MTBジャパンシリーズ無敵の男は何を思うのか…… 斉藤亮インタビュー!
自分は負けられないという意識が強くなりました
■昨年はシリーズチャンピオンを獲得する快進撃でしたね
そうですね。初めてなんですよね、J1で優勝したのって。前のシーズンまでは表彰台に上ることはあったんですけど、勝ちたいけど勝ちきれないレースが続いていました。ミヤタメリダバイキングチームに移籍した1発目のレースで勝てたことが自信になって、その勢いがシーズン最後まで続いた。そのことがシリーズチャンピオンにつながったと思います。
■今年も開幕からJ1で3連勝、J2を含めると5連勝中と“常勝”ですが、なにか変化があったのでしょうか?
シリーズチャンピオンになって、練習に対する姿勢も変わりましたよ。ダラダラ過ごす時間がなくなりましたね。雪に覆われる冬でも時間かけてスキーで滑り込んで、しっかりとベースを作っていました。MTBのためにオフトレーニングをしっかりやった結果が出ていると思います。チームのサポート体制も手厚くて、「自分は負けられない!」という意識も強くなっています。
■昨年は山本和弘選手という強大なライバルがいました。今年は彼がいなくなり、状況が変わったのではっきりとはわからないのですが、斉藤選手は昨年より強くなっているのでしょうか?
確実に進化していますね。もっと強くなりたいと思っていますし、そのためにもっと競い合うレースがしたいんです。(小野寺)健(スペシャライズド・レーシング・ジャパン)は、Jシリーズのなかで僕がいちばん意識している相手。僕が負けるとしたら、あいつしかいないと思っています。
ファクトリーチームで海外を転戦した経験を持っているし、今年2月のキプロス遠征も2人で行きました。若手に速い選手はいますけど、日本で健のスタートの速さは群を抜いています。彼のよさは今後もっと出てくると思います。もっとガチガチにやりあいたいですね。
僕と同じレベルの選手がたくさんいる世界で勝負がしたい
■今シーズンの目標はなんですか?
僕にはプランがあって、まずは2年連続シリーズチャンピオンになろうと思っています。シーズンオフから台湾、スペイン、キプロス、アメリカ、中国へ行ってUCIクラス1~2のレースをはじめいろいろなローカルレースを走りました。海外遠征を経験するなかで「海外でも走れる!」というイメージが出来たし、国内で走っている自分の立ち位置もしっかり見えてきました。そうすると、「このまま日本で勝ち続けても満足感は得られない」と考えるようになりました。僕と同じレベルの選手がたくさんいる世界へ飛び出して、勝負がしたいと思っています。
攻めれば攻めるほど前には選手が走っていて、ごぼう抜きにされてリザルトが残せないそんな状況でレースがしたくなっているんです。もっと先へ行きたい。
■まずはシリーズチャンピオンを狙って走るということですね?
まだまだ国内レースがどうなるかはわからないけど、全日本選手権で日本人のトップたちと闘って、残りのJシリーズ2戦を勝って2年連続シリーズチャンピオンという肩書きをつけて、国内のレースは区切りをつけたいと思っています。終わりじゃなくて、いったん卒業しようと。来年のプランも日本チーム(ミヤタサイクル)と話し合っていますし、ワールドチームとも交渉していくつもりでいます。
■世界に行くということはワールドチームに入ることだと思いますが、チームの受け入れ態勢はどうなんですか?
今の日本国内チームは、ワールドチームのサテライト扱いです。海外のレースに行けばサポートをしてもらえる環境はありますね。ただ、何度も言われているのが、「ナショナルジャージを持ってこい」ということ。「うちのチームにはノーマルジャージはいらないよ。それが日本でいちばんの証だし、うちのチームへのパスポートと同じだ」と。それを言われたときになるほどと思いました。
そのためには、まず全日本選手権
■ということは、今年一番重要なレースは全日本選手権ということですね?
そうですね。自分のなかで年に一度の大勝負なんで、最高の走りをするつもりです。でも、いまはまだ(山本)幸平(スペシャライズド・レーシング・チーム)の足もとにも及ばない。アジア選手権やシーオッターを一緒に走ったし、リアルタイムで世界のレースが見られるようになった。 そうするとだいたいわかるんですよ。全日本を幸平が走ったら、僕は2~3分くらい差をつけられて負けると思う。ただ、そこは全日本。なにがあるかはわからない。真夏のレースであること、機材スポーツであること、日本一を決める最も緊張感あふれるレースであること。いろいろな要素が複雑に絡み合う状況だから、絶対にあきらめないです。
■山本幸平に勝てないところ、自分に足りないと思うのはどういうところなんですか?
幸平と走っていると、「休む」=「敗北」ということを痛感する。彼はレース中、常に踏んでいます。脚を休める=レースを投げることなんです。マックスの状態が1時間30分~45分続けるレースをしない限り僕は勝てないし、 僕はまだその境地に立てていないんと思うんです。
■斉藤選手のレースを見ていると、毎レース追い込んで走っていて、2位以下を突き放しています。それでもまだ足りないんでしょうか?
自分のなかでの限界、レッドゾーンギリギリまで追い込んで、見えない敵と闘いながら走っているけど、幸平は僕が想像する敵よりさらに高いレベルの敵と闘っているような気がするんです。ただ、キプロスで会心の走りをしたときは一ケタの順位に入れたし、ヤロスラフ・クルハビィー選手(スペシャライズド・レーシング・チーム)から8分も遅れなかった。それを経験したことで、幸平が見ている世界が見えたし、自分の立ち位置もわかるようになりました。そしてどうトレーニングしていけばいいかということも。
どんなレースになるのでしょうか?
■全日本選手権はどんなレースになりますか?
もちろん、幸平は勝つこと以外考えていない。でも、それは僕も同じ。普段のシリーズ戦では、勝つことだけがすべてではないけど、このレースにおいて僕のなかで2位や3位では意味がない。勝つか、撃沈するかどちらかの走り方をします。そのための準備をしていますから。挑戦者なので失うものはない。
きっと、みんな見たいんですよ。幸平が負けるところを。いま、現段階でアイツを崩せる可能性があるのは僕だけだと思う。幸平と走れる機会はあまりないし、終わって笑顔でいられるレースにしたいと思います。1年に1回の特別なレースだから、悔し涙を見せない、悔いのない走りをします。絶対笑顔で終わらせるために、しっかりと準備をします。
いよいよ全日本選手権!
インタビューを聞いたのは、6月18日に行われたJシリーズ、XCOきじま平STAGE(XCO J2)のレース後。彼はいまひとり、長野の山中で高地トレーニングを終え、最終調整に入っているはずだ。ここでの話をどこまで現実のものにしてくれるのか? レースまであと○日。
7月20日~21日 静岡県・伊豆市 日本サイクルスポーツセンター
斉藤選手がエントリーするXCO男子エリートは、13時30分スタート予定。