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東京がめざすべき自転車の未来とは? シンポジウムで内外識者ら議論

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2020年開催予定の東京五輪を見据え、東京がめざすべき自転車利用環境について話し合うシンポジウム「バイク東京2015サミット」(日本サイクリング協会主催)が19日、都内で開かれた。都内で安心して自転車を利用できる環境づくりのための課題について、国内外から招かれた識者らが意見を交わした。

 
 「バイク東京2015サミット」の様子=19日
「バイク東京2015サミット」の様子=19日

米シェアサイクル事業者「インフラ整えばマナーも改善」

超高齢化社会の到来を前に、歩行者が安心して通行できる道路環境の実現が急がれる。また、東京五輪の開催が予定される東京では、大挙して訪れる外国人を「おもてなし」するための態勢づくりも急務といえる。

東京都建設局道路保全担当部長の河合康文さんは、20年に向けた都内の自転車通行環境の整備計画を説明。自転車道や自転車レーンなど、自転車通行空間を現在の倍、260km以上にわたり整備する。さらに、バラバラな自転車通行空間どうしをエリアごとに結びつける役割を担う「自転車推奨ルート」を200km設定し、自転車ネットワークを形成。「実現には国・都・区市町の連携が大事」と話した。

ドコモ・バイクシェアの坪谷寿一社長は自社のシェアサイクル事業について説明。今年10月に中央区でシェアサイクル事業が始まり、都内での規模は合計99のサイクルポート、1044台となる。14年度の利用回数は33万回で、年々倍増のペースだ。

 
デンマークの自転車道。歩行者とも分離し、一方通行が基本だ
デンマークの自転車道。歩行者とも分離し、一方通行が基本だ
マンハッタン島をびっしり埋めるように設けられた「シティバイク」のサイクルポート
マンハッタン島をびっしり埋めるように設けられた「シティバイク」のサイクルポート


ニューヨーク市からは民営シェアサイクル事業「シティバイク」のデニー・シモンズさんが登壇。マンハッタン島を中心にポート332か所、自転車6千台の規模で運営し、完全民営を実現している。2年後までにそれぞれ倍増させるという。シモンズさんは「シェアバイクはロードプライシング(渋滞緩和のための通行課金)なしに道路利用を効率化できる。しかも歩くより早く、タクシーより安く、地下鉄よりも便利」などと利点を強調した。

デンマーク大使館参事官のミゲル・フェルタさんは「(首都の)コペンハーゲンは自転車利用に適するよう作られている。東京と比べれば小さい都市だが、自転車レーンは430kmある。実現には様々な現実的問題の解決をともなうが、自転車利用の拡大はとても良いことだ」と述べた。

自転車利用環境の整備にともない、必ず議論となるのが交通ルールやマナーの問題だ。シモンズさんは「ニューヨーク市でも同様の問題がある」とした上で「自転車を安全に利用できるインフラが整うに従い、自転車に乗る人がルールやマナーに従うようになった。自転車レーンなどの安全に走れる環境があれば、自転車は交通ルールを守るようになる」と訴えた。

 
ドコモ・バイクシェアのシェアサイクル。自転車にカードリーダなどを搭載し、専用スタンド無しでもシェアサイクルサービスを提供できる
ドコモ・バイクシェアのシェアサイクル。自転車にカードリーダなどを搭載し、専用スタンド無しでもシェアサイクルサービスを提供できる


世界的に都市での「脱モータリゼーション」の動きが始まっているが、東京の道路交通は今も自動車が中心だ。

シェアサイクルを充実させ、自転車利用者のマナーアップを図るには、目標を上回るペースで自転車ネットワークの整備を加速させることが特効薬と言えそうだ。

(斉藤円華)