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TOJ富士ステージ直前 パコ・マンセボ、オールイス・アウラール、そして前年優勝者マルコス・ガルシアの自信

レース
ツアー・オブ・ジャパンも早いことで折り返し。最難関の富士ステージ、伊豆ステージ、そして最後の東京ステージを残すのみとなった。

これまでほとんどのステージでトップ10に絡むマトリックスパワータグのオールイス・アウラール、総合優勝に向けて実力が試される同チームのフランシスコ・マンセボ、そしてディフェンディングチャンピオンであるキナンサイクリングチームのマルコス・ガルシアにTOJ初日、自信のほどを聞いた。


text&photo:Kanako TAKIZAWA

突如現れたベネズエラの新星アウラール

京都ステージでは新人賞ジャージを繰り下げで着用したアウラール
京都ステージでは新人賞ジャージを繰り下げで着用したアウラール

2019ツアー・オブ・ジャパンが始まる前、スペインでのレースを戦うために遠征に向かったマトリックスパワータグ。ブエルタ・ア・カスティージャイレオン、ブエルタ・アストゥリアス、ブエルタ・ア・マドリッドと、3連戦を終えて日本に戻り、TOJを戦っている。

今年(昨年末から)、”パコ”(フランシスコ)・マンセボのマトリックス加入にどよめいたJプロツアー界隈だったがマンセボと一緒に加入したベネズエラ人、オールイス・アウラールの強さは初戦から頭角を現した。

スペインでの遠征、TOJの目標、そして自身の将来について聞いた。
 
非常に多くコミュニケーションをとっていたマンセボ(左)とアウラール(右)
非常に多くコミュニケーションをとっていたマンセボ(左)とアウラール(右)
堺3位、京都14位、いなべ3位、美濃3位、南信州5位と好成績を残すアウラール
堺3位、京都14位、いなべ3位、美濃3位、南信州5位と好成績を残すアウラール

CS:スペイン遠征はどうでしたか?

アウラール:良い経験でした。チームと良いレースができて、非常にうまくいったと思います。パコ・マンセボはいつも逃げに入って、山岳ポイントを稼ぎ、山岳ジャージを獲得しました。ヨーロッパで練習をしたことでだんだん調子が上がってきました。

CS:今回のTOJでの目標は?

アウラール:一番大事なことは、チームでレースに勝つことです。全てのステージで一生懸命やりたいです。自分の場合、チームのためにステージ優勝を狙っていきたいです。運が良ければ、マンセボとホセ・ビセンテ・トリビオはTOJにも参加したことがあるし、いい選手たちなので総合を狙うことができるかと思います。このTOJのためのいいチームだと思っています。

CS:あなた自身はどのステージで勝ちたいですか?

アウラール:初日のプロローグはとても大事です。ツール・ド・とちぎでのプロローグではコンマ差で優勝を逃しました。もし初日がなければ、上りと下りしかない伊豆ステージを狙っています。20人程度の集団スプリントになるようなステージは得意としているので。おそらく他にもいくつかのステージでチャンスはあると思っています。

CS:富士山ステージは非常に急な勾配が続きます。自信はありますか?

アウラール:すごく厳しいステージですね。だいたいいつもこのステージでTOJの総合優勝者が決まっています。自分には少し難しいと考えています。でもスペインでいいトレーニングができたので、富士ステージのときにあまり疲れてない良い状態で、僕としてもチームとしてもなんとかうまく行ってほしいです。マンセボもブエルタ・ア・マドリッドで山岳賞をとっているのでたくさんチャンスがあると思います。

CS:日本のチームで走るということをどう感じていますか?

アウラール:素晴らしい経験だと感じています。僕はまだ若くて、僕の自転車選手のキャリアとしても日本に来るのはいい経験になります。スペインやベルギーなどいろんなところで走ったことがありますが、日本で走ることはいい経験だと考えています。日本でもっと有名になれればと思います。その先はどうでしょうね。

CS:あなたにとってパコ・マンセボはどういう存在ですか?

アウラール:僕にとってパコと一緒に走れるというのは最高のことです。彼はいつも優しくて、非常に謙虚でいい人です。僕はマンセボと一緒にいられることに非常に満足しています。とてもいい選手なので、たくさんたくさん見習っていきたいです。

CS:ベネズエラにはあなたのように強い選手がたくさんいるのですか?

アウラール:そうですね、例えばホセ・ルハノはジロ・デ・イタリアでステージを3回勝って、総合表彰台(2005年、3位)にも上がっています。そしてその他のいいレベルの選手もたくさんいます。フランスや中国、ベルギーで走っている選手もいますが、彼らにはかなりいい未来が待っていると思います。若い選手がたくさんいて、だんだんとレベルが上がっていっています。

CS:将来、どんな選手になっていきたいですか?

アウラール:子供の頃からグランツールを走るいいプロ選手になりたいと思っています。今のところうまくいっていると思います。目的は諦めずに、規律を持って、各レースで将来有望であることを示していきたいです。プロになるために全てのレースで一生懸命やっていきたいです。

CS:直近ではどんな目標を持っていますか?

アウラール:日本で名前を知られるようになって、良いシーズンにしていくことが目標です。その先の将来はどうでしょうね。グランツールで争うために早くプロになれたらいいなとは思います。

CS:8月にベネズエラに一度帰国されると聞きましたが?

アウラール:はい、パンアメリカン競技大会(アメリカ州の国々が参加する4年に一回の大会)があるので帰る予定です。この大会は特別です。UCIポイントをたくさん取れるので、うまくいけば東京オリンピックの参加権を得ることができます。代表として選出されるためにもうまくやりたいです。
 

レジェンド”パコ”・マンセボ、新たなるモチベーション

堺ステージでスタートを待つマンセボ
堺ステージでスタートを待つマンセボ
佐野、小森はリタイヤとなってしまったが、マンセボもチームの中心となって戦う
佐野、小森はリタイヤとなってしまったが、マンセボもチームの中心となって戦う
超ベテラン選手として日本のレース界に一石を投じるマンセボだが、その実力は日本人選手たちにとってはるか格上のままである。2回目の参加となるTOJにどういった思いを持つのか、日本で走る理由について聞いた。

CS:スペインでの連戦はどうでしたか?

マンセボ:TOJの準備のために3つのレースを走りました。目的は全てTOJの準備のためです。

CS:スペインの3つのレースではほとんどのステージで逃げに入っていましたね。調子が良いようですがどうですか?

マンセボ:調子はいいです。昨日も調子が良かったですし、理論的にも調子がいいでしょう。スペインでのトレーニングが役に立ってほしいですね。

CS:チームではどんな役割を担っていますか?

マンセボ:トリビオと僕は総合を勝つために、オールイスはスプリンターでいろいろなステージで勝てる選手です。富士ステージはオールイスには少し長いと思います。なので、僕とトリビオが総合を勝つために頑張っていきたいです。

CS:チームメンバーに対してどんな印象を持っていますか?

マンセボ:一部の選手たちは前から知っていました。他の日本人選手などは知らなかったですが、日本に来てから親切にしてもらえて良い印象を持っています。スペインの遠征で一緒に生活できたことは良かったと思います。

CS:アウラールとはどんな関係ですか?

マンセボ:今は仲間です。彼はスペインに住んでいて、話す言語が一緒だからいい関係を築けているのだと感じます。同じアパートに住んでいることもあって、より仲良くなりました。

CS:TOJは2015年以来2回目の参加ですね。TOJというレースにどんな印象を持っていますか?

マンセボ:とてもいいレースですし、とても厳しいです。他のレースと違って周回コースなので、特に観客にとって何回も見ることができるし、面白いレースではないかと思います。でもレース自体は本当に厳しいです。

CS:個人として、チームとしてこのレースにどんな結果を期待しますか?

マンセボ:総合での勝利を目指しています。でも実際、富士ステージでは例えばマルコス・ガルシアはクライマーで体重は55kgです。一方で僕たちは65kg。彼に勝つことは非常に難しいです。なので、他のステージで勝って、総合のポディウムが狙えたらと考えています。なので、目標は総合で勝つこととオールイスでステージ勝利を狙うことですね。

CS:今年のTOJはどのような展開になると思いますか?

マンセボ:チーム右京やキナンサイクリングチーム、そして僕たちのチームは勝つチャンスがあると考えています。他にもいつも強いチームと選手たちがいます。NIPPO(・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)やオーストラリアのチーム(チームブリッジレーン)などもいい選手が集まっていると思います。クリス・ハーパーも強いですね。レースの要はこれらのチームかと思います。でも最後には日本のチームが勝つんじゃないですかね。

CS:富士ステージの自信はありますか?

マンセボ:自分はあまりないですね。2015年に走ったときはすぐに先頭から離れてしまいました。後半にかけて少し追いつきましたが、かかった時間を見ればすぐに分かります。僕は40分30秒かかっていて、マルコス・ガルシアは38分30秒で上ります。2分の差があります。富士ステージではおそらく負けるでしょうが、このタイム差について常に考えなければいけません。

CS:日本のチームで走ることについてどう考えていますか?

マンセボ:実は日本にずっと来たかったんです。数年前からずっと話をしていました。でも今までは、ヨーロッパやアメリカなど他のチームとの契約もあり、チャンスがありませんでした。僕にとって、新しい大陸、新しい国、新しいチームで他の国を知る機会となるので、非常にうれしいことです。このチームは僕に自信をくれます。いい結果をもたらすために、チームのために、一生懸命やりたいと考えています。

CS:なぜ日本を選んだのですか?

マンセボ:僕の年齢では毎年、新しいモチベーションが必要だからです。同じチーム、同じレースを繰り返しているのはつまらないです。でも日本のチームでは、新しいレース、新しい仲間、新しい国を知ることができます。これは僕の新しいモチベーションに繋がります。
 

連覇をかけたマルコス・ガルシアが持つ自信

ゼッケン1を背負うガルシアには余裕が漂う
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連覇したオスカル・プジョル不在の昨年のTOJ富士ステージで、圧倒的クライム能力を見せつけたのはマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)だった。
どのチームもガルシアの富士ステージでの強さを認めた上でどう戦うかを思考する。
当の本人の今年の仕上がりについて聞いた。
サルバドール・グアルディオラやトマ・ルバら強力なチームメイトに守られながら走るガルシア
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東京で昨年と同じ景色を見ることができるだろうか
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CS:今年のTOJの展開をどう考えていますか?

ガルシア:非常に難しいと思います。TOJを勝つために一生懸命やってきました。毎日のステージはどうでしょうかね。

CS:ディフェンディングチャンピオンとして富士ステージでの自信はありますか?

ガルシア:全てのステージで自信があります。特に富士ステージはTOJを勝つ上で要となります。富士ステージでの勝利こそが総合優勝者を決めるからです。それでも毎日のステージをないがしろにはできません。TOJのために骨身を惜しまず努力をしてきたので自信はあります。

CS:今年のTOJでの集団の動きをどう予想しますか?

ガルシア:昨年のようにワールドチームであるバーレーン・メリダが参加しないので、集団はあまり組織化されないでしょう。でも僕たちのチームには100%の自信があります。

CS:今回のTOJ、個人として何を望みますか?

ガルシア:勝利を目指します。2年続けて勝つというのは非常に難しいことです。でもチームの調子は100%です。全てを出し切っていきたいです。