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コロンビアのキンタナが初優勝! ブエルタ・ア・エスパーニャ2016

シーズン最後のグランツールであるブエルタは、コロンビア人のキンタナが初優勝して幕を閉じた。

26歳のキンタナは初めてフルームを打ち負かすことができたのだが、その方法は予想外のものだった…







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フルームVSキンタナ!

 
7月のパリ・シャンゼリゼ大通りで、コロンビアのナイロ・キンタナ(モビスター)は、敗北の苦い思いをかみしめ、マイヨ・ジョーヌを着た英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)の隣に並んでいた。フルームがツールで優勝した3度とも、キンタナはシャンゼリゼで彼の隣に並んでいた。しかも今年は、区間優勝して一矢報いることもなく、特別な賞も得られなかった。

惨敗に終わったツールの後、キンタナは病気を理由に南米で初めて開催されたリオデジャネイロ・オリンピックへの出場を取りやめた。一方、ツールで3度目のタイトルを獲得したフルームはリオに行き、ロードレースでは思うような結果を得られなかったが、個人タイムトライアルで銅メダルを獲得した。

そして休む間もなく、スペイン北西部のガリシア地方で開幕したブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)で、2人はふたたび対峙した。

今年のブエルタは開幕して3日目から頂上ゴールがあるクライマー向きのコースレイアウトだったが、本格的な闘いが始まったのは第8ステージだった。その前日には、ツールを落車のケガでリタイアした地元スペインのアルベルト・コンタドール(ティンコフ)が、ブエルタでも落車して負傷するアクシデントがあった。

ゴールへと続くカテゴリー1のラ・カンペローナの上り坂で、最初にアタックしたのはフルームだった。しかし、キンタナはそれを許さず、逆に攻撃してフルームに30秒以上差を付けてゴールし、総合首位に立った。
 
 
キンタナは翌日のステージで逃げ勝った地元スペインのダビド・デラクルス(エティックス・クイックステップ)に首位の座を明け渡したが、カテゴリー超級のラゴス・デ・コバドンガにゴールした第10ステージを制し、リーダージャージのマイヨ・ロホを奪い返した。

その日、キンタナは12.2km続くラゴス・デ・コバドンガの厳しい上り坂の中腹で、コンタドールのアタックに応戦してメイングループから抜け出した。その時フルームは、キンタナのチームメートの加速に付いて行けずに後退し、2人のチームメートに引かれて遅れを取り戻そうとしていた。

コンタドールを蹴落とし、ロベルト・ヘーシンク(チームロトNL・ユンボ)を追い抜いてスペクタクルな区間優勝を見せたキンタナとは対照的に、フルームは自分のペースでコバドンガを走りきり、最後はたった25秒遅れでフィニッシュラインを通過した。

折り返し地点で総合首位に立ったキンタナとフルームのタイム差は、まだ1分には達していなかった。そしてフルームは、休養日をはさんで行われたカテゴリー1のペーニャ・カバルガ山頂にゴールする第11ステージでキンタナとの一騎打ちのゴール勝負を制し、ボーナスタイムでタイム差をわずかに縮めたのだ。

今年のブエルタは第19ステージに37kmの個人タイムトライアルが設定されていたため、小さなクライマーで個人タイムトライアルが決して得意ではないキンタナは、その日までにライバルのフルームに大差を付けておかなければならなかった。

しかし、今年のクイーンステージだったオービスク山頂ゴールの第14ステージでも、キンタナはフルームにタイム差を付けられなかった。決して本調子とは思えなかったフルームだが、キンタナの猛攻撃に耐え、ゴール前のスパートですら許しはしなかった。2人のタイム差は、その時点で54秒しかなかった。
 

巨人フルームを倒した小さなコロンビア人

 
巨人フルームとキンタナの闘いは、思いもよらぬ形で決着した。クイーンステージの翌日に行われた頂上ゴールの第15ステージで、スタートしてたった6kmでアタックしたコンタドールの逃げにマイヨ・ロホを着たキンタナがまんまと乗り、フルームとチームスカイを出し抜くことに成功したのだ。

いくらなんでも早すぎる、と、チームスカイはその逃げを甘く見たのかもしれない。そのステージは118.5kmの短いステージだったが、途中カテゴリー3とカテゴリー2の峠を越える厳しいものだったからだ。しかし、2人のアシストを従えて14人の逃げに加わったキンタナは、決して捕まることはなかった。

不運にも、半数以上の選手がコンタドールの奇襲で大幅に遅れ、フルームの追走グループにはチームスカイのアシストは1人も入っていなかったのだ。フルームはこの日、キンタナよりも2分半以上遅れてゴールし、総合でのタイム差は3分37秒に開いてしまった。

スタートからゴールまで総合争いの激戦が続いた第15ステージは、93人もの選手が制限時間より大幅に遅れてゴールする、前代未聞の出来事で締めくくられた。競技審判がタイムアウトになった選手を全員救済しなければ、今年のブエルタは残りのステージをたった71人で競わなければならなくなるところだった。


個人タイムトライアルが得意なフルームでも、37kmで3分半のタイム差をひっくり返すのは不可能だった。精神的にゆとりがあったキンタナも、大きく遅れるようなミスは犯さなかった。

個人タイムトライアルで区間優勝したフルームに対し、キンタナは2分16秒遅れでゴールしたが、それでもまだ1分以上のタイム差を付けて総合首位の座を守ることができた。翌日に残っていた最後の山岳ステージは、ただフルームの攻撃に耐えてついて行けばよかった。

最終日前日の頂上ゴールを通過し、ブエルタ初優勝を確実にしたキンタナに対し、フルームは白旗を上げるように、拍手を送っていた。それは小さなコロンビアのクライマーが、ついに巨人を倒した瞬間だった。

2014年にジロ・デ・イタリアで優勝したキンタナは、これで2つ目のグランツールを制覇した。残るタイトルは1つ、ツール・ド・フランスだけだ。26歳のキンタナが、マイヨ・ジョーヌを着てシャンゼリゼの表彰台の中央に立つ日はいつか来るだろう。
 
 
■ブエルタで初優勝したキンタナのコメント
「昨日、アイタナのフィニッシュラインを通過したとき、純粋な喜びと安堵を感じることができた。僕たちは何もかも失うかもしれなかった難しく重要な一日を過ごしたからだ。しかし、何も失いはしなかった。僕をサポートしてくれた偉大なチームに感謝しているよ。

ツールは、脚でというよりは格で表彰台に到達した。フランスでは調子がいいとは感じていなかったが、ここに自分のベストコンディションを合わせることができた。このレースも、総合を争う全てのビッグネームが参加していた。偉大なフルーム、常に注意が必要なコンタドール、チャベスとオリカ...。彼らと競い、この方法でレースに勝つことは、勝利をより価値あるものにしてくれるよ」
 

ブエルタ・ア・エスパーニャ 2016結果

1 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)83時間31分28秒
2 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)+1分23秒
3 エステバン・チャベス(オリカ・バイクエクスチェンジ/コロンビア)+4分08秒
4 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+4分21秒
5 アンドリュー・タランスキー(キャノンデール・ドラパック/米国)+7分43秒
6 サイモン・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+8分33秒
7 ダビド・デラクルス(エティックス・クイックステップ/スペイン)+11分18秒
8 ダニエル・モレノ(スペイン)+13分04秒
9 ダビデ・フォルモロ(キャノンデール・ドラパック/イタリア)+13分17秒
10 ジョーシ・ベネット(チームロトNL・ユンボ/ニュージーランド)+14分07秒
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Best of - La Vuelta a España 2016 - ES 投稿者 la_vuelta