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ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート 4日目

世界の強豪チームが揃うツアー・オブ・ジャパン(TOJ)が、今年も大阪で開幕した。アジア 最大級のステージレースではあるが、海外チームだけでなく、日本人選手や”純日本チーム”の活躍・闘いぶりにも是非とも着目してみて欲しい! そこで今年のTOJは、地域密着型チームのリーダー的存在である宇都宮ブリッツェンに全ステージ密着し、その内側をお届けしていく。ひとりでも多くの人にその魅力を 知ってもらえると嬉しい。
 
text&photo 滝沢佳奈子

平日にもかかわらず2万人の観客が訪れたいなべステージ

今年で2回目の開催となったいなべステージは、昨年と同様、三重県いなべ市の農業公園梅林公園をメイン会場に藤原町・北勢町を通る周回コースが設定された。

朝のうちは、晴れ間は見えるものの風が強く、止まって見ている観客にとっては少し肌寒いくらいであったが、レースが進むごとに陽の光が強くなり、気温はぐんぐんと上がっていった。周回コースのフィニッシュ地点から1kmほど先に今回の山岳賞ポイントが設けられており、最大勾配17%の激坂をプロ選手たちがどう走るのか一目見ようと、平日にも関わらず多くの人が集まっていた。

また、山岳賞ポイントでは選手が通過する前にチョークイベントが行われ、集まった観客が思い思いの応援メッセージなどをアスファルトに描いていた。その中にはブリッツェンのメンバーの名前も。日本全国どこに行ってもファンがいるというのは驚きだ。

 
山岳賞ポイントの路面にはチョークで応援メッセージが
山岳賞ポイントの路面にはチョークで応援メッセージが

総合勢をふるいにかけるため、ランプレと協力。集団の前方はメリダのバイクが占める形に

昨日のミーティングで、増田選手の総合のために、残り2周のところで大久保選手、阿部選手の2人でペースアップし、集団をふるいにかける作戦を選んだ。「自分たちが思い通りの展開になる方が少ないので、レース中に臨機応変に対応していかないと。後手を踏まないように、先手でいきたいです。」と増田選手は話していた。

セレモニーランから周回コースに入ると、逃げを決めるアタック合戦が始まった。イラン人の選手2名とマトリックス・パワータグの佐野淳也選手の3名の逃げが確定すると、リーダーチームのアヴァンティが崩壊してしまう。こういった場面では格上であるプロツアーチームやプロコンチネンタルチームが総合を狙うために先頭をコントロールしていく場合が多いが、今回はステージ優勝狙いのチームが多く、誰もコントロールに入らないまま先頭とのタイム差が7分にまで広がってしまうことになった。

「普通に走っていても上り終わった後の下りなどで分断が起きていて、集団の後ろの方キツそうだったんで、ちょうど増田と(新城)幸也が話してて、ちょっとこれジャブ打ってって徐々にある程度ローテーションして、ペース上げていくだけで後ろキツくなるだろうって。それでランプレ(・メリダ)と協力してペース上げていったら、序盤から遅れてった選手がいた。平地側でみんな中切れして必死に追いついてた。それを繰り返していたら残り2周の山頂では増田と譲が(集団)先頭でクリアしてった。それで攻撃していって20人くらいに絞ったんですよ。いい形だったんですけど、人数多すぎてまとめきれなくて吸収されてしまって、もう一回残り1周で攻撃しようと思ったんですけど、ちょっと厳しかったです。」と清水監督が振り返った。

 
3周回目激坂区間でランプレと共同で集団を引く小野寺選手と阿部選手
3周回目激坂区間でランプレと共同で集団を引く小野寺選手と阿部選手
新城選手と増田選手が話し合い、協力して攻撃を仕掛けることに決める
新城選手と増田選手が話し合い、協力して攻撃を仕掛けることに決める
作戦通り大久保選手と阿部選手が集団を率いるローテーションに加わり、ペースアップを図る
作戦通り大久保選手と阿部選手が集団を率いるローテーションに加わり、ペースアップを図る

ステージ優勝狙いのチームが多いなか、総合上位狙いにシフト「やる攻撃はやった」

今日のステージについて清水監督は、「今日はみんなで攻めました、やる攻撃はやったんで。みんなかっこよかった。昨日言ってた作戦もやって、できなかった」と話す。

決め切れなかったのは何が原因だったかを聞くと、「もともと2人、3人で勝負に行ける感じではないので、同じこと考えているチームが少なかったってことですかね。結局BS(ブリヂストン・アンカー)とうちしか回ってなかったので。今年プロツアー、プロコン(チネンタル)と来てますけど、本来ステージレースだったら総合狙わないといけないのに、狙ってないチームがかなり多い。プロコンとかが本当は仕切らないといけないところを、今回あまりそういう走りしないので、ちょっと残念です。それがレースレベルを落としてるんじゃないかと思いますけど……」と珍しく苦言を呈した。

逃げ切りを許してしまいそうだと思ったタイミングがあったか聞くと、「残り3周でちょっと逃げ切られるかなぁと思って、残り2周で攻撃してあれで決まってれば追いついたと思うんですけど、あれで決まんなかったので。佐野選手含めて最初の飛び出した3人は、富士山とかでは上位厳しいと思ってたので逃げ切られてもいいかな、と。僕らも総合にシフトしてったので」と、はっきりと目標が再確認された。

チームミーティングの際、鈴木譲選手にラスト2周の上りの前で少し無駄脚を使ってしまっていたと指摘されていた堀選手も「明日はもうちょっと冷静に周りの動きを見て動こうと思います」と話した。

 
平地区間では強い風にさらされる
平地区間では強い風にさらされる
レース後、ダウンをしながらお互いの仕事を振り返る
レース後、ダウンをしながらお互いの仕事を振り返る

8日間のステージレースもいよいよ折り返し。選手たちのリラックス方法とは

アジア最大級のステージレースもようやく半分が経過した。折り返し地点となり、だんだんと調子の良し悪しがタイム差に影響してくる。誰にでも言えることだが、選手たちはその日その日で体調の良し悪し、調子の良し悪しが存在する。そこで、選手たちはどのようにステージレースの疲れを癒しているのかを聞いてみた。

「回復には常に努めてます。常になんか食べてるとか、食べれなくなったら回復しないので。食べれるように気を使ってます。小分けにして食べるとか。あとメリハリですね。常に毎ステージ全力ではあるんですけど、勝負に絡めないと思ったらある程度割り切るっていうのも大事なんで」と語るのは鈴木譲選手。

部屋に戻ってどうリラックスしているのかを聞くと、「まぁ、テレビ見てますね(笑)。マッサージも受けるんですけど、自分でこういう用具(写真のマッサージ用具)を持って、コロコロやってたりします」と実際に見せてくれた。

予想以上に大きかったマッサージ用具にかさばって大変ではないのかを聞くと、「スーツケースの4分の1がこれですね。ここ(マッサージローラーの真ん中の穴)にサプリとか入れてます。荷造りうまいのは選手として乗り切るポイントですね。僕荷物少ないんですよ。スーツケース1個なんですけど、1月半とかでも1個でいけます。海外遠征とかもそのサイズですよ。そういうのが結構大事ですね。なんかあんま持ってくるものないよな、みんな何持ってきてんだろう、と逆にそっち気になる(笑)。毎日移動して遅くなって、1人の時間って短いんですよ。(マッサージが)足りない分は自分でやって、っていうのがポイントですね。」とステージレースを乗り切るためのコツを教えてくれた。

 
鈴木譲選手が持参したマッサージ用具
鈴木譲選手が持参したマッサージ用具


堀選手にもリラックス法を聞くと、「蒸気で温めるホットアイマスクして寝るのめっちゃ気持ちいいですね。あれ最高です。毎日寝るときしてます。」と答えてくれた。他にもあるか聞いてみると、「昨日やってたごきぶりポーカーみたいな、あれ前にも持ってきて盛り上がったんで今回も持ってきたんですけど。ああいうちょっとカードゲームみたいなものをみんなでするってのもリラックス方法かもしれないですね」と話していた。
 

我慢の1日になりそうな厳しい南信州ステージ

増田選手が「めちゃくちゃ厳しい」と言っていた南信州ステージについて、清水監督は「今日はちょっと攻めて、トライしてきて、ここまできたらもう登坂力勝負だと思っていました。今日はちょっとダメージもあったので明日は我慢の1日かなと思います。幸いこうしてチームで動けているなかで、増田・譲が我慢の1日になるとは思うんですど、もう一手で堀が動ける状態にあるのが今すごくチームとしては大きいなと思ってます。今回のTOJの全体的にリーダーシップを発揮するチームが現れない、かつ上りでまとめられるチームが出てこないので。今年の台湾とかでもあったんですけど、どこ(のチーム)もまとめないで逃げがいっちゃたりとか、そんなのが起こり得るのかなって。今日なんかそうじゃないですか。特に明日はさらにハードなコースなので、そういったことも起こり得ますし、まぁそういったチャンスがあれば堀が行ってもらって、あとは我慢かなと思います」と語った。

 
ミーティング前に新しいジャージが配られる
ミーティング前に新しいジャージが配られる


ツアー・オブ・ジャパン 第4ステージ(6月1日/いなべステージ/130.7km)結果
1位 モハンマド・ラジャブルー (ピシュガマン サイクリングチーム) 3時間23分25
2位 メヘディ・ソフラビ (タブリーズ シャハルダリ ) +0秒
3位 ダニエル アレクサン デル・ハラミリョ (ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルCT  ) +49秒

15位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +49秒
21位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +49秒
35位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +2分
76位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +11分21秒
77位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +11分21秒
85位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +21分15秒


ツアー・オブ・ジャパン 第4ステージ終了時個人総合順位
1位 メヘディ・ソフラビ (タブリーズ シャハルダリ ) 9時間39分51
2位 アンソニー・ジャコッポ(アヴァンティ アイソウェイ スポーツ ) +40秒
3位 ピエールパオロ・デ ネグリ (NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +45秒

6位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +52秒
13位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +56秒
37位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +2分15秒
54位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +11分28秒
78位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +23分58秒
90位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +42分56秒


チーム総合順位
1位 ピシュガマン サイクリング チーム 
2位 タブリーズ シャハルダリ
3位 アヴァンティ アイソウェイ スポーツ 

8位 宇都宮ブリッツェン


宇都宮ブリッツェン http://www.blitzen.co.jp
ツアー・オブ・ジャパン 2016 http://www.toj.co.jp/2016/

■ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【一覧】http://www.cyclesports.jp/articles/series/2104