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【シマノ】ビンディングペダル解体新書2018
新製品
2018.11.08
シマノ SPD-SL系ペダル
そのSPD-SL系のペダル4種類を比較していこう。
シマノのロードペダルがSPD-SL。ルックと同様のおむすび型クリートを使うものの、ペダル〜クリート間にルックとの互換性はない。クリートは、フローティング角に応じて、3度(黄色)/1度(青)/0度(赤)の3種類。
''シマノのSPD-SL''と、製品群をひとくくりにしがちであるが、実はグレードごとにペダルの仕様は細かく異なっている。スタックハイトと回転部の構造にその差異は強く表れており、細部に目を向けるとデュラエースにはデュラエースなりの理由があることがよく理解できるはずだ。
クリートの動き
黄色クリートがシューズ中央を中心として、若干の平行移動を含めて左右に動くのに対して、青クリートは爪先を中心としてかかとが動くような違いがある。
スプリングの強さは無段階調整式になっており、最強にすると不用意にペダルが外れるということはほぼ起こらなくなる。
とはいえこれらはクリートが新品のときの数値であり、ペダルとの接触面が若干摩耗した〝当たりが出た〞状態になると、全体的にリリースする硬さが下がる傾向になる。
※リリーススプリングテンション:今回編集部では、何㎏でリリースされるかを実測した。
クリート各種
・SM-SH10/11/12(黄/青/赤)
価格:2045円(税抜)
DURA-ACE PD-R9100
DURA-ACE PD-R9100
価格:2万4520円(税抜・ノーマルタイプ)、2万4771円(税抜・ロングタイプ)
※今回はノーマルタイプを計測
シリーズ随一の薄さとロードクリアランスを両立
デュラエースグレードのペダルは、回転部の軸受け構造が同社の他グレードと大きく異なる。ペダルアクスルの先端と根元にベアリングを配置することで、広いサポート幅を確保。
同時に、ペダルの外側を薄くすることが可能となり、35度というロードクリアランスを実現した。クリテリウムはもちろん、ロードレースの平地ステージなどでしばしば見られる、最終コーナー立ち上がりからのゴールスプリントといったシーンにおいて、いち早くペダリングを開始できるというメリットを持つ。
また、PD-R9100のみ、標準クリートが青(SM-SH12)となっている。
計測値
①スタックハイト:14.4mm(サンプル実測値)
②Qファクター:52mm/ 56mm(サンプル実測値)
③フローティング角度:0度/ 1(2)度/3(6)度
④リリース角度:17度
⑤リリーススプリングテンション:4.5kg ~ 8.3kg(サンプル実測値)
⑥クリート調整幅:5mm(左右)、12mm(前後)
⑦重量:228g(クリートを含む左右ペア&取り付けボルトのセット/サンプル実測値、ノーマルタイプ:301g)
⑧ロードクリアランス:35度
⑨プラットフォーム幅:64mm(サンプル実測値)
⑩ベアリングサポート幅:47mm(サンプル実測値)
ULTEGRA PD-R8000
ULTEGRA PD-R8000
価格:1万5312円(税抜・ノーマルタイプ)、1万5559円(税抜・ロングタイプ)
105とは異なる、薄型のカーボンボディを採用
デュラエースと同構造と思われがちなアルテグラではあるが、そのペダルを分解してみると内部構造は大きく異なる。
軸受けとなるベアリングはペダルボディの中央部に集約され、その分だけベアリングのサポート幅が狭い。スチール製のスリーブがあるため、ペダルのボディ自体もデュラエースに比べると厚くなり、そのままスタックハイトとロードクリアランスに影響していることが理解できる。
デュラエースとアルテグラのペダルを使い分けているユーザーは、厳密にはサドル高を変更する必要がありそうだ。
計測値
①スタックハイト:15.4mm(サンプル実測値)
②Qファクター:53mm/ 57mm(サンプル実測値)
③フローティング角度:0度/1(2)度/3(6)度
④リリース角度:17度
⑤リリーススプリングテンション:4.5kg ~ 8.3kg(サンプル実測値)
⑥クリート調整幅:5mm(左右)、12mm(上下)
⑦重量:248g(クリートを含む左右ペア&取り付けボルトのセット/サンプル実測値、ロングタイプ:311g)
⑧ロードクリアランス:33度
⑨プラットフォーム幅:64mm(サンプル実測値)
⑩ベアリングサポート幅:15.2mm(サンプル実測値)
105 PD-R7000
105 PD-R7000
価格:1万1613円(税抜)
上位機種譲りの軽量性と強めのスプリング
105グレードのペダルボディがカーボン化されたPD-5800が登場したとき、アルテグラペダルの存在が薄れてしまった感があった。
確かに軸受け構造を含めて両者は酷似していたが、しかし同じカーボンボディであっても両者の型は異なっており、105グレードはやや厚くなっているのだ。なお、下位グレードにやはりカーボンボディ化されたティアグラ(PD-R550)があるが、スプリング強度が弱められて初心者に優しい仕様となっている。
計測値
①スタックハイト:16.1mm(サンプル実測値)
②Qファクター:53mm(サンプル実測値)
③フローティング角度:0度/1(2)度/3(6)度
④リリース角度:17度
⑤リリーススプリングテンション:4.5kg ~ 8.3kg(サンプル実測値)
⑥クリート調整幅:5mm(左右)、12mm(上下)
⑦重量:265g(クリートを含む左右ペア&取り付けボルトのセット/サンプル実測値:328g)
⑧ロードクリアランス:31度
⑨プラットフォーム幅:64mm(サンプル実測値)
⑩ベアリングサポート幅:15.2mm(サンプル実測値)
PD-R540-LA
PD-R540-LA
価格:5873円(税抜)
初心者&ツーリング向けに最適化されたライトアクション
ノングレードのSPD-SLペダルがこのモデル。カーボンボディのPD-R550とアルミボディのPD-R540の2種類がラインナップされる。上位3機種に比べるとスプリングは弱められているが、PD-R540に追加されたライトアクション(LA)仕様は、より小さな力での着脱を可能としている。
アルミボディはカーボンに比べると全体的に肉厚になっており、スタックハイトは大きめ。ただしペダル幅が狭いため、ロードクリアランスは大きめになっている。
計測値
①スタックハイト:16.4mm(サンプル実測値)
②Qファクター:53mm(サンプル実測値)
③フローティング角度:0度/1(2)度/3(6)度
④リリース角度:17度
⑤リリーススプリングテンション:3.0kg ~ 6.3kg(サンプル実測値)
⑥クリート調整幅:5mm(左右)、12mm(上下)
⑦重量:330g(クリートを含む左右ペア&取り付けボルトのセット/サンプル実測値:400g)
⑧ロードクリアランス:34度
⑨プラットフォーム幅:52mm(サンプル実測値)
⑩ベアリングサポート幅:15.2mm(サンプル実測値)
SHIMANO user’s voice
実際にシマノのペダル(前作モデルを含む)を使用している人に、気に入っている点やクリート選択理由などについて聞いた。
本誌ライター・安井行生
シャフトには大きな曲げ応力がかかるのに滑らかに回転せねばならず、ロードクリアランスや耐衝撃性や耐久性も必要とされ、軽く作らねばならない。
ビンディングペダルとはなかなかツラい構造をしているわけだが、にもかかわらずコンクリの床を踏んでいるような安定感を持たせているところがシマノの魅力だ。クリートとの接触面をステンレスにして横に広く取ったこと、ベアリングの種類(カップ&コーン式)と配置を工夫したこと、あえてチタンシャフトを使わないことなどがミソだろう。
他社に比べると重いが、この剛性感と安定感は何物にも代えがたい。クリートの価格と入手性、本体とクリートの驚くべき耐久性もシマノを選ぶ理由である。
元プロ選手・バルバワークス選手 寺崎武郎
デュラエースを気に入っている点は、他のペダルに比べて硬いことです。踏み面が広くて、踏んだ感触も硬いのでそれが気に入って使っています。
初めて使ったのはタイムで、1年半くらい使って、その後から8年間くらいシマノですね。最初は膝が弱かったので、なるべく膝に優しいものをっていうのでタイムを使っていて、ペダリングが上手にでき始めてからシマノに替えました。
クリートは、黄色を使っています。僕の場合、左右に傾いたときに多少足先もねじれるので、それを許容してくれるようにわざと緩めなものを使っています。でもたまにゆったり動きすぎることがあるので、そんなときはもうちょっときつめでもいいかなとも思います。青クリートは使ってみたいなと思っています。
シマノ鈴鹿5ステージ総合優勝者・スペードエース 寺田吉騎
ペダルはアルテグラを使っています。最初はルックを使っていて、ある時にペダルが壊れちゃって、それでシマノに替えて以来、ずっとシマノを使っています。
ルックは、使いすぎで壊れちゃいました。バネが緩くなっちゃったみたいで、もがくとペダルが外れちゃうようになったんです。シマノは、スタートもはまりやすいし、クリートも調整しやすいのでいいですね。クリートは、動きやすい方が好きなので黄色を使っています。