コンベンショナルなレースバイク(たとえばスーパーシックスなど)比で上りでもたらされるメリットについて説明し始めた。
曰く、走行によるエネルギーロス(転がり抵抗や摩擦、風圧など)と、位置エネルギーの変化量が拮抗する点(ティッピングポイント)があり、そこを導き出すことこそ、誰にとっても速いバイクになるのだ、と。
その元となるのがパワーと体重で、たとえば300W/75kg(4.0W/kg)のライダーの場合、ティッピングポイントは6%の登坂斜度になるという。つまり、コースの登坂斜度が6%以内なら速いということを示してくれるのだ。
それを各ユーザー自身が知るために、パワーウエイトレシオから換算するティッピングポイントのグラフを公表し、さらに上位モデルではパワーセンサーを最初からクランクに組み込んでいる。各自の身体的パフォーマンスに応じたティッピングポイントまでなら速いということを、個人の経験値に頼るのではなく数値を以て示してくれるバイクが、新生スーパーシックスということである。
大学で宇宙工学を専攻し、しかもその中で自転車も研究課題としたオーストラリア人、ネイサン・バリー氏をR&Dデザインエンジニアとして迎えた末に完成したバイクは、すべてが理詰めである。CFD(数値流体力学)での解析を含め、あらゆる角度から受ける風圧データについて、それがいかにライバル製品に対して優位性を示しているかを一通り説明し終えると、彼は同様の時間を割いて、コンベンショナルなレースバイク(たとえばスーパーシックスなど)比で上りでもたらされるメリットについて説明し始めた。
曰く、走行によるエネルギーロス(転がり抵抗や摩擦、風圧など)と、位置エネルギーの変化量が拮抗する点(ティッピングポイント)があり、そこを導き出すことこそ、誰にとっても速いバイクになるのだ、と。
その元となるのがパワーと体重で、たとえば300W/75kg(4.0W/kg)のライダーの場合、ティッピングポイントは6%の登坂斜度になるという。つまり、コースの登坂斜度が6%以内なら速いということを示してくれるのだ。
それを各ユーザー自身が知るために、パワーウエイトレシオから換算するティッピングポイントのグラフを公表し、さらに上位モデルではパワーセンサーを最初からクランクに組み込んでいる。各自の身体的パフォーマンスに応じたティッピングポイントまでなら速いということを、個人の経験値に頼るのではなく数値を以て示してくれるバイクが、新生スーパーシックスということである。
速さだけではなく、楽に走るためにもエアロは有効
常々思っていることだが、機材の空力向上は、体力や脚力が乏しい人ほど、そして痩せ型体型の人ほど大きな恩恵を受けられる。走行中に受ける風圧は、体力やパワーに関係なくほぼ同じためだ。だからエアロバイクの恩恵にあずかれるのは、決して〝平地を速く走れる人〟に限られたものではない。
実際システムシックスで、地中海に面したスペイン・ジローナの丘陵地帯を走り始めると、それをまざまざと体感させられることになる。時速30kmでの集団巡航で脚を慣らし、先頭交代をしながらそのままのスピードを維持して緩い坂を上る。下りに入ったら脚を止めて空力特性+惰性をフル活用して呼吸を落ち着かせ、次の上りへ入り……というルーチンを繰り返すと、いつしかグループの走りが熱くなる。気がつくと時速45km~50kmの速度域まで引っ張られるのだが、それを〝楽に〟実現させてくれるのがシステムシックスである。
フレーム&ホイールの剛性は体重62kgの私には高めで、路面からの振動を拾いすぎる嫌いはあるが、そこはタイヤの空気圧で管理しろということらしい。メカニックによると、下限5barぐらいからが調整範囲になるようだ。
説明を聞いて乗るまでは、今どきのエアロロードのトレンドを全部入りさせただけのバイクに感じられたが、コンセプトに対する切り口や走りのクオリティは、説得力に満ちたものであった。発売までは今しばらくの時間が掛かるようなので、早くデリバリーがなされることを期待したい。
各社のエアロロードの形状が似てくるのはなぜか?
ティッピングポイントについてもっと詳しく知りたい。
続きはサイクルスポーツ本誌で!!! 7月20日発売予定。