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JBCF新リーグ発足に向けた夢と現実
レース
2019.03.04



まずは2019シーズンの概要についてJBCFのゼネラルマネージャー(GM)である廣瀬佳正氏より発表があった。
廣瀬氏は、昨年のJプロツアーチーム優勝を飾った地域密着型チームである宇都宮ブリッツェンのGMとして、1からチームの立ち上げを行い、他に類を見ない新しいチームの形を確立してきた。だが今回、JBCFの”本気の”構造改革に向けてチームのGMを退任し、今度は自転車ロードレース全体を刷新するために邁進する。
「他のスポーツに負けない改革。今年から2021年に向けてシフトチェンジを繰り返していきたい。待っていてはメジャースポーツになることはできない」と廣瀬氏は熱い想いを語る。
その新リーグ設立を前に、徐々にではあるが今シーズンからも変化を加えていく。
JBCFのHPも新たにオープンし、今までの競技者のために必要な情報だけを載せるのではなく、ファン目線でのページとして機能させる。大会・レースの魅力変革として、昨年以上の露出も予定している。
再来週3月16日に迫った開幕戦、修善寺ラウンドもライブ映像配信を行う。LINEやインスタグラムも新たに開始し、情報の発信により力を入れるとのことだ。
また、今シーズンより、ライブリザルトシステムを採用する。周回レースの多いJプロツアーだが、各ラップでの通過タイムをスマホでチェックすることができる。
Jプロツアーとは別に、世界のeスポーツの波に対応すべくJBCFによるズイフトバーチャル大会「JBCF eRacing Cycling Road Series」も開催する予定だ。
2019年はトライアルとして実施する。自宅などから楽しめるオンライン大会や決勝等オフライン大会も行われる。
そしてやはりレース現地での盛り上がりに観客は必要不可欠だ。他のスポーツで見ると野球のカープ女子など、女性観客の拡散力は非常に強く、社会への影響も多大である。自転車競技も新たなファン層を獲得し、女性観客を魅了していくべく、女性目線の観戦スタイルを模索していく。
いくつかの大学のミスキャンパスが主体的に取り組む社会課題解決チームであるキャンパスラボとの共同プロジェクトとして、「Go! Go!ペダルラボ」を始動。新規ファン獲得に向けた企画立案やSNSでのコミュニケーション戦略など新たな視点を取り入れつつ、ステージイベントや表彰式のプレゼンテーターなどを務め、会場に華を添える。
東京五輪後、新リーグ設立。その目的は……
早いことにすでに東京五輪は来年に迫る。ロードレースという競技で、続々とトップ選手たちを輩出していく各国に対して、まだまだ弱小国に位置する日本がメダルを獲れる確率は、現実的に考えたらほぼゼロに等しいと言ってもいいだろう。
「東京五輪開催を前にしていろいろな追い風も止み始めています。戦略的なスポーツしか生き残れないと考えている」と話す栗村修理事/連盟戦略室長。
五輪という特需が過ぎ去った後に、「周りが倒れていく中で僕らは立っている状態にしたい」と栗村理事は続ける。
そのための基盤作りを今から始め、2021年に向けて段階を重ねていくとのことだ。
設立の目的は3つ。一つ目は日本人選手の国際競技力向上のため。世界で戦うためには「強い国内リーグ」が重要な役割を担うことになる。つまるところ、選手強化が目的である。ヨーロッパでも活躍できる選手を生み出すために何が本当に必要かを考え、その土台となるリーグを作っていく。
二つ目は、自転車文化のさらなる発展。三つ目は自転車が持つ社会的価値の発見と発信である。新リーグ設立を機にリーグの価値を高め、幅広い自転車人口が楽しむことができる自転車リーグというものを見直し、再構築する。
片山右京理事長は、新リーグ設立のその先について、
「東京五輪には間に合わないと思いますが、いろんなことを模索しながら日本代表のプロチームを作りたいと思います。
プロリーグという言葉が一人歩きしていますが、一歩ずつ踏み出そうと思っています。絵に描いた餅で今は何もない状態です。
けれど、誰かがまとまってメッセージを送ったり、意思を発しない限り進まないと思っています。
本当にそれができるかはまだわかりませんが、自転車界に一石を投じて、2021年に始まる新リーグが日本全土に選手発掘システムを持ち、それを支えてくれる車連や審判の方々の雇用も生み出して、皆でまとまって、次のヒーローを作るために、『日本人選手がマイヨ・ジョーヌを着て、凱旋門前を通る』という大それた夢を語っていきたいと思います。それに向けて段階的ではありますが、新しい制度をどんどん作っていきたい」
と、大きな夢に真正面から向き合うことを選ぶ。2009年に別府史之と新城幸也がツール・ド・フランスを揃って完走し、これから多くの日本人選手たちが活躍すると夢見た。だが10年経った今でも”別府、新城頼み”という状況が続く。
これまで育成・強化という面に関して、日本の自転車界全体で舵をとろうとする革新的な動きはなかった。選手個人個人やチームの裁量に任される部分が大きく、世界で勝負をできるような選手になるためにはやはり自身で海外に行く必要があり、かなりの負担を強いられる。国内で強化をするにしても、ヨーロッパほどの強度が求められるレースは存在せず、”国内で”強くなることしかできないというのが現状だ。それほどにJプロツアーとヨーロッパのレースでは質・量ともに埋めきれない乖離が発生している。
「外から見ると、Jプロツアーのトップの選手たちって滞留しているように見えるんです。皮肉にいうと、『実力ないのに日本でプロごっこして……』って見られてしまう。(海外でも通用する)ロードレースの走り方を覚えて、若い選手たちが海外に行ける仕組みを作りたい。
Jプロツアーのチャンピオンがヨーロッパの1クラスで勝てるくらいにしていきたいですね。最終的には(やはり選手たちは)ヨーロッパには行かないといけないけど、発射台としての国内リーグ作りをしていきたい」
と栗村理事は話す。
リーグ構造構想と日本の独自性
新リーグの構造としては、3つのカテゴリーに区分したリーグ展開を行う。現在のJプロツアーに相当する1部~3部のプロフェッショナルカテゴリー、現在のJエリートツアーやフェミニンツアー、ユースツアーに相当する4部~8部のエリートカテゴリー、エンジョイ志向参加型のオープンカテゴリーだ。
クラブライセンス制度を採り入れ、プロフェッショナルカテゴリーに所属するチームは、保有選手人数や契約形態によって1部から3部に分けられたリーグに振り分けられる。また、エリートカテゴリーでは、チーム単位ではなく、個人ごとでのランキングにより昇降格がなされる。
今までと何が変わるのか。端的に言えば、フランスにあるUCIから独立した国内レース基盤を日本で作ろうという話である。JBCFでは、あくまでレースを中心とした強化システムを目指す。
「トップカテゴリーよりその下とさらにその下の教育レースの数を増やしていかないと、レースを中心とした強化システムはできない。浅田顕監督や大門宏監督が強化としてやっているのは、チームとして海外に挑戦していく、いわゆるオーストラリアやイギリス型です。
僕らは連盟なので、レース主催者として、どこもやっていないフランスにある仕組みを自国で作ろうとしている。それをやった国ってないからそういう意味では実現すれば革新的かもしれない」
栗村理事は先を見つめる。
リーグ化の構想を聞いたJプロツアーのトップで活躍し続ける宇都宮ブリッツェン増田成幸はこう語った。
「2年後になりますが、いよいよ日本の自転車界も大きな一歩を踏み出すんだなと感じました。今までは選手個人個人が世界に向けて挑戦して、それぞれが努力して試行錯誤の中で世界に挑戦してきました。
2年後の新しいリーグが選手の強化に乗り出して、さらにロードレース界を盛り上げて、この畑に入ってくる選手たちをたくさん確保してくれることを期待します。
その中でプロスポーツの世界は究極の競争社会です。そこにたくさんの選手が集まるということは、必然的にレベルが上がることだと思いますし、世界で戦える強い日本を作るために避けては通れない道だと思うので、非常にワクワクしています。」
新リーグ設立の課題点として一番大きいのは、ヨーロッパと同じ仕組みを作ったところで、レースをするフィールドがないという点である。サッカーがヨーロッパのリーグ構造を見習ってJリーグを立ち上げたときとは大きく異なる点である。
「サッカーの場合はリーグっていうお手本があって、グラウンドやルールなどは共通。自転車ロードレースは同じフィールドが作れないっていうのがまずあります。もっと大前提の問題なんです。サッカーでいうと、僕らはまだフットサルしかできていない状態。フィールドすら同じにできない。枠作りと規約作りだけじゃ、強力な国内リーグ体制を作りあげるのは難しい。
現状でJBCFのレースは、同じ日に同じ場所でエリートツアーやJプロツアーなどいろいろ詰め込んでいるから長時間レースもできない。ブロック化していく必要がある。でなければ上っ面のプロリーグ化だけになってしまう」と栗村理事は懸念する。
また、もう一つ大きな課題点もある。現在の仕組みでは、高校、大学、実業団、国体など、それぞれで完結してしまうことだ。もちろんそれが悪いというわけではない。だがサッカーや野球では、インターハイあるいは甲子園を勝ったその先にプロという道を夢見ることができる。自転車競技は、それぞれで完結するため、例外はあれどもその先への道標がほぼ絶たれているような状態だ。
目標というのは、大きな目的へのステップを指す。現状、高校でのインターハイ、大学でのインカレというものは、それぞれの競技生活における目標ではなく、それ自体が最大目的となり、終われば一般企業に就職し、競技生活を完結させてしまうパターンも多く見られる。
また、あくまでも国内の枠の中でレースを完結してしまえば、目指すべきところがどうしたって世界基準とは違うベクトルになってしまう。もし世界に行けたとしても世界での標準・基準を知らない状態であり、海外選手と同じスタートラインに立つことすら難しい。
前途ある若者たちに向けて、インターハイやインカレで優勝するという目標からさらにその先の目的を夢見られる選択肢を提示できるような仕組み作りが求められていくことだろう。いつの日か自転車競技がメジャースポーツになるときを夢見て、”本気の”構造改革を改めて自転車界全体で考えるべきだ。
問:全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)