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ペダリング効率を追求するだけじゃ意味が無い!? パイオニア・ペダリングモニターを本当に使いこなすために知っておきたいこと

パイオニアのペダリングモニターシステムは、実走でリアルタイムに自分のペダリング効率や踏力をベクトルという形でビジュアル化できる唯一無二のシステムだ。とはいえ、ペダリングが見えても、それを活用できなければ宝の持ち腐れになってしまう。

そこで、ペダリングモニターを活用するためのショップ向け・ユーザー向けのセミナーで講師を務める自転車プロコーチ・須田晋太郎さんにペダリングモニターを簡単に活用する方法について聞いた。


 
text:浅野真則 photo:佐藤正巳
presented by pioneer

"ペダリング効率"を追求することがベストとは限らない

ペダリングモニターシステムのキモとも言えるペダリングのベクトル表示。さらに自分のペダリングがどれだけ上手にペダルにトルクを伝えられているかを表示するペダリング効率。これらを活用すれば、自分でペダリングの改善をしたり、ポジションの調整をしたりすることもできそうだ。

しかし、ペダリングモニターを熟知する自転車プロコーチ・須田晋太郎さんは、そんな一見正しそうなペダリングモニターシステムの活用方法について、研究熱心なホビーサイクリストが陥りがちな“よろしくないケース”があると指摘する。

ひとつは、「ペダリングモニターが示すペダリング効率こそ絶対的に正しい」と信じて、ペダリング効率を高めるペダリングを身につけようとすることだ。

 
須田コーチ(右)と筆者
須田コーチ(右)と筆者
「ペダリング効率は、クランクに常に接線方向の力を加えて360度キレイに回せたときに100%になりますが、これは自転車単体で見たときの機械的な効率に過ぎません。自転車のエンジンである人間の股関節の構造はクランクを回転させるような動きに向いていないので、ペダリングモニターのペダリング効率を100%に近づけるようなペダリングは、人間にとってかなり無理のある動きで、もしできたとしても長続きしません

ペダリング効率を重視しすぎる人は、ケイデンスが極端に低いのも特徴だという。
「ロードレースでの理想的なケイデンスの目安は80〜90回転ぐらいと言われますが、ペダリング効率を重視しすぎる人は平地でも60回転台とか極端に低いケイデンスであることが多いですね。キレイに回そうとすると、高回転では難しいからでしょう」

そしてもうひとつは、ペダリングのベクトル表示やペダリング効率を見ながら、これらを理想に近づけるためにポジションを出そうとすることだという。

「ベクトル表示やペダリング効率を見ながら、これらのデータがよくなることだけを意識してポジションを出そうとされる方が時々いらっしゃいます。そういう方はおおむね


▼サドルが高過ぎる
▼極端な前乗り
▼ハンドルが高い



という傾向にあります。このポジションでは下りを安全に走るのは難しいでしょう。ロードレースやロングライドなどで求められる上りも下りも平坦もバランスよく乗りやすく、ペダリングもしやすいポジションとはほど遠いです」



ポジションで重要なのは、ハンドル、サドル、ペダルの“3つのル”の位置をサイクリストがバイクをコントロールしやすく、スムーズにペダリングできるように調整すること。ライダーの手脚の長さや柔軟性などに影響はされるが、ある程度の型はあるため、理想的なポジションに近づけるために最初にするべきことは、「自分に合ったバイクセッティングを行うこと。」その為にフィッティングを受けることがお勧めです。

「ペダリングモニターをポジション調整に使うとしたら、すでにフィッティングなどでほぼポジションが固まっている人が微調整でポジションを煮詰める段階でしょう」

 

ペダリングモニターで「明らかにダメ」なペダリングを改善

とはいえせっかく手に入れたペダリングモニターを、それだけで活用する方法が知りたいのが人情というもの。では、ペダリングモニターシステムはどのように活用するのがよいのか?  ペダリング効率はどう見るべきなのか?須田さんは次のように指摘する。

「目安としては、ペダリング効率を意識して上げるようにペダリングしたときに60%を越えることができないようであれば、ペダリングスキルに何らかの問題があると思った方がいいでしょう。ゆっくり走っている時はペダリング効率は上がりませんから、ペダリング効率を見るならレース中やヒルクライムなどである程度頑張って走っている時がいいですね。」

 
明らかによくないペダリングの一例。6時以降で引き脚側の抜重ができていない
明らかによくないペダリングの一例。6時以降で引き脚側の抜重ができていない

「ポジションをある程度出した上で、明らかに効率が悪いペダリングを改善するために使うのはいいと思います。例えば、平坦でペダルが6時の位置にある時に真下の方向に大きくベクトルが出ているなら、推進力は生み出さない上に疲れるので無駄になります。また、7時以降のいわゆる引き脚側で下向きのベクトルが出るようなら、踏み脚側の踏力を打ち消す力が発生していること(いわゆるバックを踏んでいる状態)を意味するので、これもペダリングのロスになります。こうしたロスを減らすためにペダリングモニターのベクトル表示を利用するわけです」
 

目標イベントや走り方に合わせ、ペダリングモニターシステムを使いこなそう

ペダリングモニターの高度な機能やシステムは、自分の走り方に落とし込んでパフォーマンス向上につなげて初めて活用できたことになる。そこで、目標とするイベントや走り方に合わせ、ペダリングモニターを使いこなす方法について、須田さんにヒントを教えていただいた。


 

ロードレース・クリテリウム=高回転でパワーを出せるようになろう

ロードレースやクリテリウムでは、フィジカル面の総合力が重要なのは言うまでもないが、スキル面ではコーナーでの立ち上がりやアタックの際の立ち回りのうまさが勝負を有利に進めるポイントとなる。そのカギとして須田さんが挙げるのが「高回転でパワーを出せるようになること」だそうだ。

「立ち上がりで重いギアを踏んで集団についていくと、いずれ筋力が限界を迎えて集団に付いていけなくなります。ペダリング効率を重視しすぎる人はケイデンスが極端に低い傾向にあると言いましたが、これはクルマで言うとパワーバンドが極端に狭い状態。軽めのギアを回してパワーを出せるようになると、パワーバンドが広がってあらゆる局面に対応できるようになります。ケイデンス90~100回転を常用できるようになる事と、120回転をスムーズに回せるようになることを目指しましょう」

 

ヒルクライム=上り勾配でのペダリングのタイミングをマスターしよう

ヒルクライムではFTPやパワーウェイトレシオが重要だが、スキル面では勾配に合わせて重心を前後に移動させ、これに伴ってペダリング時の踏み込みや脚の抜重のタイミングを覚えることがうまく走るカギとなる。

「勾配が変化すると、平坦と同じようなポジションに乗っていては体重をペダルにうまく載せられません。また、ペダリングモニターに表示されるペダリングのベクトルは、バイク基準でのものなので、平地では重力の向きと時計の12時と6時を結ぶ線が一致しますが、上りではバイクの前輪が高い位置に来るため、バイク基準の時計の12時と6時を結ぶ線が重力の向きと微妙にずれます。上りでうまく体重を載せるペダリングができていると、ベクトル表示が全体的に6時方向にずれるはずです」

また、FTPを一定の回転数だけでなく、低めのケイデンスや高めのケイデンスで出せるようになることも重要だという。
「ヒルクライムといっても勾配は一定ではありません。緩斜面もあれば急斜面もあるので、ギアの変速だけで対応できないときにあらゆるケイデンスで一定のパワーを出せるようになっておくと有利です。これもクルマで言うところのパワーバンドを広げるイメージです」
 

ロングライド・エンデューロ=パワーメーターをペースメーカーとして活用しよう

ロングライドでは、一定のペースで走るのがコツだ。ここでいうペースとは、スピード基準でなく、パワーを基準にするのが重要だと須田さんは指摘する。

「例えばスピードでペースを管理しようとすると、上りで必要以上に頑張らなくてはいけなくなります。風のある日は向かい風の区間で頑張らなくてはいけなくなりますから、これらの区間で知らず知らずのうちに頑張りすぎの状態になってしまうわけです。パワーなら風や地形の影響を受けないので、ペースの指標としてパワーを一定に保つような走り方を目指すのが理想です。こうすれば、平地や追い風区間ではスピードが上がりますし、上りや向かい風区間で必要以上に頑張ることもなくなるでしょう」

サイクルコンピューターに何を表示する?

サイクルコンピューターに何を表示するかは、「自分が何を見たいか」によって決まる。だから10人いれば10通りの表示パターンがあると言っても過言ではない。ペダリングモニターを活用する須田さんはどのような意図でサイクルコンピューターのデータページや表示項目を決めているのだろう?

「私は▼外でのライド▼トレーニング▼ペダリングスキル▼トレーニングデータ振り返り——というテーマでページを作っています。外でのライドは、一番見たい5秒平均パワーを大きく表示し、あとはスピード、心拍、ケイデンス、ラップタイム、現在時刻を表示しています。時刻を表示するのは予定の時間に帰る必要があるからです」

 
須田さんが普段使っている画面
須田さんが普段使っている画面
デフォルトでは9つのメニューを表示できる
デフォルトでは9つのメニューを表示できる

パイオニアのサイクルコンピューターでは、1ページで最大9項目まで表示可能だ。しかし、1ページにたくさんの項目を表示すると、各項目の文字が小さくなって見にくくなるというデメリットもある。
「私はトレーニングのページにも多くの項目を表示していますが、インターバルなど練習に集中したいなら表示項目を絞って余計な情報が入らないようにするのもひとつのアイデアです。プロ選手でも『レース中はパワーや心拍を見ない』という人もいるぐらいです」

基本的には自分に必要な項目を選んで組み合わせ、自分が見たい項目を大きく表示できるようにするのがよさそうだ。あとは、リアルタイムに確認したい項目と、ライド後に解析サービス・シクロスフィアにアップロードしてから確認すればいい項目とを自分の中で厳選することで、自ずとディスプレイのページ数や表示項目が決まっていくはずだ。

 

【福岡県】パイオニア「ペダリングスキルアップセミナー」9/22開催

ウォークライドは2018年9月22日(土)、福岡県糸島市の伊都文化会館でペダリングスキルアップセミナーを開催する。


「ペダリングスキルアップセミナー」in 福岡 糸島
■日時:2018年9月22日(土)10:00~16:00
■定員:20人
■場所:伊都文化会館 研修室(福岡県糸島市前原東2丁目2-7)

■講師:須田晋太郎(自転車プロコーチ)
■主催:ウォークライド
■協力:パイオニア

■参加条件:ロードバイクを楽しんでいるライダー
■参加費:7020円(税込)
■応募方法 申し込み等詳細は下記サイトから

ウォークライド


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