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まずは冷やせ! 夏ライドで知っておくべき体の冷やし方

走りに行きたい! でも暑い! それでも走る激アツサイクリスト諸氏へ、熱射病の危険性・メカニズムから、その対策としてどこを冷やすのが効果的なのかを解説。まだまだ暑い日が続きますが、そんな日のサイクリングで実践してみてください!
 

そもそも熱中症ってなに?

高気温・高湿度によって体内の放熱機構が機能しなくなり、体温が異常に上昇し、脱水状態が加わった状態。重度によって熱疲労、熱けいれん、熱射病に分けられる。


■熱疲労
発汗により体内の水分が枯渇した状態。症状は倦怠感、脱力感、めまい、頭痛、吐き気など。蒼白や皮膚が湿った状態となり、脈が弱くなる。危険信号。


■熱けいれん
大量の発汗により、水分だけでなく電解質(とくにナトリウム)が失われた状態。水分に加えて電解質の補給が必要となる。倦怠感と痛みを伴う筋肉のつりを起こす。


■熱射病
熱中症のなかで最も重度の状態。死に至るレベル。皮膚は乾燥し、発汗は停止する。視床下部にある体温中枢機能が害され、脈と呼吸が浅くなり、錯乱や意識障害といった症状が起こる。透析を必要とするような高度腎機能障害や、後遺症を残すことが多い。熱疲労~熱けいれんの段階で体内の血液量が少なくなっており、循環不全(肝臓、腎臓、心臓に血液が行きわたらなくなってくる)によって臓器にダメージを与えてしまう。そのような多臓器不全の恐れもあり、その段階までいってしまうと冷却や補給をしても間に合わない。

 

暑さと紫外線による体のパフォーマンス低下を防ぐ!

ローラー台でペダリングしている状態のサーモグラフィー写真。左は運動前で、右がペダリング開始後15分の状態。それほど運動強度は高くなかったにもかかわらず、頭部を中心に体温が急上昇している。頭部だけでなく、よく使う肩甲骨まわりや太ももなどを中心に全身が赤くなっていることがわかる。

 
運動前
運動前
運動後
運動後

熱中症対策には冷却と補給が大切。筋肉と血液を冷やせば走りは快適になる

熱中症にかかりにくいようなコンディショニングが大切。水分補給はもちろんのこと、体に水をかけて強制的に冷却してあげるのも非常に有効だ。

水をかける場所としておすすめなのは大量の熱を発する頭部、血管が多く通る首、日に当たる面積が大きい背中、酷使するため熱を発しやすい大腿部だ。その部分に水をかけて、ウエアを濡らすことで気化熱によって冷却効果が高まる。

ちなみにお腹周りを冷やすと、夏ライドとはいえお腹を壊すので注意だ(経験者談)。下のサーモグラフィー解析画像を見れば、実際に水をかけてどれくらい温度が下がったのかわかりやすい。

 

気化熱でこんなに変わる

15分ほどペダリングした直後。頭部、大腿部を中心に全身の温度が上がっていることがわかる。ちなみに上半身には何も着けておらず、レーサーパンツのみ履いている状態

 

水をかけて1分後

冷たい水を全身にかけた状態。体表面が直接的に冷やされるので全体的に温度が下がっているが、体感としては「体内はカッカしていてまだ暑い」という状態

 

風に当たって1分後

走行時の状態を再現するため、扇風機で風を当てた状態。気化熱が奪われることによって一気に冷える。とくにレーパン部分はウエアに水が染み込み水分を多く保持しているため、冷却効果がかなり高いことがわかる

 

熱が発生しやすいところ

15分ほどペダリングした直後。頭部は大量の熱を発しており真っ赤。ロードバイクの前傾姿勢を維持するために肩甲骨~腕の筋肉も使うため、肩まわりも温度が上がっている。ペダリングでよく使う大腿部や、血管が多い太ももの付け根や脇も温度が上がりやすいことがわかる。

 

補給も大切!

熱中症を防ぐための補給は、水ではなく電解質の入ったスポーツドリンクがいい。汗によるミネラル欠損を補えるので、20分おきに飲むようにする。

ノドが渇いたと感じたときでは遅いのだ。水温は4℃~ 15℃が最も吸収効率がよく、体内部からの冷却効果もある。一気に飲みすぎると胃に溜まるだけで吸収されにくく、さらには下痢やおう吐の原因にもなるので200㏄ずつが目安。

あまり濃度が高いのも困るが、腸での水分の吸収にもエネルギーがいるので、疲れたときに吸収させやすくするには、濃度を薄めにしよう。市販のスポーツドリンクは4%くらい糖分が含まれているので2倍に薄めるくらいがちょうどいい。

 

保冷ボトルは意味があるのか? ボトルの水温変化を実験

保冷タイプ590ml 20oz スモールサイズ 価格/1250円(税抜)
保冷タイプ590ml 20oz スモールサイズ 価格/1250円(税抜)
ポーラーの普通のボトルと保冷ボトルを3本ずつ用意し、それぞれに


「水道水(常温) 表:①④」

「氷をいっぱいに入れた水道水 表:②⑤」

「水道水を冷凍 表:③⑥」


の3パターンでの、水温の変化を調べた。実験は、平均気温30℃の車内で15分おきに4時間水温を測定した。

冷凍したボトルは4時間経過した時点で、普通のボトルは氷が半分くらいになっていたのに対し、保冷ボトルは2/3ほど氷が残っていた。体にかけるなら、水に氷を入れたものか、水を半分ほど入れて凍らせるのがいいだろう。実際は水を使うので、1~2時間程度でなくなってしまう。


 
温度変化グラフ
温度変化グラフ