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激闘!5ステージ チームサイスポが「シマノ鈴鹿」に参戦してきた!
レース
2018.09.10
スタート前から波乱の幕開け


本誌10月号の校正を終えて、気づけばあと1週間に迫っていたシマノ鈴鹿。
編集部員全員が集まって企画案を話し合う、いつぞやの編集会議で本誌・吉本編集長が放った「みんなで鈴鹿5ステージ出たいよね」の一言で安易にエントリーを済ませたサイスポメンバー一行は、発表された出走リストを見て愕然とする。出走メンバーがガチ過ぎだ。
こちとらやれ締め切りだ、取材だと理由をつけて“練習”という類から遠ざかっているというのに。
今回集ったのは本誌編集長吉本を筆頭に、サイスポ.jp編集長ナカジ、本誌メイン企画編集担当大宅、営業部隊柴田、宴会係エリグチ、マネージャーとしてレース追っかけのたきざわ。
6人の出走枠が1人余っている……そこでダメ元でモデルの石垣美帆さんに連絡すると、予想外の即行快諾! メンツはそろった。
出発は前日の金曜日夕方。昼前にエリグチに1本の電話が鳴る。
「まぁじっすか⁉︎ エッヘッヘ!」
編集部内に笑い声が響き渡る。なんだか嫌な予感がした。受話器を置いたエリグチが言う。
「吉本さん、体調不良でDNSっす」
ほほう。今回エントリーしているメンバーの中で一番レース経験があり、ブランクがあるとはいえ、レース中の司令塔としては欠かせない存在だった。これは厳しい。出走前から波乱の幕開けにざわつきながらも鈴鹿へ向け、出発した。
レベルチェックの第1ステージ



レース当日の朝は早い。試走できるのは、6時15分から1時間のみ。第1ステージが7時45分からだ。サイスポブースに急いで荷物を置き、初めてのチームTT練習へ向かったメンバー5人。
試走から帰ってきた石垣さんは、「こんなところ走れるなんて感激ですー!」とキラキラ目を輝かせる一方、朝が弱すぎるエリグチは、何だかどうして情けない顔をしていた。しかもバイクの調整がうまくいかないとのこと。「お前、今さら何やってんだよ(笑)」と直属上司のナカジにドヤされている。
そうこうしている間に第1ステージの召集がかかり、緊張した面持ちの男4人がスタートラインへと向かう。久しぶりのレースに柴田は弱音を吐きまくっていた。フルコース5周、地獄の29.1kmが始まった。
2周目でレース経験がほぼゼロの大宅が切れ、3周目には脚が攣った柴田と若干熱中症気味のエリグチが集団から切れた。最後の砦ナカジは、アップ不足を痛感していた。心拍も上がりきらず、3周目のスプリントポイントでのスピードアップには堪えられなかった。
レース後、4人はすでに全ステージ終えたかのような顔をしていた。


「ぶっ放していいんですよね⁉︎(原文ママ)」スタート前、石垣さんが言った。いよいよ石垣さんの出番だ。
第2ステージの個人TTは、東コース1周の2.2km。しかも個人総合順位下位からスタートするため、ロードレースに参戦しなかった石垣さんは最下位という扱い。つまり第1走者だ。
ただただ全開でもがくだけというステージにアップは必須。石垣さんとナカジがサイスポブースでアップを始め、大宅と柴田も脚を回しに外へ向かった。エリグチは行方不明だった(途中で帰ってきたが、熱中症で日陰でぶっ倒れていたそう)。
石垣さん、ナカジ、戻ってきたエリグチとたきざわで早めに待機場所に向かい、近くの日陰で待つ。そんな時、全員のスマホに通知が。
柴田「パンクしました(泣)」
たきざわ「うそ」
エリグチ「がんばってください」
スタートまであと20分。アマンダの木リムバトンホイールを借りていた柴田。タイヤの替えはない。だが、幸いバイクを2台持ってきており、ホイールを付け替えて難を逃れた。
無事全員そろい、スタートラインまで移動する際、先頭に立って男たちを率いる石垣さんは凛々しかった。
石垣さんがスタートし、その1分後にスタートした大宅は、人生初のステージレースに苦悩していた。第1ステージですでに力を使っていたため、踏めず。石垣さんとほとんど変わらないタイムでゴール。
第1ステージを見たたきざわは、エリグチの走れなさにがっかりした。だが、それは本人も同じだった。
「自分こんなに走れなかったっけ?と嘆きたくなったので、今回はちゃんとやろうとアップを念入りにしました」との成果か、まずまずのタイムで走れるメンバーとしての地位を持ち直す。
一方、走れるメンバーのもう一人のナカジは、風と格闘しながらもサイスポの中でトップタイムを叩き出した。



5ステージのチームTTは、3人目のゴールタイムが採用されるため、本来であればそれ以外のメンバーは使い切って離れてもいい。ただ、それをしたところで強豪メンツばかりだ。たかが知れている。だからマネージャーたきざわは命じた。
「チーム全員でチームTTを走り切ってください。絶対に石垣さんをゴールまで連れていくこと!」
そのために特化しメンバーを選出。石垣さん以外のメンバーは、実力だけでいったら、ナカジ・エリグチ・柴田の3人。しかし個人TTの結果を見て、柴田を外し、石垣さんにタイムが一番近い大宅を選んだ。
お昼を食べながら作戦会議を行う。1番前をエリグチが引き、2番目に大宅、3番目に石垣さん、4番目には後方から全てを監督してもらうためにナカジを配置することにした。
これもチーム総合下位順に出走だったためチームサイスポは第1出走。スタートを切り、石垣さんは違和感を持つ。思った以上に個人TTで脚を使ってしまっていた。
「でも、前二人と後ろの中島さんをすごく信頼して走っていたので、近くを走るという不安もなかったです」と言うように、即席ながら綺麗な隊列だった。そして周りの声援もとても多かった。
2~4周目、石垣さんの脚は思うように動かない。だが、持ち前の負けん気とナカジの声かけ、エリグチと大宅のペースメイクによって、朦朧としながらも持ちこたえた。
そしてラスト1kmの看板が見えた時、石垣さんが叫ぶ。
「ラスト、死ぬ気で踏みます!」
飛び出した石垣さんのスピードにエリグチは驚きつつ、うれしくなった。最後にチーム全員で飛ばして走れること、速くはなくてもかっこいいチームだと誇った。
結果だけ見れば最下位。でも結果だけじゃない感動が押し寄せた。ゴールした石垣さんは今までに見たことがないくらい疲弊していて、感激して目には涙を浮かべていた。
今まで速さを求めて走ることが多かったナカジも、それだけでない別の感動を感じた。
「辛いことを共有するのはすごく“チーム”になれる」と。気遣い合いって力を出し、各々が役割を全うして走り切る。まさに“チーム”だ。
夜、宴会は大いに盛り上がった。
2日目のメンバーは男4人。メンバーの力量を前日で何となく把握したたきざわは、個人個人に課題を出す。
第4ステージは例年、落車も多く、スピード勝負になるという。エリグチに「1秒でもいいから逃げて」と指令を出したものの、スタート位置は総合順位順で最後尾だし、そもそも集団が速すぎて不可能だった。
昨日のチームTTで温存した柴田は、遅れた小集団で走りつつ、最後はゴールスプリント! ナイスガッツ! 大宅も一瞬でもチームメイトのアシストをするという課題をクリアした。
第5ステージ、いよいよこれが最後のロードレース。これまでの様子から、各々の現実的なラインから一つ上を目指すよう目標設定。
最後のスタートラインに並ぶ4人の姿は、第1ステージに比べたらだいぶ精悍な表情に変わっていた。
スタートし、最初からスピードが上がる。大宅は見くびっていた。距離が長いからペースが落ちるだろうと。「そして、目の前には誰もいない道が広がった」と情熱●陸のテーマ曲が頭の中で鳴り響くほどだった。それでも走り続ける。
1周目の最終コーナーで落車が発生。集団にいたナカジとエリグチが足止めを食らう。しかも段差に乗り上げた衝撃で二人とも1本しかないボトルを落とした。
コースに復帰できたのはいいものの、ホームストレートで中切れが発生。ナカジは、メイン集団を視界に捉えたが追いつかなかった。目標を思い出し、落ち着いて後ろが追いついてくるのを待つ。
後ろのエリグチは、混走のエリートクラスの集団に飲み込まれた。エリートの邪魔にならないよう、集団後方でうまい人の走りをトレースして何とかくっついていく。
柴田は、チームメイトと離れてからも、小集団内で「全員で走り切ろう!」という声かけがあったおかげでモチベーションを保った。
ナカジのいた小集団をエリグチの乗った大集団が飲み込み、最後のペースアップがかかる。そしてバラバラになった集団の中で、フィニッシュラインを前にナカジがスプリント。エリグチは「なんかもう踏めなかった」と最後までエリグチらしかったが、先頭集団と同一周回でゴール。
柴田と大宅は途中で降ろされてしまったが、諦めずに走った。石垣さんとたきざわでメンバーを出迎え、抱きしめた。チームの一体感と達成感は何もの変えがたかった。
結果、個人総合優勝したのは水泳部に所属する16歳の少年だ。達成感はあるが、やはりこのままではチームサイスポとして面目が立たない。本格始動に向けての準備は整った。さぁ、次なる目標に向けて走り出そうじゃないか。
リザルト
中島 丈博 総合タイム2:48'13" 125位
江里口 恭平 総合タイム2:52'15" 127位
大宅 宏幸 総合タイム4:18'25" 181位
柴田 昌人 総合タイム4:05'36" 176位
石垣 美帆 第2ステージタイム0:04'00" 187位(第2ステージの時点で)
チーム総合順位 32位
チームサイスポの挑戦はつづく!
大会名:第35回シマノ鈴鹿ロードレース
開催日:2018念8月18日(土)〜19日(日)
開催場所:三重県鈴鹿市 鈴鹿サーキット
主催:シマノ
問・シマノ鈴鹿ロード