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ルック・785ヒュエズ クライマー待望のモデル

非常に競技志向の強いフレンチブランド「ルック」。ニューモデルの785ヒュエズはクライミングを売りにする軽量バイクだ。ラインナップはモデル数こそ多くはないが、個性あふれるバイクたちがそろう。ただ、そのラインナップには最近のトレンドであるエアロ、エンデュランス、軽量の3本柱のうち、軽量モデルが欠けていた。そのピースを埋めるべく登場したのが785ヒュエズなのだ。
 
text:Takehiro Nakajima photo:Takehiro Nakajima、LOOK

“あの峠”の名を持つバイク。785ヒュエズ

フランス、リヨン・サン=テグジュペリ空港からクルマで2時間弱。ロード乗りなら知らぬものなき名峠ラルプ・デュエズ( L'Alpe -d'Huez)。ツール・ド・フランスで何度となく登場し、ドラマチックな闘いが繰り広げられた上りだ。その名を冠したバイクが登場。

上りきったところにあるホテルで発表されたモデルは、「785ヒュエズ」。785は、最近のルック製品から比べるとずいぶん淡泊ないでたち。ラインナップに欠けていた、軽量モデルを用意したかったというのがこのモデル登場の理由。795ライトも充分に軽いと彼らは主張していたが、ルックが本気を出して作った軽量バイクをユーザーも待っていただろう。

ラインナップは2種類。ベースグレードの785ヒュエズと、より軽量な785ヒュエズRSだ。開発コンセプトは、軽量で、快適で剛性があって信頼性があるバイク。そのためにチューブ形状をイチから考え直した。フォークブレード、トップチューブ、ダウンチューブそれぞれにかかる応力をCFD解析し、1cmごとに最適な形状を算出。見た目にはシンプルなチューブ形状も、微妙な変化を与えられている。

もうひとつの重要な技術が、ナノレイヤーカーボン。通常カーボン製品は何枚ものカーボンシートを重ねることで、求める性能を出しているが、その1枚1枚を薄くする技術。薄いがゆえに、同じ厚みのカーボンパイプを作ったとしても、より多くの種類のカーボンを使い分けることができるので、カーボンパイプの特性を、より細かくチューニングできる。組み付けるパーツの互換性についても大きな変更があった。直近に発表されたハイエンドバイクは独自機構のステム、シートポスト、クランクを装備。795エアロライトはブレーキも専用品だった。

785ではこれらを全てやめ、通常のステム、27.2mm径のシートポスト、プレスフィットBB86.5(以下PFBB86.5)に24mm径のクランクシャフトに対応した。この結果、785ヒュエズRSはSサイズフレーム+フォークで1010gという軽さを実現。

ただし、ライダーの体重制限は100kgだ。そしてルック初のライフタイムワランティーも付加されている。

785ヒュエズRS

チーム仕様は、スラム・レッドeタップにコリマMCC+を セットし、完成車重量5.9㎏を達成している
チーム仕様は、スラム・レッドeタップにコリマMCC+を セットし、完成車重量5.9㎏を達成している
ワイヤ類はヘッドチューブから内蔵可能。795シリーズのような複雑なワイヤルートは今回はなし
ワイヤ類はヘッドチューブから内蔵可能。795シリーズのような複雑なワイヤルートは今回はなし
フォークはシンプルだが個性的な断面形状。コラムからフォーク先端まで1枚でつなが ったカーボンレイヤーが存在するので、軽量だが高い強度、剛性を併せ持つ
フォークはシンプルだが個性的な断面形状。コラムからフォーク先端まで1枚でつなが ったカーボンレイヤーが存在するので、軽量だが高い強度、剛性を併せ持つ
リヤブレーキアウターワイヤは非常に短い。完成車にしたときに、少しでも重量を軽く仕上げるためだという
リヤブレーキアウターワイヤは非常に短い。完成車にしたときに、少しでも重量を軽く仕上げるためだという
最上位最軽量グレードのみ、ZED2クランク搭載。 オプションでSRMを搭載したZED2クランクも販売されている
最上位最軽量グレードのみ、ZED2クランク搭載。 オプションでSRMを搭載したZED2クランクも販売されている
こちらは通常の24mm径のクランクシャフトが使える タイプ。BBはプレスフィットタイプになる
こちらは通常の24mm径のクランクシャフトが使える タイプ。BBはプレスフィットタイプになる
クランクとチェーンステーのクリアランスは十分にあるので、各社のクランク型パワーメーターの装着が可能
クランクとチェーンステーのクリアランスは十分にあるので、各社のクランク型パワーメーターの装着が可能

■785 ヒュエズ RS ZED
フレームセット価格:48万円
フレームサイズ:XS、S、M、L、XL
フレーム+フォーク重量:1010g(Sサイズ フレーム730g+フォーク280g)
フレーム素材:UHM60t、HM46t、IM30t、HR24t、グラスファイバー12t
シートポスト径:27.2mm
BB規格:BB65(別売アダプターでPF86.5の取付け可)



■785 ヒュエズ RS
フレームセット価格:38万円
フレームサイズ:XS、S、M、L、XL
フレーム+フォーク重量:1010g(Sサイズ フレーム730g+フォーク280g)
カーボンタイプ:UHM60t、HM46t、IM30t、HR24t、グラスファイバー12t
シートポスト径:27.2mm
BB:PF86.5(シマノ・プレスフィットBB規格)


 

ジオメトリー

シンプルで複雑なバイク……

今年発表された他社のトップレンジが「エアロも」と欲張っているなかで、エアロは795に任せてあると言い切るところも潔くて、スペシャルなバイクであることを主張している。

ここ最近のルックのニューモデルは尖ったものが続いていた。コンフォートモデルの765こそ普通のロードバイクといった成り立ちだが、695で専用ステム、クランクセットを搭載し、695ライトではフレーム一体型ブレーキを採用。675でトップチューブとツライチのステムを搭載し、その集大成の795エアロライトがあった。自分のような好き者にとっては、いつまで見ていても飽きないバイクだが、多くのライダーにとってそうだとは限らない。「それもルックの個性だ」と言い切れてしまうのもまた、ルックの魔力。

785。遠目から見ると端正なたたずまい。今回は785RSのプレスフィットBBモデルと、プロチームレプリカのBB65搭載モデルの2機種を試乗することができた。1台につき1回ラルプ・デュエズを下って上って……。

乗った感じは初代の695の系譜にあるように感じた。だが695よりも、ずっとモダンな剛性感。ペダリングでタメを持たせて、それが戻る時にバイクがぐっと前に出る。というタイプではなく、もっとソリッドで、すぐにバイクが反応していく。

プレスフィットBBモデルは、非常に扱いやすい。下りでの安定性はとても高く、上りでもペダリングのリズムを刻みやすい。ライダーを前へと押し出してくれると感じた。ダンシングしてもやはりそうで、縦方向に硬すぎるバイクは、バイクを左右に振る動きのなかで反応が一定にならず、跳ね返される感じがして、リズムをとりずらいが785はなじみやすい。

ルック独自規格のBB65搭載モデルにも乗ってみた。BBエリアだけの違いだが、そのフィーリングはやはり違った。上りはそれほど差はないように思うが、下りはかなりアグレッシブになっている。ライダーの挙動によりシビアに反応してくるので、楽しい。ひと昔前の軽量クライミングバイクにあるような、カチカチパリパリという印象とは大きく異なる。使用できるパーツの規格がスタンダードなものになったメリットを感じるユーザーも多いだろう。フレーム載せ換えのハードルが下がったと言える。

シリアスライダーにとって必需品ともいえるパワーメーター装備のクランクが取り付けできる点も、このグレードのバイクにとってはとても重要だろう。

乗り味だけでいっても、より多くのライダーに受け入れられるのはプレスフィットBB採用モデルの方だと思う。バイクのことを考えないで、走りに集中させてくれる。でも、さらなる反応性を求めるならBB65モデルが魅力。

 

問い合わせ先

ユーロスポーツインテグレーション
http://www.eurosports.co.jp/