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ベルナール・イノーインタビュー「いつの日か、絶対に、日本からたくさんの自転車選手が育つ」
2016.11.02
Q.現役引退の時も、今回も、どうしてそこまで「きっぱり」決断できたのですか?
それは私が、常に今後の目的を持っているから。この先に何をしたいのか、何をすべきなのか、自分ではっきり分かっている。だから、ひとつのことを終えたら、次のことに邁進するだけ。つまり君も、今やっていることを辞める場合、次に何をするかをしっかり決めてから辞めなくてはならないよ。僕の場合は、孫の世話をすること!
Q.子供の成長を見られなかったことを、後悔しているからですか?
いや、後悔などしてはならない。過ぎ去ってしまったことは、なにひとつ変えることなどできない。これが人生だ。私の人生は、ただそういう風に作られていただけ。ただし今、私の目の前に、素晴らしい時間を過ごす選択肢が与えられた。孫の成長をそばで見届けるという選択肢だ。……だから、私は、そうしなきゃならなかった!
Q.子供の成長を見られなかったことを、後悔しているからですか?
いや、後悔などしてはならない。過ぎ去ってしまったことは、なにひとつ変えることなどできない。これが人生だ。私の人生は、ただそういう風に作られていただけ。ただし今、私の目の前に、素晴らしい時間を過ごす選択肢が与えられた。孫の成長をそばで見届けるという選択肢だ。……だから、私は、そうしなきゃならなかった!
Q.あなたを最後に、フランスはツール・ド・フランス総合覇者を輩出していません。安心して第一線から身を引くことができないのでは?
それは、一旦プロ入りしたら、十分な練習をしなくなってしまうから。もちろん全員とは言わない。ただ、たとえばシルヴァン・シャヴァネルがいい例だ。彼が若いころ、私は口を酸っぱくして、「お前は十分に練習してない」と何度も説教した。でも「はいはい」と軽く聞き流されるだけ。
ところが、何年もたって、ようやく初めてツールで区間勝利をした時だ。シャヴァネルが私のところにやってきて、「練習の大切さが身にしみて分かりました」って言うんだ。だからこう言い返してやった。「お前はもっと若い時に気が付くべきだったよ。本当に残念だ」ってね。「お前がどれだけの時間を失ったのか、ようやく理解しただろう。お前はもっともっと強くなれるはずだった。今日ようやく手に入れたちっぽけな区間勝利よりも、はるかに輝かしい栄光を手に入れられるはずだったのに」って。
Q.それはフランス独自の問題でしょうか?
さあね。ただ、フランス国内で走っていた時のシャヴァネルと、国外で走りだしてからのシャヴァネルとは、まるで別人だったろう?今現在フランス国外で走っている3人を想像してごらん。エティックスのジュリアン・アラフィリップ、ジャイアントのワレン・バルギル、ロットのトニ・ガロパン。彼らは偶然か必然か、成績をしっかり上げている。おそらく外国チームで、「成績がなければ、お前の居場所はない」という圧力をひしひしと感じているからだ。この例を見ただけでも、「ああ、フランスの自転車界では何かうまくいっていないことがあるのだ」と分かる。フランスで走っているフランスの選手たちは、自分の居場所を確保するために走る必要がない。その場に存在するだけで給料をもらっている。成績も上げずに、ちっぽけな給料だけで満足している。
Q.確か、ガロパンがU23時代に、「あいつは良く練習する選手だから、将来強くなる」とあなたから聞かされたことがあります。確かに強くなりました。
もっと強くなれるはずだったけどね。例えば身体能力はそれほど高くはないけれど、熱心に練習を積むことで、高いレベルまでたどり着ける選手が存在する。その一方で、身体能力が高いことに甘えて、十分なトレーニングを積まないまま、もっともっと上に到達するチャンスを棒に振る選手も存在する。それが全てだ。私はレースで勝った時には、いつだってこう思ったものさ。「俺は今日、このレースを勝った。つまり、もっと練習して、もっと激しく戦えば、もっと上のレースで勝てるはずだ」って。
もっと強くなれるはずだったけどね。例えば身体能力はそれほど高くはないけれど、熱心に練習を積むことで、高いレベルまでたどり着ける選手が存在する。その一方で、身体能力が高いことに甘えて、十分なトレーニングを積まないまま、もっともっと上に到達するチャンスを棒に振る選手も存在する。それが全てだ。私はレースで勝った時には、いつだってこう思ったものさ。「俺は今日、このレースを勝った。つまり、もっと練習して、もっと激しく戦えば、もっと上のレースで勝てるはずだ」って。
Q.さいたまクリテリウムが最後の任務となります。この4年間、日本の自転車界に触れてきて、何か課題を感じられましたか?
残念ながらさいたまクリテリウムは、本物のレースではない。ただ、こういう見方をするのはどうかな?これは日本自転車界を刺激し、励ますために存在するイベントなのだ、と。「自転車競技が存在するんだよ」と一般大衆に示し、すでに自転車に乗っている選手たちには世界最高峰のレーサーと共に走る機会を与え、なにより子供たちに「僕も将来はあんなことをやりたい!」と夢を抱かせるための行事だ。「これぞ僕の天職だ!」って思う子供が増えれば、いつの日か、絶対に、日本からたくさんの自転車選手が育つ。もちろん、たった4年で、目に見える効果が表れるはずはないさ。フランスだって10年、いや、50年もの長い時間をかけて、ゆっくりと自転車文化を成熟させていったんだから。