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強風に見舞われたツール第11ステージは終盤にサガンとフルームがサプライズな逃げを決め、サガンが区間2勝目をマーク!

レース
まさかの逃げでスプリントステージをあっさり自分のモノにしたサガン (Photo: YAZUKA WADA)
まさかの逃げでスプリントステージをあっさり自分のモノにしたサガン (Photo: YAZUKA WADA)
 
第103回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月13日にカルカッソンヌからモンペリエまでの162.5kmで平坦区間の第11ステージを競い、強風の影響で落車と集団分断が続いて慌ただしい1日になったが、最後は予想通り集団ゴールスプリントで終わるかと思われた。

ところが、ゴールまで残り12kmで集団の先頭からマイヨ・ベールのペーテル・サガン(ティンコフ)がチームメートのマチエイ・ボドナル(ティンコフ)とアタック。それにマイヨ・ジョーヌのクリストファー・フルームとチームメートのゲラント・トーマス(スカイ)が付いて行き、そのまま逃げ切ってしまった。

最後はマイヨ・ベールのサガンが、マイヨ・ジョーヌのフルームをゴールスプリントで難なく下し、今大会2勝目を上げた。集団は6秒遅れでゴール。フルームは6秒のボーナスタイムも獲得し、総合を争うライバルたちとのタイム差を12秒広げることができた。
 
まさに型破りな世界チャンピオンが今日も魅せてくれた (Photo: YAZUKA WADA)
まさに型破りな世界チャンピオンが今日も魅せてくれた (Photo: YAZUKA WADA)

強風に見舞われた南仏ステージ

スタート前のウオームアップをするチームスカイ(Photo: YAZUKA WADA)
スタート前のウオームアップをするチームスカイ(Photo: YAZUKA WADA)
第11ステージは強い風と闘う一日になった(Photo: YAZUKA WADA)
第11ステージは強い風と闘う一日になった(Photo: YAZUKA WADA)
(Photo: YAZUKA WADA)                         
(Photo: YAZUKA WADA)                         
ピレネーからアルプスを目指す移動ステージの第11ステージは192選手が出走。ゴールのモンペリエではすでに風が強く、沿道のフェンスがなぎ倒されてしまうほどだった。

フランスの祝日である革命記念日は翌日だが、それを1日早く祝うかのようにフランスチャンピオンのアルチュール・ビショー(FDJ)が3km地点からアタックを開始。6km地点でオーストラリアのリー・ハワード(IAM)と一緒に集団から逃げ出すことに成功した。

強風の影響で、集団では25km地点から落車が頻発し、マイヨ・アポワを着たティボー・ピノ(FDJ)、ウィルコ・ケルデルマンとジョーシ・ベネット(ロトNL・ユンボ)、ユルフン・バンデンブルック(カチューシャ)、エドワルド・トゥンス(トレック・セガフレード)らが巻き込まれたが、無事集団に復帰できた。

集団はチームスカイ、エティックス・クイックステップ、BMC、カチューシャが引き、強い横風で非常に神経質になっていた。最初の1時間の平均速度は47.4km/hだった。ビショーとハワードの2人は、62km地点で5分近いタイム差を付けて逃げ続けた。

ゴールまで100kmを切り、ティンコフが引き出した集団は2つに分裂。ピノやケルデルマンが後ろの集団に取り残されたが、しばらくして集団は1つ戻ったた。ところが、ゴールまで残り80kmを切ってからトレック・セガフレードが先頭を引くと、集団は5つに分断してしまった。

集団でのこの動きのせいで先頭のビショーとハワードのタイム差はあっという間に縮まり、2人はゴールまで残り60kmでメイン集団に吸収されてしまった。その頃、マイヨ・アポワのピノと前日に区間優勝したマイケル・マシューズ(オリカ・バイクエクスチェンジ)は、81人の後続集団で前を追い続けていた。

ゴールまで残り49km地点の中間スプリントポイントは、ドイツのマルセル・キッテル(エティックス・クイックステップ)が先頭で通過し、サガン、マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)が続いた。

残り45km地点でピノの集団はまだ45秒遅れていたが、FDJが必死で追い上げたお陰で、10km先でメイン集団に追いつくことができた。集団はティンコフやBMCがコントロールし、やっと平常を取り戻したようだった。しかし、時速74km/hというハイスピードが続いていた。
 

マイヨ・ベールとマイヨ・ジョーヌがまさかのアタック!

   
   
このまま集団ゴールスプリントに持ち込まれるのだろうと誰もが気を抜いていた矢先、ゴールまで残り12kmで、集団の先頭を引いていたポーランドTTチャンピオンのボドナルがサガンを連れてアタックした。そのとき、落車の危険を避けるために集団前方を走っていたマイヨ・ジョーヌのフルームが、驚いたことにサガンのアタックに反応したのだ。

フルームはトーマスとともにティンコフの2人に付き従い、4人はあっという間に集団から抜け出してしまった。そのとき、先頭にはファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)の姿もあったが、彼は付いては行かなかった。

4人は残り10km地点で集団に11秒差を付け、7km地点ではその差を22秒に広げた。集団の後方では、カヴェンディッシュが不運にも機材トラブルに見舞われて失速していた。

メイン集団は2つに分断し、ナイロ・キンタナ(モビスター)は67人の追走集団に入っていたが、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)は遅れてしまっていた。残り3kmで4人はキンタナのグループに19秒、ロドリゲスのグループには1分以上の差を付けて先行していた。

集団はロトNL・ユンボやジャイアント・アルペシンが必死で引いたが、残り2kmでもタイム差は20秒のままだった。フラム・ルージュを通過した後、トーマスはしばらく先頭を引き、仕事を終えて後退。最後はボドナル、サガン、フルームでフィニッシュラインを目指した。

最後はボドナルが引いていたが、残り200メートルを切って最後尾のフルームがスプリントを始めたのに気がついたサガンがスパートし、チームに今大会2勝目をもたらした。

メイン集団は6秒遅れでフィニッシュし、総合を争うほとんどの選手はフルームとのタイム差を12秒に抑えることができたのだが、ロドリゲスは1分9秒遅れてしまい、総合5位から1分52秒遅れの総合12位に陥落してしまった。

 
 
ティンコフの名物オーナーも大喜び(Photo: YAZUKA WADA)
ティンコフの名物オーナーも大喜び(Photo: YAZUKA WADA)
サガンはマイヨ・ベールも守った(Photo: YAZUKA WADA)
サガンはマイヨ・ベールも守った(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ジョーヌのフルーム(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ジョーヌのフルーム(Photo: YAZUKA WADA)
■サプライズな2勝目を上げたサガンのコメント「それは偶然起こった。計画はしていなかった。マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ベールが前にいる。そんな逃げが形成されたなんて信じられない。風と落車でクレイジーな一日だった。ツールで最高の勝利ではないが、特別なのは確かだ。

僕はボドナルを区間優勝させたかったんだが、フルームは(区間優勝して)最大の秒差を得ることを望んでいた。だから自分で勝ちに行くことにしたんだ。そのために働いたんだからね。

今日、僕たちは役者ではなく、アーティストだった! 今日の走りは辛かったけれど、みんながそれを見て楽しんでくれることを望んでいるのさ」


■サガンと逃げ切って総合のタイム差を広げたフルームのコメント「最後の10kmは「その価値があるのか?」と自分自身に問いかけていた。現時点ではどこででも、ライバルたちからタイムを得る努力をする。キンタナは最後の週にとても強いのがわかっているからだ。だから、彼に対してタイム差を得る必要があるときには、いつでも取りにいく。

今のところ、自分のレースをただ楽しんでいる。マイヨ・ジョーヌでいることは夢のシナリオだ。最高の状態で競ってこそ自転車レースだ。ただ楽しみたいから、僕は下りでも平地でもアタックする。チームとしては、とてもよく一緒に走っている。今日、チームメートたちが僕を完璧な位置に置いてくれていたから、サガンを追いかけられたのさ」
 

モン・バントゥ区間は強風予報で6km短縮!

革命記念日の7月14日は、モンペリエから標高1912メートルのモン・バントゥ山頂までの184kmで第12ステージが競われる予定だったが、山頂は風速110km/hという非常に強い風が吹く予報が出ているため、主催者はゴールを6km下のシャレ・レナール(標高1435メートル)に変更すると発表している。この地域特有のミストラル(北風)は、平地でも14日は60km/hになる予報だ。
 
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO

■第11ステージ結果[7月13日/カルカッソンヌ~モンペリエ/162.5km]
1 ペーテル・サガン(ティンコフ/スロバキア)3時間26分23秒
2 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)
3 マチエイ・ボドナル(ティンコフ/ポーランド)
4 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウェー)+6秒
5 クリストフ・ラポルト(コフィディス/フランス)+6秒
6 ヤスペル・スタイブン(トレック・セガフレード/ベルギー)+6秒
7 エドワルド・ボアソンハーゲン(ディメンションデータ/ノルウェー)+6秒
8 アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル/ドイツ)+6秒
9 ゾンドルホルスト・エンガー(IAM/ノルウェー)+6秒
10 オリビエ・ナーセン(IAM/ベルギー)+6秒
15 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+6秒
17 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+6秒
22 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+6秒
26 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+6秒
27 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+6秒
35 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+6秒
65 ルイ・メインティス(ランプレ・メリダ/南アフリカ)+1分09秒
68 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+1分09秒
179 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+5分39秒
■第11ステージまでの総合成績
1 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)52時間34分37秒
2 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+28秒
3 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+31秒
4 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+35秒
5 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+56秒
6 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+56秒
7 セルヒオ・エナオ(スカイ/コロンビア)+56秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分13秒
9 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+1分13秒
10 ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ/チェコ)+1分28秒
11 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+1分23秒
12 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+1分52秒
13 ルイ・メインティス(ランプレ・メリダ/南アフリカ)+2分10秒
14 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+2分22秒
131 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+1時間43分25秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):ペーテル・サガン(ティンコフ/スロバキア)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ティボー・ピノ(FDJ/フランス)
■新人賞(マイヨ・ブラン):アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)
■チーム成績(黄ゼッケン):BMCレーシングチーム(米国)
■敢闘賞(赤ゼッケン):アルチュール・ビショー(FDJ/フランス)
(http://www.letour.fr/us/)
 
 






ツール第11ステージの公式ダイジェスト映像


Summary - Stage 11 (Carcassonne / Montpellier... 投稿者 tourdefrance_en