
●県道29号線は龍神村から田辺市街に抜ける道。虎ヶ峰峠を越えると切り立った尾根上の道を爽快に下る絶景ルートとなる |
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1.牛廻越へ向かう途中、農作業を終えたおばちゃんに会う。「エライ」と言われほめられたかと思ったがこの先の道が「キツイ」という意味だった。2. 3.国道425号線沿いはトンネルも個性的で味がある。4.牛廻越の峠は奈良と和歌山の県境にあたる。前日の昼過ぎに十津川村に入ってから70㎞近くこいでようやく十津川村を抜け出した。日本一大きな村は伊達じゃない!5.峠を越え、龍神方面に下る。こちらも路面が悪く油断できない。ちなみにこの日2人合わせて5回もパンクした |
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移動距離:約90㎞ |
JR五条駅→国道168号線→新天辻トンネル→猿谷ダム→谷瀬の吊り橋→風屋ダム→果無集落→十津川温泉小料理宿「山水」 |
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移動距離:約90㎞ |
国道425号線→牛廻越→国道371号線→ 県道29号線→虎ヶ峰峠→奇絶峡→天神崎→JR紀伊田辺駅 |
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アプローチ |
鉄道なら起点となるJR五条駅までJR大阪駅から鶴橋、大和高田経由で1時間30分。帰路はJR紀伊田辺駅から天王寺経由、特急利用で2時間10分。クルマなら大阪市内から南阪奈道経由で五條市街まで約1時間20分。紀伊田辺までは阪和自動車道経由で約2時間半。 |
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宿泊情報 |
十津川村に多数ある。
小料理宿「山水」 奈良県吉
野郡十津川村平谷946-1
TEL:0746・64・0402
1泊2食付き1万500円~
湖泉閣「吉乃屋」 奈良県吉
野郡十津川村平谷432
TEL:0746・64・0012
1泊2食付き1万2750円~ |
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走行アドバイス |
五條から十津川に向かう国道168号線は路面がよく整備されていて走りやすい。十津川と龍神を結ぶ国道425号線は舗装はされているものの路面の凹凸や落木に注意が必要。 |
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●杉の木が整然と立ち並ぶ林間を抜ける。変化に富んで非常に趣深いニッポンの峠道だ |
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●虎ヶ峰峠から下る途中にある道の駅「紀州備長炭記念公園」で梅ドリンクと梅エキスを購入。梅ドリンクには大粒の梅が入っており2度おいしい! |
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●虎ヶ峰峠に向かう最後の坂を上る。県29号線は路面が広く走りやすい |
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●ずっと緑のなかを走ってきたので海が見たくなり白浜の海岸を望む天神崎まで行くことに。雲が厚く夕日が見られなかったのが残念! |
これぞニッポンの峠道
エライ酷道425
翌朝目が覚めると雨は上がっており、雲間から日の光がのぞいていた。
今日は進路を西に取り、国道425号線を龍神方面に向かう。さらに国道371号線、県道29号線と乗り継ぎ、紀伊田辺へ。途中、牛う し廻まわし越ごえと虎ヶ峰峠の2つの峠を越える。
牛廻越は、紀伊半島の道は走っていないところがないというほど熟知している奈良県在住のサイクリスト・CanCanさんオススメの峠。信州のようなダイナミックな峠とは違い、見晴らしはけっしていいわけではないが、味わい深いひなびた雰囲気が魅力の紀伊半島の峠を代表するような、ディープな峠であるという。
その名の由来も、地図を見れば一目瞭然。山と山の合間を縫って、うねうねと蛇行を繰り返し、標高800mあまりの峠まで慎重に上っていく。十津川温泉から龍神温泉まで直線距離にして20㎞ないところを、40㎞以上かけて行くことからも、そのうねうね具合が推しはかれよう。地元の人は"ヨンニーゴ"と聞くとだれもが顔をしかめるほどの難ルートだ。
牛廻山をはさむように国道425号線と並行して走る県道735号線も似たような道らしく、そちらには引牛越という名称が与えられている。この2つの道は、荷物を運ぶ牛たちの間でもさぞ悪名高い峠だったに違いない。
宿を出るとしばらくは、細かいアップダウンが続く。上ったり下ったりを繰り返しながら、じわりじわりと高度を上げていく。ただでさえうねうねとした道に加え、路面にごろごろ転がる木の枝や石を避けながらうねうねと進むためいっこうに距離が伸びない。クルマ1台がやっと通れる程度の道幅で、路面も相当悪い。ここが国道というから余計に驚きだ。
クルマでも不便そうなところだが、それでもところどころ集落があるから不思議だ。ちょっとでも平らなところがあればそこに家を建て、斜面を利用して野菜や果物を栽培している。
やがて建物も畑もなくなり、急峻な山の斜面を限りなく濃い緑の葉をたんまり蓄えた木々だけが埋め尽くすようになると、さすがにそろそろ峠だろうと甘い考えを抱きたくなるが、そんな淡い期待を打ち砕くものが左手にそびえる山のはるか上に見えてしまう。
「まさかあっこまで上がらへんよなぁ」
「きっと別の道ですよ」
はるか頭上のガードレールから目をそむけるように前を向いてこいでいると、向こうから1人のおばちゃんが歩いてくる。
「こんにちは!」
「どこまでいかはるん?」
「龍神のほうに」
「そらエライわいね」
「どうも~」
「どうもやあれへん。エライゆうんはキツイゆうこっちゃ」
ということは、やっぱりあそこまで上るのね……。
案の定、道はやがて山に吸い込まれるように上っていく。その昔文句1つ言わずに山を越えていった牛たちは本当にエライと思う。
圧巻のスケール!
虎ヶ峰峠
龍神の村を一気に駆け抜け、いよいよこの旅最後の峠、虎ヶ峰峠に向かう。こちらは地元白浜出身の石田ゆうすけさん推薦の絶景峠。
県道29号線に入り、最後の力を振りしぼって坂を上りきると、緩やかに下っていく。牛廻越とはうってかわって広い道に快適な路面。引き締まった虎の背中のような急峻な尾根の上を豪快に下る。深い谷がどこまでも広がり、はるか向こうまで峰々が連なっている。こんなに気持ちのいい道があったのか。
いつまでも走っていたい――そんな道と出合ってしまうと、また峠越えがしたくなる。
ニッポンには、まだまだ知らない峠がたくさんある。 |
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