100周年記念大会でカンチェッラーラが独走 ツール・デ・フランドル 2013
チャンピオンを失った100周年記念大会
復活祭の日曜日に開催されたツール・デ・フランドル(ロンド・バン・ブラーンデレン)は、1913年の創始から100周年を迎えた節目の大会だった。フランダース地方のレースファンは、ベルギーチャンピオンのトム・ボーネン(オメガファルマ・クイックステップ)が、不死鳥の如く復活し、100周年記念大会で活躍することを密かに期待していたにちがいない。昨年コースがリニューアルしたフランドルで3度目の優勝を果たしたボーネンは、今年1月に敗血症性感染症で左ヒジの緊急手術を受け、シーズンインが遅れてしまった。そのためコンディションが万全ではない上に、一週間前のヘント~ウェヴェルヘムで落車し、ヒザを痛めてしまっていた。それでもベルギーチャンピオンには、母国最大のクラシックレースの記念大会に欠場という選択肢はなかった。ディフェンディングチャンピオンとしてゼッケン1を付け、ボーネンはブルージュのマルクト広場から笑顔でスタートしていった。しかし、復活祭の奇跡が起きるどころか、ボーネンには最悪の運命が待ち受けていた。ブルージュをスタートしてたった19kmの、ホーグリードからルースラールへと向かうアスファルトの田舎道で、彼は落車してしまったのだ。路肩に横たわったボーネンは痛みに顔をゆがませ、しばらく動くこともできなかった。彼はそのままレースを棄権し、ルースラールの病院へ搬送された。この落車でボーネンは左腰とヒジを負傷し、右ヒザを縫合。彼のクラシックシーズンは終わってしまった。
カンチェッラーラが独走で優勝
フランドルはボーネンを失っても流れが変わることはなかった。今年のミラノ~サンレモで3位になり、9日前のE3プレイスを独走で制していたスイスのファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード)は、優勝候補の筆頭として、期待に応える走りを魅せてくれた。レース終盤、50人ほどに絞りこまれていた集団から、カンチェッラーラは残り18kmのオウドクワルモントの石畳の坂でアタックした。もう一人の最有力優勝候補だったペーテル・サガン(キャノンデール)がすぐに反応して彼の後ろに付き従った。カンチェッラーラとサガンの2人は集団から抜け出すと、先行していた地元ベルギーのユルフン・ルーランツ(ロット・ベリソル)をとらえて先頭に立った。そして3人は、今年のフランドルで最後の石畳の坂、パーテルベルフに到着した。ここでカンチェッラーラは力強いペダリングで先行し、まずルーランツが脱落した。サガンはなんとかカンチェッラーラに食らいつこうと試みたが、石畳の坂を進むごとにその差はむなしく離れていった。カンチェッラーラはここで得意の独走を開始し、ゴールまで残り10kmで、サガンたちとの差は30秒にまで開いていた。パーテルベルフの出口からゴールまでの13kmを、カンチェッラーラは時速49.524km/hという個人タイムトライアルのようなスピードで独走してオウデナールドに到着。2010年の初優勝と同じ独走で2度目の勝利を手中に収め、ゴールで待っていた妻ステファニーの胸に飛び込んだ。彼女はこの勝利の後、パリ~ルーベまでスイスに帰国せず、子供たちと一緒に夫のそばに留まることを決めている。後方では、カンチェッラーラがゴールしてから1分半後にサガンとルーランツがゴールスプリントを競い、サガンが難なく2位の座を獲得し、小さくガッツポーズをしてゴールラインを通過した。ルーランツはサガンとのゴール勝負を早々にあきらめてしまったが、3位に入って表彰台に上がり、ベルギー人として記念大会に花を添えることができた。
■優勝したカンチェッラーラのコメント「ただただ素晴らしいよ。1年前、ボクは地面に横たわっていた。今、ここに戻ってきて、新しいコースのロンドを有力な優勝候補として勝つことができた。簡単ではなかったよ。本当に幸せだ。今日は変わったレースだった。でもいい意味で変わっていた。ボクは勝てたんだからね。最後にはあまり多くの選手は残っていなかったけど、チームのみんながとても素晴らしい働きをしてくれた。ファンタスティックなチームだと思う。今日は石畳のセクションで調子がいいと感じていた。他のすべてのアスファルトの坂では苦しめられたんだけどね。パーテルベルフではたくさんのスイス国旗を見たよ。最後は、ボクは自分がしなければならないことをした。このロンドの勝利をウチに持ち帰ることさ」
第97回ツール・デ・フランドル結果
1 ファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード/スイス)6時間06分01秒 2 ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)+1分27秒 3 ユルフン・ルーランツ(ロット・ベリソル/ベルギー)+1分29秒 4 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウエー)+1分39秒 5 マテュー・ラダニュース(FDJ/フランス)+1分39秒 6 ハインリッヒ・ハウスラー(IAMサイクリング/オーストラリア)+1分39秒 7 グレッグ・バンアーベルマート(BMCレーシングチーム/ベルギー)+1分39秒 8 セバスティアン・テュルゴー(チームヨーロッパカー/フランス)+1分39秒 9 ジョン・デゲンコルプ(チームアルゴス・シマノ/ドイツ)+1分39秒 10 セバスティアン・ラングベルト(オリカ・グリーンエッジ/オランダ)+1分39秒