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カヴェンディッシュが優勝! さいたまクリテリウム2017
2017.11.08
今年もツールで活躍したトップスターがさいたま市に集結!
5度目の開催となった今年は、1週間前に姉妹イベントとなる上海クリテリウムが中国で開催され、そこに出場した選手たちがほとんどそのまま来日する形になり、例年よりも1週間遅い11月4日に開催された。日程がちょうどサイクルモードと重なってしまったのは残念だったが、今年も例年と変わりなく大勢の観客が集まり、『シャンゼリゼからつながるツール・ド・フランス第22ステージ』を堪能した。
今年も海外から来日したチームは昨年同様6チームで、7月のツールで4度目の総合優勝を果たした英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)がマイヨ・ジョーヌ、山岳賞を獲得したフランスのワレン・バルギル(チームサンウェブ)がマイヨ・アポワを着て参加した。
さらに総合2位になったコロンビアのリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)、昨年リオ・オリンピックで金メダルを獲得し、今季はパリ~ルーベも制したベルギーのグレック・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシングチーム)、通算30勝している英国のマーク・カヴェンディッシュ(チームディメンションデータ)が初来日。
区間5勝したドイツのマルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)も顔を揃え、4賞ジャージが揃った昨年に勝るとも劣らないトップスターが集結した豪華なイベントになった。
今年はフランスのチームが1つも参加していなかったのは残念だった。実は今年のツールで総合3位になり、さいたまクリテリウムの常連でもあったフランスのロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)と、区間初優勝したフランスチャンピオンのアルノー・デマール(FDJ)にも声はかかっていたのだが、バルデは結婚式を控えていて来日できず、デマールも他の用事があって参加できなかった。
今年はコースレイアウトが大幅に変更し、プレレースも刷新
昨年までさいたまクリテリウムは、さいたま新都心駅近くにあるさいたまスーパーアリーナ内を通過するコースレイアウトだったが、今年は大幅に変更された。1周の距離は3.1kmで変わらないが、さいたまスーパーアリーナ内は通過せず、さいたま新都心駅東エリアに新設された道路を使用し、スタート&フィニッシュもそこに設置された。
この変更により、ゴール前は約300メートルの直線コースになったが、コーナーが多くなり、より難しいレイアウトに生まれ変わった。しかし、周回数は昨年より1周少なくなり、総距離は58.9kmだった。プレレースも刷新し、トラック競技のスプリントを模したスプリントレースとチームタイムトライアルが新設された。
スプリントレースは、各チームの代表選手1名が4組に分かれて予選を行い、勝ち残った4選手が決勝を競った。メンバーはキッテル、カヴェンディッシュ、ニキアス・アールント(チームサンウェブ)、大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)で、このレースの最有力優勝候補に上げられていたキッテルがゴールスプリントでカヴェンディッシュを打ち負かして優勝した。
スプリントレースに参加しなかった各チームの3選手が出場したチームタイムトライアルは、日本の宇都宮ブリッツェンが海外勢を押さえて優勝した。この競技はチーム内で最初にゴールした選手のタイムが計測されたため、3人揃ってゴールするチームと、最後に1人を前に送り出すチームに分かれた。宇都宮ブリッツェンは後者を選択し、アンダー23個人TTアジアチャンピオンジャージを着た小野寺玲が独走でゴール。暫定1位だったチームサンウェブよりも2秒速いタイムを出してトップに立ち、それを守りきった。
クリテリウムメインレースはカヴェンディッシュが優勝
メインレースのクリテリウムには、国内外の54選手がスタート。中盤にはヴァンアーヴェルマートとウランが抜け出し、マイヨ・ジョーヌのフルームとマイヨ・アポワのバルギルが合流し、トップスター4人で先頭グループを形成する夢のような場面があった。しかし、集団はクイックステップフロアーズとチームディメンションデータがコントロールし、最終周回で全員が吸収されてしまった。
最後は別府史之(ツール・ド・フランス・ジャパンチーム/トレックセガフレード)とカヴェンディッシュがゴールスプリントを競い、初参加のカヴェンディッシュが優勝した。3位には日本チャンピオンの畑中勇介(チーム右京)が入った。
カヴェンディッシュは今年のツールでは、第4ステージのゴールスプリントで世界チャンピオンのペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)にフェンスへ押し込まれて落車し、右肩甲骨を骨折。期待されていた区間31勝目を上げられずにツールを去ったのだが、ツールの第22ステージと呼ばれるさいたまクリテリウムで勝ち、憂さを晴らすことができたにちがいない。
クリテリウムメインレースでは、ポイント賞をヴァンアーヴェルマート、山岳賞をフルームが獲得。最後まで逃げたバルギルも敢闘賞を受賞し、今年来日したスター選手がほぼ全員フィナーレの表彰台に上がった。
さいたまクリテリウムは大都市の駅前で開催されるため来場はしやすいものの、観戦が禁止されているエリアが多いデメリットもある。さらにスタート&フィニッシュの観戦エリアと観戦スタンドには、招待客とオフィシャルサポーター(個人は10万円、3万円、1万円を払う3つのカテゴリーがある)しか入場できない。そのため1周3.1kmとは言え、一般の人たちが観戦可能な場所は非常に少ないが、今年もわずかなスペースに5重6重の人垣ができるほど大勢の観客が集まり、思い思いのスタイルでドリームレースを楽しんでいた。
イベント開始時は快晴で暑いくらいの陽気だったが、午後から雲が多くなり、表彰式が行われた日没後には冷え込み、雨も降り出した。表彰式が行われるメインステージも、昨年同様一般には公開されなかったが、スター選手たちが登壇するフィナーレの表彰式に立ち会いたい熱心なレースファンは、雨の中をステージ裏で待ち続け、さいたまクリテリウムを最後まで堪能していた。
さいたまクリテリウム2017表彰式フォトアルバム
さいたまクリテリウム2017 レース後記者会見コメント集
(チームディメンションデータ/英国)
クリテリウムメインレース優勝
「幸せだ。ハードレースの後で疲れているが、問題はない。メインレースで勝てたしね。スプリントレースで2位だったから、メインレースは勝ちたいと思っていた。チームディメンションデータは強かった。クイックステップフロアーズも強かった。その中で勝つことができたのはよかったよ」
- 勝因は?
「今日のコースはフラットで、スプリンター向きだった。途中バルギルやウランが逃げてたが、最初の数周は難しかった。いい逃げができたし、ライバルも強かった。でも何とか捕まえることができてよかった」
- 最後の直線はどうだった?
「最終コーナーはタイトで、そこでアタックするには短いし、スプリントには長すぎる。スプリントレースで難しさがわかっていたから、計ってやった。フミ(別府)に追いつけてよかったよ」
マルセル・キッテル
(クイックステップフロアーズ/ドイツ)
スプリントレース優勝
「さっきまでは疲れていたが、今は大丈夫だ。全体を通してイベントを楽しむことができた。沿道の声援が多いのは素晴らしい。さいたまクリテリウムはユニークなイベントだ。また戻ってこられてうれしいよ」
- ユニークだと思う理由は?
「一年中いろいろな国でレースをしているが、日本に来ることは稀だ。遠いし、文化に大きな違いがある。そういう意味でユニークだね。来た甲斐があるよ」
- スプリントレース中は何を考えていた?
「他の選手の位置に注意して、位置取りに集中しなければならなかった」
- 来年のツールの目標は?
「今までと同じような戦略で挑む。区間優勝を狙うよ。トップに立つのはいいものだ。まずはリラックスすることが大事だと思っている。その上で、成功できる選手になりたいと思っている」
クリストファー・フルーム
(チームスカイ/英国)
山岳賞獲得
「毎年来ているから、(さいたまクリテリウムが)どんどん規模が大きくなっているのを見ている。それを感じられてうれしいよ」
- 自転車競技を代表する選手になったことについて
「今のポジションは計画してなったわけではない。でも、もっと強くなりたいという思いがあった結果だ。ツールとブエルタを制することができて、それでスポークスマンのようになった。それはうれしいことだ。
ロードレースがこの10年で大きな人気を獲得できた。それに貢献できたことはうれしい」
- 来年の目標は?
「まだ来年のプログラムは決まっていない。でも、数週間のうちにチームと相談したいと思う。5回目のツール制覇を目指したい。5勝クラブの仲間入りを果たしたいと思っている」
(ツール・ド・フランス・ジャパンチーム)
クリテリウムメインレース2位
「例年以上のエキサイティングなレースだった。チームディメンションデータとクイックステップフロアーズがスプリントに持っていく動きだった。最後はカヴ(ガウェンディッシュ)の後輪に付いた。最後のコーナーがトリッキーだったので、早めに仕掛けた。2015年も2位で、だから今年は勝ちたかったけれど、数センチ差で届かなかった。自国のレースで魅せる走りができたのはよかったと思っている。自分もスプリントが得意だから行けるかと思っていたけれど、僅差でもフィニッシュラインを越えた瞬間に(負けたのは)わかっていた」
- 新城と立てた作戦は?
「前半から交互にアタックをかけていた。最後の局面で、カウンターで出てみたが、クイックステップフロアーズとチームディメンションデータが強力だった。レース中は終始話しながら走っていた」
- レース展開は予想通り?
「例年は少人数の逃げで、そこからのスプリントになる。でも、今年はカヴ、キッテルのためにチーム力でレースを動かすという展開だった。そこに敏感に対応できたのはいいことだと思っている」
新城幸也
(ツール・ド・フランス・ジャパンチーム)
「コースが一新されて、観客が多くて素晴らしい。5回目だけど、走る方も楽しいよ。アリーナがなくなって道も細いしコーナーも多い。脚にくる、疲れるよ。前回よりもハードなコースだと思う」
- レースは計画通りだった?
「レースなので、思ったとおりになるわけじゃない。しっかりとコントロールされていた。崩すべく動いてみたけれど、実現するのは大変だった。作戦通り、というのを考えてはいた。もう一つアクセントが足りなかったように思う」
- 最終周回までアタックしていたことについて
「逃げ切りそうだというのを狙っていた。集団スプリントは勝ち目がないのはわかっていた。せっかく日本に帰ってきたので、何かアクションを起こしたいと思ってやってみた」
- 来年の抱負
「レースの予定は決まっていない。12月7日からクロアチアでトレーニングキャンプがある。どんなレースに出るかは監督と相談したい。でも、来年のツールは自分がフランスで住んでいる所がスタートだ。2011年もそうだったけど、その年は出場できなかった。来年こそは出場したい」
ワレン・バルギル
(チームサンウェブ/フランス)
敢闘賞獲得
「万歳日本と言いたいくらい大勢の観客で、最後まで集中力を切らさずに走れたと思う。もちろん逃げ切るつもりで、レースを捨てるつもりはなかった。でも風が強く、煽られてしまった。後方からスプリンターが来ていた状態ではどうにもできなかった」
- 山岳賞を狙っていたのでは?
「もちろん狙っていた。最後まで争ってはみたけれど、届かなかった」
- 上海クリテリウムと比べてどうだった?
「上海もよかったが、さいたまのほうが楽しいかな。上海が悪かったわけではないが、日本のファンは温かくてうれしい。いい雰囲気なんだ」
初来日したヴァンアーヴェルマートに独占インタビュー
今シーズンはパリ〜ルーベで初優勝し、UCIワールドツアーランキングとUCIワールドランキングの両方で首位を獲得したベルギーのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシングチーム)が、さいたまクリテリウムで初来日した。ヴァンアーヴェルマートは現在32歳。昨年はリオ・オリンピックで金メダルも獲得し、ツール・ド・フランスでは2015年と2016年に区間優勝している。
さいたまクリテリウム前日に、cyclesports.jpは短いが独占インタビューを取ることが出来た。
とても幸せだ。こういった類のシリーズ戦で、いい競争が出来て、一年中ポイントを獲得できた。フルーム、ドゥムラン、サガンよりもランキングで上になるの簡単なことじゃあない。自分の成果に満足しているよ。今年はとてもいいシーズンだった。特に春がとても良くて、ポイントをたくさん稼ぐことができた。
Q:去年はリオで金メダルを取り、今年はパリ〜ルーベで優勝したけど、どちらのシーズンの方が良かった?
今シーズンの方がより良いと思う。クラシックは僕にとって本当に重要で、そこでとてもよく走ることが出来たからね。今年の春は本当に驚異的だった。ルーベで勝てたんだから。確かに去年はリオで勝てて、それは僕の競技キャリアのハイライトではある。オリンピック・チャンピオンになったのは忘れられない思い出だ。
Q:初来日だけど、もうどこかに行った?
ここ(さいたま市)に来る前、東京に滞在してタワーや公園を見た。あと、シブヤに行ったよ。交差点を見たんだ。ベルギーにはあんな場所ないからね。すばらしい経験だった。
Q:子供の頃にゲームとかアニメとか、初めて出会った日本は何だった?
セガサターン、ゲームボーイかな。あとトヨタカー。
Q:今後の目標は?
ロンド・バン・ブラーンデレンで勝つことだ。今まで2位や3位にはなっていて、あと一歩という所まで何度も行っている。ロンドで勝つことは、ベルギー人には本当に大きな意味があるんだ。だからその日を待ち望んでいる。
Q:来年の世界選は?
コースはキツく、僕はああいうタイプのレースには向いていないから有力な優勝候補ではないが、トライするつもりではいる。
Q:ベルギーの石畳の坂で、いちばん好きなのはどこ?
パーテルベルフだ。短くて長くない。僕みたいに爆発的な走りが得意な選手にはピッタリなのさ。
Q:最後に、ベルギービールで好きな銘柄は?
オメールさ(OMER)!