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ギークなバイク「Cerevo・オービトレック」の開発者に気になることを聞いてみた!

日本のハードウェアベンチャー、Cerevo(セレボ)が1月に開催された北米家電ショー2016(CES 2016)で発表した、IoT(モノのインターネット化)自転車、オービトレック。

9軸センサーなどを持つハードウエアをフレームに内蔵することによってスマートフォンに接続すると様々な情報を得ることが出来る機能に加えて、自転車自体は3Dプリンターで製造されたチタンラグにカーボンチューブを組み合わせるという製法を取り入れた、まさに次世代のバイクだ。バイクに搭載されるハードウエアは、「RIDE-1(ライドワン)」という商品名での単体販売も予定されている。

その詳細を、Cerevo創業者でCEOの岩佐琢磨氏に、国際派自転車ジャーナリストの難波賢二が聞いた。
 
text:難波賢二 photo:吉田悠太

3Dプリンターでラグを作ったバイク

モデル名は「オービトレック」
モデル名は「オービトレック」
CEOの岩佐琢磨氏
CEOの岩佐琢磨氏
難波:CESで発表されたオービトレックですが、まず、具体的な特徴をお聞かせください。

岩佐:チタン焼結型成形による、いわゆる3Dプリンターでラグを製造し、それにカーボンチューブを組み合わせてフレームに仕上げるという作り方がまず最大の特徴ですね。そして、フレーム自体にセンサー(ライドワンとして発売するものと内容は同じ)を組み込んだというのがもう一つの特徴です。

難波:すべてをセレボが自社で開発したのですか?

岩佐:いえ、そういうわけではありません。弊社が入っているDMM.make AKIBAという施設が秋葉原にあるのですが、こちらには様々なハードウェアベンチャーが事務所を構えていて、それぞれにモノ造りを行っています。そちらとのコラボレーションで生まれたバイクです。セレボではフレームの中に内蔵するセンサーの製作を行っていて、先のご説明したコラボレーションで生まれたコンセプトバイク(オービトレックのベースとなるDFM01というモデルがあった)と合体させて細部を煮詰めたものがオービトレックです。金属の連続融解法を用いたフレーム製造のノウハウおよび意匠設計は柳澤郷司が率いるデザインスタジオTripleBottom Line によるものです。

難波:3Dプリンターというとプラスチック噴射して重ねていく3Dプリンターを思い浮かべますが、チタン焼結型3Dプリンターとはどういったものなのですか?

岩佐:その点については、実際にオービトレックを担当している佐藤光国よりお話しますね。

佐藤:チタンの粉末が水槽に入っているような状態を想像してください。そちらにピンポイントでレーザーを複数方向から噴射するとレーザーが集まった点だけが熱くなりチタンが溶けて固まります。これを繰り返すことで、3D形状のラグを製作出来るようになったのが今回の技術です。
 
3Dプリンタで製作されるBBまわり、一見するとカーボン製のようだが内部に金属っぽさがみえる
3Dプリンタで製作されるBBまわり、一見するとカーボン製のようだが内部に金属っぽさがみえる
おなじく3Dプリンタで製作されるヘッドチューブ
おなじく3Dプリンタで製作されるヘッドチューブ
プロダクトマネージャーの佐藤光国氏
プロダクトマネージャーの佐藤光国氏
難波:出来上がったラグにカーボンチューブを組み合わせて接着することで、フレームとして仕上がるという事ですね?

岩佐:そうです。自転車としての最大の特徴は、チタン焼結型3Dプリンターで製造するので、自由なジオメトリーのラグが製造可能。つまり完全フルオーダーフレームが短時間で作れる所にあります。

難波:一般的なラグを使ったフルオーダーフレームだと、早くて3ヶ月、場合によっては3年以上待つという事もありますが、オービトレックはどのくらいの納期を実現しているのでしょう?

岩佐:最終的な納期については、まだ検討中ですが、少なくとも3ヶ月かかるという事はありません。それよりも圧倒的に短時間の納品を可能にしています。


難波:いわゆる走りの性能自体は、例えばトレックやスペシャライズドといったフルカーボンを作り慣れている専業バイクメーカーを凌駕する走りを実現しているのでしょうか?

岩佐:この点については、目標としているポイントが違うという事を説明しておく必要があります。既存大手のブランドでは、フルオーダージオメトリーのバイクは作っていないので、フルオーダーで作れるオービトレックにメリットがあると思います。絶対的な軽さや剛性といった性能では、大手自転車メーカーの方が上ですが、一方で人によっては絶対的な性能よりもジオメトリーが大事という人がいる。オービトレックはそういった人向けの製品です。

 
ダウンチューブと一体となった「ライドワン」。後付け出来るタイプも開発されている。
ダウンチューブと一体となった「ライドワン」。後付け出来るタイプも開発されている。
難波:センサーを内蔵した理由は?

岩佐:弊社としては、自転車事業における主力製品はライドワンですから、それを内蔵したオービトレックは、象徴的な存在としてセンサーを内蔵する事で、美しいバイクを目指しました。

難波:バイクとしての最終的なスペックはまだ出来上がっていませんが、2016年春とされている発売までにどういった所を詰めて行くのでしょうか?

岩佐:乗り物ですから、安全性を最優先した上でどこまでラグの厚みを薄くして性能を上げて行けるか?という所を現在煮詰めて行っています。

難波:CESでは目標価格が7000ドルと発表されました。若干高いかな?とも思いますが。

岩佐:驚くほどの短時間でフルオーダーのバイクが手に入る。そして、最先端のテクノロジーで作られた、IoTバイクですから、そういった所に興味を持っていただけるユーザー様は世界規模で見たときに一定数はいると想定しています。

難波:あくまでオービトレックは象徴、ビジネスの主力はライドワンセンサーという認識で良いですか?

岩佐:そうです。ライドワンについては、弊社のスポーツ向けブランド、XON(エクスオン)シリーズの第二弾の製品として発売します。既存の自転車に後付けする事でIoT化出来るという機能は、多くのサイクリストに受け入れられると思っています。

難波:こちらについては2月20日発売のサイクルスポーツ本誌で詳しく紹介したいと思います。今日はありがとうございました。

岩佐:こちらこそ、ありがとうございました。

 
●岩佐琢磨(写真左)
1978年生まれ。パナソニックを経て、セレボを起業。ユーストリーム用のライブ送出機LiveShellなど、様々な情報機器をCerevoブランドから世に送り出し、昨年、スポーツ用のサブブランドXON(エクスオン)を発表。スノーボードの動きを見える化する「スノウワン」に続く、XONの第二段製品が「ライドワン」。

●佐藤光国(写真右)
自らも自転車に乗るシステムエンジニア。オービトレック、ライドワンのプロジェクト統括及び、内蔵センサモジュールの企画立案やスマートフォンアプリの開発を担当。

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