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遂に掴んだ念願の1勝! 那須ブラーゼンの吉岡が第1回宇都宮ロードレースで初優勝!

レース
3月19日(日)、以前までジャパンカップで使用されていたコースを使って今年初めて開催された宇都宮ロードレース。強豪チームである宇都宮ブリッツェンやマトリックスパワータグをおさえて、地元栃木の那須ブラーゼンの吉岡直哉が大会初、チーム初、自身初のうれしい1勝をあげた。

text&photo●滝沢 佳奈子

鶴カンの激坂を舞台に繰り広げられるアタック合戦

序盤はアタック合戦が起こるものの決定打にはならない集団
序盤はアタック合戦が起こるものの決定打にはならない集団
少し離れても集団からすぐにブリッジをかけられてしまう
少し離れても集団からすぐにブリッジをかけられてしまう
大規模な土砂崩れによってしばらく完全に封鎖されていた、ジャパンカップのコースとしても久しい鶴カントリー倶楽部(通称:鶴カン)に向かう激坂。この激坂を使用した周辺特設コースで第1回目となる宇都宮ロードレースが行われた。トップカテゴリーのP1クラスタは、パレードランの10kmに1周6.4kmの周回コースを11周する総距離80.4kmで争われた。気温16度ほどまで上昇し、春の訪れを感じる気候であった。地元宇都宮ブリッツェンや那須ブラーゼンのファンも含め、多くの観客がこのコースの一番の見所、鶴カンの激坂に詰めかけた。
 
選手たちはパレードランのスタート地点である大谷資料館を出発し、一度メイン会場を経由してからリアルスタートに向かった。序盤は前日のクリテリウム同様アタック合戦が始まるが、どの攻撃も逃げの形成にはつながらない。「力が拮抗していて、アタックが続くんですけど決定打がなかったんです。」と那須ブラーゼンの清水良行監督が話す。逃げに乗せたいチームと逃げを許したくないチームの力が拮抗していたようだ。レース中盤にかけて有力選手を含む逃げができてもメイン集団から数秒から十数秒しか開くことがなく吸収されていた。
 
レース中盤、マトリックスの土井が中心に集団をコントロールする
レース中盤、マトリックスの土井が中心に集団をコントロールする
シマノレーシングは、序盤から積極的に逃げを作ろうと動きを見せていた。
野寺秀徳監督は、「まだそこまでチームとして誰か一人を勝たせるための動きをするよりも、チームの成長段階として、今いい形なのでそれぞれが優勝できるように逃げを狙って、誰でも行けるようにっていうのが今日の作戦でした。今日確かにその通りに前半から動いて、いい動きもあったんですけど、やっぱり逃げの展開ができなかった。
有利な展開ができなかったっていうのが一つと、そうならなかったら勝つための駒を進めるほどの力がチームにまだない。成長の実感は掴めているけど、このコースで本当の優勝争いをするのには力が足りなかったかと思います。」と分析する。


前日のクリテリウムでもチーム力を見せ、数的優位にもあるブリッツェンやマトリックスパワータグがほとんどの逃げにチェックに入る、あるいはブリッジをかけに行くなか、有力なメンバーの逃げになりそうな場合を見極めて必ずチェックに入っていたキナンサイクリングチーム。
石田哲也監督は、「初めてのコースだからどういう展開になるかわからないので、クリテリウムを見てもチーム力が拮抗してるのかなと思いました。ブリッツェンかマトリックスがコントロールするのはわかってたんですけど。あとは吉田(隼人)選手も調子がいいので、マトリックス的にも吉田選手で行くんであればそんなに攻撃をしないでしょうし、でもブリッツェンは行きたいだろうし。
その2チームプラスシマノも脚が揃ってるんで、そのアタックに僕らは反応していって、危険なものには椿(大志)、野中(竜馬)のエースクラスを乗せてっていう感じでしたね。」と語った。キナン同様、ほとんどの逃げに対応していたのは数的不利にある那須ブラーゼンもであった。
 
ラスト3周を残し、ブリッツェンが前を固めてサポーターの前を通過する
ラスト3周を残し、ブリッツェンが前を固めてサポーターの前を通過する
最終周回に入る前の鶴カンの上りでブリッツェンがペースを上げる
最終周回に入る前の鶴カンの上りでブリッツェンがペースを上げる
集団にいた那須ブラーゼンの岸崇仁は、「最後2周までで集団に僕と吉岡(直哉)さんだけになって、もともと最後僕が位置取って吉岡さんを上りで勝負させるっていう作戦でした。ラスト2周で僕が先頭集団から遅れちゃったんですけど、僕のいた第2集団が先頭に追いついて、またそこから僕がアタック反応したり自分から攻めたりして吉岡さんに脚を使わせないようにしていました。ラスト1kmくらいで全部集団が一つになってそこからブリッツェンとマトリックスが引き始めて、その後ろに僕と吉岡さんという構図でラスト500mまで行きました。」と話す。

完全な勝ちパターンに持ち込んでいたブリッツェンも、「最後の仕掛けどころ、瞬間的で感覚的なものだと思うんですけど、そこでうまくかみ合わなかったかなと。今まではベテラン同士があうんの呼吸で経験値で何も言わなくても感覚で走りを見てああしよう、こうしようっていうのが瞬間的にできていて、それが勝利につながってたことがあったと思うんです。
今回は最後、新人の岡と増田が残った時に本当に瞬間的な動きで増田が不利な状況に来てしまって。増田も不完全燃焼というか届かなかった。300m地点まで土井が引いていて、土井は上手いんで、後ろに増田、吉田と続いていて、増田先行させたらいいって土井が引くのをやめたんです。」とブリッツェン清水裕輔監督は話す。

残り300mで増田がスプリントを開始しても、スプリント力のある吉田をぴったり後ろにつけたままだと最後に刺されかねず、分が悪い。「増田は一瞬躊躇した。その瞬間に吉岡が行って、どうしようもなくて増田が行かざるをえなかったんですけど、その後ろに岡がいるんですよ。」清水裕輔監督は続ける。
ブリッツェンの事前のミーティングでは、チームとしては増田を勝たせることを優先させるが状況によってはいける人がいく、という話になっていたという。「その前に本当は岡は、増田を前に入れたりとかしなければいけなかった。でも岡も勝てそうだったから、迷ってしまったと思うんです。」
 

那須ブラーゼン悲願の1勝

勝利を確信し、拳を突き上げる那須ブラーゼン吉岡
勝利を確信し、拳を突き上げる那須ブラーゼン吉岡
ゴール前にはたくさんの観客が何重にも層になって集まり、選手が来るのを今か今かと待ちわびていた。
一番最初に見えるのは赤いジャージ(ブリッツェン)か緑のジャージ(マトリックス)のどちらか⁉︎と話していた実況席から「おっと!黒いジャージです!……那須ブラーゼン!」と伝えられると大勢の観客に大きな衝撃が走った。後ろから迫るルビーレッドジャージの吉田との差を自転車2つ分ほど空けたブラーゼンの吉岡が後ろを振り返るとゴールラインを割る前に勝利を確信し、大きく大きく右拳を突き上げた。

「残り300mちょいで行きました。地元のコースですし、ジャパンカップで何回も走ってるので、コースの特徴というのはもう熟知していて仕掛ける場所とかも前の日に考えて作戦を練って、その通りに行った感じでした。うまくみんながアシストをしてくれて、最後は自分の闘いだと思って集中して勝負できました。チームの初優勝が地元の栃木で、僕が優勝できたっていうのは本当に嬉しくて、チーム全員のおかげで勝てたので本当に感極まるものがありますね。チームメイトが序盤から終盤まで動いてくれて、僕はすごい楽に走れて、最後の勝負ももがくタイミングも予定どおりにうまく決まって優勝できてすごい嬉しいです。」と吉岡は喜びを語った。

駆けつけた清水良行監督は涙しながら吉岡の勝利、那須ブラーゼン悲願の1勝を讃えた。続々とゴールラインに到着するチームメイトたちも、吉岡と抱擁を交わし、チーム全員で掴んだ念願の勝利をかみしめていた。
清水良行監督は、「こうやって若手のチームで邁進して、イチから作ったチームで勝ったというのが本当に嬉しくて、この1勝には大きい意味があるのかなと思います。しかも今日は5人で走ってるので、一人一人が機能して連携がうまくいったということだと思います。吉岡の顔見たら終始落ち着いていて、これはいけるなっていうのは思っていました。最後本当に強かったですね。増田選手であったりあれだけ強い選手がいてエースの闘いの中でちぎっていけるっていうのは彼の中でもすごい大きい自信になったと思います。」とあふれんばかりの喜びを爆発させた。

再来週の3月31日(金)~4月2日(日)には、また栃木県内全域を舞台にしたUCIレース、第1回ツール・ド・とちぎが開催される。Jプロツアーに参戦する多くのチームと海外を拠点に活動するチーム、海外チームも参加する本格的なラインレースだ。シーズン序盤からチームの力や個人の力が見られる今年最初の国内ビッグレースにも是非注目してみてほしい。
 
チーム悲願の勝利に監督、チームメイトが喜びの涙を流しながら抱擁を交わす
チーム悲願の勝利に監督、チームメイトが喜びの涙を流しながら抱擁を交わす
シャンパンファイトでシャンパンを浴びまくった後の笑顔
シャンパンファイトでシャンパンを浴びまくった後の笑顔

第1回JBCF宇都宮ロードレース リザルト

1位 吉岡直哉(那須ブラーゼン) 1時間42分49秒
2位 吉田隼人(マトリックスパワータグ) +1秒
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +2秒
4位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +2秒
5位 西村大輝(シマノレーシング) +3秒
6位 野中竜馬(キナンサイクリングチーム) +4秒
7位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム) +7秒
8位 横塚浩平(リオモベルマーレレーシングチーム) +9秒
9位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +12秒
10位 谷順成(ヴィクトワール広島) +13秒
 
第2戦終了時点
ルビーレッドジャージ(個人総合) 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
ピュアホワイトジャージ(U23個人) 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)

 
フェミニンのレースを制したのは、自身の脚質とコースが合っていたと話すイナーメ信濃山形の金子広美
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