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小坂 光「シクロクロス全日本チャンピオンまでの距離」
2016.01.08
小坂光(こさかひかる)は、日本シクロクロス界の鉄人である小坂正則を父に持つ自転車選手だ。シクロクロスに専念し、全日本を狙い始めた2012年から表彰台に上り続けるも、その頂点に立ったことはない。
そんな小坂の今シーズンの走りは明らかに違う次元のものだった。しかし、今年もまたその頂には届かなかった。年の瀬が迫った宇都宮にて、その胸中を聞いた。
そんな小坂の今シーズンの走りは明らかに違う次元のものだった。しかし、今年もまたその頂には届かなかった。年の瀬が迫った宇都宮にて、その胸中を聞いた。
シクロクロス全日本を振り返って
僕が見た最初の全日本シクロクロスは2012年の朝霧高原。フィニッシュラインで高らかに両手を上げる竹之内悠選手のうしろで悔しそうに顔をゆがめる小坂光選手の姿があった。表彰式では笑顔を見せることはせず、時折苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべていたのが印象的だったのを今でも覚えている。その後、プロとしてではなく、社会人として働きながらレース活動を続けている小坂は、いまだ全日本の表彰台の頂点には立てていない。
しかし2015年の全日本では、序盤から快走、後続と大きく差を開ける独走状態となり残り3周。念願の勝利までのカウントダウンが始まったところで落車。3位でレースを終えたものの、その強い走りは多くの観客の目に焼き付いたに違いなかった。2012年のあの頃より確実に強く成長を遂げているのに、なぜ小坂は勝てなかったのだろうか? 彼が考える“あの落車”の本当の意味を聞いた。
しかし2015年の全日本では、序盤から快走、後続と大きく差を開ける独走状態となり残り3周。念願の勝利までのカウントダウンが始まったところで落車。3位でレースを終えたものの、その強い走りは多くの観客の目に焼き付いたに違いなかった。2012年のあの頃より確実に強く成長を遂げているのに、なぜ小坂は勝てなかったのだろうか? 彼が考える“あの落車”の本当の意味を聞いた。
Q1 今シーズンはレースで好走を見せていました。昨年との違いはどこから?
トレーニングに集中する環境を作ることができたし、体のケアをする時間もしっかりとることができていました。
これまでは自己流でやっていた程度でしたが、今年からトレーナーについてもらい、シクロクロスに必要な筋力の強化に年間を通じて取り組んできたんです。
実際、シーズン当初から大きな効果を実感していました。また、中国遠征で早い時期からクロスのレースに出ていたこともあって、昨年よりも一つ上のレベルで国内のシーズンを迎えることができていましたね。
これまでは自己流でやっていた程度でしたが、今年からトレーナーについてもらい、シクロクロスに必要な筋力の強化に年間を通じて取り組んできたんです。
実際、シーズン当初から大きな効果を実感していました。また、中国遠征で早い時期からクロスのレースに出ていたこともあって、昨年よりも一つ上のレベルで国内のシーズンを迎えることができていましたね。
Q2 全日本では前半から積極的にレースを引っ張っていました。あれは作戦?
Q3 残り3周での落車、あのときの状況を教えてください。
独走から竹之内悠選手、山本幸平選手に残り4周くらいで追いつかれて、悠が前に出てちょっとペースが落ちました。「休ませたくないな」と思って僕が前に出てペースを上げたりしながら走ったり、幸平さんが前に出たりしながらのせめぎ合いがあって、ここからが勝負だという感じの展開で集中できていました。
残り3周、あの土の路面のコーナーは出口に向かって下っていて、その先にはアスファルトがありました。後半はドロがアスファルトに乗って滑りやすい状況。
僕は悠に続いて2番手であのコーナーに入ったんですが、出口部分で目の前を走る悠が後輪を滑らせて、僕はそれに気を取られているうちに前輪が斜めになったまま出口のアスファルトに差し掛かってしまったんです。「やばい!」って思ったときにはもう滑り始めていて、為す術なくそのまま転倒してしまいました。
うしろを走っていた幸平さんに抜かれ、立ち上がってすぐ走り出しましたが、落車したときにホイールがずれてブレーキがあたってしまい全然進まない。遠ざかっていく2人を目で追うことしか出来ませんでした。
残り3周、あの土の路面のコーナーは出口に向かって下っていて、その先にはアスファルトがありました。後半はドロがアスファルトに乗って滑りやすい状況。
僕は悠に続いて2番手であのコーナーに入ったんですが、出口部分で目の前を走る悠が後輪を滑らせて、僕はそれに気を取られているうちに前輪が斜めになったまま出口のアスファルトに差し掛かってしまったんです。「やばい!」って思ったときにはもう滑り始めていて、為す術なくそのまま転倒してしまいました。
うしろを走っていた幸平さんに抜かれ、立ち上がってすぐ走り出しましたが、落車したときにホイールがずれてブレーキがあたってしまい全然進まない。遠ざかっていく2人を目で追うことしか出来ませんでした。
Q4 レースを終えて、チャンピオンとの違いや差はどのようなところにあると思いますか?
でも、もし悠や幸平さんとの違いがあるとすれば、駆け引き、せめぎ合いという経験という部分ではないかと思います。今年の国内でのレースは序盤から中盤の間で独走状態になってほぼ全部勝っています。
いま日本ではライバルがいない状況にあって、そういう状況の僕と、海外で同じレベルの選手たちと常に競い合っている彼らとでは、最後の最後で差が出てしまう気がするし、その差がこの全日本の結果だったように思います。
自分では落ち着いて走れているつもりでしたが、彼らのほうがもっと冷静にレースを走れていたのかもしれません。そして、勝負の瞬間になったときの集中力は彼らのほうが勝っていたのかもしれない。最後まで来ての大きなミスはとても、とても苦い経験となりました。
Q5 全日本を制覇するために、何が必要だと考えていますか?
そして新たになにか変えるとすれば、レーススケジュールにもよりますが、MTBのレースに挑みたいと思っています。遅いとは思いますが、必ず前に選手がいて前を追わなくてはいけない状況を作ることでもっとレースに集中すること、そしてせめぎ合う状況で闘うことを体にすり込みたいと思います。
今年1年ですごく強くなれたというのを感じているので、リセットされての1年目という感覚があります。だから、いまやっていることを積み上げたら、来年の全日本の結果は自分自身でもすごく楽しみです。シクロクロスの全日本を獲るためにやることは明確になっています。
Q6 まず目の前に迫るのはベルギー・ゾルダーで1月30日〜31日に開催される世界選手権ですが、意気込みは?
世界選手権に挑戦することは、僕にとってとても大きなモチベーションになっています。 文字通り世界最高峰のレースであり、そこで結果を残すことこそ本当の強さの証明になると思っています。 また、国内を中心に活動している僕にとっては貴重なチャンスであり、世界のレベルを体感することが自分のレベルアップに繋がります。 未だエリートカテゴリーでは完走すらできていませんが、これまでで最も良い状態で挑戦できると思っているので、日本人最高位を目指し、しっかりと結果を残 してきたいです。
1988年生まれの27歳。宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム所属。2009年、2010年にシクロクロスU23日本代表として世界選手権に出場。全日本シクロクロス選手権では2012年2位、2013年2位、2014年3位。
オフィシャルブログ:磨けば光る!