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DOWNHILL SERIES2015 #2 SRAMPARK レースレポート

イベント
プロクラスライダー全員を抑えて優勝したのは、エリートクラス優勝者に与えられる「下克上システム」を使って挑戦した高校2年生のローカルライダー、井岡佑介(HottSpin nukeproof) 。
6月 27日、28日に開催された、#2 SRAMPARK。コースは全長 425m。スラムパークの山頂をスタートとし、すぐに 90度ターンのクランクが続くシングルトラックに入る。シングルを抜けてからは、リズムセクションの連続。ジャンプと細かいバンクが組み合わされたコースは、「下りのパンプトラック」と言ってもいいほど。どんどんスピードがあがるため、短いわりに体力を使ううえ、い かにバイクに置いていかれないようにコントロールできるかがポイント。 
 
コース脇に観客がズラリと並ぶなか、風に乗ったかのようなスピードで優勝を決めた井岡佑介
 
昨年は、土砂降りのなかのレースとなったスラムパーク会場。今回、土曜の明け方にやんだ雨はコースを湿らせ、試走が始まるころには路面コンディションとしては最高に。ただし、ヌタヌタの沼になったセクションが一カ所あり、そこでフロントが埋まって前転するライダーも見られた。
この会場最大のポイントは、コースのすべてが見えること。全長の短さもあって、 スタート直後からフィニッシュまで、コース脇には観客が並ぶ。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース攻略の鍵だ。
軽トラックでの搬送は約5分。昨年に引き続き、このスラムパークを練習拠点とする FMX(フリースタイルモトクロス)ライダーが搬送ドライバーを務める。タイムドセッション前の昼休みには FMX ショーも行なわれ、普段なかなか見ることのない、エンジン付きバイクの空中ショーに参加者たちも大盛り上がりだった。
 
会場全体図。今会場には12社の出展ブースが並んだ
 
今回のエントリーは 96 人。土曜日のタイムドセッションには76人が参加した。 今年から全クラス総合ランキングも参考として発表しており、タイムドセッションでの総合1位はエリートクラスの泉野龍雅(桜丘高校/KONA/自転車道)。 2位に加藤将来(AKI FACTORY/ACCEL)、3位には井本はじめ (SRAM/LITEC)。この3人が 51 秒台を出した。4位には、ショートダウンヒル 荒らしとも呼ばれるハードテールの使い手、エリートクラス出走の増田直樹(DTP)が入った。
日曜日も、朝から快晴。梅雨はどこへ行った?と言いたくなるほどの青空が広がった。朝から試走には長い列ができ、最終的には 20本近く走ったという強者 も。どんどん乾く路面は、すでにホコリっぽい。「濡れて滑るのと、乾いて滑るのは全然違う。昨日と今日じゃ、違うコースだと言ってもいいくらい変わっている。」とは、SRAMPARK管理人の波多野さんの談。
 
井岡佑介の乗る NUKEPROOF ROOK はシェイクダウンしたばかり
 
本戦が始まる頃になると、急に風が強くなりはじめた。スタート地点から吹き下ろす風は、MC アリーの立つテントを飛ばしそうになるほど。
今回も、エリート男子優勝者は「下克上システム」で PRO クラスライダーに挑戦できる権利を持つ。そこで表彰台にあがった場合はもちろん賞金も与えられる。 若手から、往年の名選手までが揃った今回は、開幕戦の十種ヶ峰で「下克上シ ステム」の権利を獲得し、PRO クラス4位に入った藤村飛丸(Blanky Dog/MUDDY CHOCOLATE)もなりを潜めた。
前日のタイムドセッションの結果をも とに、リバーススタートによる本戦が始まると、みんな着々とタイムを更新していく。タイムドセッション 3位の井岡佑介(HottSpin nukeproof)が出走したとき、突風が吹いてフィニッシュゲートが倒れるというアクシデントが発生。しかし、その突風に乗ったかのようにフィニッシュに飛び込んできた井岡選手が、今大会初めての 50秒台を出す。
タイムドセッション2位の泉野と3 位の増田は 51 秒台となり、PRO への挑戦権を得たのはスラムパークをホームコ ースとする地元の若手・井岡選手となった。
 
プロクラス表彰式
 
PROクラスの前走者として、もう一度山頂からスタートした井岡選手は、エリー ト優勝を決めた自身のタイムをさらに 0.349 秒更新し、50 秒 283 という数字を叩き出す。疲れが見えないのは、さすが若者? その後、プロライダーたちが次々にスタートするものの、なかなか 51秒を切れない。残り2人、ここで井岡選手の表彰台は確定。
プロライダーとして負けるわけにはいかない開幕戦優勝者の井本はじめがついに 50 秒台を出すも 0.029 秒井岡選手に届かず。最終走者の加藤将来も豪快な攻めの走りでゴールを目指す。しかし、中盤のタイトなバームでの切り返しで、あまりのパワーにタイヤが悲鳴を上げ「パンッ」 という音と共に一瞬にしてタイヤがリムから外れてしまった。その瞬間、会場にはため息と、そして今日のローカルヒーローをたたえる拍手が湧いた。
 
 
「マジでうれしいです。涙が出ました。タイムドセッションで勝てなくて、本戦でも勝てないんじゃないか、と今日一日吐きそうなくらいでした。」と話した井岡選手。ひとりだけ空中でもペダルを漕いでいた、という自転車歴5年、16 歳の少年がプロクラスライダーに勝ってしまうという結果。
全エントリーのうち、地元愛知県からの参加者は 38人と約4割。SRAMPARK はできてから2年。自転車歴1年未満の若手ライダーのエントリーも多く、どんどんローカルライダーが育ってきているのが分かる。
ご夫婦でスラムパークを走り込んでいるという吉川邦岳さんは、エリートで本戦7位となり、「数を走っていれば勝てるわけではないですね。いろんなライン取りが見れておもしろいです」と 話してくれた。ローカルヒーローに活躍してほしいというDOWNHILL SERIES を企画した当初の構想が、早くも現実となった一戦になった。
#3 は岐阜県ウイングヒルズ白鳥リゾートにて行なわれる。
http://dhseries.jp