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スペイン町工場の情熱と底力! ローターのこだわりを本社工場で見た
2018.06.20
楕円リングに至るまでの長い道のり
ローターの名前を聞いて思い浮かべるイメージとは、どんなものだろうか。
現在の楕円リングの地位を確固たるものにした企業。プロチームにスポンサードし、その精悍な黒いクランクとチェーンリングはハイグレードの証。パワーメーターの「2インパワー」は2016年にユーロバイクアワードを受賞。3大コンポーネントメーカーのクランクセットを押しのけて、マーケットの一角を成している。
そんなチャレンジ精神にあふれた企業とは、どんな雰囲気なのか知りたくて、スペインはマドリードの郊外にある本社を訪れた。マドリードの中心部から車で30分ほど走ると、郊外の工業地域に到着する。倉庫や工場が並ぶ一角にローターの本社はあった。思ったよりもコンパクトなオフィス。グランツールを戦うチームをスポンサードする企業ということで、勝手にもっと大きなオフィスを想像していたが、必要最低限のものがコンパクトにそろっているという印象だった。そんなローターが自転車の世界で確固たる地位を築いている。マドリードの下町工場がアイデアと技術力で世界を相手に戦っているのだ。
今でこそ楕円リングはロードパーツの一つとして受け入れられている。だがひとつのカテゴリーを確立するというのは大変なことだ。かつてはあのシマノもバイオペースという楕円リングを作っていたが、現在のラインナップには残っていない.....。そんなイロモノ的なイメージが強かった楕円リングを、選択肢の一つとし地位を高めたのはローターだ。だがその道のりは決して楽なものではなかった。
ローターの始まりはペダリングという円運動で、どうしても発生してしまう''死点''をいかにしてなくし、脚の自然な運動をペダリングという円運動に変換するかというチャレンジによる。 2人いる創業者の1人で、エンジニアのパブロ・カラスコ氏がこの命題へと挑戦した。
1994年10月に特許を取得し、作られた最初のシステムは、いくつもの歯車を組み合わせ、専用BBを備えたフレームを必要とする機構だった。運動効率を追求している反面、複雑な機構ゆえ重量もかさんだ。それから改良を加えてフレームに機構を内蔵するまでになったが、やはり専用フレームが必要なことに変わりはなかった。
そして、機構をクランクアーム周辺に配置することで専用フレームを必要としない「RCK」という製品が登場。2000年のことだ。これをさらに進化させた「RS4」というクランクセットが登場。数千セット販売されたが、やはり重かったことと何より高価だったため、販売数は伸び悩んだ。ここでローターは大きな転機を迎える。専用機構による死点解消へのアプローチではなく、楕円リングによる解決へと大きく舵を切るのだ。
2005年に現在のQリングにつながる初代モデルが登場する。一般的なクランクに装着できる機構は、プロ選手にも愛用者が現れ、2008年カルロス・サストレのツール・ド・フランス総合優勝を支えることとなる。
Commitment to the ROTOR
創業者の一人、パブロ・カラスコ氏。彼のオフィスには大きなホワイトボードがあり、アイデアがいろいろ書き込まれている。
「僕のオフィスはいつもごちゃごちゃしてるから、誰も入りたがらないんだ」と話していた。根っからの仕事人間。
''もうひとつのローター''=EDRエンジニアリング
ローターの製品を実際に製造するのは、本社オフィスから歩いて数分のところにある「EDRエンジニアリング」だ。1980年操業のCNCマシンニング専門企業。創業当時はチタンパーツの製造や、モーターサイクルのパーツ製造なども行っていた。今はローターの製品を製造することに特化している。ローターの製品でCNCマシンニングによって製造されるものは全てこのEDRエンジニアリングで製造されているのだ。
プロトタイプももちろんEDRで製造している。それがローターの最大の強み。本社で考えたアイデアがすぐに実現できる。スタッフの人数はけっして多くないが、必要最低限の人間が開発や広報に携わっているのがメリット。コミュニケーションがオープンだからだ。
それでは、ローターの最新モデルであるアルデュークランクセットとチェーンリングを例に、その製造工程を見てみよう。
ローター製品の製造
新作「アルデュークランク」ローターのラインナップ最軽量で、しかもOCPが最も細かく設定できる
ローターの楕円リングが他社の楕円リングと決定的に異なるのは、楕円のピークになるポジション=OCPを調整できる点だ。ベーシックモデルでは5つから選ぶことができる。さらに、フロークランクを使用すれば、ベーシックモデルのポジションを0.5刻みにした10のポジションから選ぶことができる。
OCPを調整できることのメリットは、クランクが1回転するなかでライダーが一番トルクを出しやすい位置に楕円のピーク=歯数が大きくなるポジションを合わせられる点だ。このセッティングが細かくできるということは、より自分にフィットさせられることを意味する。アルデューはフローよりももう1段階細かい0.25刻みでOCPを選ぶことができる。これを実現できたのはクランクシャフトに刻まれた細かいスプラインに合わせてチェーンリングをセットする設計になったから。OCPを0.25刻みの17カ所から選べるようになった。
アウターとインナーのチェーンリングは一体成型されているので、システム全体としてもレギュラーモデルより50g軽く仕上がっている。ローターの魅力として、アウターとインナーのOCPをずらせるという機能があったが、アルデューは一体成型なのでそれはできない。だが、これだけ細かくOCPが選べるのでその必要性が少ないといえるだろう。
OCPを調整できることのメリットは、クランクが1回転するなかでライダーが一番トルクを出しやすい位置に楕円のピーク=歯数が大きくなるポジションを合わせられる点だ。このセッティングが細かくできるということは、より自分にフィットさせられることを意味する。アルデューはフローよりももう1段階細かい0.25刻みでOCPを選ぶことができる。これを実現できたのはクランクシャフトに刻まれた細かいスプラインに合わせてチェーンリングをセットする設計になったから。OCPを0.25刻みの17カ所から選べるようになった。
アウターとインナーのチェーンリングは一体成型されているので、システム全体としてもレギュラーモデルより50g軽く仕上がっている。ローターの魅力として、アウターとインナーのOCPをずらせるという機能があったが、アルデューは一体成型なのでそれはできない。だが、これだけ細かくOCPが選べるのでその必要性が少ないといえるだろう。
価格/5万9800円(税抜)
クランク長/ 170mm、172.5mm、175mm
歯数/ 53T×39T、52T×36T、50T×34T
話題の油圧コンポーネント「ウノ」も、もちろん自社生産
昨年発売になったローターの油圧コンポーネント「ウノ」。ブレーキはもちろん、変速操作も油圧によって行う。メンテナンス頻度がきわめて低くなり、油圧ディスクブレーキのロード用コンポーネントとして最軽量だ。変速機本体はもちろん、変速レバーの内部機構までもローター得意のCNC加工によって製造されている。そのパーツをずらっと並べて見るとメカ好きにはたまらない壮観な眺めだ。
ローター・ウノ
価格/34万8000円(税抜)
※クランク付シフター、前後ディレーラー、ブレーキキャリパー(リム、ディスク選択可)のアップグレードキット価格/24万8000円(税抜)