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《手ぶらでMTB》vol.2 ふるさと納税してMTBツアー走って。山伏トレイルツアーに見るガイドツアービジネスの成功モデル

MTBを持っていなくても、行けば走れるフィールドやツアーを紹介する『手ぶらでMTB』。このYAMABUSHI TRAIL TOUR(山伏トレイルツアー)、ただのMTBガイドツアーではない。

昨今話題の《ふるさと納税》プログラムの一部でもあり、「寄付すれば、ガイドツアーが楽しめて、しかも税金が還付・控除される」という、お得でみんなのためになる、稀に見るツアーなのである。 


 
text: 中村パンソニ、photo: 岩崎竜太

古道を再生したトレイルで江戸時代へタイムトリップ



MTBを持っていなくても、行けば走れるフィールドやツアーを紹介する『手ぶらぶらでMTB』。オンロードでは厳しい冬こそMTBに乗ってみたいという声をよく聞くが、今回ご紹介するツアー、西伊豆のトレイルを走る『山伏トレイルツアー』が、この季節にぴったりだ。 

『山伏トレイルツアー』は、静岡県西伊豆、松崎町を起点とするMTBガイドツアーである。走るのは、このツアーの主宰である松本潤一郎さんが「発見」した、1200年前からある山道だ。平安時代からあった古道を、松本さんが中心となってMTBで走りやすく「発掘」し、ツアービジネスとして可能なまでに整備した。 

平安時代から現代に至るまでの、西伊豆の歴史と山道の使われ方、さらには世の有様。馬、ソリ、そして山岳信仰。山伏たちが使い生活していた山の地形というトレールで、1000年以上の歴史をタイムトリップして、同じ地形を同じように走る。違うのは、MTBという乗り物に乗っていることだけだ。このあたりの走り心地については、本誌2016年1月号の連載ページ『ABCdeMTB Vol.05』に詳しい。 

 

かつて馬やソリが通り今は眠っていた古道を蘇らせツアーに


「江戸時代には、炭焼きで使われていたものなんです。山の広葉樹を山のなかで窯に入れ、炭にする。軽くなるし、燃えやすくもなりますから。それを山から、ソリや馬で下ろして江戸に出荷していたんですね。ハーフパイプのような地形を走るトレールは、もともとソリ道だったので、ああいう造形になったんですね」 

松本さんは、世界のトレールを歩いていた旅人だ。インカのトレールやラダック、ネパール、多くのトレールを歩いてきて、落ち着こうと思ったのが、この西伊豆、松崎町である。住みながら裏の山を歩いているうちに、いろんな古道の跡があるのに、そのトレール人としての嗅覚が気がついた。最初は歩き、そのうち乗り、それがあまりに多いのを知り、ある程度の規模で直せばツアーとしてできるんじゃないかと考えた。 

みんなに呼びかけ、仲間が増えていった。それがツアーとして機能するようになった。最初はどうやって金銭を発生させるツアーとして、山主に理解してもらったらいいのかもわからない。 
 

銀行の起業家コンテストで最優秀賞獲得

そこで考えた。林業事業体に加入した。山主さんとの交渉方法、伐採届けの提出方法、保安林の存在などを学んでいった。 

その働きが、静岡銀行の起業家対象コンテストのニュービジネスプラン部門で、最優秀賞を獲得という結果となった。その理由は。 

使われなくなった地域の財産、古道をまた新しい形で利用して観光資源にすること、そしてその案内する山自体の里山の整備までもする。水切りをつくり、木を切り、視界を美しくして、トレール管理、メンテナンスを日々自分たちで行う。地主さんたちがしたくてもできないことを行うのだ。 

その管理、観光資源としての景観の保護、歩きやすさ(走りやすさ)の確保を行ううちに出た、伐採された木を、江戸時代に習い山の中でマキにして、降ろし、江戸時代から続く鰹節屋でカツオを燻すために買い取ってもらう。マキを販売して得た副収入は、トレール整備活動の、そしてトレールメンテナンス関わる人びとのモチベーションを力強く鼓舞する大切な会合、すなわち飲み代となっていたりもするそうだ。

「そんなところを評価していただけたんでしょうね」と松本さんはいう。 

 

『ふるさと納税』の公的なお礼としての対象に

そして、ここからが核心だ。 

「松崎町で、ふるさと納税の対象の事業として、認定してもらえたんです」 

----ふるさと納税でお得になる仕組み 

記載額のふるさと納税をすると、これらツアーを走れる権利をもらえる。そのふるさと納税を各自治体に申告して寄付金受領証明書をもらい、確定申告時に、税務署へ提出すると、所得税から還付が行われ、住民税からも控除が行われる。還付・控除額は、寄附を行う人の収入や家族構成に応じて変化する。 

ということで、どうせ税金払うんだから、その分少しでも遊んでやろうぜ、ということができる、そうなのだ。詳しくは税金に詳しい方に聞いてみて欲しいのだが、つまりは。 

税金を納めて遊べる。地方の自治体に寄付して、それのお礼でツアーで遊ぶ。いわば公費で遊んでいるようなものである。それを決めた松崎町のフットワークの軽さは、賞賛に価する。先の12月には、そんな公費の遊び人ツアーが、ものすごい沢山あったという。税金で持ってもらえるなら、混まない早いうちがいい。 

 

『西伊豆古道再生プロジェクト』

さらに、地域貢献にも抜かりない。『西伊豆古道再生プロジェクト』という里山整備の活動を行っている。トレール整備で定期的に山に入り、管理するとく協定を結び、林野庁から公的交付金も出ている。 

ここから、作業した人に日当を出せる。地元のいろんな方がきてくれている。ツアーに関わる人以外の方々もやっている。古道を再生させること、トレールづくりを手伝ってもらうことが、そのまま公益につながっている。賢い。 

「あんたたちが通るようになってから山が良くなった」と感謝もされる。トレールで通れるために、奥の山へと歩いていけるようになったり、椎茸の栽培を始められたり、という。猟友会の人びとも、山での中の移動がしやすくなった。 

50-60年前まで使われていた古道、地域のおじいさん、おばあさんがが使ってきた道に、MTB用として再び言葉通りに陽が当たる。それがうれしい。道が蘇えると、思い出が、蘇る。 

 

ふるさと納税で走れる手ぶらでMTBツアー紹介

これが、山伏トレイルツアーのビジネスプランだ。まさに理想的であるとも言える。まずは、世界がまだ知らない西伊豆MTB体験を、ぜひ味わって欲しい。 

それでは、山伏トレイルツアーで味わえる、ふるさと納税の『お礼』ツアーをご紹介しよう。レンタルバイクの料金は ハードテイル2000円、フルサス3,000円。ヘルメット、「付け具合のいい」グローブも込みとなる。 


【イージーライドーー舗装路メインの初心者向け】
*ふるさと納税額:20,000円 

舗装路をメインとするツアー。松崎は日本で最も美しい村連合に加盟しており、その美しい景色の中をちょっと荒れた舗装路も使って繋いでいく。昔から今も栄える港町の美しさと、人々の温かさ、魚のうまさも魅力だ。レンタルバイクも込みの料金で、手ぶらでMTB度はかなり高い。 

*料金:1日9,000円、半日7,000円(共に保険込み)
*レンタルバイク(ハードテイル)込み


【ファンライドーーMTBトレールの楽しみを】
*ふるさと納税額:30,000円 

山を安全に走れる基礎講習を受けたのちに、山の中の古道を走っていくツアー。乗り慣れていない方から、もっと乗りたい方も、参加者のレベルに合わせて。腕のある友と身軽に電車で行き、フルサスのレンタルを使って遊ぶというのも手だ。 

*料金:1日8,500円、半日6,500円(共に保険込み) 
*レンタルバイク なし 


【最上級のエピックライドーー上級者向け】
*ふるさと納税額:30,000円 

最近始まった、全く別の山のトレイル。標高差700mを8kmかけて、文化の遺産、美しい富士山、海と並行して走るというまさにエピックな体験のできるライドである。コースの開発費もかかっているので通常料金は高めだが、ふるさと納税額なら同じである。 

*料金:1日1万円(保険込み) 
*レンタルバイク なし 

 

山伏トレイルツアー



正式名称はYAMABUSHI TRAIL TOUR。日本語だと「山伏トレイルツアー」で、『トレール』ではなく『トレイル』表記だ。冬でも走れるMTBガイドツアーとして人気である。集合:9:30に西伊豆の松崎港。電車を利用する場合は送迎も行う、予約時に相談を。

山伏トレイルツアー
http://www.yamabushi-trail-tour.com
静岡県賀茂郡松崎町江奈225-4
TEL: 080-5117-6665



《手ぶらでマウンテンバイク》vol.1 富士見パノラマ MTBパーク
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《手ぶらでMTB》vol.3 この冬のマスト 「スノーをファットバイクで走る」その楽しさ2つ
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《手ぶらでMTB》vol.4 2020年までに走っておきたい『日本サイクルスポーツセンター』MTBコース
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