ニュース
【Tour速報】ツール・ド・フランス第3ステージはウイの激坂ゴールでロドリゲスが優勝/フルームがマイヨ・ジョーヌ獲得
レース
2015.07.07
第102回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、オランダから隣国ベルギーへと舞台を移し、7月6日は北部のアントワープからフレッシュ・ワロンヌのゴールで有名なウイの激坂(カテゴリー3)までの159.5kmで第3ステージを競った。
しかし“ミニ・フレッシュ・ワロンヌ”のステージは、ゴールまで60kmを切ったところで集団で発生した大落車事故で混沌となった。主催者はレースを一時ニュートラル(競技を一時中止)とし、ボイソの丘のふもとで集団を20分近く止めた。
この落車にはマイヨ・ジョーヌを着たファビアン・カンチェッラーラ(トレック)も巻き込まれて負傷したが、レースがニュートラルになったおかげで集団に復帰することができた。しかし、痛みと闘いながらレースを続けなければならない厳しい状況になり、最後は集団から大きく遅れてしまった。
ウイの激坂ゴールを制して区間優勝したのは、2012年のフレッシュ・ワロンヌで優勝した経験のあるスペインのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)だった。2位には英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)が入り、トニー・マルティン(エティックス・クイックステップ)にたった1秒差で総合首位に立ち、マイヨ・ジョーヌを獲得した。
*
第3ステージは198人が出走。オフィシャルスタートとともにブライアン・ノーロー(ヨーロッパカー)、セルジュ・パウエルス(MTN・クベカ)、ヤン・バルタ(ボーラ・アルゴン18)、マルティン・エルミーゲル(IAM)が逃げ出した。4人は最大で3分50秒差を付けて逃げ続けた。
109km地点に設定されていた今年最初の山岳ポイントだったボイソーの丘(カテゴリー4)が近づき、集団は4人を捕まえるために加速した。そしてゴールまで残り58.8km、逃げとのタイム差が11秒になったとき、スピードが上がって長く伸びた集団の前方ではげしい落車が発生し、20人ほどが巻き込まれてしまった。
総合3位でマイヨ・ブランを着ていたオランダのトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)は、肩を脱臼して救急車で搬送され、今年のツールで最初のリタイア選手になってしまった。
フランスのウイリアム・ボネ(FDJ)も外傷性脳損傷で搬送され、オーストラリアのサイモン・ゲランズ(オリカ・グリーンエッジ)もリタイアした。
集団ではこの落車事故の直後に、ボイソーの丘のふもとで2度目の落車が発生し、競技は一時中断。選手たちは自転車をおりて残り54.4kmのコース上に待機した。
レキップ紙の報道によると、レース後にディレクターのクリスティアン・プリュドムは、レースには救急車4台とメディカル・カー2台が追走しているが、2度目の落車の対応ですべて止まってしまい、集団に帯同する車両がなくなってしまったため、レースをニュートラルにしたのだと説明している。
マイヨ・ジョーヌを着たカンチェッラーラが集団に追いついた後、レースは再開した。ボイソーの丘の上まではニュートラルがつづき、頂上を越えた残り50km地点からふたたび競技が始まった。
*
しばらくは様子を見るかのように、集団は1つでゆっくりと走っていたが、残り40km地点でアスタナやティンコフ・サクソが先頭を引き始め、集団は2つに分断してしまった。31km地点の中間スプリントポイントをマイヨ・ベールのアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)が先頭で通過した後、集団はまた1つに戻った。
しかし、このステージは“ミニ・フレッシュ・ワロンヌ”で、終盤には丘が連なる厳しいコースだった。残り20kmを切ってエレーフの丘の上りが始まると、マイヨ・ジョーヌのカンチェッラーラは集団から脱落してしまった。丘越えで40人ほどに絞られた先頭集団がウイの激坂のふもとに到着したとき、カンチェッラーラはすでに6分以上遅れていた。
ウイの激坂を先頭で登り始めたのはベテランのルーカ・パオリーニ(カチューシャ)だった。コーナーで一度フルームが先頭に出たが、すかさずロドリゲスがアタック。トニ・ガロパン(ロット・ソウダル)とフルームが食らい付こうとしたが、ロドリゲスは残り400メートルで後続をふり切り、両手を上げてフィニッシュラインを通過した。
区間優勝したロドリゲスは前日の悪天候ステージで2度落車し、右ヒジを負傷していたのだが、その影響はまったくなかったようだった。
フルームはロドリゲスに秒差なしの2位でゴールし、6秒のボーナスタイムを獲得して総合首位に立った。40秒遅れでゴールしたドイツのトニー・マルティン(エティックス・クイックステップ)は、2日連続で復活したボーナスタイム制度に阻まれ、マイヨ・ジョーヌ獲得を逃してしまった。しかもこの日は、たった1秒差だった。
ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)とナイロ・キンタナ(モビスター)は11秒遅れ、アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)は18秒遅れでゴールした。
*
■区間優勝したロドリゲスのコメント「昨日は悪い1日だった。ボクはたくさん働いたのに、パンクと落車ですべてが台無しになってしまい、悲しかった。でも今日の勝利は素晴らしい。大きなチームワークのおかげだよ。ボクら全員にとってとても精神的な後押しになる」
「残り400メートルのサインを目にした時、ボクは何も考えていなかった。こないだのフレッシュ・ワロンヌでは、ボクは前を塞がれてしまってアタックできなかった。あんなことがまた起きるのは御免だった。このフィナーレは完璧にボク向きだったから、フルームやコンタドールがボクについて来られなかったのには驚かないよ」
■早くもマイヨ・ジョーヌを獲得したフルームのコメント「ウイの激坂はパンチャータイプのクライマー向きだと思う。だからロドリゲスは素晴らしいパフォーマンスができたんだ。それは予期していたから、彼をマークしていた。この上りはボクに向いてなかったから、2位になって総合のライバルに差を付けられたのは驚きだ」
「去年の失望のあとで、またマイヨ・ジョーヌに戻れるのは素晴らしい気分だ。こんなに早くレースをリードできるとは思っていなかった。マイヨ・ジョーヌは重荷ではないよ。石畳を前にして、素晴らしい順位だ。チーム全体の士気が高まるよ」
7月7日の第4ステージはベルギーのスランがスタートとなり、フィリップ国王がスターターをつとめる予定だ。そして国境を越えてフランスへと入り、カンブレまでの223.5kmで“ミニ・パリ~ルーベ”と呼ばれる石畳ステージが行われる。コースには7ヶ所の石畳セクションが含まれている。
第3ステージの落車ではロシアのドミトリー・コゾンチュク(カチューシャ)もリタイアし、完走は194人だった。しかし、ケガをした選手は大勢いるため、第4ステージを出走できない選手もいるかもしれない。
*
■第3ステージ結果[7月6日/アントワープ(ベルギー)~ウイ(ベルギー)/159.5km]
1 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)3時間26分54秒
2 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)
3 アレクシス・ビヤモーズ(AG2R/フランス)+4秒
4 ダニエル・マーティン(キャノンデール・ガーミン/アイルランド)+5秒
5 トニ・ガロパン(ロット・ソウダル/フランス)+8秒
6 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+11秒
7 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+11秒
8 サイモン・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ/英国)+11秒
9 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+11秒
10 バウケ・モレマ(トレック/オランダ)+11秒
11 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+11秒
12 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+18秒
19 リゴベルト・ウラン(エティックス・クイックステップ/コロンビア)+34秒
26 トニー・マルティン(エティックス・クイックステップ/ドイツ)+40秒
27 ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)+40秒
52 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+1分33秒
188 ファビアン・カンチェッラーラ(トレック/スイス)+11分43秒
■第3ステージまでの総合成績
1 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)7時間11分37秒
2 トニー・マルティン(エティックス・クイックステップ/ドイツ)+1秒
3 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+13秒
4 トニ・ガロパン(ロット・ソウダル/フランス)+26秒
5 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)+28秒
6 ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)+31秒
7 リゴベルト・ウラン(エティックス・クイックステップ/コロンビア)+34秒
8 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+36秒
9 ゲラント・トーマス(チームスカイ/英国)+1分03秒
10 ズデネク・シュティバル(エティックス・クイックステップ/チェコ)+1分04秒
13 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+1分38秒
16 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分51秒
17 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+1分56秒
18 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+2分00秒
27 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+2分58秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル/ドイツ)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)
■新人賞(マイヨ・ブラン):ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)
■チーム成績(黄ゼッケン):BMCレーシングチーム(米国)
■敢闘賞(赤ゼッケン):ヤン・バルタ(ボーラ・アルゴン18/チェコ)
(http://www.letour.fr/le-tour/2015/fr/)