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サイクルスポーツ編集部・滝沢のツール観戦日記 ~3日目~
レース
2018.08.12
やはり現地での観戦が一味も二味も違う。ぜひ今後の現地観戦に向けての参考に読んでみてほしい。
観戦日記1日目はこちら!
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text&phot:滝沢 佳奈子
最終日、シャンゼリゼへ
今頃お客さんたちはセーヌ川の右岸やら左岸やらをサイクリングしているんだろうなぁ、と思いつつ昼ごはんにクレープを買った。中に入っているチーズはこんがり焼けてサクサク。とっても美味しいが量が多く、夜ご飯にもなった。ツアーのお客さんは美術館に行ったり、買い物を楽しんだり、場所取りに向かったりとそれぞれ自由時間を楽しんでいたようだ。
自分がシャンゼリゼの方面へ向かったのは13時ごろ。キャラバン隊は16時ごろに到着予定だった。リヨン駅からメトロに乗り、コンコルドの方がゴール地点周辺に近かったが、通り過ぎて凱旋門から歩こうと考えていた。しかし、特別運行のようでそもそもコンコルドやシャンゼリゼには停まらなかった。
13時半に凱旋門に到着すると、もう観客が場所取りをしており、ちらほら先頭で見られるような隙間がある程度だった。
凱旋門をぐるりと回って、シャンゼリゼ大通りを歩く。人でごった返している中に飲食物やグッズ販売などの出店などが出ていた。キオスクで前日のレキップ紙を買うと、1面はゲラント・トーマスとフルームだった。
どこまで行けるのか分からなかったため、ひたすらに歩いてみると、行き着いたコンコルド広場にあるVIPエリアのパスコントロールではねられた。なるほど、ここまでか。
ちなみに一般の観客は、凱旋門から歩いていくと、表彰台やひときわ大きいオーロラビジョンがあるところまでしか行けない。(遠回りすればVIPエリアを抜けた先にも行けるが。)そこに陣取ることができれば、表彰式まで見ることができる。だが圧倒的にコロンビア勢とサガンファンたちがその周囲をエリアを牛耳っていた。一体何時から場所取りをしているのだろうか……。
そこからウロウロと練り歩き、すでに自分の歩数計の数字は2万を超えていた。まだ選手がスタートすらしていないのに……。だが、気づけばキャラバン隊が到着しており、祭りの最終盤を盛り上げるべく、シャンゼリゼの周回コースを3周ほどまわっていた。パリは物を配らないのだと思っていたが、シャンゼリゼ通りでないところでキャラバンカーから降りた人が余ったキャップを配っていた。
コンコルド広場の横にある公園前はチームバスの駐車場になっており、ぞくぞくとチームバスや関係車両で埋まっていく。その周辺一帯は全てVIP専用となっており、ツアーの常連のお客さんの中でもVIPチケットを購入している人がいた。このVIPチケットはレースが終わった後、チームバスのところへ行けて選手と触れ合えるため、かなりメリットが大きい。
最終周回で見たもの、21日間の決着
最後の勝負がかかったスプリンターたちが、誰が誰だかわからないくらいすごい速さで目の前を駆け抜けて行った後、集団中盤ほどにいた黄色いジャージがゆっくり走っていく姿が目に入った。その横には背中にシャチを背負ったゼッケンナンバー1番。まるでスローモーションのように肩を組み、ゴールラインに向かうその姿にいよいよ自分の涙腺が崩壊した。
フルームを守る鉄壁のアシストだったトーマスに光が当たる日が来た。フルームはどれだけ悔しかっただろう。トーマスはどれだけ戸惑っただろう。でも何か今までのトーマスとは違う、自信というオーラをまとっているように感じた。
さらにその後ろからはどんどんと選手がゴールしていく。ローソン・クラドックが笑顔でフィニッシュラインに向かっていく様子も見えた。
クラドックが通過するのと同じ頃にチームスカイのミハウ・クフィアトコフスキーが通過していった。一度は上体を起こし、ハンドルから手を離してシャンゼリゼの風景を噛み締めているようだったが、何かを見て慌てて走り出していった。おそらく、フィニッシュラインに並ぶシャチの軍団が見えたのだと思う。あんなにもチームのために尽くした男は、最後までチームのために走ったのだろう。
表彰式の最後でトーマスことGの子供たちに向けた感動的なスピーチを中継でご覧になった方も多いだろう。話を終えた後、躊躇なくマイクを落とし、サムズアップで締めくくった。あれで鳥肌が立った。
マイクドロップというパフォーマンスの一種らしいが、自分には、今ツールで散々浴びてきたブーイングを説き伏せ、乗り越えたのだと言わんばかりに思えた。あの後、デュムランとフルームが満面の笑顔を見せていたことを忘れない。長く、精神的にも肉体的にも辛い戦いからようやく解き放たれたのだ。最終表彰式でブーイングは全く聞こえなかった。
たった3ステージだったが、このツールに来ることができて本当に良かったと思う。観戦はもちろん、多くのものを見て、感じて、それが自分のものとなる。是非、あなたもこの空気を感じ取ってみてほしい。絶対に行って良かったと思えることを保証する。