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泥の全日本シクロクロス選手権で竹之内が5連覇



2015年12月6日(日)、長野県飯山市・長峰運動公園において「第21回全日本シクロクロス選手権大会」が開催され、苦しみながらも竹之内悠が勝利を飾った。
 
text&photo:岩崎竜太
第21回全日本シクロクロス選手権大会・男子エリートは竹之内悠が優勝。2位・山本幸平、3位・小坂 光
第21回全日本シクロクロス選手権大会・男子エリートは竹之内悠が優勝。2位・山本幸平、3位・小坂 光

終盤まで見えなかった勝者

雲間から時折日射しがのぞく曇り空の下、エリート男子の93人が一斉にスタート。

コース全長は2700m(舗装区間900m)、高低差は30m。急勾配のアップダウン、砂地、つづら折りの林間区間、などのセクションが配されるも長い直線が多くハイスピードな展開が予想されるコースレイアウト。昨年は大雪に見舞われたこの会場、今年は前日夜に落ちた雨の影響でダート区間はマッドコンディションになったことで、レースはスピードに加えて、乗降車の見極めや、ダート区間でのテクニックもシビアに要求される状況となった。

 
エリートクラスは93人もの選手たちが一斉にスタート
エリートクラスは93人もの選手たちが一斉にスタート
1周目、いちばんに飛び出したのは竹之内。このまま独走かと思われたが、厳しいレースになった
1周目、いちばんに飛び出したのは竹之内。このまま独走かと思われたが、厳しいレースになった


集団がばらけてくる頃、先頭に立っていたのは小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)だった。今シーズンは国内のレースで勝利を重ね、その好調のまま「今年こそ」の思いを胸に全日本へ乗りこんできた。

それに続くのは竹之内悠(Veranclassic-Ekoi)。海外を拠点にレース活動を行ない今シーズンはケガによる不調のシーズンを過ごすものの、現在4連覇中のシクロクロスチャンピオン。

そしてそのうしろには、こちらも海外のワールドチームで活躍する、現MTB全日本チャンピオンの山本幸平(Trek Factory Racing)が続いた。

この全日本はこの3人のレースだった。

急なドロの上り斜面では、前半、小坂、竹之内が即時に自転車を降りて押し上げるのに対し、山本はパワーで上り切るという走りの違いを見せたものの、山本も後半はシクロクロスの2人と同様に押し上げていた。体力、ドロ詰まりなどのリスクなどを考えると、押し上げの方が有利だったようだ。

 


山本の力が発揮されたのは、ダートのつづら折り区間。2人が減速しているのに対し、タイヤをうまくグリップさせながら差を縮めていくうまい走りを見せた。彼らのハイペースに後続はついていくことができず、差はどんどんと広がってしまった。
 
さらに小坂は、竹之内と山本を引き離していき4秒ほど先行。今シーズン導入したウエイトトレーニングの効果は、平地でも差を広げることができるほどのもののようだ。じわじわと高いトルクで踏み続ける小坂と、2人との差は最大で14秒ほどまで広がった。2012年からシクロクロスの全日本チャンピオンを目指してから4年目の今年、「ついにその瞬間は訪れるかもしれない」というファンたちの願いは予感に変わった。

しかし、竹之内の心の中でもなにかが変わっていった。

 「光も調子よかったし、幸平さんも僕らをやっつけようとMTBから来てくれていたので、やっぱそれに応えないとと思っていたんです。でも、ついていくのに精一杯でした。 脚の負傷からのリハビリ、あと緊張もありました。野辺山のときは気負いもなくリラックスして走れてたことをレース中に考えてしまって、「先週のほうがよかった」って頭の中で繰り返してしまって、どうしようって……。そんな自分が情けなく感じて、 『4連覇してきたのに、なにしてんのやろ?』って、こんな簡単に全日本終わったらあかんなと思ったら、フッと力が抜けて出力が出たので、しんどいながらも追いついてそっからは気持ちの勝負やなと思いました。 」

 
トップで独走を続けた小坂、そのうしろには山本と竹之内が4秒の差で追う
トップで独走を続けた小坂、そのうしろには山本と竹之内が4秒の差で追う
冷静に自分のペースで走った小坂と後続との差は最大で14秒に
冷静に自分のペースで走った小坂と後続との差は最大で14秒に
ムダな力が抜けたあとの竹之内は速かった
ムダな力が抜けたあとの竹之内は速かった
残り3周でついに山本と竹之内が小坂をとらえる
残り3周でついに山本と竹之内が小坂をとらえる


残り3週。竹之内は山本と共に前を走る小坂のうしろについた。
 
「ペースを落としたつもりはないですが、追いつかれても落ち着いていたし、最後まで行ってまたペースアップ出来ると思っていたんですけど……」と小坂は話した。

前に出た竹之内、それを追う小坂。
芝のバンクを抜け舗装路に出るその場所で、小坂が転倒した。一瞬のことだった。すぐに起き上がるも、前方との差はとても大きかった 。
 
そして、そのまま竹之内がフィニッシュラインを通過し、全日本の連覇を伸ばした。
 
 
小坂が転倒したのち、竹之内がペースを上げて独走に
小坂が転倒したのち、竹之内がペースを上げて独走に
後半のつづら折りの下り区間。必死に前方の竹之内と山本を追う小坂
後半のつづら折りの下り区間。必死に前方の竹之内と山本を追う小坂

竹之内悠、5連覇達成!

「最後まで諦めずに走れ」チームの言葉に支えられて走った竹之内が今年も優勝を飾った
「最後まで諦めずに走れ」チームの言葉に支えられて走った竹之内が今年も優勝を飾った
レース終了直後、ウエアを着替えてインタビューに備える竹之内
レース終了直後、ウエアを着替えてインタビューに備える竹之内


竹之内のコメント:
今までやってきたことの成果と、あとびっくりするぐらい落ち着いていたスタッフに支えられて、チームで勝てたなと思います。世界に挑戦して全日本で勝っているからいいものの、負けたらただの人間に戻るんで、また気を引き締めて、連覇を伸ばせるように、もちろん海外も狙って、日本のシクロクロス界を引っ張れるように頑張りたいと思います。
 
 

第21回全日本シクロクロス選手権大会 結果

[ 男子エリート ]
1 竹之内悠(Veranclassic-Ekoi)1時間4分17秒
2 山本幸平(Trek Factory Racing)+26秒
3 小坂 光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)+1分7秒
4 丸山 厚(BOMA RACING)+3分7秒
5 武井享介(FORZA・YONEX)+3分54秒
6 濱 由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)+3分58秒

[ 女子エリート ]
1 坂口 聖香(パナソニックレディース)   48分17秒 
2 宮内 佐季子(ClubLa.sista OffroadTeam)   +16秒
3 與那嶺 恵理(サクソバンクFX証券・YONEX)   +1分1秒
4 武田 和佳(Liv)   +1分40秒    
5 豊岡 英子(パナソニックレディース)   +2分21秒
6 今井 美穂(CycleClub.jp)+2分44秒

[ 男子 U23 ]
1  沢田 時    (TEAM BRIDGESTONE ANCHOR)50分09秒
2 横山 航太(SHIMANO RACING)   +18秒    
3 竹内 遼(WESTBERG/ProRide)   +21秒
4 前田 公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム)+1分17秒
5 宮津 旭(PAX PROJECT)   +2分27秒
6 山田 将輝(PAX PROJECT)+3分24秒

[ 男子 ジュニア ]
1 織田 聖(AboveBikeStoreCycleClub)  43分34秒
2 日野 竜嘉(松山聖陵高校)    +1分26秒    
3 梶 鉄輝(Sonic Racing/市立伊丹高校)+2分14秒
4 江越 海玖也(横浜高校自転車競技部)  +2分36秒
5 江越 昇也(WESTBERG/ProRide)+3分12秒
6 沢田 桂太郎(Team CHAINRING)+4分48秒