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ロードバイク青春映画『神さまの轍』が2月24日(土)より公開!本作主演俳優の荒井敦史&作道雄監督 単独インタビュー

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2月24日(土)より京都を皮切りに公開される映画『神さまの轍』は、京都府南部の井手町を舞台にロードバイクに青春を捧げた若者たちを主題にした作品だ。公開を前にして、劇中でプロロードレーサーとして活躍する主人公のひとり・佐々岡勇利を演じる俳優の荒井敦史、そして若干27歳にして商業映画作品初監督を務める作道雄の2人へ単独インタビューを行った。作品中で描かれる今を生きる若者たちの苦悩や葛藤、情熱を注いだロードバイクの描写、そしてそれぞれがこの映画作品にかけた想いとは?
(text&photo:江里口恭平)

 

自転車乗りの目線にこだわった映像作り

荒井敦史の演じる佐々岡勇利は、劇中でロードバイクに目覚め、プロロードレーサーとして活躍する
荒井敦史の演じる佐々岡勇利は、劇中でロードバイクに目覚め、プロロードレーサーとして活躍する
サイスポ(以下、CS):ロードレーサーという役を演じる上での印象を教えてください。

荒井敦史(以下、荒井)
「はじめプロロードレーサーという役を受けたとき、ロードバイクについてあまり詳しくありませんでした。スポーツバイクには街乗りで少し乗ったことはありましたが、本格的な競技用自転車に乗るとなった時にまず驚いたのがビンディングペダル。ペダルと足がくっついていつなんて、慣れないうちはなかなか怖かったです。
自分はそれまで出演した舞台での役作りで、結構がっしりした体格となっていたので、演じ始めたときは周りからロード選手よりもケイリン選手みたいな体つきだな、なんてからかわれていました。

「けれど今回の作品では、見ている人にリアリティを感じてほしかったということもあり、実際にロードバイクで走るシーンは他のアクションアクターではなくすべて自分自身で乗っていました。
その中で多くの人からロードバイクの乗り方について教わったのですが、ダンシングのやり方ひとつとっても人によって教え方が違ったりして、戸惑うことも多かったですね。
急なコーナリングの際には、外側加重を意識して曲がることを心がけていたのですが、あとで予告編を見たロード乗りの友人が「本物のロードレーサー見たいにコーナーが決まっていた」と言ってもらえて、見ている人に影での努力が伝わってよかったなとうれしかったこともありました。演じてる側はコーナーの度にスリル満点でしたけどね(笑)

「ロケ地の井手町では、、役者たちの間で通称『ポッター通り』と呼ばれている、『ハリー・ポッター』に出てくるような木々に囲まれたちょっときつい坂道があったのですが、そこで何度も何度も乗り込んでいくうちに楽しくなってきて洋介(もう一人の主人公)役の岡山君と一緒に『ここでアタックかけようぜ!』って互いに攻め合ったりしていました。それくらいに、ロードバイクに乗ることを楽しみつつ、演技をさまざまに工夫していけた撮影現場でしたね。
終盤のレースシーンの撮影では、臨場感を出すためにトラックの荷台に積まれたカメラを二人が追いかけるようなかたちで、ゴールスプリントを行いました。トラックの後方と乗っているロードバイクの前輪がかなりスレスレになるくらい近寄る必要があったのですが、そのシーンでの体の動きや表情には注目してほしいと思います」。
 

ロードバイクを題材にした映画を撮ろうと思ったきっかけ

企画・脚本・監督を勤める作道雄は10代・20代の目線で描く物語に定評があり、今作でもロードバイクを主軸に若者たちの人間ドラマを展開する
企画・脚本・監督を勤める作道雄は10代・20代の目線で描く物語に定評があり、今作でもロードバイクを主軸に若者たちの人間ドラマを展開する
CS:今回初の商業映画作品を撮るにあたって、ロードバイクを題材にした理由を教えてください

作道雄(以下、作道)
「昔からスポーツを自分ですることよりも、テレビなどで試合を観戦することが好きでした。けれど映画やドラマなどのスポーツものの作品となると、なんだか自身で今一つ感情移入できない部分があったんです。
それは自分がスポーツの経験がないということよりは、そのスポーツもの作品の中のテーマでよくある、熱い友情やチームワーク、温かい周囲の人々の支え……そういった作品の中で表現される、わかりやすくシンプルな感情といったものが、今一つ自分で共感することができなかったんです。
なぜなら普段私たちが生活していて、”普通”に周囲と接することはあるにせよ、作品みたいに感情を直接的に表に出すことはなかなかないという感触があったので。

「そして今回自転車というスポーツを作品のテーマに選んだ理由として、ロードバイクってもちろんチームスポーツという側面もあるとは思うのですが、それよりも『その人自身とメカ』が一緒になって坂を淡々と上るような、ストイックさが大きいのではないのかなと思ったからです。
己の力で頑張るしかない、自分自身の内面と向き合うという側面が強いのではないかと感じ、もし今スポーツを題材にした人間ドラマを撮るときにそういう『個々の感情』がせめぎあう空気感が合っているのではないかと考えました。
「私はロードバイクを趣味にしているというわけではないのですが、学生時代にママチャリで京都の街中を走り回っていて、あちこち走りに行ったり坂道を上ったりしているうちに、なんとなくですが自転車で走るという感覚が気に入っていたのかもしれません。

「そのうえで今回の作品の撮影の中でこだわりたかったのは、自転車に乗っている人の目線に寄り添うということ。
もし絵としてかっこよく撮ろうと思ったら、地面において下からのアングルから、走ってくる自転車を撮って迫力を出す方法なんかもできたと思います。けれど私が目指したかったのは、走っている人・それを実際に見ている人と同じ目線で表現するというものでした。
自転車に乗っている人がこの作品を観ていて『この坂ででこのタイミングで変速したなら、あれくらいの勾配があるくらいキツイんだろうな』なんて想像してもらうことができるようなくらい映像としてのリアリティにはこだわりを詰め込みました。ロードバイクの走っている姿って、それだけでかっこいいですから」。
 

「現代の若者」たちのヒューマンドラマの難しさ

CS:勇利(役:荒井)と洋介(役:岡山天音)という、対照的な性格の2人がそれぞれ夢を追いかけ苦悩する姿が印象的でした

荒井

「今回の作品は、中学生時代にあることがきっかけで一緒にロードバイクを始めた勇利と洋介の2人が成長し、勇利はプロロードレーサーの道へ進み、ロードバイクをやめた洋介は就職活動や社会人生活を送っていくという、2人のそれぞれの夢や苦悩を軸に物語は進んでいきます。
でもそういう話って、結構誰にでも身近にある経験なんじゃないかなと思うんです。僕もかつてサッカーチームに入っていたのですが、当時仲の良かった友人がJリーグのユースチームに入ってプロの道に進んでいく一方で、僕はやめてしまった。
そんな彼を自分とは違うのだと、ある意味すごく一歩引いた目線で見ていることやその距離の取り方が、演じるうえですごく共感できたし、ある意味今の若者っぽいなと思うのです」。


作道
「私はこれまで若者の青春をテーマにした作品を扱うことが多かったのですが、私自身も含めて現代の若者って、あまり直接的には感情を出さないと思うのです。表情一つをとってみても、思っていることを顔に出さず、本心を抑え隠して意見するといった、どこか冷めた部分があると思います。
そういったものをフィクションの作品のなかでリアリティをもって表現するということは、登場人物を演じる役者さんにはセリフや表情、動作がある意味ばらばらに表現しなくてはならない。それは役者さんたちにすごく難しい要求をしていたのかなと思います。(荒井さん笑い)

「この映画を撮るにあたっては、荒井さん・岡山さんと同じ年齢が近いということもあり、今の若者たちのポジティブな面も、イライラや不満、理不尽さといったネガティブな面も含め、温度感の共有ができていました。
それこそ映画の撮影に入る前に、3人で京都の居酒屋でああでもないこうでもないと熱く語り合った夜もありましたね。

「結果的には主役二人のキャラクターと登場人物が相互にすごくうまくかみ合って、彼らのうちから自然な表現を引き出してもらえたのかなと思います。
今回の作品はやはりロードバイクというメインテーマがあるのですが、それとともに今を生きる若者たのヒューマンドラマに寄り添って観てほしいです。そうすれば物語終盤のレースシーンで、『2人の若いロードレーサーたち』の活躍がよりいっそう実感をもって伝わっていくはずです」。


CS:最後に、これから映画を観る自転車ファンに一言お願いします

荒井
「ロードレースを題材にした作品ではあるのですけど、まず先入観なく”普通”に観てほしいなと思います。きっと観ている人自身が、心のどこかで彼らの気持ちや行動がすとんと腑に落ちる瞬間が必ずあると思います。そして作品を観終えた後に、主人公2人がそこからどう進んでいくのかを、みなさんで想像してもらえたらすごくうれしいですね」。

作道
「”青春”映画なので、観た人の年齢や環境によって受けるとる印象が少しずつ違うかもしれません。
それは、まだロードバイクを始めたばかりの自分や友人など、近しい人にとっての身近な話として感じてほしいです。そして、今自転車を趣味にしてすごくハードに走っている人には、あるシーンで使われた機材や出演者、その時の登場人物の動きなどマニアックに楽しんでもらえるシーンがふんだんに盛り込まれています。
きっと観ていると、現場での細かい作業や舞台裏なんかを想像できるシーンがたくさんあるかもしれません。それも含めて作品を楽しんでもらえたらと思います。
この作品を観たみなさんが、自分の周りのサイクリストや、もちろんそうでない友人に、どんどん『神さまの轍』を広げていってもらえたらうれしいですね」。



 
荒井敦史(佐々岡勇利 役)

 1993年5月23日生まれ、埼玉県出身。 
第21回ジュノン・スーパーボーイ、ビデオジェニック賞受賞。俳優集団D-BOYSのメンバー。ドラマや映画、舞台など 幅広く活躍。主な出演作に、テレビ朝日系『忠臣蔵~その男 大石内蔵助』・『濃姫』、関西テレビ/フジテレビ『GTO』、 ドラマ・映画『笑う招き猫』(監督:飯塚健)、映画『リアル 鬼ごっこ4』(主演監督:安里麻里)、『悪の経典』(監督:三 池崇史)、『ズタボロ』(監督:橋本一)、『脳漿炸裂ガー ル』(監督:アベユーイチ)、映画・舞台『真田十勇士』(監 督・演出:堤幸彦)、つかこうへい七回忌公演『新・幕末純情 伝』(演出:岡村俊一)、『里見八犬伝』(演出:深作健 太)、『柔道少年』(演出:中屋敷法仁)など。12月16日には出演映画『ボーダーライン』(監督:渡辺武)がシネマート新 宿・心斎橋にて公開、1月より出演映画『ちょっとまて野球部!』(監督:宝来忠昭)が公開している。また、2017年10月期から放送を開始したBSTBSドラマ『水戸 黄門』の新シリーズに格さんこと渥美格之進役としてレギュラー出演しており、ますますの活躍が期待されている
 
 
企画・脚本・監督 作道雄

1990年生まれ、大阪府茨木市出身。
京都大学法学部卒業。株式会社クリエイティブスタジオゲツクロ 代表取締役。大学時代、演劇活動と自主制作映画の製作をきっかけに創作活動を開始。大学卒業と同時に、KBS京都での連続ドラマやTVCMを製作。2017年、脚本を担当した、滋賀県を舞台にした映画『マザーレイク』が全国公開。10代・20代の目線で描く物語に定評があり、撮影地域の景色、風情、人情を背景とした地に足のついた描写が特徴である。




 

映画『神さまの轍 -Checkpoint of the life-』


ストーリー:
京都府・井手町にある中学校に通う勇利と洋介は、ふとしたきっかけでロードバイクに熱中していく。どこに向かうか見えなくても、無心にペダルを漕ぎ続けることだけが、勇利と洋介にとっての未来であった。数年後、2人は再会する。勇利はプロのロードレーサーとして歩むことを決め、また社会人となった洋介はロードバイクに乗ることさえやめてしまっていた。そこから、2人の人生は大きく変わっていくことになる。やがて、掴んだ夢に挫折してしまう勇利と、自分の夢を見つけることが出来なかった洋介の人生とが、思い出の地、井手町を舞台としたロードレース大会《ツールド KYOTO2019》で 交錯する。白熱するロードレースで2人の若者が選ぶそれぞれの未来とはーー。

出演:
荒井敦史
岡山天音
望月歩 
吉沢太陽

阿部進之介 
津田寛治 
六角精児

企画・脚本・監督:作道雄 
音楽:宮内優里/中村佳穂
主題歌:フレデリック「たりない eye」(
A-Sketch
制作プロダクション:クリエイティブスタジオゲツクロ 
配給:エレファントハウス 
後援:京都府・井手町・京都産業大学・京都府自転車競技連盟・日本自転車普及協会 
©2018 映画『神さまの轍』製作委員会 
公式HP  kamisamanowadachi.com

*2018年2月24日(土)~京都先行公開!(イオンシネマ久御山、イオンシネマ高の原) 
2018年2月24日(土)~OSシネマズ神戸ハーバーランド
2018年3月3日(土)~大阪・第七藝術劇場
2018年3月17日(土)新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国ロードショー!