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ツール第12ステージは観客が原因の事故でマイヨ・ジョーヌのフルームが遅れたが、救済で総合首位をキープ!
レース
2016.07.15
第103回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、革命記念日の祝日となる7月14日に、モンペリエからモン・バントゥ中腹のシャレ・レナールまでの178kmで第12ステージを競い、ベルギーのトーマス・ドヘント(ロット・ソウダル)が逃げ切って区間優勝した。
モン・バントゥ山頂にミストラルの強風が吹き荒れたため、この日はゴールが山頂より6km下に設定され、ゴール手前残り1km周辺の沿道にはフェンスもなく、大勢の観客が溢れかえっていた。
終盤にメイン集団からアタックして先行したマイヨ・ジョーヌのクリストファー・フルーム(スカイ)、バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、リッチー・ポート(BMC)の3人は、観客の壁に阻まれて急停止したTV中継のバイクに衝突し、折り重なるように転倒。モレマはすぐレースに復帰できたが、フルームは自転車が破損してしまった。
この事故でフルームは総合を争うライバルたちより遅れてゴールし、暫定で出された総合成績では英国のアダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)が1位になっていた。
しかし、レース審判は1時間にわたって協議し、事故で遅れたフルームとポートに、モレマと同じタイムを与える救済措置を下した。これでフルームはマイヨ・ジョーヌを守ることができただけでなく、総合のリードをわずかに広げることもできた。
革命記念日のカオス
3km地点から14人の選手が逃げ出してレースは始まった。逃げにはドヘントの他に地元フランスのシルバン・シャバネル(ディレクトエネルジー)とブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)、セルジュ・パウエルス(ディメンションデータ)、ダニエル・ナバロ(コフィディス)、アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)が加わっていた。
逃げ集団は70km地点で集団に最大で18分45秒を付けた。総合成績で最も上位のナバロでもマイヨ・ジョーヌのフルームから30分以上遅れていたが、集団はスピードを上げて追走を開始。マイヨ・ベールのペーテル・サガン(ティンコフ)や、マイヨ・アポワのティボー・ピノ(FDJ)は集団から遅れてしまった。
ゴールまで残り52.5kmに設定されたカテゴリー4のゴルデの丘と、48.5kmに設定されたカテゴリー3のトロワ・テルム峠はドヘントが先頭で通過し、合計3ポイントを獲得した。残り50kmで、エティックス・クイックステップが引くメイン集団は逃げ集団とのタイム差を10分台にまで縮めていた。
逃げがゴールまで32km地点を走っていた時、トロワ・テルム峠の下り坂で、メイン集団の先頭を引いていたサイモン・ゲランズ(オリカ・バイクエクスチェンジ)が転倒し、すぐ後ろを走っていた3人のチームスカイの選手を巻き込んでしまった。ゲランズはこの時時速56.3km/hで走っていたが、コース上は45km/hの風が吹き、53km/hに至る突風も吹いていた。
モン・バントゥのふもとが近づいたゴールまで残り14kmで、逃げ集団からはドイツチャンピオンのグライペルがアタックして先行したが、ふもとに到着する前に捕まってしまった。ゴールまで残り10kmで、モン・バントゥの上り坂が始まると、先頭はナバロ、パウエルス、ドヘントの3人になった。ゴールまで残り7kmで、メイン集団はまだ7分後方にいた。
ゴールまで残り4kmでドヘントがアタックし、パウエルスは付いて行くことができたが、ナバロは遅れてしまった。このままベルギー人2人の争いになるかと思われたのだが、ゴールまで残り1kmでナバロは先頭に戻ってきた。しかし、ゴールスプリントを競う脚は残っておらず、最後は結局ベルギー人のゴール勝負になり、ドヘントがツールで区間初優勝を上げた。
チームスカイが引くメイン集団では、モン・バントゥの登坂が始まるとナイロ・キンタナ(モビスター)がアタック。すぐにチームスカイが反応して鎮圧したが、この動きで総合3位に付けていたアイルランドのダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ)が集団から遅れてしまった。
次第に総合を争う精鋭に絞られていったメイングループから、ゴールまで残り3.5kmでマイヨ・ジョーヌのフルームがアタック。すぐにポートとキンタナが反応したが、フルームがもう一度加速すると、キンタナは付いて行くことができなかった。
ここで後続集団からオランダのバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)が飛び出し、先行していたフルームとポートに合流した。3人は沿道に観客が溢れかえるエリアに突入し、人の波をかき分けるようにゴールを目指した。
ところが、すぐ前を走っていたフランステレビジョンの中継バイクが観客に阻まれて急停車し、フルーム、モレマ、ポートの3人は折り重なるように転倒してしまったのだ。
間もなくしてマヴィックのニュートラルカーが追いつき、フルームは代車を借りたが合わず、ゴールまで残り500メートルで別の代車の到着を待ち、チームメートのセルヒオ・エナオ(スカイ)に引かれてゴールした。
このアクシデントでフルームは総合2位のアダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)を筆頭とした総合のライバルたちから1分21秒遅れてゴール。前日までのイエーツとフルームのタイム差は28秒だったため、暫定の総合成績ではイエーツが総合首位と発表された。
ゴールまで残り3kmを通過した後に、落車や機材トラプルなどで遅れた場合は、遅れた時にいたグループと同じタイムが与えられる『3kmルール』は、ツールの頂上ゴールでは適用されないとルールブックに明記されていた。
しかし、審判は1時間に渡る協議を行い、事故で遅れたフルームとポートに、モレマと同じタイムを与える特別な救済措置を下した。個人総合成績の表彰式は、この決定が出るまで行われなかったため、イエーツのマイヨ・ジョーヌは幻となった。
総合成績ではモン・バントゥでメイングループから遅れたマーティンが1分56秒遅れになり、総合3位から9位へと後退した。
区間優勝したドヘントは、頂上ゴールで山岳賞ポイントを50ポイント獲得し、9ポイント差でピノを抜いて首位に立ち、マイヨ・アポワをふたたび獲得できた。
この日、グルッペットでゴールしたゲランズは、ゴール後の検査で落車した際に鎖骨を骨折していたことが判明。ツールを去らなければならなくなってしまった。
■マイヨ・ジョーヌを獲得できなかったイエーツのコメント「自転車レースは観客と選手がとても近い唯一のスポーツだ。それにはリスクも伴う。フルームがトラブルに見舞われたとき、僕はキンタナ、バルベルデと一緒にいた。調子がいいと感じてはいたけれど、フルームやポートに付いて行けるほどではなかった。だれもこんな風にマイヨ・ジョーヌは欲しくないよ。だから審判が下した決定は正しかった。明日はタイムトライアルで、僕の専門分野ではない。できるだけタイムを失わないことを祈っているよ」
■ツールで区間初優勝したドヘントのコメント「(2012年のジロの)ステルビオでの区間優勝はもっと感動的だった。初めてだったし、そのおかげでジロの最後の表彰台に上がることもできたからだ。けれどこれはツールだ。1年で最大のレースだ。僕のキャリアで最も大きな勝利だよ。これで足りないのはブエルタの区間優勝だけだ。だからグランツールすべてで区間優勝という目標を達成するために、他のグランツールをスキップするだろう」
7月15日はブール・サン・タンデオルからラ・カベルヌ・デュ・ポン・ダルクまでの37.5kmで、今年最初の個人タイムトライアルとなる第13ステージが行われる。
■第12ステージ結果[7月14日/モンペリエ~モン・バントゥ(シャレ・レナール)/178km]
1 トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)4時間31分51秒
2 セルジュ・パウエルス(ディメンションデータ/ベルギー)+2秒
3 ダニエル・ナバロ(コフィディス/スペイン)+14秒
4 ステフ・クレメント(IAM/オランダ)+40秒
5 シルバン・シャバネル(ディレクトエネルジー/フランス)+40秒
6 ベルチャン・リンデマン(ロトNL・ユンボ/オランダ)+2分52秒
7 ダニエル・テクレハイマノット(ディメンションデータ/エリトリア)+3分13秒
8 セプ・バンマルク(ロトNL・ユンボ/ベルギー)+3分26秒
9 クリスアンケル・セーレンセン(フォルチュネオ・ビタルコンセプト/デンマーク)+4分23秒
10 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+5分05秒
11 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+5分24秒
12 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+5分24秒
13 ルイ・メインティス(ランプレ・メリダ/南アフリカ)+5分24秒
14 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+5分24秒
15 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+5分24秒
16 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+5分31秒
17 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+5分31秒
18 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+5分36秒
19 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+5分05秒
20 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+6分30秒
25 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+5分05秒
26 ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ/チェコ)+6分51秒
183 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+28分24秒
■第12ステージまでの総合成績
1 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)57時間11分33秒
2 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+47秒
3 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+56秒
4 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+1分01秒
5 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+1分15秒
6 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分39秒
7 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+1分44秒
8 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+1分54秒
9 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+1分56秒
10 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+2分11秒
11 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+2分22秒
12 ルイ・メインティス(ランプレ・メリダ/南アフリカ)+2分29秒
14 ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ/チェコ)+3分14秒
140 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+2時間06分44秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):ペーテル・サガン(ティンコフ/スロバキア)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
■新人賞(マイヨ・ブラン):アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)
■チーム成績(黄ゼッケン):BMCレーシングチーム(米国)
■敢闘賞(赤ゼッケン):トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
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