アルプス初日のツール・ド・フランス2019 第18ステージはキンタナが逃げ切り優勝/アラフィリップが首位キープ

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ツール2019第18ステージ

(photo : BettiniPhoto / Movistar Team)

第106回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、2019年7月25日にアンブランからバロワールまでの208kmで、標高2000m級の峠を3つ越えるアルプス山岳初日の第18ステージを競い、コロンビアのナイロ・キンタナ(モビスターチーム)が独走で逃げ切り、3度目の区間優勝を勝ち取った。

キンタナはすでに9分30秒遅れの総合12位だったが、この日の逃げで3分54秒遅れの総合7位に復帰した。

区間2位はフランスのロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)、3位はカザフスタンチャンピオンのアレクセイ・ルツェンコ(アスタナプロチーム)だった。バルデはこの日3カ所あったカテゴリー1と超級の峠をすべて2位で通過し、山岳賞総合首位に立ってマイヨ・アポワを獲得した。

メイン集団では、新人賞のマイヨ・ブランを着たコロンビアのエガン・ベルナル(チームイネオス)が、最後に越えたガリビエ峠でアタックを決め、総合争いのライバルたちよりも32秒早くゴールすることができた。彼は総合5位から総合2位へと順位を上げることができた。

マイヨ・ジョーヌを着た地元フランスのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、最後の峠越えで一度遅れたが、下りで追いつき、ライバルたちと一緒にゴール。アルプス山岳初日に総合首位の座を守ることができた。しかし、ガリビエ峠でアタックを決めたベルナルとのタイム差は1分半になってしまった。

7月26日はアルプス2日目の第19ステージが行われる。距離は126.5kmと短いが、後半に今大会最高峰でアンリ・デグランジュ賞がかけられた標高2770のイズラン峠を越えた後、標高2089mのティーニュ山にゴールする厳しいコースだ。

ツール2019第18ステージ

(photo : ASO/Pauline BALLET)

 

総合争いから後退したビッグネームたちが逃げた

ツール2019第18ステージ

●第18ステージのコースプロフィール(MAP : ASO)

ツール2019第18ステージ

●第18ステージのマイヨ・ジョーヌ(ガリビエ峠)

アルプス初日の第18ステージは156選手が出走。ルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)とセーアン・クラーウアナスン(チームサンウェブ)が出走しなかった。参加22チーム中、8人全員が残っているのは9チームだけだった。

オフィシャルスタートの合図からアタックが始まったが、すぐに抜け出す選手はいなかった。13km地点に頂上があったカテゴリー3の丘でルツェンコとピエールリュック・ペリション(コフィディス)がアタックし、数10秒差を付けて逃げ続けたが、30km地点で吸収された。

44km地点で34人が逃げ出すことに成功し、先頭集団を形成した。この逃げにはキンタナ、バルデ、アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)といった今年の総合争いからは後退したビッグネームが加わり、さらに山岳賞のマイヨ・アポワを守りたいティム・ウェレンス(ロット・スーダル)も2人のチームメイトと一緒に入っていた。

45km地点にあった中間スプリント地点はヤスペル・デブイスト(ロット・スーダル)が先頭で通過。最初の1時間の平均時速は、追い風の影響もあり、山岳区間だというのに45.7km/hもあった。33人の中で総合成績が最も上位だったのはキンタナだったが、すでに9分30秒遅れだったため、59km地点でタイム差は4分以上に広がっていた。

82.5km地点のバール峠(カテゴリー1)山頂はマイヨ・アポワのウェレンスが先頭で通過し、10ポイントを獲得した。集団では下りでニコラ・ロッシュ(チームサンウェブ)とジョージ・ベネット(チームユンボ・ビスマ)が落車したが、レースには復帰できた。

2つ目のイゾアール峠(カテゴリー超級)の登坂が始まる前に、先頭の逃げ集団からグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(CCCチーム)とジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード)が飛び出し、14km続く峠を先頭で上り始めた。マイヨ・ジョーヌ集団は、この峠ですでに20人ほどに絞られていた。

ツール2019第18ステージ

(photo : ASO/Pauline BALLET)

山頂まで残り4.5kmで先頭はベルナール1人になったが、山頂の手前で追走グループに追いつかれてしまった。イゾアール峠の山頂はダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・メリダ)が先頭で通過し、バルデが続いた。標高2000m以上のカテゴリー超級では、山岳ポイントは倍になるため、バルデはここでいっきに30ポイントも稼いでしまった。マイヨ・アポワを着たウェレンスは遅れてしまい、イゾアール峠では1ポイントも稼げなかった。

最後のガリビエ峠(カテゴリー超級)が始まる前に、先頭を逃げていた9人にウェレンスらが追いつき、16人になった。しかし、ガリビエ峠へと向かう上り坂が始まると先頭グループは分断し、ウェレンスは再び遅れ、二度と先頭グループには戻れなかった。

全長23kmのガリビエ峠の登坂が始まり、先頭の逃げはカルーゾが引き、バルデ、キンタナ、ルツェンコ、マイケル・ウッズ(EFエデュケーションファースト)の5人になった。しかし、頂上まで残り7.4kmでキンタナがアタックすると、付いていける選手は誰もいなかった。ゴールまではまだ26km以上あったが、キンタナは快調に峠を上っていった。

後続からはバルデがアタックし、ルツェンコと2人でキンタナを追走したが、タイム差は広がる一方だった。頂上まで残り3kmで、先頭のキンタナとバルデたちのタイム差は1分になっていた。6分後方を走るマイヨ・ジョーヌの集団では、ガリビエ峠の頂上まで残り3kmでマイヨ・ブランのベルナルがアタックし、独走を開始した。

ゴールまで残り19kmのガリビエ峠頂上はキンタナが先頭で通過し、1分45秒遅れでバルデ、1分55秒遅れでルツェンコが続いた。ガリビエ峠も標高2000m以上のカテゴリー超級だったため、バルデは30ポイントを獲得し、ウェレンスを抜いて山岳賞総合トップに立った。

ベルナルを追うマイヨ・ジョーヌの集団には、まだアラフィリップをアシストするチームメートのエンリク・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)が残っていた。しかし、山頂間近になってゲラント・トーマス(チームイネオス)がアタックすると集団はバラバラになり、マイヨ・ジョーヌのアラフィリップも遅れてしまった。必死で追走しようとするアラフィリップは、興奮した観客に叩かれてバランスを崩したが、幸い落車は免れた。

ガリビエ峠の下り坂でメイン集団は再び1つになり、遅れていたアラフィリップも合流できた。彼はベルナルとの差を少しでも縮める為に、自ら集団の先頭を引いて追走した。

ゴールまで残り2.5kmで雨が降り出したが、キンタナはバルデに1分半のタイム差を付けたまま独走を続け、そのまま逃げ切って区間優勝した。ベルナルもマイヨ・ジョーヌ集団から逃げ切り、4分46秒遅れの区間8位でゴール。マイヨ・ジョーヌ集団は5分18秒遅れでゴールし、ベルナルに32秒差を付けられてしまった。

ツール2019第18ステージ

(photo : ASO/Alex BROADWAY)

■独走で逃げ切って区間優勝したキンタナのコメント
「今朝の考えは、ランダをサポートする為に前に行くことだった。ボクは何とか逃げ集団に入ることができた。イゾアール峠では、非常に高いペースに従った。先頭に残っていたから、ボクは区間優勝の為に走ることができた。しかし、それは難しかった。アマドールに逃げは全部潰してくれたと言った。終盤になるとみんな苦しみ始めたが、ボクは良い調子だと感じていた。ボクは動くのに最適な瞬間を待った。ピレネー前の落車から回復するのに少し時間がかかったよ。今、アルプスにいてボクは自分が好む標高の上りを見つけた」

■アルプス初日にマイヨ・ジョーヌを守ったアラフィリップのコメント
「ボクはジェルを飲み、辛い仕事から10秒で回復した後、ガリビエの下りでちょっと危険を冒した。それから3つのカーブに集中し、視界にオートバイを捕らえた。やってはいけない唯一のミスは落車だった。ボクは限界だったが、グループに追いついた後、その先頭に出た。ボクが戻ってきたことを彼らに見せつけたかったからだ。

山岳では全力を出し切ると約束し、ボクはそうした。明日も明後日も同じだ。ボクは諦めない。この国で何が起こっているのか理解している。期待はとても大きい。ボクにできることは、全力を尽くすことだ」

ツール2019第18ステージ

(photo : ASO/Pauline BALLET)

ツール2019第18ステージ

(photo : BettiniPhoto / Movistar Team)

■第18ステージ結果[7月25日/アンブラン〜バロワール/208 km]
1. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) 5H 34′ 15”
2. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) +01′ 35”
3. ALEXEY LUTSENKO (ASTANA PRO TEAM / KAZ) +02′ 28”
4. LENNARD KÄMNA (TEAM SUNWEB / GER) +02′ 58”
5. DAMIANO CARUSO (BAHRAIN – MERIDA / ITA) +03′ 00”
6. TIESJ BENOOT (LOTTO SOUDAL / BEL) +04′ 46”
7. MICHAEL WOODS (EF EDUCATION FIRST / CAN) +04′ 46”
8. EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL)  +04′ 46”
9. SERGE PAUWELS (CCC TEAM / BEL) +04′ 46”
10. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM JUMBO – VISMA / NED) +05′ 18”

11. EMANUEL BUCHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) +05′ 18”
12. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) +05′ 18”
13. GERAINT THOMAS (TEAM INEOS / GBR) +05′ 18”
14. JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA) +05′ 18”
15. RIGOBERTO URAN (EF EDUCATION FIRST / COL) +05′ 18”
16. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) +05′ 18” 
17. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) +05′ 18” 
19. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) +06’ 16’’ 

■第18ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA) 75H 18’ 49’’
2. EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL) + 01’ 30’’
3. GERAINT THOMAS (TEAM INEOS / GBR) + 01’ 35’’
4. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 01’ 47’’
5. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 01’ 50’’
6. EMANUEL BUCHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) + 02’ 14’’
7. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) + 03’ 54’’
8. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) + 04’ 54’’
9. RIGOBERTO URAN (EF EDUCATION FIRST / COL) + 05’ 33’’
10. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 05’ 58’’

11. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 06’ 30’’
18. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) +23’ 39’’

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA)
■新人賞(マイヨ・ブラン):EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL)
■チーム成績(黄色ゼッケン):TREK – SEGAFREDO (USA)
■敢闘賞(赤ゼッケン):  GREG VAN AVERMAET (CCC TEAM / BEL) 

ツール・ド・フランス公式サイト

ツール2019第18ステージ

(photo : ASO/Alex BROADWAY)

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