スコット・フォイル20 試乗レポート
ハイクラスの エアロロードを手軽に
スコットは商品開発力に優れているスポーツバイクブランドのひとつだ。プロツアーで使い続けられていることからも、そのことがわかる。
話を少し過去にさかのぼろう。 スコットの名前を一躍有名にした モデルに「CR1」があげられる。 カーボン・レーシング・ナンバーワンの頭文字をとったこのモデルは2003年にプロトタイプが発表され、フレーム重量で900gを切る軽さは、当時としては衝撃的だった。「肉薄大径チューブで 超軽量かつ高剛性なフレーム」という、その後のカーボンバイク設計の指針を示したモデルである。
軽さの次にスコットが再び個性を発揮したのが「空力」だ。2012年モデルとして発表されたエアロロードであるフォイルシリーズ。それまでの空力を重視したフレームでは定番だった翼断面形状ではなく、その後端を切り落とした「カムテール断面」を採用したモデルだった。
「空力性能」、「軽さ」、「フレーム縦横の剛性バランス」というロードバイクに必要な3つの要素を高いレベルで実現するこの断面形状は、各社のエアロロードに採用されることとなる。その形状をいち早く取り入れたF01は、モデル名を変更して「フォイルシリーズ」として市販化された。そんなフォイルに最新のシマノ・105を搭載し、完成車として価格と性能をバランスさせた日本限定モデルが、フォイル20というわけだ。
SCOTT FOIL 20
スコット・フォイル20 シマノ・105完成車価格/36万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・105
ホイール●シンクロス・ RR2.0
タイヤ●コンチネンタル・グランドスポーツレース23C
ハンドルバー●シンクロス・RR2.0
ステム●シンクロス・FL2.0
サドル●シンクロス・RR2.0
シートポスト●リッチー・フォイルエアロプロカーボン
試乗車実測重量●7.83kg(Sサイズ、ペダルなし)
サイズ●XXS、XS、S、M、L、 XL、XXL
カラー●日本限定カラー
シートステーはやや幅が広いデザイン。リヤブレーキへ風が当たらないようにすることで、空気抵抗の発生を抑えるために太さや形状が工夫されている
シートポストの断面形状も、もちろんカムテールデザイン。サドルのクランプ部は、角度調整が無段階で行なえるタイプなので、シビアにポジションをセットできる
ゆるくベンドしたフロントフォークは、フレームの断面と同じようにブレードの後端が切り落とされたような形状を採用。ハンドリングもニュートラルで扱いやすい
BBはプレスフィットタイプを採用。ダウンチューブからBB、チェーンステーへのつながりもとても滑らかなデザインになっている。これも空気抵抗低減を狙ったもの
トップチューブとシートチューブ の交点と完全に一体化しているシートクランプ。中に斜ウスが入っており、ボルトを締めるとシートポストを前から押さえつけるようになっている
ナカジの試乗レポート
今回試乗したモデルは、カーボンのグレードを一つ落としたフレームに最新のシマノ・105を搭載している。最新の105はサードグレードといっても、あなどれない性能を持っている。さすがにトルクをかけているときの変速スピードは上位グレードと同じというわけにはいかないが、ブレーキの引きの軽さなどは、旧デュラエースに優っているとさえ思う。
話をフレームに移そう。走りは相変わらず気持ちいい。最新モデルと比べると硬さが足りないと言えなくもないが、それは各社のトップレンジと比べた場合のこと。重いギヤをかけていったときにフレームが受け止めて、バネ感をもって押し出してくれる感覚は好みだ。どんなシーンでも癖がなく扱いやすいので、走っていてもストレスが少ない。パリパリの剛性感を求める人、体重がある人やハイパワーの人にとっては、少し物足りないと思うかもしれない。
一時期編集部にあったモデルなので、乗り込んでいたフレームだしフォルムもすてきだ。当時、スコットサポート外の選手に乗ってもらったことがあるけれど、彼が少し試乗しただけでも、とても好印象を持っていたことをよく覚えている。もちろん、その性能の高さは、選手でなくても体感できる完成度を持っている。
スペックを見れば、ホイールをアップグレードする必要があるという人もいると思うが、それをのぞけば搭載されている現行の105はかつての105の印象を大きく覆すほどに性能が高い。ゆえに購入後の投資も少なくてすむ。1台目として選んでみても、長期的にアップグレードを含めて、楽しむことができるパッケージだと思う。