サルト・ダイナミカ 試乗レポート
サルトの高剛性代表選手
極太のダウンチューブがペダリングのパワーを受け止めて、強い反発を生み出すことによりムダなく推進力へと変換してくれる。 素材は東レ製のカーボンM J で、表面は3Kカーボンで仕上げている。
剛性重視のモデルとはいえ、まったくしなりをなくしたわけではなく、伸びのある加速を生み出すために適度なバネ感を残してある。
見た目はモノコックフレームのようだが、さにあらず。「ロールラップ方式」というカーボンのチューブとラグをつなげる部分では、さらにカーボンを巻き付ける製法を採っている。フレーム全体を一気に製造するモノコック製法よりも、一度に製造するパーツが小さいため、より高い精度 で軽く仕上げたパイプやラグをつないでフレームを構成できるというメリットがある。
また、各部の寸法を自由に組み 合わせることができるので、大きなメーカーでないにもかかわらず、サイズオーダーを受けられるのは、この製造方法を採用しているからにほかならない。
サイズ以外にもBBの規格を選べたり、シートポストも写真のノーマルタイプのほか、インテグレーテッドにすることもできる。ブレーキもダイレクトマウントを選ぶこともできる。
高剛性モデルということで、ハイスピードで展開するロードレースでも、加速減速が頻繁に繰り返されるクリテリウムのようなレースでとくに威力を発揮するフレームである。
SARTO DINAMICA
サルト・ダイナミカ
フレームセット価格/46万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●カンパニョーロ・スーパーレコード11
ホイール●フルクラム・レーシングスピード
タイヤ●パナレーサー・レースAエボ2チューブラー
ハンドルバー●3T・エルゴサムプロ
ステム ●3T・アークスプロ
サドル●セライタリア・フライトチームエディション
シートポスト●3T・ドリコプロ
試乗車実測 重量●6.90kg(Sサイズ、ペダルなし)
サイズ●XXS、XS、S、M、L、XL、XXL
カラー●ブルー(DIN-01)、 ホワイト(DIN-02)、ブラック(DIN-03)、グレー(DIN-04)、レッド(DIN-05)
ヘッドはもちろんテーパードタイ プで、下ワンのベアリングサイズは 1-1/2インチ径を採用している。チ ューブ同士の接合部も滑らかに仕上げられている
シートステーは、シートチューブ との接合部にしっかりした太さがあ り、リヤエンドに近づくにつれて縦方向には薄く扁平されていく。振動吸収性と路面追従性を向上
リヤエンドはアソラと同じく、カーボン製のエンドをアルミ製のパー ツではさみ込む構造。強度が上がるので、リヤディレーラーの確実な動作をアシストする効果がある
カラーオーダーができるのはもちろん、自分の名前は1万円(税抜)、国旗は5000円 (税抜)をペイントしてもらうこともできる。細かい遊び心にも柔軟に対応してもらえる
BBは写真のプレスフィットタイプ以外にも、スレッドタイプやBB30を選ぶこともで きる。ワイヤガイド部に見える突起はカンパ ニョーロEPS内蔵バッテリー充電ジャック
ナカジの試乗レポート
高剛性モデルということだが、軽量化にもしっかりと気を遣っているため重いわけではない。となると高剛性+軽量=衝撃ガツガツで、路面からはじかれる、というような先入観があった。
だが、その不安は走り出すと杞憂だったとわかる。多少アスファルトの状況がよくないようなところでも、バンバン弾き飛ばされるようなことはなく、しっかりと芯があり、路面をとらえるフレームだ。 絶妙なチューブセレクトがなせるワザなのだろう。
旋回性能も高くていい気持ち。ややハンドリングがシビアと言えなくもないが、扱いにくくなる寸前のいいバランスを保っている。 個人的には硬いバイクはペダリングのリズムをつかみづらく、苦手意識が強い。
前回試乗した同社の「アソラ」がしなりを生かして走るタイプだったのに対して、 「ダイナミカ」はしならないのか?
そうではない。ただ、しなっても戻ってくるタイミングがアソラより早い。なのでラフに踏んでも無理矢理前に突き進んでくれる。路面状況にかかわらず加速では突破力があるイメージだ。これが走りに芯がある感じにつながっている。どしっとした安定感があって好印象だ。
ジオメトリーのフルオーダ ーや、各部の仕様、色をオーダーできるので、自分だけのピュアレーシングマシンに仕上げるベースフレームとしての十分な魅力を持っている。 同じ価格帯に魅力的なフレームはいくつもあるが、自分の理想をここまで具現化できるモデルはそう多くない。