ブエルタは最終決戦のアングリル区間でエリソンドがサプライズ優勝/総合首位はホーナーがキープ
第68回ブエルタ・ア・エスパーニャは、9月14日にアビレスからアルト・デ・アングリルまでの142.2kmで最後の山岳区間を競い、魔の山と言われる超級ゴールで22歳のフランス人、ケニー・エリソンド(FDJ.fr)が逃げ切ってサプライズなグランツール初区間優勝を果たした。総合争いはリーダージャージのマイヨ・ロホを着た米国のクリストファー・ホーナー(レディオシャック・レオパード)が、ライバルたちを蹴落として区間2位になり、首位の座を守った。ブエルタは15日にマドリードで閉幕する。
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最終決戦となった第20ステージは145選手がスタート。サルバトーレ・プッチョ(スカイ)が出走しなかった。序盤に32人の選手が逃げ出し、ここにエリソンドも入っていた。最初のカテゴリー3と2の峠は山岳賞ジャージを着たニコラ・エデ(コフィディス)がトップで通過。彼は最終日も山岳賞ジャージを着られることになった。 アングリル峠の前に越えなければならなかったカテゴリー1のコルダル峠の上り坂で、先頭集団からビンチェンツォ・ニーバリのアシストであるイタリアのパオロ・ティラロンゴ(アスタナ)がアタックし、エリソンドが合流した。2人は山頂でエウスカルテル・エウスカディが引くメイン集団に5分差を付けていた。
残り12.2kmで、魔の山アングリル峠の登坂がスタートしたとき、その差は5秒しか縮まっていなかった。メイン集団はアングリル峠が始まるとダニエル・モレノ(カチューシャ)が先頭を引き、あっという間に総合を争う選手たちに絞り込まれていった。そして残り8kmでメイングループは11人になっていた。
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モレノを先頭にメイングループが残り7kmのゲートを通過したあと、総合2位のニーバリがアタックし、ライバルたちに数秒差を付けて先行した。ティラロンゴはニーバリを待ち、先頭は残り6kmでエリソンドの独走になった。山頂へと向かうにつれて霧が濃くなっていくアングリル峠を、プロ2年目で初めてグランツールに出場したエリソンドは、たった1人で先頭を走り続けた。
その後方では、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)を従えたマイヨ・ロホのホーナーがニーバリに追いつき、3人で残り5kmのゲートを通過した。そこにこの日の逃げに加わっていたヤコブ・フグルサングとティラロンゴが合流し、ニーバリのアシストを続けた。そして遅れていたマイヨ・ベルデのアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)も追いつき、総合争いは仕切りなおしになった。残り3.5kmでエリソンドとメイングループのタイム差はまだ2分あった。
2人のアシストが役目を終えたあと、ニーバリがふたたび攻撃を開始。手強さが信条のシチリア魂を見せつけたが、ホーナーはニーバリがアタックするたびに落ち着いて付き従った。そして残り2kmで、今度はホーナーがアタックすると、ニーバリにはもう付いて行く力が残ってはいなかった。「できることはすべて試した。あれ以上は不可能だった」と、ニーバリはゴール後に敗北を宣言した。
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フラムルージュでエリソンドとホーナーのタイム差は1分あった。魔の山アングリルは23%の難所を越えた勇者を暖かく迎えるすてーじで、残り1kmを越えればゴールまでは下りだ。エリソンドはホーナーに捕らえられることなく、独走でビッグな勝利を獲得した。そしてホーナーは、41歳でグランツール制覇という歴史的快挙に王手をかけた。
「まったく素晴らしい。アングリルは神話だ。ステージの序盤にボクはたくさんの良いクライマーたちと逃げ出したが、脚の調子はよくはなかった。とても厳しいステージだったけど、ボクはそれで勝ったんだ。ペイラギュドでジェニエズが勝って、エースのピノが総合7位で、ボクたちはもうそれ以上を望むことはできなかったのに。ボクは終盤でピノをアシストするために逃げていたんだ」と、エリソンドは喜びを語っている。
15日はレガネスからマドリードまでの109.6kmで、最終区間の第21ステージが行われる。連日サプライズが続いた今年のブエルタを締めくくる勝者が誰になるのか楽しみだ。
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■第20ステージ結果[9月14日/アビレス~アルト・デ・アングリル/142.2km]
1 ケニー・エリソンド(FDJ.fr/フランス)3時間55分36秒
2 クリストファー・ホーナー(レディオシャック・レオパード/米国)+26秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム/スペイン)+54秒
4 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+54秒
5 アンドレ・カルドソ(カハルラル/ポルトガル)+54秒
6 ドミニク・ネルツ(BMC/ドイツ)+54秒
7 ジョゼジョアン・メンデス(ネットアップ・エンデューラ/ポルトガル)+1分15秒
8 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+1分45秒
9 セルジュ・パウエルス(オメガファルマ・クイックステップ/ベルギー)+1分52秒
10 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+1分59秒
12 ドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル/イタリア)+2分20秒
■第20ステージまでの総合成績
1 クリストファー・ホーナー(レディオシャック・レオパード/米国)81時間52分01秒
2 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+37秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム/スペイン)+1分36秒
4 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+3分22秒
5 ニコラス・ローチ(サクソ・ティンコフ/アイルランド)+7分11秒
6 ドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル/イタリア)+8分00秒
7 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+8分41秒
8 サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)+9分51秒
9 レオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ/チェコ)+10分11秒
10 ダニエル・モレノ(カチューシャ/スペイン)+13分11秒
[各賞]
■ポイント賞:アレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム/スペイン)
■山岳賞:ニコラ・エデ(コフィディス/フランス)
■コンビネーション賞:クリストファー・ホーナー(レディオシャック・レオパード/米国)
■チーム成績:エウスカルテル・エウスカディ(スペイン)