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ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート 7日目

アジア最大級のステージレースなだけあり、世界の強豪たちが揃うこのツアー・オブ・ジャパン(TOJ)だが注目して欲しいのは海外チームだけでない。日本人選手や”純日本チーム”の活躍・戦いぶりにも是非とも着目してみて欲しい。そこで今年のTOJは、地域密着型チームのリーダー的存在である宇都宮ブリッツェンに全ステージ密着し、その内側をお届けしていく。ひとりでも多くの人にその魅力を知ってもらえると嬉しい。
 
text&photo 滝沢佳奈子

総合争い最後の戦いの場、伊豆にたどり着いた

今回のステージの中で最も獲得標高が高くなるサイクルスポーツセンター内のコース。風は強いが、天気は良い。今回のTOJでは風が強いステージが多かったが、これがどう影響するのか。総合争いにおいて最後の攻撃のチャンスとなるこの伊豆ステージだけに、スタート前、少しだけ張り詰めた空気の中、選手はピットで入念なアップをしていた。

アップの途中、総合順位が近いホセ選手(マトリックス・パワータグ)と増田選手が話をしていた。後から聞くと、「今日どうなると思う?って話ししてましたね。まぁでもレース走ってみてからだね、ってそこでは言ったんですけど、走り始めてちょっとこれ行ってみようぜ、みたいになって」と増田選手は話した。

 
ピリッとした空気の中アップを行う選手たち
ピリッとした空気の中アップを行う選手たち
スタート前にマトリックスのホセ選手と話をする増田選手
スタート前にマトリックスのホセ選手と話をする増田選手

序盤は堀選手と鈴木譲選手、増田選手が逃げに入る

「堀と譲が最初逃げに乗ってこうって話だったんですけど、予想以上にイラン人ががむしゃらに攻撃しまくってて、そのせいで最初の3周のペースがすごい速くて。その時点で30人前後になってましたね」と増田選手が振り返る。

その後ろで早速グルペットが形成される。グルペットに入った小野寺選手はこう語る。「本当序盤ですよ。最初の2周で。南信州(ステージ)とかと同じで、最初めちゃくちゃ速くて、もう前に残った人たちは総合の上位勢なので。それ以外の人たちが後ろとり残されちゃって。それで一回グルペットにイラン勢が何人かいて、その人たちが集団の前で発射してて一気に差が開いちゃったんですよ。途中からグルペットにいた国内チーム勢でこのままじゃ降ろされちゃう(タイムアウト)、ってことになって、なんとか集団のペース引き始めて、ここまでたどり着けました。」

増田選手が今日の展開を振り返る。「今日は調子良かったです。積極的に攻めていけたんですけど、最後結構激しいバトルがあって、そこで脚きてたんですけど、最後攻撃できなかったところをユキヤはふりしぼって攻撃してったんで。一番後ろから行ったんでね、すごいいい勢いで。集団が一旦止まったんですよ、牽制みたいになって。その習慣を見逃さずに。やっぱり一番後ろにいるとそういうのも全部見えるじゃないですか。」

逃げを吸収してから最後の周回でどんな展開だったか聞くと、「ユキヤは最後の周回の上りで一回千切れましたね。下り長いんで、そこで追いついてきて。最後の上りじゃないですけど、一番キツいところの上りで千切れて。その辺り一回みんなバラバラになって、自分も一番先頭の二人(マルコス・ガルシア、オスカル・プジョルの二人)からは遅れてたんですけど、二番手グループくらいにはいて。そのあと一緒になって、最後の下りになる手前もずーっとだらだら上ってるんですけど、そこで2、3発アタックとかあったんですが全然バラバラにはならずに。その辺りで遅れた選手は50秒とかで遅れた選手かもしれないです。とにかく最後の頂上で後ろ振り返った時にユキヤ一番後ろにいたんですよ。集団がふっと緩んだ瞬間、残り1kmくらいでユキヤがいった。」

増田選手自身はアタックしたのかを聞くと、「ちょっと考えてたんですけど、脚がいっぱいになっててちょっと弱気だったというか。中盤マトリックスのホセと一緒に、自分たち総合で遅れてるから抜け出せないかと思って、何回か仕掛けてたんですけど、やっぱりもうこれ以上は……。その時すでに3人逃げてたんで、ダミアンとガストの選手と、ミルサマと。これ以上は行かせないよ、とみんなに追われて。そこでちょっと切り替えて終盤戦待ってたんですけど。残り3周くらい、逃げとのタイム差が2分くらいのところから、オスカルとマルコスが突然、お互いチームメイト誰もいなくなってたんで、ほとんど二人で回りはじめて。2分近くあった差を二人で縮めて、その時は速すぎて本当に隙がなかったですね」と答えた。
 
序盤に堀選手がアタックをかける
序盤に堀選手がアタックをかける
増田選手やリーダージャージのプジョル選手を含む集団が形成される
増田選手やリーダージャージのプジョル選手を含む集団が形成される
グルペットでは日本チームがコントロールする
グルペットでは日本チームがコントロールする
グルペットでは大久保選手と小野寺選手もついていく
グルペットでは大久保選手と小野寺選手もついていく

悔いは残るが価値のある攻撃をできたステージ

伊豆ステージの結果について清水監督は語る。
「今日は頑張ってくれましたね。ベストではないですけど、増田のステージ優勝が見えかけてたところだったんで、悔いが残るかな。まぁでも総合も上がったし、最後増田も攻撃していい走りでした。最後13人のスプリントの時に、『ユキヤマークね』って言った瞬間にアタックしたので、もうちょっと早く伝えてあげてれば良かった。前半は堀とか譲とか動く役割だったんで、動いてくれたんですけど、ちょっと動かしすぎちゃったかな、と。でもチームとしてああいう攻撃パターンがあって、その攻撃もあってリーダーチーム崩壊して、かつ厳しいレースになったので、それはそれで価値のあることだし、しっかりやってこれたと思います。」
 
優勝は新城選手
優勝は新城選手
8位でゴールする増田選手
8位でゴールする増田選手

「勝ちたい。」最終東京ステージに期待

ホテルに戻ると、各自激戦を終え、終始和やかな雰囲気が流れていた。食事中はメンバーどうしの会話が止まらなかったそうだ。「どんだけ仲良いんだよ」とチームスタッフに言われていたほどだ。

ミーティングが始まると、「明日6人で迎えられるのが幸せですね。去年はなんか怪我して一人不機嫌になって、ゼッケンとかむしり取ってその辺に投げたりしてすげぇファンの人もちょっとビビってて(笑)」と増田選手が阿部選手の方を向いてニヤニヤする。「明日雨だから、そこでまた頑張っちゃって……」と増田選手が言うと続けて鈴木譲選手が「空回って(笑)。」「何すか!そんなことないですよ!いつも冷静にやってますよ」と阿部選手が言うとチーム全員が笑う。「説得力ゼロ(笑)」と増田選手。


明日、最終ステージに向けて清水監督は、「勝ちたい。」と一言。
「イメージはできてるんで実践あるのみですね。」増田選手も「念願の宇都宮ブリッツェンTOJステージ優勝に向けるべくみんなで頑張ります。あとは自分の場合、捨て身になりすぎると総合も落ちるんで、そこもしっかり考えてやりたいと思いますけど。総合キープで、ジャンプアップはそんなに考えてないです。そこに集中しすぎるとアシストも何もできなくなるんで。ただ一個後ろにいるアントニオ・ニバリだけチェックして。基本的にはステージ優勝で。バスツアーも来るんで」とファンの盛大な応援にも期待する。
 


ツアー・オブ・ジャパン 第7ステージ(6月4日/伊豆ステージ/122km)結果
1位 新城 幸也(ランプレ・メリダ) 3時間27分0秒
2位 キャメロン・バイリー (アタック・チームガスト) +2秒
3位 ダニエル アレクサン デル・ハラミリョ(ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルCT ) +5秒

8位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +8秒
30位 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +17分38秒
39位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +17分51秒
47位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +17分51秒
65位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +17分51秒
69位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +23分46秒


ツアー・オブ・ジャパン 第7ステージ終了時個人総合順位
1位 オスカル・プジョル(チーム右京) 17時間4分49秒
2位 マルコス・ガルシア (キナンサイクリングチーム ) +1分5秒
3位 ミルサマ・ポルセ イェディゴラコール  (タブリーズ シャハルダリ  ) +1分8秒

10位(3↑) 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +2分58秒
31位(3↓) 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +23分55秒
33位(1↓) 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +24分42秒
52位(4↑) 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +45分4秒
67位(10↑) 大久保陣(宇都宮ブリッツェン) +1時間8分21秒
69位(14↑) 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +1時間39分29秒


チーム総合順位
1位 タブリーズ シャハルダリ
2位 ピシュガマン サイクリング チーム 
3位 ブリヂストン アンカー サイクリングチーム

8位 宇都宮ブリッツェン


宇都宮ブリッツェン http://www.blitzen.co.jp
ツアー・オブ・ジャパン 2016 http://www.toj.co.jp/2016/

■ツアー・オブ・ジャパン 宇都宮ブリッツェン密着レポート【一覧】http://www.cyclesports.jp/articles/series/2104