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ゆるゆる遠州ガイドライドにヤマハの電動アシストロードバイクYPJ-Rで参加

イベント
自転車のガイドライドがじわじわと広まってきた。静岡県では、4月25〜26日に「ゆるゆる遠州ガイドライド2days」、9月26日に狩野川ガイドライドが開催された。さらに好評に応えて11月28日に行われた「ゆるゆる遠州ガイドライド-秋-」に、ヤマハの電動アシストロードバイクYPJ-Rの試乗車で参加して、その魅力を探ってみた。

 

ツーリスト向けの旅行イベント

Aコースは天浜線の線路に沿って走る区間がある。写真は長い直線が続く通称“田園滑走路”
Aコースは天浜線の線路に沿って走る区間がある。写真は長い直線が続く通称“田園滑走路”


自転車のロングライドは、指定されたコースを制限時間内に走破する形式。一定速度以上の走行が求められ、走っている時間の方が圧倒的に長いアスリート向けのスポーツイベントといえる。

対してガイドライドは、観光に費やす時間をたっぷり取ったツーリスト向けの旅行イベント。ゆっくり走行して、たっぷり観光できる。

主催者である静岡遠州観光ネットワーク事務局の佐藤雄一さんは、ガイドライドの意義を次のように説明する
「これからのサイクルツーリズムの展望と、ネットワーク事業を通じて各観光協会の目指す観光需要の進化を踏まえ、2014年よりガイドライドのみに開催形態を変更しています。ロングライドイベントが持つ起点・終点以外の地域は、どうしても通過エリアとなってしまいがちでした。それに比べてガイドライドは、各地域を目的地としつつ、その土地の魅力をゆっくりと味わうことができる『旅』の要素を充分に有しています」

 
大洞院にある森の石松の墓。現在の墓は、左手奥に見える黒い御影石
大洞院にある森の石松の墓。現在の墓は、左手奥に見える黒い御影石


さて「ゆるゆる遠州ガイドライド 2015-秋-」だが、キャッチフレーズは“遠州の秋味をゆるゆると巡る6つの自転車旅、ロコサイクリストたちが磨き上げた珠玉の全6コース”。

<A〜Fの6コース>は、参加者の脚力に合わせた距離と難易度設定になっている。参加料金は1コース5000円。スポーツサイクルのレンタルも可能で、料金は1日2500円(2日目は2000円)。

A)    遠州の小京都&治郎柿の里を巡る自転車旅(森町)
中級者向き 約50km 参加14人(男7・女7)/ロコガイド5人

B)紅葉の遠州三山 おもてなし巡りの自転車旅(袋井市)
初級者向 約45km 参加9人(男6・女3)/ロコガイド5人
C)晩秋の磐田 紅葉と秋の味覚を巡る自転車旅(磐田市)
中級者向き 約65㎞ 参加9人(男7・女2)/ロコガイド5人

D)遠州灘の潮騒と農家スイーツのふれあい自転車旅(御前崎市)
上級者向き 約80km 参加16人(男12・女4)/ロコガイド6人

E)レトロとモダンの行き交う菊川 美味しいもの巡りの自転車旅 (菊川市)
中級者向き 約52㎞ 参加11人(男9・女2)/ロコガイド6人

F)スイーツ&フルーツを愉しみ三つの城を巡る自転車旅(掛川市)
初中級者向き 約46km 参加16人(男9・女7)/ロコガイド6人

 

距離50kmに7時間かける自転車旅

Aコースの女性ライダー。6人は首都圏から来た60歳以上のグループでレンタルサイクルを利用
Aコースの女性ライダー。6人は首都圏から来た60歳以上のグループでレンタルサイクルを利用


参加したのは、Aコース。エコパ-鈴木農園で治郎柿の試食-遠州一宮の小国神社参拝―森山焼工房見学―大洞院で森の石松の墓参り―アクティ森で昼食―“森の茶”でお茶の試飲―森町の古い町並み―治郎柿の原木―天浜線の原谷駅木造建て駅舎-田園滑走路-エコパの田園と里山を巡るコース。最大標高差111m、獲得標高上り326m /下り318m。

丘陵に広がる小笠山総合運動場エコパを朝9時前にスタート。北の彼方に、これから向かう森町の丘陵が青空の下に望める。天気晴朗なれど風強し……この日は終日、遠州名物の空っ風が吹きまくった。

参加者14人にガイドが5人なので、3人に1人のガイドが付く勘定になる。先頭と末尾にロコ(地元)ガイド、さらに小グループごとにもガイドが付くので、道に迷うことはない。軽ワンボックスの伴走車が付いて荷物を運んでくれるので、身軽な格好で走れる。

 
伴走車が付き、自転車用品やお土産を運んでくれる
伴走車が付き、自転車用品やお土産を運んでくれる


コースは地元ライダーが吟味しただけあり、安全で交通量が少なく景色も良い道を細かくつないでいる。田んぼの一本道や土手の道、農道も含まれる。ガイドのリーダーを務めるのは森町観光課に勤務していた増田多喜男さん。まさに地元の生き字引! 何を尋ねても明快な答えが返ってくる。

ローカルフードの飲食と地元産品の買い物を楽しめるのも特徴。最初に立ち寄ったのは、農産物の直売所を構える鈴木農園。名産の治郎柿を試食。身が固く甘い実を存分に食べた。「どんどん買ってくださいね、車に積めますから!」。伴走車のお陰で、自転車旅行では断念しがちな、重くてかさばる産品の買い物も問題なし。柿を購入する人が続出した。

昼食は、アクティ森にある「森のレストランかわせみ」。個室が用意され、着席してゆっくりと食べることができた。極めつきは茶の販売店「森の茶」での茶の試飲。やぶきた、あさつゆ、つゆひかり、山の息吹という4品種の飲み比べを体験できた。お茶うけは、地元の和菓子店製のカリントウと栗蒸ようかん。おいしい茶の入れ方の指南も受けた。

 
茶の品種別飲み比べと、おいしいお茶の入れ方指南も含まれる
茶の品種別飲み比べと、おいしいお茶の入れ方指南も含まれる


観光のハイライトは、遠州一宮の小国神社と森の石松の墓がある寺、大洞院。石松の墓は、ギャンブルに御利益があるとの評判から、墓石を削る輩が続出。初代の墓は、鉄の柵に守られていた。この寺社を巡るルートには勾配10%近い上り坂が含まれる。Aコースには、60歳以上の女性6人仲間が参加していた。その何人かは、自転車の押し歩きでこれらの坂を上った。

森町の里山に挟まれた谷筋では風が弱まり、走りやすかった。スタートしたエコパに戻ったのは出発から7時間後の16時前。朝よりも強い西風が吹き荒れていた。

このガイドライドの参加者は合計で75人(男50人/女25人)、ロコガイドは33人。参加者の女性比率は33%と一般のロングライドの10〜20%よりも高いのが特徴。ツーリスト向けイベントの普遍性が高いことがうかがわれる。ガイドの人数が多い理由も分かった。参加者の走行ペースの違いにより、どうしても小集団に分かれてしまうからだ。ガイドは参加者に「速く走れ」と急かさない。Aコースの場合、距離50㎞のコースに休憩込みで7時間かけた。走行時は平均時速15㎞くらいだったので、走行と走行以外の観光に均等の時間を費やしたことになる。まさにこれは、スポーツではなく旅なのだ。

 

電動アシストロードのヤマハYPJ-Rに試乗

ヤマハYPJ-R。モーターユニットはギヤクランクの裏側に付いている
ヤマハYPJ-R。モーターユニットはギヤクランクの裏側に付いている


筆者は、12月10日に発売される電動アシストロードのヤマハYPJ-Rの試乗車で参加した。ツーリングというシチュエーションに向いているのではないかという仮説を立てたからだ。電動アシスト自転車は、補助が時速24㎞未満で切れるからだ(国内仕様)。それ以上の速度域では、普通の自転車となり補助の恩恵が受けられない。 平均時速が25㎞に満たない、今回のようなガイドライドにはうってつけと考えたからだ。

PJ-Rの特長は、ロードバイクと同じ乗車ポジション、完成車重量が15.2㎏または15.4㎏と電動アシスト車としては軽量、22速(前2×後11速)の外装変速機付き、バッテリーが軽量(540g)・コンパクトだが走行距離が短い。走行距離は「HIGH」モード14㎞/「STD」モード22㎞/「ECO」モード48㎞。その代わり、充電時間は約1時間と短い。税込のメーカー希望小売価格が24万8000円。

今年5月にイタリアアルプスで、電動アシスト自転車を現地でレンタルして走った。そのときの経験から、補助が強いモードで急勾配を登るとバッテリー残量が急激に減ると分かっていた。そのため、今回は必要なときだけ電源を入れ、モードもECOとSTD中心でバッテリーを節約しながら走った。

電源を入れたのは、勾配が5%を超える上り坂、緩い上り坂だが強い向かい風、強い向かい風下で集団からちぎれかけたとき。効果は抜群、そのような状況下でも大分楽に走れた。電源のオン・オフは走行中でも可能。停車時に操作したときは発信してから反応する。

 
YPJ-Rのマルチファンクションディスプレイ。スイッチとディスプレイは別体
YPJ-Rのマルチファンクションディスプレイ。スイッチとディスプレイは別体


普通のロードバイクと違うと気付いたことがある。ダウンチューブ上にバッテリーが設置されているせいか、ボトルケージ用の台座が付いていない。上ハンドルの手前か、サドル後部に設置できるボトルケージを使う必要がある。車重約15㎏は、普通のロードバイク2台分の重量に匹敵する。そのため、通常よりも2段くらい軽いギヤが適切だった。

Aコースの約50㎞を走り終えて、バッテリー残量は50%だった。バッテリーをいかに長持ちさせるかを工夫して走るのは、ゲーム的な面白さを感じた。実際、ヨーロッパではE-MTB(電動補助付きのMTB)のレースが始まっていて、バッテリーを効率的に使うことを含めた競走をしている。外観上のメリットだが、右側(駆動側)から見たときモーターユニットがすっぽりギヤクランクに隠れるので、電動アシスト自転車には見えにくく、すっきりしている。

イベント会場のエコパでミニ試乗会を催したが、試乗する人が続出する人気だった。【text:宮内 忍】

[公式サイト]http://yuru2.jimdo.com/
[Facebook]ゆるゆる遠州サイクルツーリズム https://www.facebook.com/yuru2tourism