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サルト・アソラ 試乗レポート

自転車フレームのOEMメーカーというと台湾や中国の工場を連想する人が多いだろうが、イタリアにもそういった工房がある。そのひとつが今回紹介する「サルト」。2014年から日本国内で販売を開始した。 

 

text:ナカジ photo:小見哲彦

異色のイタリアメーカー上陸

  

サルトの歴史は古く、今年で創業55年を迎える。創業者であるアントニオ・サルトの名を冠した同社は、さまざまなメーカーのトップレンジをOEMで生産してきた。それゆえ、各社のフレーム作りの膨大なノウハウが蓄積されている。  

だが、近年OEMの発注先のほとんどはコストの問題からアジアメーカーへと移ってしまった。そこでサルトは自社ブランドでフレームを販売することにしたのだ。  

 

アソラは、同社ロードフレームの旗艦モデル。三菱レイヨンや東レ製のカーボン繊維を用い、真円チューブをメインに構成されたフレームは、モノコックではなく、 チューブ同士をカーボンを巻いてつなげる「ロールラップ式」で作られている。

にもかかわらず、700gという軽さを誇る。それでいて剛性を確保すべく、ダウンチューブとチェーンステーを強化。 

 

最大の特徴は、オーダーフレームとして発注できること。ジオメトリーはもちろんだが、各部の規格を選ぶことができる点に特徴を持つ。

BBをスレッドか、プレスフィットなどの他の規格にするとか、シートポストをノーマルか、インテグレーテッドにするか、電動コンポーネントの内蔵に対応するにしても、ケーブルを通す穴をどこにあけるのかなど、メーカーのオーダーかのような内容。OEM生産のノウハウがあるからこそだ。

 

SARTO ASOLA

 

サルト・アソラ

フレームセット価格/60万円(税抜)

 

フレーム●カーボン 

フォーク●カーボン 

コンポーネント●カンパニョーロ・スーパーレコード RS 

ホイール●カンパニョーロ・ボーラウルトラ35mm 

タイヤ●パナレーサー・レースCエボ2 チューブラー 

ハンドルバー●3T・ロートゥンド プロ 

ステム●3T・アークスチーム 

サドル ●セライタリア・フライト 

シートポスト●3T・ドリコプロ 

試乗車実測重量●6.38kg(Sサイズ、 ペダルなし) 

サイズ●XXS、XS、S、M、L、XL、XXL 

カラー●ブラック、ブラックレッド、 ブラックピンク、ブラックホワイト(オーダーカラーも可)

 

 

強度を出すために、カーボン製のエンドをアルミのリプレイサブルエンドではさみ込む構造。これにより、 ディレーラーの動作がブレずに、確実な変速動作が可能となる

 

 

細身のシートステー。その裏側は「ハ」の字になっており、リヤからの振動吸収性を持つとともに、横方向のスタビリティもあわせ持つ。他社では見られない個性的な造詣だ

 

 

フォークはサルトと協力関係にあ るコロンバス製。サルトのエンジニアが「自社で生産してもこれと同じものを作る」と言ったほど、同社が理想とする性能を持っている

 

 

試乗車はプレスフィットタイプを採用していたが、ユーザーの希望とあらばスレッドタイプなど、ほかの規格を選ぶことができる。 まるでフレーム設計者になった気分

 

 

フレーム内部は、バリもなくとてもスムーズな壁面。OEMメーカーとして発注メーカーの厳しい品質管理に応えてきた経験が生かされている

 

ナカジの試乗レポート

 

銀色に鈍く輝くフレームは、 持ち上げると声が漏れるほどの軽さを備えている。ダウンチュ ーブに大きくあしらわれた、見慣れないブランドロゴ名やカラーリングは新鮮さを、そしてただものではない雰囲気を持つ。  

 

いざ走り出すと、持ったときの軽さから想像したパリパリとした硬質な乗り味ではなく、とてもタメがきいた、鍛え上げられた筋のようなしなやかさを持ったフレームであることがわかる。

軽量ゆえにぐにゃぐにゃということではなく、しなりの反動をかけ算するように速度へと反映していく動きだ。

 

平地を巡航しているところからペダルを踏み込んでいくと3、4踏み目からぐんぐんとスピードが伸 びていく印象。フォークやヘッドなど、フロントまわりがしっかりしているので、低いポジションでパワーをかけていってもそれに応えてくれるし、下りやコーナリングでも気持ちよくバイクを倒し込んでいける。  

上り区間にバイクを持ち込んでみれば、勾配がきついところでも、ペダリングのムラをフレームのしなりがつないでくれるので、ペースを維持しながらクリアしていくことができる。  

 

走りの性能も、オーダーできる範囲の広さも魅力だ。それゆえ、取り扱いできるショップ、 スタッフも選ぶ。そののスタッフなら誰でも対応できるのではなく、サルトをよく理解できるのみ。

まるでスーツをオーダーするように、ていねいにユーザーから要望を聞き出してくれることになる。面倒と思う人もいるかもしれない。 だが、そこからこのバイクの楽しみは始まっているのだ。

 

 

問い合わせ先

コリドーレ
0742・31・1869
http://jp.sartoantonio.com