ニュース

ピレネー初日のツール第7ステージは英国のカミングスが逃げ切り区間優勝/フラム・ルージュ倒壊事故でタイム変更!(updated)

レース
 
第103回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月8日にリル・ジュルダンからラック・ド・パヨールまでの162.5kmでピレネー山岳初日の第7ステージを競い、英国のスティーブン・カミングス(ディメンションデータ)が独走で逃げ切り、昨年につづいて2度目の区間優勝を果たした。

マイヨ・ジョーヌを着たベルギーのグレッグ・バンアーベルマート(BMC)はこの日の逃げに加わり、メイン集団より1分25秒早くゴール。ピレネー初日に失うかと思われていた総合成績でのリードを6分半以上に広げた。(*後に変更)


この日、総合を争う選手たちはメイン集団でゴールしたが、フランスのティボー・ピノ(FDJ)だけはアスパン峠越えで失速し、ライバルたちよりも3分近く遅れてゴールした。「単純に脚がなかった。言い訳のしようもない。ピレネーで遅れるのは3回目だ。ツールでは100%でなければならないのに、僕は100%ではない…」と、総合争いから大きく後退したピノは落胆していた。

メイン集団では、ゴール手前残り1km地点を通過した時に、フラム・ルージュのかけられたバルーンアーチが倒壊するアクシデントが発生し、英国のアダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)が負傷したが、全員が無事ゴールしている。


 
集団から先行してアスパン峠を駆け下りるマイヨ・ジョーヌのバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)
集団から先行してアスパン峠を駆け下りるマイヨ・ジョーヌのバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)

フラム・ルージュ倒壊事故でタイム変更!

 
※現地時間夜9時になってから、主催者はこの事故で第7ステージは参加選手全員にゴールまで3km地点で計測したタイムを与える決定を下した。カミングスの優勝タイムは3時間51分58秒から3時間48分09秒になり、メイン集団は4分29秒遅れから3分37秒遅れに修正された。

バンアーベルマートは第7ステージで1分25秒のタイムを稼いだはずだったが、この変更で45秒失ってしまった。総合成績でのタイム差も6分半から6分弱になっている。

この決定で最大の恩恵を受けたのは、フラム・ルージュの倒壊でアゴに4針縫うキズを負ったイエーツだった。彼はアスパン峠の下りで集団からアタックし、フラム・ルージュの下を通過した時にも集団の前を走っていた。

前日まで総合2位のアラフィリップより6秒遅れで総合13位だったイエーツは、集団よりも7秒少ない3分30秒差のタイムを与えられ、たった1秒差でアラフィリップを抜いて総合2位に浮上した。フランスのアラフィリップは、第7ステージ終了後の表彰式で新人賞のマイヨ・ブランを受賞していたのだが、それをイエーツに奪われてしまった。

フランスのレキップ紙は、今回の事故は観客の1人がフラム・ルージュのバルーンアーチの足の1本を固定していた杭を引き抜いたために起こったと報じている。
 
第7ステージはフラム・ルージュのバルーン・アーチが倒壊するアクシデントが発生
第7ステージはフラム・ルージュのバルーン・アーチが倒壊するアクシデントが発生
この事故でイエーツは負傷したが、タイム変更の恩恵でマイヨ・ブランを獲得できた
この事故でイエーツは負傷したが、タイム変更の恩恵でマイヨ・ブランを獲得できた

29人の逃げにバンアーベルマートとニーバリが加わった!

第7ステージ、リル・ジュルダンのスタート風景(Photo: YAZUKA WADA)         
第7ステージ、リル・ジュルダンのスタート風景(Photo: YAZUKA WADA)         
第7ステージは19選手が出走。最初の6ステージで誰もリタイアしなかったのは、ツール史上初の出来事だった。

スタートしてすぐにアルカンシエルのペーテル・サガン(ティンコフ)、マイヨ・ベールのマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)を含めた12人が逃げ出したが、集団はエティックス・クイックステップとロット・ソウダルが引き、43km地点でこの逃げを吸収した。

しかし、集団ではアタックの試みは続き、46km地点で今度はスイスのファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)が飛び出した。それをきっかけに29人の選手が集団から逃げ出し、そこにマイヨ・ジョーヌを着たバンアーベルマート、ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)、カミングスが加わっていた。この逃げは76km地点で集団に6分近いタイム差を付けて先行した。

先頭グループにニーバリが加わっていたため、集団はチームスカイとモビスターが引き、ゴールまで残り50kmでタイム差は4分25秒に縮まっていた。

中盤に設定されていたカテゴリー4の丘をニーバリが先頭で通過した後、先頭グループはバラバラになり、アントワンヌ・ドゥシュヌ(ディレクトエネルジー)、ダニエル・ナバロ(コフィディス)、マッティ・ブレシェル(キャノンデール・ドラパック)の3人が先頭に立ったが、すぐにカミングスが追いついてきた。

そこからゴールまで残り27kmでカミングスがアタックし、独走を開始。アスパン峠のふもとでバンアーベルマートとニーバリがいる追走グループに20秒差、メイン集団には5分差を付けていた。

12kmにわたって続くアスパン峠の上り坂で、カミングスはさらにリードを広げたが、峠の中腹でマイヨ・ジョーヌのバンアーベルマートは力尽き、追走グループから遅れてしまった。

メイン集団からはアスパン峠でイタリアのドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル)や、総合2位でマイヨ・ブランを着たジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)がアタックしたが、チームスカイに引き戻された。その後方では、フランス期待のピノが苦しい走りを強いられていた。
 
区間優勝に向かってアスパン峠を駆け下りるカミングス(Photo: YAZUKA WADA)                                
区間優勝に向かってアスパン峠を駆け下りるカミングス(Photo: YAZUKA WADA)                                
ニーバリはこのステージで敢闘賞を獲得した(Photo: YAZUKA WADA) 
ニーバリはこのステージで敢闘賞を獲得した(Photo: YAZUKA WADA) 

標高1490メートルでカテゴリー1のアスパン峠を単独で越えたカミングスは、ゴールまで残り7kmの山頂でダニエル・ナバロ(コフィディス)とダリル・インピー(オリカ・バイクエクスチェンジ)に1分差、ニーバリに1分40秒差、バンアーベルマートに2分45秒差、そしてメイン集団に3分20秒差を付けていた。

カミングスはアスパン峠を無事に駆け下り、ゴールのラック・ド・パヨールに独走で飛び込んだ。彼は今季、出場した4つのUCIワールドレースのステージレース(ティレーノ〜アドリアーティコ、バスク一周、クリテリウム・デュ・ドーフィネ、ツール)すべてで区間優勝したことになった。

南アフリカのディメンションデータは、すでにカヴェンディッシュが今大会で区間3勝しているため、カミングスの勝利で7ステージ中4ステージを勝ち取ってしまった。
 
 
■ツールで2度目の区間優勝を上げたカミングスのコメント
「自分のすべての勝利の中で、これが最高だと思う。ツールはツールさ。特別なものだよ。今年は僕が区間優勝する必要はなかった。このツールはカヴェンディッシュのために走ってきたので、僕は去年とはちがうコンディションだった。素晴らしい、ファンタスティックだ」

■ピレネー初日にマイヨ・ジョーヌを守ることができたバンアーベルマートのコメント「この走りで僕の貯蔵庫は空っぽさ! 今日も厳しかったけれど、幸運にも区間優勝した後しっかり回復できていた。昨日がラクな1日だったのが良かったよ。逃げがバラバラになったとき、自分で前のグループとのギャップを縮めなければならなかったのは大変な仕事だった。マイヨ・ジョーヌを守ることができて、しかもタイムを得られたからハッピーさ」
 

 
 
7月9日はポーからバニェール・ド・ルションまでの184kmで、ピレネー山岳2日目の第8ステージが行われる。第7ステージはカテゴリー1の峠越えが1ヶ所だけだったが、第8ステージは標高2115メートルでカテゴリー超級のツールマレー峠、カテゴリー2のウルケット・ダルチザン峠、カテゴリー1級のバル・ルロン・アゼ峠とペイルスールド峠を越えなければならないビッグステージだ。しかし、頂上ゴールではない。

「誰もが一生に一度でいいからこのジャージ(マイヨ・ジョーヌ)を欲しがるんだから、もう一日持つためなら何らかの努力をする価値はある。今日も素晴らしい一日だったけれど、明日はとても厳しくなるだろうってわかっているさ」と、総合リーダーのバンアーベルマートは語っている。
 
 
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO

■第7ステージ結果[7月8日/リル・ジュルダン~ラック・ド・パヨール/162.5km]
(※フラム・ルージュ倒壊事故の影響により、残り3km地点で計測されたタイムが適用された)

1 スティーブン・カミングス(ディメンションデータ/英国)3時間48分09秒
2 ダリル・インピー(オリカ・バイクエクスチェンジ/南アフリカ)+1分04秒
3 ダニエル・ナバロ(コフィディス/スペイン)+1分04秒
4 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+1分58秒
5 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)+2分57秒
6 ルイスアンヘル・マテ(コフィディス/スペイン)+3分37秒
7 ゲラント・トーマス(スカイ/英国)+3分37秒
8 ウォートル・プールス(スカイ/オランダ)+3分37秒
9 ゴルカ・イサギレ(モビスター/スペイン)+3分37秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+3分37秒
11 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+3分37秒
33 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+3分37秒
62 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+6分41秒
73 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+3分30秒
110 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+13分21秒
■第7ステージまでの総合成績
1 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)34時間09分44秒
2 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+5分50秒
3 ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ/フランス)+5分51秒
4 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+5分53秒
5 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+5分57秒
6 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+5分57秒
7 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+5分57秒
8 ワレン・バルギル(ジャイアント・アルペシン/フランス)+5分57秒
9 ピエール・ロラン(キャノンデール・ドラパック/フランス)+5分57秒
10 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+5分57秒
11 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+5分57秒
23 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+7分18秒
27 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+9分12秒
124 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+43分31秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ/英国)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
■新人賞(マイヨ・ブラン):アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)
■チーム成績(黄ゼッケン):BMCレーシングチーム(米国)
■敢闘賞(赤ゼッケン):ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)
(http://www.letour.fr/us/)
 

第7ステージのフォトアルバム@スタート by 和田やずか

インタビューを受けるマイヨ・ジョーヌ着用2日目のバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)
インタビューを受けるマイヨ・ジョーヌ着用2日目のバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ベールのカヴェンディッシュ(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ベールのカヴェンディッシュ(Photo: YAZUKA WADA)
ケガの状態が心配されるコンタドール(Photo: YAZUKA WADA)
ケガの状態が心配されるコンタドール(Photo: YAZUKA WADA)
トラブルなくピレネーに到着したディフェンディングチャンピオンのフルーム(Photo: YAZUKA WADA)
トラブルなくピレネーに到着したディフェンディングチャンピオンのフルーム(Photo: YAZUKA WADA)








ツール第7ステージの公式ダイジェスト映像


Summary - Stage 7 (L'Isle-Jourdain / Lac de... 投稿者 tourdefrance_en