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日向涼子と もっと楽しむ!ヒルクライム vol.3

cyclesports.jpに再び日向涼子が帰ってきた!(笑) 昨年はかなりストイックなトレーニング企画でしたが、今年は自転車の楽しさを再発見できるメソッドをご紹介。そのvol.3をお届けします。
 
text●日向涼子 photo●小見哲彦、ナカジ
この連載もvol.3(vol.1vol.2はこちら)になりました。最初はレースに対してまったく乗り気ではなかった今年の日向。そこで昨年に引き続いて、長野県野辺山にあるシーナックキャビンの中込夫妻の元にアドバイスを求めて訪れた。自転車とのかかわりを、少しでも、無理なく維持するために、日記を付け始めました。少ない練習時間のなかで、徐々に自転車に乗る楽しみを思い出し、実感してきた日向。
そして、今年もやっぱり乗鞍へ。自転車から離れていた本当の理由も明かされる。この連載史上、最長編の記事になってます。
 

ついに乗鞍

サイクルスポーツ編集部ナカジ(以下、ナ):来ちゃいましたね~、乗鞍。
日向(以下、ひ):しかも、レース!(笑)
:日向さんから、「乗鞍出ようかな」と言われた時は驚きました。
:連載スタート時は、そんな感じじゃなかったもんね。
:今だから言えますけど、「この人、大丈夫かな?」って。いつもの元気がなかった。
:え~、そんなに?(笑)。じゃあ、私も今だから言っちゃうけど、時間がないのもあったけど、あの頃は体調が悪くて、それどころじゃなかったもん。
:そうなんですか?
:うん。もともと低血圧なんだけど、忙しくなったことで生活のリズムが変わったせいか、悪化しちゃって。上が80台とか。毎日のようにめまいがしてた。
:また、そうやって無理するし・・・。
:でも、日記をつけるようになって、時間がないなかでも体を動かす工夫をしたり、体調やトレーニングに合わせた食生活をするうちに、体調もよくなってきて。体が元気になると同時に、心も元気になってきっていうのかなあ。
:昨日なんて、元気過ぎて、ちょっと引きました(笑)。
:だって、「レースが楽しみ」って感覚、本当に久しぶりだったんだもん!それが嬉しくって。
:それはよかったです。連載のタイトルどおり「もっと楽しむ」になれたってことですね。
ちょっと日記を振り返ってみましょう。

 

8月11日~8月17日

【由香里先生から】
1週間、自転車にも随分乗って 、自転車の事を思って過ごせたようですね。筋肉痛がそんなに酷いのは、私も、???と思いましたが、身体の不調のサインのようですね。夏風邪なのかな。もう、回復しましたか?
 
栄養とかもしっかり考えているようですし、とにかく体調をきちんと回復させる事が優先ですね。ダラダラと長引かせないように。
 
心身共にエネルギーが満ちてきたら、きっと自転車乗りたい!っていう気持ちが強くなると思うので、回復するまでは「乗らなきゃ~」って考えなくていいと思いますよ。乗りたくない感じの時でも、ちょっと乗り出してみると意外とイイって事もよくあります。
 
 
【日向感想】
中島さんと2回目の都民の森。筋トレやりすぎなのか、筋肉痛の中で走ったけれど、自転車に乗っている間は痛くなかった。ローラーを回す習慣がついたからか、以前よりも走れるようになって、「乗鞍出ようかな」と言う気持ちになった。エントリーしてはみたものの、「こんな状態で出たくない」と思っていたのに・・・。
 

8月18日~8月24日

【由香里先生から】
ハードな実走、2本入れましたね~。その後、体調は大丈夫でしょうか? あまり体調が優れない時に、やるべきか、休むべきかって悩む時って結構あると思います。

どちらか決めたら、「やめといた方がよかったかな?」と思いながらやったり、「やっといた方がよかったかな?」と思いながら休むのは、効果が半減しいます。

決めたら信じてやる。やってみて出来なかったら、やる事を変えるか辞める。それが大切だと考えてます。
結果、失敗だったら失敗でしょうがないですからね。自分の決めた事に自信を持つってとっても難しいし、私だってなかなか自信は持てないけど、自分の決めた事に対して、自分が信じてあげるって感じかな~と思います。
 
その分、ダメージを受けた身体ケアは充分やって下さいね。あと、マッサージなど身体のメンテナンスをやってもらう場合、信頼出来る行きつけの所を見つけておくと安心ですね。私はもう20年も診て頂いている先生がいるので、その点安心なんですよ。
 
 
【日向感想】
中島さんに「乗鞍出ようかな」と言ったら、「自分も走ったことがないので」と試走に連れて行ってくれた。天気がよくて景色は最高。風邪は治り切っていないけれど、行ってよかった。(でも、「2本やろう」と言われた時は、ちょっとイヤだった・・・)
 
日曜日には、「一緒に走ろう」と言っていた女子と、その仲間たちと、山岳のロングライド。楽しかったけれど、これを毎週やっている女性がいると思うと、自分の練習不足に焦る。朝から止まらなかった咳が、人と会う頃には止まっていてよかった。
 
ただ、由香里さんから「風邪をダラダラ長引かせないように」とアドバイスされたのに、結果、長引かせてしまった。けれど、楽しいお誘いライドがあって、「ここを逃したら・・・」と考えたら、どうしても行きたかった。
 
「自分の決めた事に対して、自分が信じてあげる。」本当にそうですね! 最近、潔さが足りないので、自分の決めたことに自信を持ちたいと思います。
 

8月25日~8月31日

【由香里先生から】
体組成、1ヶ月で筋肉量が1.5kgも増えて、しかも体脂肪0.7kgなんてあり得るんでしょうか???筋肉量1.5kg増なんて夢のようです。

体の水分量とか体温とかの関係もあると思うので、数字が全てではないにしろ、とてもいい変化である事は間違いないですね。素敵!
 
短いタイムトライアルとかは、やはりそういうトレーニングをしないと、力の出し方も解らないし、力を出し切るのは難しいと思います。でも、経験が無駄になる事は無いでしょう。
 
前ももは短い時間大きい力を出すのに使いやすい筋肉なので、普通はここに頼っちゃう人が多いんですよ。ひなたんがヒルクライムの時にお尻からももの裏側の筋肉を上手く使えているのはとてもいい事です。大きい筋肉だし長い時間力を出し続けられます。

で、ラストスバートとかで前ももも使えると、余す所なく筋肉も使えて、もっと力も出し切れるはずです。
 
 
 
【日向感想】
世間では夏休みが終わったせいか、私にも慌ただしい生活が戻ってきた。再び、室内トレーニングの毎日。急激に筋肉量が増えて、体脂肪がそれなりに減ったのは、筋トレも影響しているでしょうが、マイナスのところから、人並み+αくらいになったと考えられます。実はGW前に胃潰瘍になり、体重も減りましたが、大幅に筋肉量が減りました。
 
でも、あまりにも血圧が低くなって日常生活に支障が出たため、少しずつ肉を食べるようにして、筋トレを始めた次第です。ローラーを生活に取り入れるようになってからは、疲労回復のため、積極的に鶏のむね肉を食べるようにしました。(イミダゾールジペプチド)
 
すると、効率よく筋肉がついてきて、筋肉量が増えたことで、脂肪も減ったのだと思います。(その後、何回か体組成計に乗りましたが似たような数値なので)
今は体脂肪16%なので、もう少しだけ落としたいかな。
 

9月1日~9月7日

【日向感想】
レース数日前から、その日が近づくにつれ、「今の自分を知る」ことに不安が出てきた。練習不足は仕方がないとして、その中でどれだけコンディションを上げるかに専念する。
 
本番前日。会場へ近づくにつれ、少しずつ気持ちが上がってくる。「1ヵ月でどれだけ戻せるのか試せる」と考えたら、レースが楽しみになってきた。筋肉量が増えて見た目は絞れたが、体重自体は増量。それがどう反映するかも気になるところ。
 
 
:少しずつ気持ちが上がっているのは気づいていましたが、レース前は少し不安な気持ちもあったのですね。
:そりゃ、そうだよ~。エントリーはしてたけど、「レースに出よう」って思ったのなんて、つい最近だもん。ローラーだって1ヵ月前に再開しただけだし、強度は低いし。レースって健康診断みたいなもので、一年前と比較した自分が分かっちゃう。

:距離が違うからタイムでの比較はできませんが、着順は一年前と同じだから、1ヵ月で元に戻せたということじゃないですか?
:タイムは、全然ダメ。最後尾スタートだったんだけど、途中の道が細くなるところで詰まっちゃって、タイムロス。位置取りがよくなかった。しかも、そこで焦っちゃって、道が広くなった瞬間から一気に上げて、オーバーペース。試走した時よりも呼吸がラクに感じたから、「イケる!」って。

:試走の時は自分にとって初めての乗鞍でしたが、酸素が薄くて驚きました。
:あの日、私は風邪が治りかけだったから高山病みたいに頭まで痛くなったのに、今日は体調がよかった。それでペースを上げたんだけど、距離を走る練習をしていないのにキープ出来るわけがない。中盤で一気にタレちゃって。「ヒルクライムはペース配分が重要」って、レースに出始めた頃から言われているのに、ちゃんと出来たのって数えるほどしかないかも(苦笑)。

:レースになっても冷静でいられるかどうかも勝負のカギですね。
:ペースが落ちてから残り5kmまでは、体幹とケイデンスの維持を意識して走りました。「筋トレの成果が出てるな」って、それくらいかな。今回のレースでよかった点は。

:残り5kmは?
:酸素が薄くなったのか、少しずつ呼吸が乱れてきました。いつもならそれでも踏ん張ったはずなのに、今回はタイムへの執着心がなくて。「レースなのに、こんな心構えじゃいけないな」って。反省しきりです。

:今回の連載は“ヒルクライムを楽しむ”ためのものですし、シーナックへ相談に行った頃の日向さんを知っている者としては、「レースに出る」と言い出すまでに気持ちが上がったというのが、それだけで大成功ですよ。
:今回はプライベート参戦で、誰にも言わずにいたのもあるのかな。レースに出始めたばかりの頃のような、新鮮な気持ちでレースに臨めました。

:そこまでになってくれて、自分は嬉しいです(笑)。
:さっきは、「テンション高すぎて引いた」って言ってたじゃん(笑)。
 

由香里さんから

ストレッチに関しては色々な意見がありますが、やるなら運動前はぐーっと伸ばして止めるストレッチよりも、ちょっと弾みをつけたり関節を上手く動かしてあげるような動的ストレッチの方がいいと思ってます。 色々試して自分に合う方法を見つけられるといいですね。
 
 髪を切るのは軽量化にもなるし、気持ちの切り替えとか、やるぞ!って時に有効ですよね~。
 
 乗鞍のレース前日に「明日が楽しみ!!」って思えたって聞いて、私達も凄くうれしかった!
もうそれで、このサイスポ企画は大成功だったって思えました!
 
そしてレース当日。昨年に続いて、またしても悪天候の為にコース短縮になってしまって、スタート時は小雨と霧の景色も何も見えない中始まったけれど、終盤に霧の中、後光が差してきて、まさかの青空と緑の山の絶景が広がりましたよね!
まさに、今回の企画と同じ!?
何処に向かうのか解らない、何も見えない中でスタートしたけど、レースを楽しみに迎えられ、ゴールは笑顔が広がった!
 
「レースだからタイムや順位に執着すべき」・・・??? では、ないんじゃないかな?と私は思ったりしています。「すべき」じゃなくて、そうしたかったらすればいいんじゃないかな。
レースにも色々な楽しみ方があって良いと思います。それに向かっていく楽しみや、仲間や景色や食べ物や・・・。レースそのものに求めるモノも、毎回同じじゃ無くてもいいような気がします。
 
追い込むトレーニングをしていなかったら、追い込めないのは当然だろうし、今回それを求めていたわけじゃないから、それは仕方ないよね。求めたいモノを求める為に得る為に準備をする、それが必要なんだと思います。その気になれば、いくらでもまた闘争心のある走りも出来るようになりますよ。
 
今回は「もっと楽しむヒルクライム」を少しでも実現出来たので大成功ですよね!ここから「もっともっと楽しむ」に繋げていきたいですね。
 
ゴール地点で素敵なお話を聞かされましたよ。「今回は乗鞍に向けて全然走れてなくて、思うように走れないしつらかったしレースにも出たくないと思っていたけど、この連載を読んで、一緒にやってみようって気持ちになって、走って本当によかった」ってクシャクシャの笑顔で話して下さった方がいます。これは、私も最高にうれしかったな。この連載、やってよかったですね!
 

乗鞍を終えて

:連載を読んで「一緒にやってみよう」って気持ちになった人がいたなんて、すごく嬉しい! 
:すごいですね。
:「思うように走れなくてレースにも出たくない」って気持ち、よくわかる。
:でも、由香里さんは「レースだからタイムや順位に執着すべきではないんじゃないか」「レースにも色々な楽しみ方があっていいと思う」って書いていますよ。
:由香里さんが言うと説得力はあるけど・・・意外。
:乗鞍2往復なんてやったことないし、やりたくないっておっしゃってましたよね。
:あんなに強いのに、「自転車を楽しむ」ことが一番なのかな。今回、シーナックに相談へ行って本当によかった。
:2ヵ月間、日記をつけた感想はどうですか?
:うーん・・・正直、あんなに項目はいらないかな。
:「心拍計が嫌だ」って言ってましたね。
:ローラー台トレーニングではいいかもしれないけどね。あと、目的によって項目も変えていいと思う。
:例えば?
:私の場合、最初は「自転車を楽しむ」ことを思い出す必要があったから、「気づき」の項目はあってよかったと思うけど、楽しくなってきて、レースも視野に入れてからは、体重とか食事のことも書きたかったな。
:体重を書いてもよかったのに(笑)。
:ネットで公開するのに、絶対ヤダよ!(笑)。
 
 
次回が最終回!
自転車に乗る以外にも、ヒルクライムを楽しむために役立つノウハウである「洗車メンテナンス」、「車載術」をお届けする予定です。

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取材協力:シーナック・キャビン
http://www.sy-nak.com/sy-nak.htm
 
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍
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衣装協力:KAPELMUUR/カペルミュール(ウエイブワン)
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