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ロードバイクインプレッション「キャニオン・アルティメットCF SLXディスク8・0」

ラインナップの全てにディスクブレーキ搭載モデルを用意してきたキャニオン。軽量レースモデルとして評価された「アルティメットCF SLX」もその例外で無く、ディスク仕様が追加で登場した。リムブレーキ仕様の現行型を自身で使用する吉本司氏が、注目のモデルをインプレッションする。
text:吉本司 photo:小見哲彦

待望のディスクブレーキ仕様をラインナップ

シマノ・アルテグラ完成車価格/45万9000円(税抜)
シマノ・アルテグラ完成車価格/45万9000円(税抜)
昨年投入されたエンデュレースCF SLXに続き、キャニオンは軽量レースモデルのアルティメットCF SLXにもディスク仕様を加えてきた。
そして、その性能を最も身近にした一台が、紹介する「アルティメットCF SLXディスク8・0」だ。フレームの基本設計はリムブレーキ仕様と変わらず、重量比剛性と空力性能、そして快適性をバランスして、オールラウンドを極めた走りを追求している。
 
ディスクブレーキの仕様は世界基準のフラットマウント台座にOLD100×142mmのスルーアクスルという組み合わせ。
リムブレーキ仕様との外観上の違いは、ディスク台座を含めた前後のエンドまわりとフロントフォークのシェイプだが、ディスク仕様は左チェーンステーとフォークレッグのカーボン素材を変更。破断に強い素材をプラスして補強を行い、さらにレジンも高耐熱性に優れるタイプを新たに用いるなどして安全性が高められている。
 
ダウンチューブやヘッドチューブなど要所となるチューブは、カムテール設計を反映した「Dシェイプ」と呼ばれる形状を与える。同社のエアロードから転用した設計で、優れた重量比剛性と空力性能を両立する
ダウンチューブやヘッドチューブなど要所となるチューブは、カムテール設計を反映した「Dシェイプ」と呼ばれる形状を与える。同社のエアロードから転用した設計で、優れた重量比剛性と空力性能を両立する
ディスクブレーキ台座はフラットマウント規格。リヤエンド部の作りはコンパクトで美しく、重量増も防ぐ。スルーアクスルのスキュワーはDTスイスのRSWだが、レバー部のみを外せるキャニオン独自の仕様
ディスクブレーキ台座はフラットマウント規格。リヤエンド部の作りはコンパクトで美しく、重量増も防ぐ。スルーアクスルのスキュワーはDTスイスのRSWだが、レバー部のみを外せるキャニオン独自の仕様
性能面では制動性能の向上もそうだが、エンドまわりの剛性アップにより「ハンドリングの安定性と制御性を向上できる」と、開発担当のM・アドマイトは語る。気になるフレーム重量は、リムブレーキ仕様に対して100gの重量増に抑えた800g(Mサイズ)に仕上げている。プロチームではカチューシャが、春のクラシックとツアー・オブ・カリフォルニアでディスク仕様のモデルを投入する予定だという。
 
フロントフォークはオイルラインの内蔵とディスクブレーキの高い制動力に対応するため、クラウンまわりの作りがボリュームアップした。タイヤクリアランスも大きくなり、最大32mm幅のタイヤを装備できる
フロントフォークはオイルラインの内蔵とディスクブレーキの高い制動力に対応するため、クラウンまわりの作りがボリュームアップした。タイヤクリアランスも大きくなり、最大32mm幅のタイヤを装備できる
オイルラインと変速ワイヤは全てフレームに内蔵され、すっきりとしたフォルムに仕上げるとともに、ワイヤ類の汚れを防止する。フレームセット販売のモデルは、機械式変速と電動変速それぞれの仕様を用意
オイルラインと変速ワイヤは全てフレームに内蔵され、すっきりとしたフォルムに仕上げるとともに、ワイヤ類の汚れを防止する。フレームセット販売のモデルは、機械式変速と電動変速それぞれの仕様を用意
シートポストの固定機構をフレームに内蔵して、乗りごこちを高める構造は従来どおり。ディスク化に伴いシートステーブリッジを排除することで後三角の柔軟性が増し、乗りごこちのさらなる向上を期待できる
シートポストの固定機構をフレームに内蔵して、乗りごこちを高める構造は従来どおり。ディスク化に伴いシートステーブリッジを排除することで後三角の柔軟性が増し、乗りごこちのさらなる向上を期待できる

フロントセクションの立ち居振る舞いに差が出る

筆者は現行型のアルティメットCF SLXのリムブレーキ仕様に乗っているが、今回は同サイズの試乗車をキャニオンジャパンに用意していただいた。ホイールこそ違うものの、同サイズで両タイプの走行感を比べられるのは興味深い。
さらに今回はリムブレーキのホイール重量に近づけるべく、同社よりDTスイス・RR21ダイカットのディスク仕様も借りて付け替えて試乗した。試乗車はストック状態だとコスミックプロカーボンのホイール重量(ディスクローター付き前後で2130g)が響き、アルティメットが本来持つ、パリッとした軽さを持ちつつも、絶妙な踏みしろのあるペダリングフィールがややスポイルされ、上りの走りは重量なりに鈍くなる。

ホイールを交換すると、本来の軽快さが全域で復活する。ペダリング感覚はリムブレーキタイプと変わりないが、ディスクタイプはエンドまわりの剛性が上がっているためか、特にフロントまわりの立ち居振る舞いが若干違う。ディスクタイプのほうが、高速時やコーナー立ち上がりのダンシングの反応性にたける。
しかしその反面、上りでのダンシングは若干突っ張る印象もあり、リムブレーキのほうが淀みない走りだ。

またフロント側の乗りごこちは振動を伝えやすい印象もあるが、それも空気圧を落として(0.2~0.5bar)調整可能な範囲。ディスクブレーキを得たことによる悪天候時の制動力向上、コーナリングの進入速度が高まるといった利点も含めて考えれば、フロント側の振る舞いの違いは重箱の隅をつつくレベルの弱点だろう。
走りの味を求めるのならリムブレーキもいいが、総合的な速さはディスク仕様のほうが上手だ。



インプレッションライダー:吉本司
フリーの自転車ライター。自転車歴30年超のベテランデ、機材だけでなくレース、ツーリング、歴史、市場動向など、幅広い分野で知識が深いことで知られる。

 

spec.

フレーム●カーホボン
フォーク●カーボン
メインコンポ●シマノ・アルテグラ
ホイール●マヴィック・コスミックプロカーボンディスクブレーキCL
タイヤ●マヴィック・イクシオンプロCL 700×25C 
ハンドルバー&ステム●キャニオン・H36エアロコックピットCF
サドル●フィジーク・アンタレスR5スペシャルエディション
シートポスト●キャニオン・S13 VCLS CF
カラー●ステルス×アスファルトグレー、グランツーリズモブルー
サイズ●2XS、XS、S、M、L、XL、2XL
試乗車実測重量●7.79kg(Lサイズ、ペダルなし)
 

※インプレッション車は市販モデルと仕様が異なる場合があります。 


 

問い合わせ先

キャニオンジャパン
☎050・3786・8496
https://www.canyon.com/ja/