ニュース

舛添都知事「日本の車道は狭い」は事実誤認 自転車の歩道通行は歩行者に危険及ぶ

その他

「ママチャリの気持ちを代弁したい」。東京都の自転車交通政策について、引き続き歩道通行を許容していく方針を示した舛添要一都知事。「車道は狭い」「子どもを乗せて買い物に行く母親の立場を考えて」などというのがその理由だが、自転車の歩道通行が子どもや高齢者を含む歩行者にとって脅威であることに変わりはない。識者は「都知事は現実を見るべきだ」と指摘する。

舛添知事は8月29日の定例会見で、今後新たに整備する自転車走行路を原則として車道に設けるとする一方、既存の道路では歩道での自転車の対面通行を許容する考えを示した。

その理由として舛添知事は、都内では生活の足としてママチャリ(シティサイクル)がおもに使われていると主張。「都内を走っているのはママチャリだ」「歩道を一切使えないと、これは走れなくなる。やっぱり、残念ながらヨーロッパの車道と違って(日本の車道は)狭い」「理想は(車道)だが、一気には難しい」などと述べた。

 

(CC) Hunter Desportes.

■亘理章氏(都市交通評論家、NPO自転車活用推進研究会理事)の話

舛添都知事は「欧州よりも車道が狭い」と言っているが、事実誤認だ。大幹線道路を除けば、車道の幅は日本とほとんど変わらない。

それにもかかわらず自転車が車道を安全に走れるのは、交通の優先権が明確だからだ。歩行者が最上位で、次に自転車、その次にLRT(路面電車)やバス。自動車は一番下。このことを、道路を利用する誰もが知っているから、クルマは自転車をよけて走る。

自転車は車両であり、歩道を走ってはいけないというのが世界の常識だ。私が知る限り、自転車が歩道を通行しているのは日本だけ。韓国でも歩道通行を解禁した時期があったが、危険なので取りやめた。舛添知事はそうした事実を知らないのではないか。

欧州では10年前から自転車レーンの整備を進め、事故を半減させてきた。車道が狭ければ、クルマの速度規制を例えば40キロから30キロというように変えれば済む。しかし自転車の歩道通行は歩行者を危険にさらす。電動アシスト車であればすぐに速度が15キロほどになり、歩行者にとって脅威となりうる。現状のままでは今後、歩道上での事故が増えていくのではないか。

「高齢者が安心して歩ける」というのが欧州での街づくりの目標だ。歩道さえ安心して歩けない都市はさびれていく。舛添知事はこうした現実を見るべきだ。(斉藤円華)

舛添都知事 8月29日定例会見(東京都)  http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/