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サイクルスポーツ編集部・滝沢のツール観戦日記 ~3日目~

レース
早くも今年のツール・ド・フランスが終わってしまった。”ツールロス”を感じている人も多いのではないだろうか? 少しでも寂しさを紛らわす材料として、ラスト3ステージのみフェロートラベルのツール観戦ツアーに同行した編集部・滝沢の観戦日記3日目をお届けする。

やはり現地での観戦が一味も二味も違う。ぜひ今後の現地観戦に向けての参考に読んでみてほしい。



観戦日記1日目はこちら!

観戦日記2日目はこちら!



text&phot:滝沢 佳奈子

最終日、シャンゼリゼへ

キャラバン隊が到着する前、スポンサーに関連した一般の人のライドイベントもいくつかあった
キャラバン隊が到着する前、スポンサーに関連した一般の人のライドイベントもいくつかあった
このおなじみの表彰台が置いてあるところで場所取りをする人が多い
このおなじみの表彰台が置いてあるところで場所取りをする人が多い
先に駐車場に来たクイックステップのチームカーはア・ポワ・ルージュをまとっていた
先に駐車場に来たクイックステップのチームカーはア・ポワ・ルージュをまとっていた
この日のスタートは夕方16時台と遅い。前日が夜遅かったのもあり、ツアーのお客さんと一緒にサイクリングに行く予定だったが完全に寝坊した。ホテルで朝食をとり、リヨン駅から歩いてバスティーユ周辺を少し散策した。

今頃お客さんたちはセーヌ川の右岸やら左岸やらをサイクリングしているんだろうなぁ、と思いつつ昼ごはんにクレープを買った。中に入っているチーズはこんがり焼けてサクサク。とっても美味しいが量が多く、夜ご飯にもなった。ツアーのお客さんは美術館に行ったり、買い物を楽しんだり、場所取りに向かったりとそれぞれ自由時間を楽しんでいたようだ。

自分がシャンゼリゼの方面へ向かったのは13時ごろ。キャラバン隊は16時ごろに到着予定だった。リヨン駅からメトロに乗り、コンコルドの方がゴール地点周辺に近かったが、通り過ぎて凱旋門から歩こうと考えていた。しかし、特別運行のようでそもそもコンコルドやシャンゼリゼには停まらなかった。

13時半に凱旋門に到着すると、もう観客が場所取りをしており、ちらほら先頭で見られるような隙間がある程度だった。

凱旋門をぐるりと回って、シャンゼリゼ大通りを歩く。人でごった返している中に飲食物やグッズ販売などの出店などが出ていた。キオスクで前日のレキップ紙を買うと、1面はゲラント・トーマスとフルームだった。

どこまで行けるのか分からなかったため、ひたすらに歩いてみると、行き着いたコンコルド広場にあるVIPエリアのパスコントロールではねられた。なるほど、ここまでか。

ちなみに一般の観客は、凱旋門から歩いていくと、表彰台やひときわ大きいオーロラビジョンがあるところまでしか行けない。(遠回りすればVIPエリアを抜けた先にも行けるが。)そこに陣取ることができれば、表彰式まで見ることができる。だが圧倒的にコロンビア勢とサガンファンたちがその周囲をエリアを牛耳っていた。一体何時から場所取りをしているのだろうか……。

そこからウロウロと練り歩き、すでに自分の歩数計の数字は2万を超えていた。まだ選手がスタートすらしていないのに……。だが、気づけばキャラバン隊が到着しており、祭りの最終盤を盛り上げるべく、シャンゼリゼの周回コースを3周ほどまわっていた。パリは物を配らないのだと思っていたが、シャンゼリゼ通りでないところでキャラバンカーから降りた人が余ったキャップを配っていた。

コンコルド広場の横にある公園前はチームバスの駐車場になっており、ぞくぞくとチームバスや関係車両で埋まっていく。その周辺一帯は全てVIP専用となっており、ツアーの常連のお客さんの中でもVIPチケットを購入している人がいた。このVIPチケットはレースが終わった後、チームバスのところへ行けて選手と触れ合えるため、かなりメリットが大きい。
13時半の時点で凱旋門周辺はこのような状態
13時半の時点で凱旋門周辺はこのような状態
トーマスのTシャツに「GERAINT」と貼っていたこの子が仮装(?)の中で一番良かったと思う
トーマスのTシャツに「GERAINT」と貼っていたこの子が仮装(?)の中で一番良かったと思う
シャンゼリゼでのファーストアタックを決めたのは、引退を表明したシルヴァン・シャバネルだった。バイクも特別カラー
シャンゼリゼでのファーストアタックを決めたのは、引退を表明したシルヴァン・シャバネルだった。バイクも特別カラー
ブーイングを受け続けたスカイが最後にシャンゼリゼの周回コースで先頭を引く
ブーイングを受け続けたスカイが最後にシャンゼリゼの周回コースで先頭を引く
6人の逃げ集団が形成された
6人の逃げ集団が形成された
スプリントに持ち込みたいFDJとボーラ・ハンスグローエが積極的に先頭を牽引する
スプリントに持ち込みたいFDJとボーラ・ハンスグローエが積極的に先頭を牽引する
マイヨ・ジョーヌはスカイの隊列とともに中盤に位置
マイヨ・ジョーヌはスカイの隊列とともに中盤に位置
サガンがオスらとともにメイン集団前方に上がってくる
サガンがオスらとともにメイン集団前方に上がってくる

最終周回で見たもの、21日間の決着

肩を抱き合いながら最後のフィニッシュラインへ向かうトーマスとフルーム
肩を抱き合いながら最後のフィニッシュラインへ向かうトーマスとフルーム
初日に肩甲骨を骨折したローソン・クラドックが感動のゴール300m前
初日に肩甲骨を骨折したローソン・クラドックが感動のゴール300m前
クフィアトコフスキーがシャンゼリゼのゴールを前に感傷に浸っていたが、この後慌てて走り出した
クフィアトコフスキーがシャンゼリゼのゴールを前に感傷に浸っていたが、この後慌てて走り出した
最終周は、フィニッシュまで1直線のラスト300mほどのところに移動。人だかりの後ろから背伸びをして見る。

最後の勝負がかかったスプリンターたちが、誰が誰だかわからないくらいすごい速さで目の前を駆け抜けて行った後、集団中盤ほどにいた黄色いジャージがゆっくり走っていく姿が目に入った。その横には背中にシャチを背負ったゼッケンナンバー1番。まるでスローモーションのように肩を組み、ゴールラインに向かうその姿にいよいよ自分の涙腺が崩壊した。

フルームを守る鉄壁のアシストだったトーマスに光が当たる日が来た。フルームはどれだけ悔しかっただろう。トーマスはどれだけ戸惑っただろう。でも何か今までのトーマスとは違う、自信というオーラをまとっているように感じた。

さらにその後ろからはどんどんと選手がゴールしていく。ローソン・クラドックが笑顔でフィニッシュラインに向かっていく様子も見えた。

クラドックが通過するのと同じ頃にチームスカイのミハウ・クフィアトコフスキーが通過していった。一度は上体を起こし、ハンドルから手を離してシャンゼリゼの風景を噛み締めているようだったが、何かを見て慌てて走り出していった。おそらく、フィニッシュラインに並ぶシャチの軍団が見えたのだと思う。あんなにもチームのために尽くした男は、最後までチームのために走ったのだろう。

表彰式の最後でトーマスことGの子供たちに向けた感動的なスピーチを中継でご覧になった方も多いだろう。話を終えた後、躊躇なくマイクを落とし、サムズアップで締めくくった。あれで鳥肌が立った。

マイクドロップというパフォーマンスの一種らしいが、自分には、今ツールで散々浴びてきたブーイングを説き伏せ、乗り越えたのだと言わんばかりに思えた。あの後、デュムランとフルームが満面の笑顔を見せていたことを忘れない。長く、精神的にも肉体的にも辛い戦いからようやく解き放たれたのだ。最終表彰式でブーイングは全く聞こえなかった。

たった3ステージだったが、このツールに来ることができて本当に良かったと思う。観戦はもちろん、多くのものを見て、感じて、それが自分のものとなる。是非、あなたもこの空気を感じ取ってみてほしい。絶対に行って良かったと思えることを保証する。
アレハンドロ・バルベルデがチームバスに笑顔で戻っていく
アレハンドロ・バルベルデがチームバスに笑顔で戻っていく
アルノー・デマールはフランスのTVからインタビューを受けていた
アルノー・デマールはフランスのTVからインタビューを受けていた
チームバスに戻ったエガンアルレイ・ベルナルをスカイのブレイルスフォードGMが健闘をたたえる
チームバスに戻ったエガンアルレイ・ベルナルをスカイのブレイルスフォードGMが健闘をたたえる
チーム表彰を終え、チームバスに戻っていくダニエーレ・ベンナーティ
チーム表彰を終え、チームバスに戻っていくダニエーレ・ベンナーティ
ちなみにミッチェルトン・スコットのピザ量はこちら
ちなみにミッチェルトン・スコットのピザ量はこちら
ロマン・バルデはチームバスの前で談笑していた
ロマン・バルデはチームバスの前で談笑していた
山岳賞を獲得したアラフィリップがボブ・ユンゲルスと喜びを分かち合う
山岳賞を獲得したアラフィリップがボブ・ユンゲルスと喜びを分かち合う
今年の4賞ジャージが揃った
今年の4賞ジャージが揃った
Gのマイクドロップ後のデュムランとフルームのこの笑顔である。これを見られて本当に幸せである
Gのマイクドロップ後のデュムランとフルームのこの笑顔である。これを見られて本当に幸せである