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ハイスピードの加速に酔いしれる
デダチャイと共同開発したマグネシウムチューブにより、ピナレロの盛栄とともに03年、華々しく登場したフラッグシップがドグマである。
近年、怒とうのごとく押し寄せるカーボン化においても、その際だった個性にファンも多かった。そんなドグマにフルカーボンの《ドグマ60・1》 が加わることに な っ た 。 マグネシウムモデルも継続販売されるというが、やはり時代にあらがえなかったのだろう。
ドグマ60・1のハイライトは、左右非対称のフレーム形状にある。自転車は駆動部が右側に集約される。 そこでピナレロはフレームにかかる 応力が左右で異なると考え、シート&チェーンステー、そしてフォーク などのフレームの各所に左右で異なるデザインを採用したのだ。
素材は東レ製のハイモジュラス60トンカーボン。このクラスの高弾性繊維は高剛性を実現するには有利だ が、その反面、引っ張り強度が低いので破断しやすい傾向がある。そこでカーボン繊維にポリマーアロイを配合する「ナノアロイテクノロジー」により、衝撃が加わった際に可塑性 変形にとどめ、破断やクラックなどの発生率を低下させているという。
さらにフレーム製作にはチューブ裏側を平滑にして、余分な重量増を防ぎ、剛性と強度アップが可能な「EPSテクノロジー」を駆使している。 こうした新テクノロジーの集合によ り、ドグマ6 0・1は890gの重量に仕上げられている。
マグネシウム時代のドグマもそうだったが、ピナレロの高級モデルは力強い加速感が魅力だ。ドグマ60・1にもその伝統は受け継がれる。 剛性は高く、ペダルを踏む感覚は軽量車に見られるパリッとしたものではなく、どちらかと言えばずっし りとした塊っぽさを感じる。
しかしながら、ペダルを踏み込んだときに脚が負けるような嫌な硬さは感じないのだ。恐らくこれは、BBまわりとヘッド、後三角部分の剛性バランスが優れているためだろう。
したがって重めのダンシングで加速を試みると、自然と体の軸を意識させられ、ペダルを真下に踏み下ろすことができ、なおかつまっすぐ走れる感覚が強いのだ。これが硬いだけで剛性のバランスが悪いバイクだ と、体の軸に対する意識を強くしないと速度が伸びてゆかないのだ。
ドグマ6 0・1は”さら脚”なら、どこまでも加速できそうな感覚さえあり、軽いギヤでシャカシャカと加速するよりも、高速時に重いギヤでグワッと加速するほうが断然気持ちいい。重いギヤを踏める選手好みの1台だ。
そして、オンダFPX1フォークとシートステーは相も変わらず魅力的だ。前記の加速性の高さはフォークとステーがしっかりと地面を捉え ているからだ。コーナリングやハー ドブレーキングにおける挙動の安定性は、依然トップクラスにあるとい っていい。じつに安全なバイクだ。
注目のアシンメトリー構造がどれほど性能アップに効果があるかは分 からないが、ペダリングトルクをかけやすい優れた剛性バランス、そして素直にまっすぐバイクが進む感覚は、その1つの結果かもしれない。
マグネシウムのモデルも魅力的な1台だったが、カーボンになったド グマもまた、その走行性能で多くのユーザーを魅了することだろう。 |
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A.ピナレロのトレードマークともいえるオンダ
形状のフロントフォーク。右側のブレードを太
くし、左側はシャープになっている。B.シート
ステーも明らかに左右で太さが違うのがわかる。
またベンドの位置も変えられている。C.プリン
スカーボンでは50HM1Kのカーボン素材を採用
していたが、ドグマにはそれよりも高弾性の60
HM1Kを使用する。D.ボリューム感あふれるBB
部分。これも左右で形状が異なる。E.当然のこ
とながらチェーンステーもアシンメトリー仕様。
F.ヘッドチューブは下ワンに1.5インチ径のベア
リングを採用してコーナリング性能を高める。
くちばしのように見えるヘッドチューブは最近
のピナレロの特徴 |
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A.約30㎜延長されたヘッドチューブ。スローピング仕様とはいえ、かなり長く感じる印象だ B.シートステーはモノタイプ。角断面で構成され、前三角のチューブと比べるとかなり細身の印象を受ける。振動吸収性を高めるための形状だ C.フロントフォークはコルナゴのアイデンティティとも呼べるストレートブレード。中央部を盛り上げた断面も上位機種譲りだ D.カンパニョーロのなかでは普及グレードとなるヴェローチェだが、シフトフィールは軽く魅力的 E.トップチューブはヘッドチューブからシートチューブにかけて徐々に細くなる形状 F.チェーンステーはモノタイプ形状を採用。接合部の断面を大きくしてねじれ剛性を高める |
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CLXはよりレーシーな仕様に進化
ミッドレンジのCLXは、エースの登場によって《CLX2.0》へとマイナーチェンジされる。形状こそ現行モデルと同じだが、カーボン繊維を変更してより高剛性に仕上げられている。これにより、レーシング性能を高めたモデルに生まれ変わっている。地味なモデルチェンジながら要注目の1台だ。価格/ 40万9500円(アルテグラ完成車)、33万6000円(105完成車) |
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ホビーサイクリストにとって等身大の存在
今でこそロードバイクという言葉に違和感はないが、古くからのサイクリストにはロードレーサーのほうが聞こえはいいだろう。この言葉には、当然レースをするための自転車という意味が込められている。
そのフレーズが最も似合うブランドといえばコルナゴだ。エルネスト・ コルナゴの自転車作りはいつの時代もレースをイメージしている。
そんな同社が初めてのロングライド専用車である《エース》を発売するという。「初めて」との言葉に異 論もあるだろう。以前のクリスタロや現行モデルのCLXはロングライド用じゃないのかと。コルナゴに言わせると、これらはあくまでもレーシングであり、そのなかに長距離も対応できる快適性も付加したということなのだ。その証拠にジオメトリーは上位機種と同じで、素材や形状 で乗り味を変えているだけだという。
ではこのエース、一体なにが初のロングライド専用設計なのかというと、ヘッドチューブである。圧倒的 に長い。他の製品に比べ27~30㎜ほど延長され、アップライトな乗車姿勢が確保できるようになった。
フレームの構造も他のカーボンモデルとは異なりワンピースタイプのモノコックが採用される。主流となる2、3ピースモノコックよりも、振動吸収性を向上させられるためだ。
そしてチューブのシェイプは、前三角は丸断面中心に構成し、後三角は角形断面で構成され、そのルックスは、最近の仰々しい断面形状のフレームを見ているとかなりおとなしく見え、かえって新鮮に思える。
FSAのショートリーチバーといく分パッドを多めに入れたオリジナルのサドルなど、ロングライドを意識したパーツを搭載したエースは、またがると視線位置が高くコンフォートモデルなんだなぁ、と思わせる。
だが、やはり走り出しはコルナゴだ。直進性が強く安定感の高い乗り味は、最近の軽快なハンドリングのバイクに乗り慣れていると一瞬だが戸惑いを覚える。ホイールに入門機のカムシンが付くことを考えると、 出だしの軽さに文句もないが、驚きもない。
しかし、実用速度域の時速20㎞後半になると、コルナゴらしさが強調 される。ハンドル位置が高いので、いつものコルナゴに比べると若干腰高な印象もあるが安定感は抜群だ。
聞くところによるとエースのジオメトリーは、ヘッドチューブ長を伸ばす以外はレーシングモデルとほぼ同じだという。こうした部分にコルナゴらしい安定性を感じるのだろう。
剛性面はEPSのようなガツンとした感じはない。重いギヤで加速をすると後三角に少ししなやかさを感じるが、BB付近がこらえるので加速ロスは感じない。ペダルの踏みごたえは適度に足に優しく、力強くというより軽い感覚でスッと前に出る。
そしてコルナゴ独特の安定感、軽やかなペダリングフィールが相まって、サドルに腰を落ち着けて巡航速度で走る場面は軽快で、レーシング モデルとも渡り合えるだろう。
も ちろん乗り心地もモノコックら しく、振動をフレーム全体でいなす感覚があり、ロングライドモデルとして十分な性能といえるだろう。 ロングライドモデルというと、ホ イールベースを伸ばし、ヘッドアン グルを寝かせるモデルも多い。コルナゴの通常ジオメトリーは、フロントセンターが長く安定感が高く、長距離でも乗りやすい。
したがってロングライド用としてヘッドチューブを伸ばしただけのジオメトリー変更は、じつに正しい選択だと思う。エースは”ロードレーサー”のエッセンスをうまく残して作られたロングライドモデルといえよう。
ヘッドチューブの短いレースバイクに、コラムスペーサーを4㎝以上も入れて最適なハンドル位置を確保するのはステアリング性能に影響を 及ぼすし見た目もアンバランスだ。
快適により遠く、そして気持ちよく乗るなら、エースのようなバイクを選んでコラムスペーサーを減らして乗ったほうがよほどスマートなサイクリストだと思う。 |
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他メーカーのモデルに比べると、比較的おとなしいフォルムだが、インテグラルシートポストやエアロロードに対してのウオッシュバーン氏の考えを聞いてみた。「サドル位置の調整のしやすさを考えると現在の方式がベストです。インテグラルは得られる軽さや振動吸収性のメリットも少ないと思います。空力については同一条件の走行性能で比べれば利点はあるでしょう。しかし、重量増や横剛性が低下するなど、空力で得られるメリットの割にはデメリットが多いですね。それよりも、今のスタイルでベストな性能バランスのフレームを追求することがユーザーにとってベストです」 |
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トータルバランスを徹底的に追求した
「キャノンデールのロードフレーム史上、最も開発に時間を要したモデルで、そのできに大変満足している」。ロードのプロダクトマネージャーであるマーク・ウオッシュバーンは、新型《スーパーシックスハイモッドシリーズ》の性能に自信をのぞかせる。
開発期間はじつに2年。リクィガスチームとの共同開発により、チーム側からの要望で8回、開発側の意図で10回、計18回に及ぶレイアップ変更が行なわれ完成に至った。
前作と同じモデル名を冠し、ハイモジュラスグレードのカーボン素材を使うことに変更はないが、フレームの製作方法を含めて新型は相当なリファインがなされている。
まず、ヘッド部の形状が見直され「ディープ・レディアス・ヘッドチューブ・デザイン」となり、あわせてインテグラルヘッドのベアリングカップもカーボン製に。これらによりカーボンレイヤーの削減による軽量化、そして剛性アップが図られた。
さらにフレームの前三角と後三角の接合方法も、従来の差し込み式からカーボンシートを巻き付けるだけの方式に変更し、カーボンの使用量を抑えて軽量化。接合部の断面積も大きくして剛性アップが図られる。
とくにBBまわりは「ビートボック ス」と呼ばれる断面積の大きな形状により剛性が17%向上している。
こうした改良で剛性アップを図りながらもフレーム単体の実測重量は、560㎜という大きなサイズでも895g。これは軽い。
数値的にも飛躍的な進化を遂げたが、開発陣が最も重視したのが軽さ、剛性感、乗り心地、ハンドリングという要素の高次元でのバランスだっ た。これは数値では表わしにくく、キャノンデールとリクィガスによって実走テストが繰り返された。
じつのところ前作のモデルでは、スプリンターのD・ベンナーティとクライマーのF・ペッリゾッティで、それぞれカーボンの積層が違うモデ ルが供給されていたが、今回のツー ルでは市販品と同じモデル1つしか 供給していないという。この事実は、いかに新型が性能のバランスに優れているかを物語るエピソードといえる。
そのバランス感は、乗ると明らかに体感できる。今回の試乗コースは2㎞以上の上りがあり、時速7 0㎞近く出る距離の長い下り区間があった。
そんなコースでも、ヒルクライムでは軽量車のように軽いペダリングを披露。上りの緩斜面で重いギヤをかけるとガチガチに硬くはないが、フレームに1本芯が通っているような剛性感があり、力強く反応して加速が鈍らず、巡行性にも優れていた。
そして高速のダウンヒルでは剛性感とジオメトリーの妙により安定感があり、ロードインフォメーションも把握しやすいので安心感が非常に高く、限界近くまで攻められた。これが新しいスーパーシックスハイモッドが求めたバランス感の産物なの だろう。
こうした優等生は、ホイールの選択をはじめ、パーツのアレンジでキャラクターを変えやすく、脚力を問 わずロードレースからヒルクライムまで広い範囲で高性能を体感できるだろう。また、好みのハンドルの高さを出せるユーザーならばロングライドに使うのもありだと思う。非常に手堅い買い物といえる1台だ。
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トータルバランスが向上 最高がさらに進化する
トレックのフラッグシップモデルであるマドンシリーズ。その最高峰 となる《マドン6》シリーズがモデ ルチェンジを受け、早くも8月上旬 よりデリバリーが開始されている。
今回のモデルチェンジをひと言で 表わすなら「トータルバランスのさ らなる向上」だ。そのために同社の カーボンフレーム製作で根幹をなす独自のフレーム工法OCLVは、「OCLV2」へとアップデートされた。
OCLV2のハイライトは3つあ る。個々の説明は別項でするが、最 大の特徴は、チューブをはじめとする各フレーム部材の肉厚と精度がさ らに安定し、接合部の一体感が増し たことだ。これにより軽量化剛性、 そして振動吸収性といったバイクに 求められる性能のバランスを、さら に引き上げたレベルで開発できるよ うになった。
またフレームにかかる応力計算は、 PCや試験機上だけではなく実走状 態で計測し、よりリアルなデータに 基づいてチューブ形状やカーボンの積層を決定する「ロードパスチューブシェーピング」という、まったく 新しい試みが行なわれている。 こうした技術と開発プロセスの進化によって、新型マドン6は重量で 150gの軽量化を果たし、剛性面ではヘッド部が17%、フォークコラムの横剛性も2 0%向上している。乗 り心地という面においても大きく進化を遂げ、シートマストの縦方向へ の柔軟性は47%改良され、フォークの前方向に対する柔軟性も1 5%改善されているという。
そのほか電動変速対応のワイヤ内 蔵工作やメーターセンサーを埋め込める仕様など、細部の作り込みも先端的で使い勝手もより進化している。
前作もトータルバランスが際だったモデルとして高い評価を得ていた が、新型のマドン6は新技術のOCLV2を基礎に、さらにトータルバランスに磨きをかけたレーシングバ イクへと変貌を遂げている。
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従来のフォークも高い横剛性と前方向にしなやかさを持たせた設計だったが、新型では形状を見直してその性能がさらに高まった。コラムの根元に業界初となるオーバル形状を採用し、前方向の柔軟性を15%改善、横剛性が20%向上。加えて30gの軽量化も図られている。また、クラウン部も従来のカバードタイプからワンピースタイプへと形状が見直された。 |
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乗り心地と軽量化を実現するために前モデルで考案された独自構造の「シートマスト」は、従来の翼断面形状から丸断面に変更され、30gの軽量化を実現。さらに縦方向の柔軟性が47%改善されている。これによりシートマスト構造の持っている乗り心地のよさをさらに引き出すこと |
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前作から搭載された独自の90㎜幅のBBシェル「BB90」は、新型でも引き続き採用される。また、シェル裏側に埋め込まれるようにして固定されるネジ止め式のワイヤリードを外すと、この部分からデュラエースDi2のバッテリーをフレーム内に収納できる。ドロや雨からバッテリーを守れるうれしい仕様だ |
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新型マドン6の製作にあたり、トレックではフレームにセンサーを埋め込んで応力計測できるテストバイクを製作した。このバイクで実走することにより、卓上のシミュレーションではわからない真の応力解析が可能になった。このデータを元に、振動吸収性やエアロダイナミクスなど、走行に関わるあらゆる計測値を融合させ、マドンのフレーム形状は導き出されている。フレーム形状は前作とまったく別物だ。 |
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チェーンステーの左側には、スピード&クランクケイデンスを計測するためのメーターセンサー、「デュオトラップセンサー」を組み込むことができる。最近の主流であるANT+ワイヤレスに対応したサイクルコンピュータであれば組み合わせて使用できる。メーターセンサーが外側に飛び出さない仕様はトラブルも少ないし、バイクのフォルムをスマートにする。 |
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チューブの接合部分は、テーパー状から写真のように階段状に変更された。トレック独自のこの技術は、接合部の余分な肉厚増を避け、かつ均一な肉厚となることにより、この部分の強度が高まるのはもちろん、剛性面や振動吸収性においても安定した性能が発揮される。 |
新型マドンはBBシェルのベアリングを受ける部分もカーボン製だ。許可を受けたメーカーが米国内でしか使用できない軍事/航空用素材の「Hex MC」を用い、独自の「ネットモールディング製法」により製作される。これにより軽量化はもちろん、より強固なフレームが出来上がる。 |
カーボンを成型する際の硬化剤であるレジンに新たな素材「レジンライト」を採用。これによりチューブ成型がさらに高精度となり、フレームの内側にはムダな凸凹がなく、各部の肉厚が設計どおりに製作される。したがって強度や剛性、振動吸収性が安定し、より高性能を追求できる。 |
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ブレーキ、シフトワイヤともにフル内蔵式を採用し、エアロダイナミクスと見た目のスマートさが向上している。もちろん内蔵式で懸念されるレバーの引きについても軽さを損なうことのない設計だという。内蔵工作を施したことで、当然ながら電動変速のデュラエースDi2にも完全対応する。前作でも同様だが、リヤブレーキは右側からワイヤが入る仕様で、無理のないワイヤラインを実現している。 |
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すでに2010年のプロジェクトワンのスペシャルサイトも公開中。もちろんマドン6もオーダー可能だ。フレームからアウターワイヤまでカラーコーディネートも自由自在。コンポもシマノ、スラム、カンパが選択でき、クランクをはじめパーツも自分に合うサイズを装備できる。標準モデルに比べ購入後のパーツ交換も少ないので経済的。届いたその日から最高の状態で乗り出せる。新型マドン6を買うなら断然プロジェクトワンがお得だ。 |
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