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ルック 795 試乗レポート

コルシカ島で695エアロライトが登場してからちょうど1年。ルックがさらなるフラッグシップモデルを追加投入してきた。それが「795シリーズ」。 ツール・ド・フランスがパリにフィニッシュした翌日に行なわれたプレゼンテーションに参加し、真っ先に試乗した。

 

text&photo:ナカジ

今の"ルックらしさ"の 究極形態

 

昨年、ツール・ド・フランスのグランデパールの地であったコルシカ島で695エアロライトが発表さ れた。695で登場した専用ステムと、左右のクランクが一体となったZED2クランク。これに695エアロライトではフレームに採用したカーボン素材の変更に加えて、フォークと一体になったフロントブレーキと、リヤにもBB下にブレーキを取り付けることでエアロダイナミクスが向上されていた。

 

いままでのルックのモデルチェンジスパンを考えれば、しばらくはトップレンジのニューモデルは出てこないだろうと思っていたのだが、今年もプレゼンテーションがあると聞いて驚いた。発表会前までいっさいの情報が出てこなかったので、いったいどんなモデルが待っているのか、ツールの興奮もさめやらぬままプレゼンテーション会場へと向かった。  

 

今年、自転車メーカーとして創業30周年を迎えた同社が、それにふさわしいフラッグシップモデルとして発表したのが795シリーズ。ひと目でただ者ではないとわかるスタイルを持っている。ルックが考えたトータルインテグレー ション規格のすべてを盛り込んだモデルに仕上がっている。  

 

695シリーズのさらに上

 

695シリーズは引き続きラインナップに残り、その上のモデルとなる。乗り味は695シリーズよりもレース志向が抑えられているとのこと。ダウンチューブからチェーンステーの剛性を重視し、トップチューブ側で快適性を出すような設計になっている。  

 

695シリーズから引き継がれているのは、専用の可変ステムとZED2クランク、そしてEポストシステムだ。リヤブレーキは BB下にダイレクトマウントタイプを採用。フロントフォークは一見すると695エアロライトと共通のように見受けられるが、 HSC 7から8へと進化し、約15gの軽量化が達成されている。  

 

そして、注目なのはそのワイヤルーティングだ。ハンドルバーから出たワイヤ類は、ヘッドチューブのほぼ最上部の前面からフレーム内部へと入っていく。他のバイクならヘッドパーツのベアリング がある位置。ヘッドチューブ内部のカットモデルを見てみるとベアリングの外周部を回り込むように ワイヤが通るミゾが切ってある。 

 

 

フロントブレーキワイヤに至っては、ステムの下側から入り、フォ ークコラムの内部を通っている。 確かに空気抵抗の低減を考えたときに、ハンドルまわりのワイヤ類が煩雑になることは大きなロスになる。それを解決するために、前後シフトワイヤ、リヤブレーキワイヤの3本をトップチューブ上部 や、ヘッドチューブの前から入るように設計したバイクはあったが、ここまでトップチューブの上側から入れてしまったのは、TTバイクを除けば量産モデルで初めてのことではないだろうか。  

 

チューブ形状に目をやると、いわゆる翼断面形状を採用している。 昨今、空力性能が有利なフレーム断面形状といえばカムテールといわれる、翼断面形状の後端を切り落としたような形だ。

あえて翼断面形状を採用している理由を、開発担当のF・カーロン氏に聞いてみると、「カムテールは軽さと空力性能を両立するための形状です。でも空力を最優先にしたら翼断面形状がいい。795は翼断面形状でも十分軽く仕上げることができたので、カムテールデザインにする必要はないのです」とのこと。 空力テストはフランス・マニクールサーキットの風洞実験施設で行なった。

 

LOOK 795

 

ルック 795

 

795 エアロライトフレームセット 価格/ 79万9800円(プロチーム)、74万9800円(ホワイト、フロ ーリフレクト、カーボンレッド) 

 

795ライトフレームセット 価格/ 69万9800円(プロチーム)、64万9800円(ホワイト、フローリフレクト、カーボンレッド) 

 

※10月以降発売予定、すべて予定価格

 

ルックのインテグレーションアイコンすべてを搭載

 

進化した可変ステム:角度が-13度から+17度まで変えられることによって、多様なポジションに対応する。ハンドルクランプは「LOOK」というキャップを外すと固定ボルトが現れる

 



 


新形状のフォーク:ヘッドパーツの下ワンベアリング径 は1.5インチを採用。軽量化されたほか、優れた空力性能を誇る






細身になったヘッドチューブ:上り空力性能を向上するために、ヘッドチューブのまん中にくびれを持たせた。カットサンプルを見ると、複雑なワイヤルートが見て取れる。シマノDi 2のジャンクションすら内蔵

 

 

 

内蔵+ダイレクトマウントブレーキ:795エアロライトはフロントにフォーク内蔵ブレーキ、リヤはダイレクトマウントを採用。とはいえ、ロードレースで使用するときはホイール脱着の早さも重要なので、ノーマルキャリパーモデルの「ライト」もある

 

 

 

 

 

エアロ形状のシートポスト:シートポストも翼断面 形状を持つ。内部にバッテリーを収納でき、シートクランプにはセライタリアのモノリンク規格を採用。別売で通常のレールタイプサドルに対応したクランプもある

 

 

 

 

 

ZED 2クランク+ BB65は健在:初代695から受け継がれるZED2クランクとBB65も、もちろん採用されている

 

ナカジの試乗レポート

 

Spec.

●フレーム/カーボン

●フォーク/カーボン

●メインコンポ/シマノ・デュラエースDi2 

●ホイール/マヴィック・コスミックカーボンアルティメット 

●タイヤ/マヴィック・イクシオンプログリップリンク&パワーリンク 

●ハンドル/3T・エルゴノバ

●ステム/専用品

●サドル/セライタリア・SLS

●サイズ/ XS、S、M、L、XL

 

自分自身、675を所有している。購入した理由はそのスタイルだった。量産モデルにもかかわらず、 トップチューブからステムの上面の、流れるようにつながった、まるでプロトタイプのようなスタイルにほれたからだ。まったく試乗せずに手に入れたが、その走りには満足している。  

 

ただ、思ったことがある。「上位モデルに採用されているZED2クランクやE‐ポストシステムまで、すべてが投入されていたら、よりエッジの効いたモデルになっていたのに」と。しかし、675 のミドルレンジという設定を考えれば、採用されていないのもうなずけた。  

 

そこに795シリーズの登場である。自分が想像した規格をすべて搭載しているだけでなく、過激なワイヤリングをまとっての登場に興奮した。795は「エアロライト」と「ライト」の2モデルがラインナップされる。違いはブレーキシステム。795エアロライトはフロントがフォーク内蔵Vブレーキで、リヤはBBの下にダイレクトマウントブレーキが取り付けられる。795は前後ともノーマルブレーキキャリパーだ。

 

795エアロライトをメインに試乗。 フレームの上側と下側の剛性差が明確に感じられる。試乗車のホ イールがマヴィック・コスミック カーボンアルティメットと、かっちりしたホイールだったが、バックからの突き上げはかなり軽減されている。

 

反面、フォークは新型 になったことで、左右方向の踏ん張りがしっかりきき、よりスパルタンな印象になった。お尻にサドルを突き刺すくらい前乗りポジシ ョンを取って走っても安定している。むしろ前乗りのほうがバランスがいいかもしれない。  

 

一気に加速したいときにはバッ クがやや物足りない。チェーンステーがかなり太くなったが、そのぶんシートステーのしなりはかなりのもの。がちがちの硬いフレームになったという印象がない。過剰な剛性の演出よりも、振動収束の早さが新しいトレンドになってきているので、それをしっかり押さえているといえる。 

 

気になるエアロ効果だが、今までのどのエアロロードよりも明らか。試乗会で集団からちぎれて単騎になったとき、期せずしてそれを体感できた。 

 

対してノーマルの795。こちらのほうが695の走りを継承した、スパルタンな性格を持っている。前後ノーマルブレーキなので、795エアロライトと比べると個性はやや薄れるが、ロードレースでがんがん使い倒すならこちらをオススメしたい。ブレーキ操作も慣れているので、違和感なく乗り換えられる。

 

シートステーの途中にブレーキキャリパーを取り付ける台座があるので、しなる範囲 が795エアロライトよりも狭い。 そのためラフに踏み込んでいったときの反応も早い。何に主眼を置いてバイクを選ぶのかによって、795シリーズのチョイスは変わってくる。

 

ルック30年の歴史を振り返る

 

発表会の前半では、ルック30年の歴史を振り返るセレモニーが行なわれた。もともとはスキーのビンディングメーカーであったルックが、 1984年に自転車用ビンディングペダル「PP-65」を発表したことから、ルックと自転車の歴史は始まる。今でこそレースではビンディングペダルを使うのが当たり前だったが、当時はトーストラ ップで締めるのがスタンダード。

 

このビンディングペダルを使用して大活躍したのが、ツール・ド・フランスで5回の総合優勝を果たしたB・イノーだ。もちろんセレモニーにはゲストとして登場。彼の活躍により、一躍ビンディングペダルは自転車競技の世界に普及していった。

 

ほかにもカーボンパイプをアルミラグでつないだKG-171を駆って1995年のブエルタ・ア・ エスパーニャ総合優勝やUCIワールドランキング1位を4回獲得したL・ジャラベール、1992年のフランスチャンピオンで1994年世界選手権制覇を成し遂げたリュック・ルブラン。595に乗ってブエルタ・ア・ エスパーニャの山岳賞を獲得。ツール・ド・フランス区間2勝を挙げたD・モンクティエ、トラックフレームでオリンピックを制したクリスティーナ・フォーゲなど多くの選手、元選手が招かれており、ルック30周年記念式典は盛大に行なわれた。

 

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