デローザ・ニック 試乗レポート

デローザの家系について少し説明したいと思う。デローザは現在３世代によって切り盛りされている。創業者である伝説のビルダー、ウーゴ・デ・ローザ。 80歳を過ぎた 今なお工房でのチェックを怠らない。その息子であるダニーロ、クリスチアーノ。そしてクリスチアーノの息子であるニコラスだ。 

24歳のニコラスは、工房で祖父に師事しながら金属フレームの溶接をし、伝説の人からロードバイクとは何かをじかに受け継いでいる最中だ。その彼の愛称を与えられたモデルが「ニック」。金属フレームではなく、3Kカーボン 70%、T1000、T800、40T、30Tを30%からなるカーボンフレームだ。 シマノ・105フルセットで組まれた完成車で、デローザのエントリーモデルに位置づけられている。 

ラインナップ中、立ち位置が近いモデルにアバントがあるが、ニックのほうがよりアグレッシブに走りたいライダーに向けた設計になっているという。デローザのロゴ入りサドル、ボトルケージ、ホイール用のステッカーが付属するのも完成車ならではのメリットだ。  

どれほどニコラスの意見が取り入れられているのかといえば、コスメの部分に彼の意見が取り入れられているという段階だが、デローザの名を次世代へとつなぐ世代交代を象徴するモデルといえる。

 

■「デローザ」の刻印が入ったセライタリアのサドル、エリートのボトルケージが付属。 ホイールに貼るためのステッカーも同梱される。完成車で購入するからこそのメリットだ



 

■BBにはプレスフィットタイプを採用。タイヤクリアランスは大きめに取られており25Cまで対応する。フレームサイズ52、54.5は クランク長172.5mmが 取り付けられている



 

前号で紹介したSKピニンファリーナが全身からエアロロードであることを主張していたのに対して、ニックのルックスは特徴的な造形があるわけではなく至ってシンプルなフレーム形状。トップレンジであるキングXSをきゃしゃにした感じだ。ストレートフォークに細身のシートステー、ヘッドチューブのベアリングは上下異径だし、BBはプレスフィットタイプ。シフトケーブル、ブレーキケーブルはフレーム内蔵で、電動コンポーネントを使用する場合ももちろんケーブル類を内蔵可能と、今のロード バイクのスタンダード規格がしっかりと盛 り込まれているという優等生なバイクだ。  

正直、試乗する前は「走りはそれなりなんだろうな」と思っていたのだが、いざまたがってペダルを踏み込んでいくと存外に強気な加速を見せてくれた。それならばとさらに力を込めていくと、気持ちよく平地を巡航していく。フレームのバランス、とりわけヘッドまわりのそれがいい印象だ。  

走りにおける「デローザっぽさ」についてだが、SKピニンファリーナで感じたものに比べると薄くなっていると言わざるを得ない。速度が上がって、そこからもう一段加速するときにも、BBにため  が利いてぐんぐん加速していく感じが上位モデルにはある。ニックはそこがもうひと息か。
 
この完成車のパッケージでロングライドは十分に楽しい一日を提供してくれるだろう。ふとサイクリング仲間から誘われて、耐久レースなど誰かと競い合うようなシーンに投入したいなら、タイヤやホイールをより上のグレードのものに交換することをオススメする。


 

デローザ・ニック
シマノ・105完成車価格/32万9000円(税抜) 

フレーム●カーボン 
フォーク●カーボン 
コンポーネント●シマノ・105 
ホイール●シマノ・WH-RS11 
タイヤ●ヴィットリア・ルビノプロ 700×23C 
ハンドルバー●FSA・ヴェロコンパクト 
ステム● FSA・OS186 
サドル●セライタリア・SL 
シートポスト●FSA・ゴッサマー 
試乗車実測重量●8.23 kg(480サイズ、ペダルなし) 
サイズ●460、480、500、520、545 
カラー●ブラック×グリーングロッシー、ブラック×ブルー×レッドグロッシー、シルバー×ブルーマット、ホワイト×レッドグロッシー