ニュース
Jプロツアー 強豪チーム監督インタビュー
レース
2018.03.18
2月末日に沖縄で行われたJプロツアー初戦にて、各強豪チーム監督に今年の目標や注目してほしい選手について聞いた。
text&photo:滝沢 佳奈子
2月末に行われたJプロツアー初戦、おきなわロードレース。12月から気合を入れて乗り込みをしてきた宇都宮ブリッツェンが圧倒的なチーム力を見せつけ、初日は岡篤志(宇都宮ブリッツェン)、2日目は鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が勝利を収めた。
シーズンが始まったばかりの宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリング、シマノレーシング、那須ブラーゼン、ヴィクトワール広島の各監督に今シーズンの目標や注目選手などを聞いた。
text&photo:滝沢 佳奈子
2月末に行われたJプロツアー初戦、おきなわロードレース。12月から気合を入れて乗り込みをしてきた宇都宮ブリッツェンが圧倒的なチーム力を見せつけ、初日は岡篤志(宇都宮ブリッツェン)、2日目は鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が勝利を収めた。
シーズンが始まったばかりの宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリング、シマノレーシング、那須ブラーゼン、ヴィクトワール広島の各監督に今シーズンの目標や注目選手などを聞いた。
宇都宮ブリッツェン 清水裕輔監督
私が(監督を)やり始めて、初めてここまでいいコンディションできたので、結構自信はあったんですけど、みんながそれを予定通り遂行してくれたので安心しています。やっぱり開幕戦勝ったのはうれしいですね。
CS:今回沖縄にはマトリックスパワータグが出場しませんでしたが?
残念ですね! キナンとかもそうですけど、僕らのこの結果を見て、それぞれの地で闘志をメラメラ燃やしてくれれば、ますますJプロツアーも盛り上がっていくんじゃないかなと思います。今年もホセ(・ビセンテ・トリビオ)はしっかり走ってくるでしょうし、佐野(淳哉)選手もいるし、土井(雪広)選手もいるし、簡単ではないかと思います。
CS:ブリッツェンとしては、今シーズンから全員エリートカテゴリーに上がりました。どのように闘っていきますか?
ほぼフルメンバーで走る機会が多いと思うので、やっとまともにシーズン通して闘えるじゃないかなと思っています。
CS:今年の目標は?
今年10周年というのもあって、やっぱり地域密着型チームなので、地元のためにJプロツアーは狙っていきます。Jプロツアーで優勝した時って、地域の盛り上がりがすごいんですね。それをもう一回ここで必ず獲るっていう気持ちがあります。かつ、チームもみんな強くなっているので、プラスα国内のUCIレースでも表彰台上がることを目標にトレーニングを積んでます。
CS:増田選手の病気からの回復具合はどうですか?
良くなってきていますが、まだ彼本来の力までには戻ってないですね。でもチームの中で、一番ハードなレースになると彼が一番強い状態ではありますね。
CS:今シーズン注目の選手は?
全員が全員ちゃんとやってきているので、強いて言うのであれば新しく入ってきた鈴木龍ですね。基本的にみんなが勝てる状態でもあります。
CS:沖縄2連戦終えて、ルビーレッドジャージは窪木選手の手に渡りましたが?
まだシーズン序盤なので。ルビーレッドを気にすると、やっぱり一人エースになっちゃうので、去年まではうちもそうでしたけど、みんなで攻撃して強い選手が着るべきだと思っているので、最後可能性がある選手がいればとらせる動きにはなるかと思いますけど。ルビーレッド取れなくても全線優勝したいですよね。ロードレースでそんなことは無理なのは分かってますけど、例えば9人で2勝ずつ、18勝でルビーレッドが取れなくても、そっちの方が価値が高いかなと。若い選手も多いので、
チームブリヂストンサイクリング 六峰 亘監督
今年、新体制という形でメンバーも入れ替わって、本番でのメンバーどうしの連携も初の試みでした。初日を終えて、レースの形としては満足しているので、修正点を反映していきたいです。
CS:今シーズン注目してほしい選手は?
窪木一茂ですね。チームのコンセプトとして、トラックとロードがあるんですが、彼はどっちも頑張ると言っているのでどちらの結果も注目してほしいなと思います。トラックやってるのにロードも強い、ロード強いのにトラックも強いっていう二刀流を見てほしいです。
CS:ロードはどのようなスケジュールなのでしょうか?
今年に関しては、シーズン通して国内で闘う予定です。UCIレースも出ます。
CS:既存のメンバーもいますが、チームの結束力はどうですか?
非常に良い状態で、みんな仲良く、プライベートな部分でも仲良くやっているので良いと思います。
トラックで世界選手権に出ていたメンバーも基本的にはロードもやらせていく方向なので、全部でメンバー10人いて、7人は(トラック、ロード)両方やる形です。スケジュールが合えば、マックスの8人で臨むこともあると思います。
シマノレーシング 野寺秀徳監督
チームの選手は成長していますが、まだまだ目指すところに向かっては程遠いレベルであるという厳しい見方をしなきゃいけないと思っているので、このJプロツアーも通過点として、個々がもうちょっと上手く立ち回って、成績を上げるというよりも圧倒的な力を手に入れるために、レースの中で積極的に動いていくことをしたいなと思って臨んでいます。
沖縄初日も結果からすると(シマノレーシングのメンバーも)上位にまとまっていますが、実力者が優勝して、シマノレーシングもそれなりの順位でゴールしたという見方もできるんですけど、内容からしたら宇都宮ブリッツェンさんの鉄壁の走りでした。
対抗できないのは分かるんですが、対抗しようとする気持ちを見せられなかったのはちょっと残念だったかなと思います。駄目元でもいいからどんどんチャレンジしていって、それで同じくらいの成績だったら、自分らの気持ちもそうだし、周りからの評価も違っていって、どんどんレベルアップできる環境が作り上げられると思います。
2日目はそこを選手たちともう一度話し合って、確認しました。積極的に攻めていってその中で勝ちに行く。誰かを年間のエースに立てるんじゃなくて、今いる選手が争い合いながら、最終的に結果を持って帰りたいなと思っています。
CS:今シーズン注目してほしい選手はどなたですか?
全員注目してほしい中で挙げるとしたら、一番若い二人。小山(貴大)と中田(拓也)です。彼ら若い選手の闘志というのはものすごいですし、成長もしていますし、あの年齢で彼らが持っている力はかなりのものです。彼かがキーマンになってくるかなと思います。うちのエース格の選手たちが立ち回る上でも、彼らの成長っていうのがかなりキーになってくるかと。この二人にぜひ注目してほしいですね。ともすれば彼らもこの1年で急成長して、どこかのレースで勝てるような選手になりうる力もあると思うので。
那須ブラーゼン 岩井航太GM
僕がどうっていうよりもこのチームはみんな歳が近くて、今日どうしよう、今自分らのどれくらい実力があって、何ができる、どういうレースしようっていうのを一人ひとりが考えて、話し合っているんです。僕がどうこう指示するんじゃなくてその場を与えているだけであって、チームみんなで作っていっています。半分は新加入なのでまだわからないことも多いですが、そういう中で試行錯誤しながら今年は進んでいくかなと思います。
CS:今年の目標は?
去年は1勝だったので、それは越えたいですね。UCIレースは、ツール・ド・とちぎが(シーズンの)前半では大きいですね。ジャパンカップも出られるようにしないとです。
CS:今年注目選手をあえて挙げるとしたら?
全員ですね。あえて挙げるなら西尾(勇人)ですかね。調子良くて、彼自身の中でももう3年やってきて、昨年はケガでほとんどいい走りができなかったんです。そういうことも含めて、シーズンが始まってから練習に取り組む姿勢とか発言とかチームを引っ張ってくれている雰囲気ですね。今までそういうの全然なかったんですけど、頼もしくて。実際走りも良くて、沖縄初日もみんなで攻めようって言ったら、彼が一番動いてくれていたので。
ヴィクトワール広島 中山卓士監督
うちのチームはまだ若手も多いので、(シーズン通しての)総合6位を目指しているところではあります。ステージだと1勝はしたいなと。まだまだ挑戦の段階なので。ブリッツェンさんのチーム力は沖縄でも本当にすごかったので、そういうところに絡んでいけるようにチーム育てていきたいなと思っています。
CS:チームに所属しているメンバーはどんな世代が多いですか?
チームは今10人いるんですけど、20代前半から30代後半まで、仕事を持ちながらやっている選手も3人ほどいますね。
CS:ヴィクトワールは育成チームというわけではないんですよね?
第一段階としては、若手だけを育てようという方針にもしておらず、高順位を目指していきたいです。イメージとしては、宇都宮ブリッツェンのように地域に根ざした活動をしていきたいと考えています。私自身もブリッツェンに前所属していて、そこからこのチームをやりたいと考えたので、文化を広げられるようなことがあればやりたいなと思っています。
CS:今季注目してほしい選手は誰ですか?
白川(幸希)かなと思います。昨年、E2(カテゴリー)をスタートして、P1(山口で行われた秋吉台カルストロード)でも5位に入ったりしていて、U23のナショナルチームの強化指定選手にも選ばれていました。彼は見ていても今後、才能を開花できるタイプの選手だと思うので、彼に期待をしています。
ブリヂストンの窪木選手は、久しぶりの日本のレースについて、「久しぶりに思うのはレベルが上がってるなと感じます。より各チームが戦略的に動いているし、個々の能力も上がってるなと思うし、落車も少なくなったかな」と話していた。
最近のJプロツアーを見ていても、誰か特定の選手だけが強いということがだんだん少なくなってきたかのように感じる。全員が”同じくらい”強いのだ。ツール・ド・台湾で総合優勝した新城幸也選手のように、日本人で明らかに力が抜きん出ている選手はまだいないかもしれない。しかし、チームで勝つということを経験した選手たちが、さらにチーム力の必要性を感じ、個人を磨く。その経験が強くなるためには必要である。
先日行われた平昌オリンピックを見ていても、個人の圧倒的な力で勝つというよりもチームでたすきをつなげながら勝つという方法のほうがいっそ日本らしくも感じる。東京オリンピックのロードレースで優勝と言えるほど夢みがちではない。でもそんな東京オリンピックまでの布石をJプロツアーでも存分に楽しめるはずだ。