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自転車旅人・西川昌徳「中南米縦断自転車旅レポート」第5弾 コロンビアまで9700kmを走破!

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世界を自転車で旅し、学校講師の経歴を生かし、途中で授業も行う独自のスタイルで旅を続けている自転車旅人・西川昌徳さんからレポート第5弾が届いた。

2017年6月26日、メキシコシティからスタートした自転車旅。コロンビア到着後に判明した左足首から先の麻痺の状況により、ゴールを目指さずリタイアも考えたが、日本人医師とのテレビ電話による面談にて、時間はかかるものの完治する症状だと分かり、首都ボゴタまでの走行を再開した。

2018年1月、無事にボゴタまで走りきり、日本とのLIVE授業も実施し、あとは帰国だけだと思われた帰国前日にタクシーにはね飛ばされ負傷。幸い大事に至らなかったもののケガを抱えての帰国となった。今回の6カ月間の旅で訪れた国は10カ国、走行距離は9700km。今回の旅を振り返るとともに、これからの展望について記す。 


 

旅の概要

前回の旅を区切ったメキシコより、約6カ月かけて中南米大陸を縦断し、南米ペルーを目指す自転車旅。体験や出会いを通して生まれた物語や気づきを表現することを、目的とする。

また、旅の日常や世界の【いま】を共有するプログラムを西川さんが講師を務める小中学校とで行う。LIVEでつなぐテレビ電話授業だけでなく、メッセージアプリを利用した、生徒との直接的なコミュニケーションや、動画のやりとりなどをすることで、国際理解だけでない、双方向のコミュニケーションによる世界とのつながりを生み出す。
 

自転車旅のコンセプト

テント、調理道具などアウトドアで使用するキャンプ装備を持ちながら、最低限のパッキングサイズで旅をするための可能性を探る。具体的には、バイクパッキングと呼ばれる自転車に荷台を取り付けず、フレームやハンドルにバッグを直接取り付けるパッキングスタイルを選ぶことにより、シンプルで軽く、走る場所を選ばない自転車旅の可能性を広げるスタイルでの長期ツーリングを確立する。

前回の強盗事件の反省もあり、キャンプメインではなく宿も利用しながらの旅となるが、なるべく自然やその国の日常と近く、またそこに生きる人とのつながりを生み出せるようなルート選びや行動を心がける。バイクはKONA ROVE STを使用。

学校授業のコンセプト

これまで実施してきた「世界を伝える」というコンセプトだけでなく、子どもたちの知らない世界への興味関心を生み出すきっかけづくりや、自分の思いや考えを表現するという部分をしっかりと育んで行けるよう、授業の枠にとらわれない関わり方を目指す。

具体的には、子どもたちが自由に使えるiPadのメッセージ機能を利用し教室と旅先の西川をつなぐ、直接的なコミュニケーション環境を作ったり、メッセージのやりとりだけでなく写真や動画のやりとりをすることでより分かりやすく伝えられる環境づくりを行う。

インターネットテレビ電話での交流には状況に応じて、iPad、iPhoneを使い分けて実施。インターネット環境は現地キャリアSIMやWi-Fiを利用。
 

旅の進捗状況


2017年6月26日よりメキシコシティから自転車旅をスタートした今回の中南米自転車旅。10カ国目のコロンビア・ボゴタまで9700kmを走破し、1月16日に日本に帰国した。訪問国は、メキシコ、キューバ、ベリーズ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、コロンビア。 
 

自転車、キャンプの状況

総走行距離は9700kmで今回の旅を終えた。コロンビアでの左足首から下の麻痺により、病院での検査や療養のため当初予定していたルートを短縮しての旅の終了となった。それに追い打ちをかけるように、帰国前日の交通事故。幸いケガは大事に至らなかったが、今回までずっと歩んできた相棒の自転車がダメージを負ってしまった。 

 

学校授業レポート

講師を務める各学校とのLIVE授業を実施した。 

この半年間におよぶ旅のなかでのLIVE授業で、学校の先生とともに悩んでいたのが、子どもたちにとって中米や南米の国はイメージが無い、ということだった。国の名前ひとつとってもニュースや教科書であまり登場しない国がほとんどだったのだ。もともと持っているイメージがないので、調べ学習(事前リサーチ)にしてもなかなか感覚がつかみにくいということだ。

しかし、テレビ電話を通した交流で分かってきたことがある、それは子どもたちと、こちらの出演ゲストとの【共通点】を見つけ出す手助けをしてあげると、子どもたちにとっての実感や、自発的なコミュニケーションが見られることだ。僕たちオトナだってそうだ。まったく縁もゆかりもないところの人と急に話をしなさいと言われても困ってしまう。けれども、相手のなかになんでもいい共通点が見つかると、そこをきっかけにして仲良くな れる。

「ポケモンが好きですか?」「あなたの国でもサッカーが人気ですか?」 「ドラゴンボールを見ていますか?」 これらの質問は学校授業としては幼稚と思われるかもしれない。けれど、子どもたちはこうして自分と相手の接点を見つけようと授業のなかでがんばり、ひとつきっかけが生まれるだけで、教室に笑 い声が広がるようになる。 僕は彼らにとっての国際理解や文化交流はやはり堅苦しいものではなく、どれだけ「世界を身近に感じされることができるか」というきっかけをつくれるかどうかだと思うようになった。 

 

旅での出会い

最後に訪れたコロンビア。ケガの影響もあり当初の予定よりだいぶ少ない走行となったが、本当に素敵な人達と出会うことができた。たくさんの笑顔をいただいた国コロンビア。ツラいことはあったけれども、最後まで現地で出会った人々に支えられながら旅を終えることができた。 

 

旅の心模様

「今回の旅で得たものはなんでしたか?」 帰国直後の報告会、参加された方にこう聞かれ、正直考えてしまった。

パンクは27回で済んだが、2度の盗難(パスポートを除く全財産と貴重品全て)、転倒による怪我に左足の麻痺、そして極めつけにはタクシーにはね飛ばされ負傷したまま帰国という顛末。気持ちを整理する間もなく、報告会の本番を迎えたという感じだった。少し考えてから僕はこう答えた。

「たしかに・・・今までの旅でもトラブルはありましたが、それが起こり、受け入れ、また前を向くというステップをきちんとふめるものばかりでした。それが、今回は例えるなら、ケガをして、やっとかさぶたになりかけたところに、またケガをしてしまうような・・・そんなことの連続のような感じでした。

でもなんとなく大切なことがわかった気がします。それは自分がどんな目に遭おうとも、やっぱり世界には優しさや良いことが存在していることです。起こったことひとつひとつに、心を嫌な気持ちで染めてしまっていたとしたら、きっとそこから立ち直るには時間がかかったと思います。けれども、起こったことを受け入れて、少しでいいから自分らしさを残そうと努力したら、そこからまた素敵なことや出会いがたくさん生まれました。」

本当に最後まで支えられていることを、生かされていることを感じたまま旅を終えた気がする。 僕にとってはしんどい旅だった、盛り上がりに欠ける旅だと思っていたし、弱音もたくさん吐いた。 しかし、帰国後たくさんの人から「ありがとう」をいただいたときに、なんとなくこう感じた。 今回の旅は、なんとなくだけれど、見守ってくださる方々の心に触れるものがあったのかもしれない。

僕は人の心を動かせるような物語を、出会いを生み出したくて、ここしばらく旅をやってきた気がする。それは言うなれば、リアルな体験を積み重ねながら、けど表現はどこかストーリーを作りに行っているような感じだ。それが今回の旅では見事に打ち砕かれた。ストーリーを作りに行こうとするころにはもう次のトラブルに見舞われているのだ・・・。おかげで作る間もなく現実の心の声が表現に溢れた。

僕はいつの間にか、仕事にしてしまっていた。旅人という仕事を作り上げていたのだ。 けれど、本当の意味で自分の心が震え、押しつぶされそうになったり、跳ねたりするのは、やはり予定調和の旅や物語ではなく【思ってもみない現実にぶち当たったとき】なのだ。それはきっと見てい る人にも伝わっているだろう。

今回の旅を始める前、じつはどうしようもなく気持ちが沈んでコントロールできなかった。 好きなことのはずなのに、社会としての役割を持ち、使命感をもってやってるのに。 どうしても気持ちが持ち上がってこなかった。

そのときすでに、僕はどこかで気づいていたのかもしれない。旅の中のある日、こう思った。 「このまま旅を続ければ、きっと来年また同じことをしているだろう」と。 そんな旅人には新しい風を運ぶことなんてできない。だって自分の心が動かないのだから。

だから今年は一度リセットしてみようと思う。もう一度、はじめてみようと思う。 僕が、12年前に旅をはじめた日本を旅してみようかと思う。 今度の旅はちょっと変わっている。これまで切り詰めてきたスタイルもリセットだ。

ロングテールの長い自転車には、どこでも本格的にコーヒーを淹れることができる装備を積む。 出会った人にその場で写真をプレゼントできる装備を積む。 出会った相手が満足するまで、自分の心も手間もかけられるような時間を作ろう。 「あんたに出会えてよかったわぁ」と言ってもらえるように。 DAILYLIFEというプロジェクトにする。日常という意味だけど、DAILY=1日 LIFE=一生という意味も付け加えた。

出会い、生まれる、じてんしゃ旅。 出会いが生まれ、その日いちにちの物語が生まれ、そして次の行き先がその出会いのなかで生まれていく。そんな旅を1年間続けてみようかと思う。1年後にどんな思いが僕を待っているのか。どんな自分になっているのだろうか。そして僕が出会った人たちは、僕のことを覚えてくれているだろうか。

今年はあらたな冒険の年です。生き方の冒険をしてみようと思います。 今回の旅も見守ってくださり、ありがとうございました。 これからも、どうか見守っていただければと思います。よろしくお願いいたします。

西川昌徳
 

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