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2018ロード世界選・日本代表チームレポート
レース
2018.10.02
2018UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会 第6日目は男子U23カテゴリー(23歳未満)のロードレースが開催された。コースはクーフシュタインからスタートし、インスブルックの周回コースを4周回する179.5kmで合計獲得標高は2910m。52カ国から178人が出走したが、ヨーロッパの強豪国には、すでにUCIプロチームで活躍する選手も多く含まれており、非常にレベルの高いレースとなることが予想されていた。
日本ナショナルチームは、U23アジアチャンピオンの山本大喜(奈良・KINAN Cycling Team)、U23全日本チャンピオンの石上優大(神奈川・EQADS)、松田祥位(岐阜・EQADS)、大前翔(神奈川・慶應義塾大学)、渡邉歩(福島・GSC BLAGNAC)の5名でチームを編成し、好調な山本を軸に戦う作戦でスタートした。
日本ナショナルチームは、U23アジアチャンピオンの山本大喜(奈良・KINAN Cycling Team)、U23全日本チャンピオンの石上優大(神奈川・EQADS)、松田祥位(岐阜・EQADS)、大前翔(神奈川・慶應義塾大学)、渡邉歩(福島・GSC BLAGNAC)の5名でチームを編成し、好調な山本を軸に戦う作戦でスタートした。
90kmのライン区間を終えて、スイスの1選手が先行する展開で周回コースへと入ったが、60km地点のグナーデンヴァルトの上りで渡邉が遅れてしまう。周回コースに入っても集団は常にハイペースを刻み、2周回目に入ると、大前、松田、石上もメイン集団から脱落。山本も懸命に食らいついていったが、周回コース終盤の道幅の狭い登坂区間で遅れ、渡邉が1周回完了時、山本と松田は2周回完了時に足切りとなった。
石上と大前が3周回目に入ったが、大前は登坂区間で大きく遅れたために頂上でリタイア、石上も3周回完了時に規定のタイムリミット(先頭から15分経過)に達していなかったものの足切りとなった。石上は8月のツール・ド・ラブニールで落車し鎖骨骨折した経緯があり、万全とは言えないコンディションでの今大会出場だった。
メイン集団は2周回目の下りからアタックの攻防が始まり、3周回目の登坂区間では完全に集団は崩壊。最終周回の登坂区間で3名の先頭集団が形成され、下りに入るとマルク・ヒルシ(スイス)がアタックを仕掛け、圧倒的な下りのスキルを活かして一気に後続を振り切り、独走で優勝した。完走者は90人だった。
●浅田顕コーチのコメント
90㎞のライン区間と7㎞の峠を含むゴール周回を4周する非常に厳しい今回の山岳コースでは、山本を可能な限り最後までメイン集団に残すためにライン区間は渡辺と大前、上り区間では松田が山本の位置取りと牽引を受け持つことで30位以内を成績目標とした。8月の骨折以来の復帰戦となる石上は自力で動き、今できる最大の走りでゴールを目指した。
レースは全体的に速く純粋に登坂力がなければ残れない展開のなか、日本チームは早い段階で戦列から離れることになり、各周回での規定タイムオーバーにより全員が途中棄権となった。結果は本当に残念だが、これが山岳コースでの実力評価。真直ぐ受け止め来年の成長に繋げたい。レース自体は1年を戦ってきた各国ライバル同士のぶつかり合いで、U23世界一を決めるに相応しい実力勝負の素晴らしいレース展開であった。
●石上優大(神奈川・エカーズ)のコメント
完走できると思っていたが甘かった。(鎖骨骨折のため)自転車乗り始めて2週間ちょっと。やれることはやってきたが全然足りなかった。結果的にはケガの影響は否めない。テーピングと強い痛み止めを飲んで、なんとかごまかしたが、練習できなかったのが響いてしまった。アンダー23はあと1年。もう時間はないと思っている。限られた時間のなかで、やれることをやって結果を出していきたい。
●山本大喜(奈良・キナンサイクリングチーム)のコメント
調子もよく、自分のできることをやりきったが、完全に力の差で遅れてしまった。ライン区間の登りでは脚があったが、周回コースの登りで絶対に集団に付いていこうと全力で走り、頂上で遅れかけてもなんとか付いていったが、その後、下り切ると集団は伸びきり、そこでちぎれてしまった。このままでは世界のトップとの差がどんどん大きくなってしまうため、ここをきっかけにして違う取り組みをしていかないといけない。自転車競技をやるからには、世界をめざすという目標でやっている。その目標が変わってしまうときは、やめるべきだと思っている。エリートカテゴリーでもしっかりと世界を目標にして走っていきたい。
●2018ロード世界選手権
男子U23 ロードレース結果
1. HIRSCHI Marc (スイス) 4:24:05
DNF 石上優大、大前翔、山本大喜、松田祥位、渡邉歩
/出走178人、完走90人
2018UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会 第7日目は近年人気が高まる女子エリートのロードレースで、クーフシュタインからインスブルックの周回コースを3周回する155.6km、合計獲得標高2413mのコースで開催された。48カ国から149人が出走し、日本からは全日本チャンピオンの與那嶺恵理(茨城・Wiggle High5 ProCycling)、金子広美(三重・イナーメ信濃山形)、唐見実世子(茨城・弱虫ペダルサイクリングチーム)の3人が参戦し、與那嶺をエースとする作戦でスタートを切った。
60km地点のグナーデンヴァルトの上りの前にコロンビアとポーランド、2人の逃げが形成され、登坂区間の麓では個人タイムトライアル覇者のアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)が巻き込まれる落車が発生。登坂区間に向けてのペースアップと合わせて集団から遅れる選手が増え始め、落車の影響を受けた唐見もここで遅れてしまう。
金子は與那嶺とともにメイン集団前方でグナーデンヴァルトを登っていったが、頂上を前に失速。メイン集団も頂上ではいくつもの小集団に分断され、與那嶺は2つめの集団、約40番手で下り区間へと入った。その後の下り区間で小集団はまとまっていき、フィニッシュラインを過ぎて周回コースに入るときには、メイン集団は與那嶺を含む70人ほどとなり、新たに4人の逃げが形成された。
周回コースの登坂区間に差し掛かると集団は活性化し、登坂区間もハイペースで進んだため、次々に選手が振るい落とされていった。ベストなコンディションではなかった與那嶺は、1周回目の上りから少しづつ遅れていった。
レースが大きく動いたのは2周回目の登坂区間。優勝候補であり、リオ五輪の金メダリストであるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)がメイン集団から追走を開始し、先行していた選手を追い抜いて単独で先頭に立った。フィニッシュまで約40kmを残してのアタックだったが、ファンデルブレッヘンに追いつける選手はなく、差を広げながら、最後は後続に3分42秒差の大差で悲願の世界チャンピオンに輝いた。
集団から遅れながらも、諦めずに走り続けた與那嶺は、20分47秒遅れの79位でフィニッシュ。唐見は1周回完了時、金子は2周回目の山頂でリタイアとなり、完走者81人の厳しいレースだった。
●柿木孝之コーチのコメント
唐見と金子には、周回コース1周回目の山頂までなんとか集団に付いていくこと、1周目の頂上をゴールだと思って走り、それまで全力で與那嶺のサポートをしてもらう作戦だった。しかし、最初に唐見が落車の影響で遅れてしまった。落車したオランダ勢は力でメイン集団に追い付いたが、落車に巻き込まれたそれ以外の選手は全員そこで遅れてしまった。金子は周回コースに入る前の最初の坂でオールアウトし、失速。與那嶺をサポートしようとする気持ちから焦りが強く、また経験も足りていなかったために、無理する加減がわからなかった。金子の一つ前の集団まではメイン集団に追いついていたので、力を加減できていれば…と残念に思う。
與那嶺にとっては、本来なら得意なコースだったと思うが、1周回目で遅れるのは想定外のことで、コンディションの悪さがそのまま成績に出てしまった。周りにいる選手の顔ぶれをみても、いつもどおりのコンディションではなかったことが伺える。全体をみて、このままでは2年後の東京五輪は厳しく、現実を突きつけられた大会となった。女子はアンダー23カテゴリーがないこともあり、女子選手のジュニア、アンダー23カテゴリーからの一貫した育成環境も今後の課題になる。
●2018ロード世界選手権
女子エリート ロードレース結果
1. アンナ・ファンデルブレッヘン/van der BREGGEN Anna (オランダ) 4:11:04
79. 與那嶺恵理/YONAMINE Eri JPN +20:47
DNF 金子広美、唐見実世子
/出走149人、完走81人
【text&photo:日本自転車競技連盟】