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スペシャライズドヴェンジが示す エアロロードの行く先は? ヴェンジ、華麗なる変身

ヴェンジヴァイアスからわずか3年。プロレースに投入され噂になっていた新型ヴェンジが発表された。見た目からして「エアロお化け」だった前作から一転、攻撃的なフォルムは身を潜めた。その意図とは?

前作ヴェンジを復習→スペシャライズドから「ヴェンジディスクヴァイアス レッドeタップ」登場!

 
text:安井行生 photo:長谷川拓司、スペシャライズド

これ新型ターマック?

新型ヴェンジの写真を見て、そう思った人も多いかもしれない。しかしこれはトレックのマドンとともにエアロロード界のトップをひた走る空力の申し子、スペシャライズド・ヴェンジの新型である。現行モデルはおどろおどろしいスタイルが特徴だが、新型は複雑な形状が影を潜めスッキリとした。しかしそこは自転車界で唯一風洞実験施設を所有するスペシャライズドである。空力面で日和ったわけではあるまい。

 
ヴェンジSワークスディスクDi2 120万円(税抜)
ヴェンジSワークスディスクDi2 120万円(税抜)

プレゼンで説明された新型ヴェンジの開発目標は、

①旧型より空力性能を向上させること 
②ハンドリングを維持すること 
③旧型より重量を削減すること


の3つだという。なんと最後まで「快適性」や「剛性」の話が一切出てこなかった。現行ヴェンジから改善すべきは、まさにその2点だと思っていたのだが。

①については、あれだけエアロエアロしていた現行モデルより空力性能はよくなっているらしく、公開されたグラフを見ると特に風向き10度付近では大きな差がついている。②はヘッド周りのバランスを煮詰めつつ、フォークオフセットを2種類用意し、さらにステムとハンドルの剛性を徹底的に上げるなどして、かなり入念に作り込んだという。もちろんフレームサイズ毎に入念な設計と煮詰め作業を行い、サイズ間で走行性能や扱いやすさに差が出ないようにする設計手法、ライダーファーストエンジニアリングも取り入れられている。③は、フレームの表面積を削減するなど軽さを重視した形状を採用することで達成。フレーム小物も一つ一つ地道に減量させ、モジュール(フレーム、フォーク、ステム、ハンドル、シートポストなど)で計460gの重量削減(サイズ56)を実現したという。

なお、フレームは電動コンポーネント専用設計で、機械式コンポで組むことはできない。また、ルーベ同様に新型ヴェンジもディスクブレーキオンリー。リムブレーキ仕様は用意されない。使えるパーツはかなり限られてしまうが、このヴェンジの性能を最大限に発揮できるのはディスク&電動変速である、というのが開発陣の主張なのだろう。

 
完成車に付属するステムとハンドル。ハンドルは空力を強く意識した形状だが、クランプ方式はノーマルで、角度調整が可能。一般的なハンドルを使うこともできる
完成車に付属するステムとハンドル。ハンドルは空力を強く意識した形状だが、クランプ方式はノーマルで、角度調整が可能。一般的なハンドルを使うこともできる
前作はフォークやシートチューブが翼断面だったが、新型がほぼ全てのチューブがカムテールに。風が最初に当たるフォークはバイクの空力性能に大きな影響を与えるという
前作はフォークやシートチューブが翼断面だったが、新型がほぼ全てのチューブがカムテールに。風が最初に当たるフォークはバイクの空力性能に大きな影響を与えるという
ダウンチューブはシンプルなカムテール形状。前作と比較してヘッド~ダウンチューブの形状が大人しくなったのは、ハンドリングのバランスを考えてのことだという
ダウンチューブはシンプルなカムテール形状。前作と比較してヘッド~ダウンチューブの形状が大人しくなったのは、ハンドリングのバランスを考えてのことだという
Di2のジャンクションAはシートポスト上部に内蔵する。これはチームからの要望によるものだという。ここならレース中にチームカーから身を乗り出しても調整できるのだ
Di2のジャンクションAはシートポスト上部に内蔵する。これはチームからの要望によるものだという。ここならレース中にチームカーから身を乗り出しても調整できるのだ
前作よりコンパクトになったリヤトライアングル。タイヤクリアランスは大きく確保されており、32Cのワイドタイヤまで飲み込む設定。BBは変わらずOSBB(BB30)を採用する
前作よりコンパクトになったリヤトライアングル。タイヤクリアランスは大きく確保されており、32Cのワイドタイヤまで飲み込む設定。BBは変わらずOSBB(BB30)を採用する
新作のワイヤルートは比較的シンプル。ハンドルには内蔵されるがステム下部で外装となり、ヘッドチューブ上からフレームに再び入り、変速&リヤブレーキ用ケーブルはダウンチューブを通る。
 
フロントブレーキのケーブルはコラム途中からフォークブレードの中へ。ちなみに、他社製のステム&ハンドルも使用可能。その場合はヘッドキャップを交換する必要がある。
 

安井行生が試乗


皮肉なことに、試乗で印象に残ったのは、目標としては挙げられていなかった快適性・安定感・剛性感の変化だった。

最初の加速でいきなり驚いた。前作のような固くて跳ね返されるような感じがしなくなっていたからだ。加速性能そのものはかなり高いが、横剛性が絶妙で非常にペダリングしやすい。ヘッド周りはがっちりと硬く、ハンドル操作には正確すぎるほどに反応する。一方、BB周辺は意外としなやかで、フレーム後半は適度にしなってくれる。加速性能を犠牲にすることなく、脚当たりのよさを手に入れた感じだ。剛性感だけでなく快適性も上がっており、荒れた路面でもバイクが跳ねなくなっている。安定感も大幅に増していた。

なんだキッチリ進化してるじゃないか。そう思った。プレゼンではことさら強調しなかっただけで、開発陣は剛性感や安定感など、数値には表れにくいそれらの要素を注意深く煮詰めたに違いない。そうでなくては、最高レベルの空力性能を維持したまま、こういう上質な走りにはならないはずだ。
 

ラインナップ

ヴェンジSワークスディスクDi2 価格/120万円(税抜)、サイズ/49、52、54、56
ヴェンジSワークスディスクフレームセット 価格/50万円(税抜)、サイズ/49、52、54、56


Sワークスヴェンジステム 価格/1万6000円(税抜)、サイズ/80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm
SワークスカーボンエアロフライⅡ 価格/3万2000円(税抜)、サイズ/38cm、40cm、42cm、44cm
 

Venge: The New Shapes of Speed

Venge: Behind the Tech

問い合わせ先

スペシャライズドジャパン
https://www.specialized.com/jp/ja/